幻想入りしたオタクは理想の2次嫁にお仕えしたい 作:トテツクlv0,01
切り身の状態にはなっていたので解体作業というものはなかった。
フードプロセッサーもミンチ機もないようなのでひたすらに肉を包丁で切って切って切りまくる。
「これだけの量誰が食べるんですか?」
「貯蔵庫にいる人間。10人前後はいるからこのぐらいは必要なの。」
成程ね…。ご飯あげないと血も搾り取れないと。
俺の手料理をお嬢様に召し上がっていただけるとかそういった事はなかった。
うん分かってた。
「聞きたいんですけど人間ってどこから調達されてるんです?」
「妖怪の賢者が外の世界から仕入れてるとか。いなくなっても問題のない者を攫うって話だから犯罪者でも連れてきてるんじゃない?こちらからすれば勝手に増えてるようなものだけど。」
人里不文律に関わる事なのかねぇ。そこには手出さない代わりに外から持ってくるって事か。
それで人が必要な妖怪には届けていて、紅魔館の場合は届け先が貯蔵庫だと。そういう訳ね。
犯罪者だとしてもいきなりその場から消えたら司法的にも問題になりそうなもんだが。
その辺はあのスキマさんが上手くやってるんだろうか。
まぁ何の罪もない人が犠牲になってるよりはまだ気が楽だけどさ…。
つか人里の人間じゃなけりゃそれでいいなら俺だって普通にぱっくんちょされててもおかしくなかったなやっぱり。こえぇ話だ。
ミンチが大体出来たので咲夜さんの炒めていた玉葱と合わせ、そこに塩胡椒、パン粉、卵、牛乳、ナツメグなんかを加えていく。分量は完全にお任せだ。流石に10人前なんか作った事がない。
俺がする事はぐちゃぐちゃにタネをかき混ぜていくだけだ。
にしても人数多いと料理一つでも重労働だよ。咲夜さんはこれを毎日一人でやってんのか。
「メイド長、良ければ今後もこの手伝いさせて貰えませんか?過労で倒れそうで心配です。
お嬢様への食事の用意には手出ししませんから。」
「それは正直助かるけれど…一つ言っておくなら貯蔵庫の人間に同情するという事でならやめておいた方がいいわよ。」
いや単純に働きすぎだと思うのでなんですが…まぁそういった気持ちもなくはない。
自分だけ助かって悪いような気もあるっちゃある。
料理するだけでそれが許されると思ってるわけではないが。
「家畜みたいなものだと思っておいた方が気が楽よ。思い入れが強くなりすぎて脱走の手引きなんてされても困るし。」
「いやしませんよそんな事。」
流石に見ず知らずの誰かの為に自分の立場を悪くするような事まではしない。
俺はそこまで馬鹿でもないし聖人君子でもない。
それにしても家畜ねぇ…。人間牧場なんてのはどっかのゲームにもあったもんだが。
俺もここで働いてるとそのうちマグ〇スさまのように首コキャするようになっちゃうのだろうか。
でも本当に家畜だと思ってんならその為にわざわざ料理なんてするもんかしら?
突っ込んだりはしないけどさ。
タネの成形も終えて後は焼くだけとなった所でそこまででいいとお声がかかった。
ソースに関しては味見できないので無理だが焼くぐらいならなんとかなると思うんだけどな。
今作っても時間が悪いとか?
それこそ調理後に時間止めて保存しとけばいつまでたっても作りたてな気もするが…単なる拘り?
「ご苦労様。ここまで頑張ってくれた貴方にちょっといい物見せてあげる。」
またまた何かをごそごそと取り出す咲夜さん。
ワインといい大量のお肉といい一体いくつ出てくるんだよ…貴方アイテムボックスでも持ってるんですかね?空間拡張のちょっとした応用って奴ですか?
それともごそごそしてるのは振りだけで時間止めて持ってきてるだけだったり?
