幻想入りしたオタクは理想の2次嫁にお仕えしたい 作:トテツクlv0,01
そこから更に一か月と少しが過ぎたある日の夜。
俺はいつものようにお嬢様のお茶に妹様と一緒に混ざっていた。
幾ら言っても無駄だという事に気づいたのかお嬢様はもう追い払う様なことはしなくなった。
お茶やお菓子作りなんかもほんの少しは上達したんじゃないかと思ってる。
まだまだ妹様に美味しいと言ってもらえる程じゃあないけどさ。比較対象のレベル高すぎィ!
こっちとしてもずっと我慢させ続けるのも悪いので、お嬢様の言う通り妹様の分も咲夜さんにまとめて作ってもらった方がいいんじゃないかと何度も伝えたのだが、一向に聞き入れてもらえなかった。
なんでも「お姉様だって咲夜育てたんだから私にだってできるもん!」とのこと。
妹様的には育成ゲームみたいな感覚なのかもしれない。
ポチは私が育てたをやりたいんだろうけど実際アドバイス貰ってるの咲夜さんだからなぁ。
それにおそらく資質からして違いすぎる。
咲夜さんの場合お嬢様の運命補助もあると思うし。
低く見積もっても咲夜さんがセンス〇天才型とするなら俺は逆にセンス×オールGスタートってなもんだ。加えて相手はもう育成終わってる。
これ追いつこうとするならダイジョー〇博士の覚醒3回はいるんじゃないかって。
そんな奇跡ないよ?
或いは育成期間3倍は必要なんじゃないかね。
そんな事をやいのやいのと妹様と話していると、ふとお嬢様が夜空を見上げて呟いた。
「…?月が、おかしい…?いや違う。あれは月じゃない…?
ねぇ咲夜、あの月なんか変じゃない?」
「いえお嬢様、私にはただの満月のように見えますが…」
ああこれもこの時期に来るのか。
EXで肝試しがどうこう言ってたからてっきり夏に起こるものとばっかり思ってたよ。
「フランはどう?何か感じない?」
「うーん、私も違うと思う。うまくいえないけど…魔力が多い?そんな気がするわ」
発端に気づいたのは妖で人間は気づかなかった、だったか。
設定部分にそんな風に書かれてた覚えがある。
「…一応聞くけどあんたはどう?」
「見る分には咲夜さんと同じく何も感じませんけども、今何が起こってるかを知識としてはもってます。異変ですよこれは。」
後に永夜異変と記されるこの騒動。
しかしそれは夜が永く明けなかった事ではなく黒幕が月を入れ替えた事が発端だった。
そう、東方永夜抄本編の始まりだ。
異変と聞いてお嬢様達はすぐにでも殴り込みをかけることにしたらしい。
夜に生きる妖怪にとって月を弄繰り回されるというのはやはり相当に我慢ならない事なのか。
「貴方今のうちに何か言っておくことはない?」
「えっ?未来になりえる情報は禁止って話じゃありませんでしたっけ?」
「あれを言ったのはパチェでしょ?私はそれに同意した覚えなんてないわよ。
貴方が必要だと思う事があるなら言っておきなさい、言い過ぎて楽しみを損ねない範囲でね。」
相変わらずお嬢様は中々難しい注文をしなさる。
ネタバレ無しで知っておくといい事、有利になるような事、ねぇ…。
どういう言い方をするべきか。ふむ。
「うーん…それじゃあ三つ程お伝えしておきます。
まず一つ目。『兎の後はまっすぐ追わずに近くの扉へ』」
一週目からFinal stage Bに進めるかどうかは分からないが伝えるだけは伝えておく。
真EDの方がお嬢様的にもスッキリするだろうし。
「二つ目。これはお嬢様にじゃなくてメイド長へ、ないとは思うんですが一応の忠告です。
お嬢様が一緒にいるからといって手を抜いて花を持たせる、なんて事はしないで下さいね?
