魔王城でおやすみなさい―MASEX!― 作:( ˘ω˘)スヤァーリンおじさん
あの衝撃の十傑集会議が終わってからしばらくして。
敬愛する魔王陛下から、姫様専属の世話係に任命されてしまった少年淫魔のまーくんは、さらわれてくる予定の姫君の為、ついでとばかりに特別牢の施工監督責任者を兼任していた。
「――あ、はい。そこは人質が怪我をしないように、尖った内装は排除して……ええ、はい、お願いします。あとそれから、人間は陽光がないと体調を崩してしまうので、そこは植物エリアに使われてる魔法陣を流用して、人間界に近い日照サイクルにして貰えれば……あ、大丈夫ですか? 流石ですね!」
ガイコツ兵を主力とした、魔王城の優秀な補修部隊をまーくんの一時的な指揮下に置き、可能な限り快適で堅牢な、理想の「とらわれ(予定)の姫様の牢」を建築していく。
牢内でも健康の為に十分な運動ができるほど、広々とした空間の新規エリアを確保。
壁は全てミスリル建材を芯に魔法強化コンクリートを使った、要塞の重要区画にも使われている防壁仕様。それを多層化させており防御力の向上を図ると共に、層間に魔法陣を刻む事で夏は涼しく冬は暖かい、快適な室温を維持する機能を付与する。
床には柔らかな絨毯を贅沢に敷き詰め、転んでも怪我一つないように配慮してある。
窓は希少クリスタルを素材に魔法で錬成した「不壊のガラス」を使用、常夜の魔王城の空に浮かぶ、大きな紅月を見上げる事ができるだろう。
部屋の一角にはネオ=アルラウネから貰った観葉植物が置かれていた。
優しい緑の面白い葉の形をした植物であり、良い香りのする花を咲かせている。彼女の人質となる姫への気遣いが見て取れる。
そして快適な睡眠の為、ベッドは王侯貴族に相応しいキングサイズの最高級寝具を特注していた。
このためだけに旧魔王城の睡魔へ相談の連絡を取ったので、恐らく純粋な寝具の質としてこれ以上の物はないはずだ。
隣接した風呂は旅館並みの広さを持っており、「浄化の泉」を水源に溢れた泉水を、魔王城内に流れるマグマ源泉にパイプラインで通す事で温水としている。浸かるだけで疲労回復し、HPMPおよび状態異常までも完全回復する。ラスダンである魔王城に相応しい浴場となっている。
アメニティも人間界の流行を実際に調べ充実させているし、もしも姫からの要望があれば短期間で取り寄せる手筈も整えてある。
そして部屋の一画は、世話係として詰める予定の仮眠室へと繋がっていた。
簡単な調理を行える台所と、簡素なベッドとトイレ、あとは机が一つだけ置かれた空間であり、牢とは思えない姫様用の空間と比べてしまえば、場末の宿屋といった落差があった。
食事などは魔王城内の料理人達が用意するし、まーくん用の風呂は自分の部屋の物を使うので、ここは世話係としての詰め所兼仕事場として使う予定だ。
そして姫様用の空間へと続く扉とは別に、重厚な扉がもう一つある。
だがそれは偽装であり、実際は扉ではなく魔導具の一種である「転移門」であり、外部と行き来する為の唯一のアクセスポイントとなる。
扉の裏と表に極短距離だけ転移させる魔道具であるが、その特筆すべき点は鉄壁の頑強さにこそあり、これをただの扉と勘違いして開錠や破壊を試みてもその全てが徒労に終わるだろう。
普通の牢であるなら、常に鍵を奪われる心配があった。
だがこの方法であればそんな心配は全て杞憂となる。
魔導具に登録した者しか転移できず、その登録方法は魔王様とまーくんしか知らないからだ。
(……正直、やりすぎた感じはある)
出来上がった姫様専用特別牢は、ぶっちゃけると魔王様の居室よりも良い部屋だった。
そこらの高級宿屋よりも確実に良い空間である自信がある。
与えられた権限と、桁を幾つか間違えてないか疑うほど潤沢な予算を前に、ついついテンションが上がってしまった。
理想の部屋作りって楽しいよね。
(まぁ、でも……いっか!)
まーくんは、ほんわか事なかれ主義のエリート淫魔なのであった。
姫様専用特別牢、これにて落成――ヨシ!
次話エロの予定。