まぁどうでもいいけど一体何を見せてくれるってんですかね。
「今日お嬢様達に召しあがっていただく食材よ。」
ごろんとそこに置かれたのは――人間の腕だった。
……驚きすぎると逆に冷静になるもんなんだな、初めて知ったわ。知りたくもなかったけど。
衝撃で吐くといった事はせずに済んだ。もうちょいまともだったらそうなってたかも。
どっかの爆弾魔みたく手首だけってわけじゃない。肘までついてる。
華奢っぽいから多分女性の、右腕。
断面から血が流れている様子はない。
「…それのどこがちょっといい物なんですか。まさかさっき使った肉はこの腕以外の部分だとか今更言うんじゃないでしょうね?」
「
ああ血は使ったわよ。」
搾りたてっつってたもんな…。つまりコレはついさっき処分したばかりのだと。
「現物を見せた方が手っ取り早いと思ったのよ。いい?勿論人ばかり食べておられるわけじゃないわ。牛や豚、野菜や穀物といった物だってお取りになるわ。ちょっと好き嫌いも多いけど。」
好き嫌い多いのか。人参ピーマン苦手とかのおこちゃま舌ってんなら割と解釈一致だが。
「
貴方そこの所ちゃんと理解してる?」
頭では分かっていた。
妹様だって人肉ケーキ食べてた経験がある以上お嬢様だって同じで不思議じゃないって。
お嬢様も人喰いの妖怪。本当は怖い幻想郷。
分かってはいたが考えないようにしていた部分はある。
「人と妖が結ばれるというのはまずありえない事よ。尤も前例がないわけではないけれど。」
そうだよな。こーりんだって半人半妖のハーフだ。
人妖の間に子供が産まれる事だってあるはずだ。それでもレアケ中のレアケらしいが。
「そもそも人と妖は相容れないもの。生半可な気持ちで近づこうとするものじゃないの。
このままここで働いていれば今度は本当にこれを調理する事になるかもしれないわよ?」
これは俺を心配してくれているのか。それともお嬢様へ手を出すなという忠告なのか。
或いは私の様にはなるなと言外ににおわせているのか。
だとしてもこれだけは言っておきたい。
「悪い事は言わないわ。ここじゃなくて人里で暮らせば…」
「俺はここでやっていくつもりですよ。生半可な気持ちなつもりは毛頭ないので」
馬鹿にするな。お嬢様への気持ちを軽んじられるのは癪に障る。
この想いを通すためにそれがどうしても必要だというならば、人として忌み嫌われる事であっても俺は…やる。
「メイド長だってやっている事でしょう。それこそ前例があるんだ、不可能じゃない。」
「貴方に耐えられるとは思えないけど。」
「何なら今からでもそれの処理を手伝いましょうか?
ただ俺が料理を手伝ったと知れば、お嬢様に手を付けてもらえなくなるかもしれませんけども。」
あの嫌われっぷりだからな。そこまでされても不思議じゃない。
食材になった人には申し訳ないなんてもんじゃなくなるが。
「しなくていいわ、これは私の仕事だから。今後そういう事があっても後悔しないのね?」
「しませんよ、自分から望んだ事なので。ただ出来る事なら共食いはさせたくないですが。」
人に人を食わせるなんて所までいけば妲〇やデミウ〇ゴス並の悪行だ。
カルマ値極低なんてレベルじゃない。
しっかり食事を用意していた咲夜さんならそこまではしないと思っているが…。
「ならこれで私から言いたい事は終わり。はいクッキーのレシピ。
妹様に持っていくんでしょう?」
「…ご指導有難う御座いましたメイド長。心配してくださったのに生意気いってすみません。」
言いたい事だけ言わせてもらってぺこりと頭を下げておいた。俺は全く狡い奴である。
しかし勢いに任せて結構な事を決めてしまった感はあるが…まだ正気だよな俺?
勘が反応してた扉には入ってないし。
実は扉じゃなくてこの調理場自体に反応してたなんて事は流石に…。
後日妹様にご所望の品を用意した。
お嬢様がお茶してるとこに混ざる形で。何故?
「いや嬉しいからいいんですけど妹様は何でここまで俺に協力してくれるんです?」
「だってまた面白いお姉様が見れるかもしれないし!」
以前の痴態から妹様までがすっかり愉悦に目覚めてしまったらしい。
今の所咲夜さんパッチェさん妹様から攻めに回られるお嬢様。
こぁちゃんも多分バリタチな気がする。総受けかな?
ワンチャンあるのめーりんさんぐらいかもしれん。
当主様の筈なのに四面楚歌とはこれ如何に。
その肝心の本人はテーブル挟んですっごい冷たい目で見てきてるけど。
視線だけじゃ不味い事は前回で学んだのか手でシッシッと追い払う仕草付き。
相変わらずキュートである。
「で、どうですか肝心のお味は。出来るなりには手を尽くしたつもりですが…。」
「う~ん…はっきりいうとあんまりおいしくないね。お茶もクッキーも。」
そりゃそうだ。咲夜さんの味に慣らされた妹様の舌にド素人の俺がいきなり敵うはずがない。
味見も出来んしなぁ…。
仮に味覚がまともだったとしても人間の俺では吸血鬼の美味しいはわからない。
それをどうにかするには長年の経験は必要不可欠だ。だというのに
「ほーら見なさい!フランも咲夜のだけ味わってればいいのよ!」とドヤ顔で勝ち誇るお嬢様。
一体いつの間に勝負が始まっていたんだろうか?成立しない差があるでしょうに。
「これポチの血は入ってるの?」
「いや入れてませんよ流石に…。
お茶の方は若めの女性と男性の血を8:2ぐらいの割合で混ぜました。
クッキーはレシピ通りに作って後はアドバイスに従って女性の血を少しですね。」
「ちょっと飲んでみたいんだけどいい?」
「え゛。いや駄目とは言いませんが直接は困ります…。少量でいいなら用意しますから。」
お仕事でお仕えするぐらいなら構わないが魂まで捧げるとなると妹様にはしたくない。
眷属化はするならやっぱりお嬢様にして貰いたいし。
しかしまぁこんなに早く貰った注射器の出番が来るとは。
血を抜く練習は自分の体でするのが一番といえばそうなんだが…注射苦手なんよなぁ、うぅぅぅ。
まぁ献血だと思えばこれぐらいは…空気入らないようにだけ注意しないと。
カップに直接いれていいとの事なので注射器から注ぐ。
これ一杯だと何ccぐらいになるんだろなぁ、鷲〇麻雀だとどれぐらい抜いたらアウトだったっけ。
「そういえばお嬢様、妹様が俺の血欲しがってますけど止めたりしないんです?
てっきりばっちいからやめなさいとか言われるかと思ってたんですが。」
「誤解してるみたいだから言っておくけど私は吸血鬼として血には敬意を払うわよ。
それが例えあんたのだとしてもね。」
「じゃあお嬢様も俺の血飲んでくれたりするんです?」
「それとこれとは話が別。私はいらないわ。」
ふむ…なんだろう。
人間で言うならご飯粒残すのはダメみたいなそんな考え方だろうか?
吸血鬼独自の観点なのかもしれない。
俺の知らないお嬢様の部分はまだまだある。
お嬢様が人喰い妖怪だとしてもそういった事をもっともっと知っていきたい。
この気持ちは嘘でも生半可でもない筈だ。
やっぱり俺はお嬢様の事が大好きだ。それだけは間違いない。
ちなみに妹様曰くやはり俺の血の味は微妙との事だった。くそぅ。
ただお茶とお菓子については今後も俺が作ってくるように言われた。
あんまり不味い思いさせてられないしはやいとこ腕上げないとなぁ。精進しないと。