春雪異変の頃のメイド長はもっと強かった筈です。お嬢様を全力でお守りしてください。
お願いします。」
「当たり前でしょう。」
永夜の咲夜さんはショット威力がとにかく低すぎた。
自機中最弱といっても過言じゃないぐらいだと思ってる。
それが手を抜いていたからだとは限らないが念の為釘はさしておく。
実はペーパーナイフを投げてましたとかじゃ洒落にならんしな。
発破をかける意味合いもある。
「三つ目は…お嬢様はこの異変を解決する道中でとっても楽しい相手と戦う事になると思います。そんな相手に勝った時のお願いなんて考えておいてもいいかもしれませんね。」
「それが誰かは言わないのね?」
「言わない方が面白いんじゃないかと。」
ゲーム通りなら4面のボスはお嬢様愛しの相手の霊夢さんだ。
是非とも紅魔異変でのリベンジを果たしてもらいたい。
お嬢様はそれを聞いてにんまりと笑った。
しまったヒント出し過ぎで気づかれちゃったか…?
「まぁまぁね、10点あげるわ。」
「ちなみに何点満点で?」
「一億点。」
「手厳しいですねぇ~…精進します。」
ああそうそうこれも一応聞いておこう。
「お嬢様、日傘はいりませんか?」
「夜の間に済ませるつもりだしいらないわ、嵩張るし。解決したらすぐ戻ってくるつもりよ。」
「帰り道に必要じゃないかと思ったので、わかりました。
満月の夜のお嬢様は無敵だと信じております、ご武運を。」
「15点に訂正しておいてあげる、留守を頼むわね。」
そうしてお嬢様達は夜空に向けて飛び立っていった。
「ねぇポチ。何で私は行っちゃいけないの?」
「お嬢様曰く妹様の力はあんまりひけらかしたくないって事だそうですよ。」
「むぅ~…つまんない。」
「その分はまた魔理沙が本盗みに来た時に存分にぶつけてあげてください。」
結局あれからも何度か来てるんだよな白黒。
自宅破壊もお嬢様に進言したがそれにフランの力を使うのは認められないと却下された。
まぁ妹様の体のいいガス抜きにもなってるみたいだしそれはそれでいいのかも。
あれ以来対白黒シフトはEXボスコンビに加えてこぁちゃんも参戦した3人体制になっているらしい。舐められっぱなしもなんだって事でたまたま図書館にいた時はお嬢様も一回そこに加わった事もあるんだとか。Lunaticってレベルじゃねーぞ。MMDと書いてマリサマストダイかな?
そこまでされても懲りずに来るんだからすげぇよな。執念足りてるわ。
ちなみに俺は初回以外現場は見てない。俺連れずに行った方が妹様も早く駆け付けれるしな。
二度と同じ思いしたくないのも大きい。あれはもう御免だ。壁の染みにはなりたくない。
「今のうちにこっそり行っちゃダメ?」
「そんな事されたら俺がお嬢様にどやされるどころか殺されちゃいます。」
「一緒に連れてってあげるから、ね?お姉様の事心配でしょ?」
「留守を任されていますから。お嬢様達なら大丈夫ですよきっと。」
そんな風に気楽に考えていた。
永夜って名前が付くぐらいだ、1日2日は夜のままの日がきっと続くんだろう。
原作ではPM11:00スタートでAM5:00までに6面にたどり着かなきゃGAMEOVERだったかな。
どちらにせよそんなに長い時間はかからないと思う。
何せこの解決にはお嬢様達夢幻の紅魔組の他、幻想の結界組、禁断の詠唱組、幽冥の住人組と別に3チームも動いてる筈だ。
過剰戦力といってもいい。何の心配もいらない。滞りなく異変解決は果たされる。
案の定、それから3日も過ぎた頃には幻想郷に昼が戻った。
だがしかし…お嬢様達は館に戻ってこなかった。
昼が終わって夜が来て、また昼が来て夜が来て……
それでもまだお嬢様達は館に戻ってこなかった。
「ねぇポチ…。すごい顔してるけど大丈夫…?」
「大丈夫…です。」
嘘だ。
昼が戻ってからというもの俺は一睡もできていない。
何でだ、おかしい。異変は解決された筈だ…。
なのになんでお嬢様は戻ってこない?
すぐに帰ると仰られたのに。
原作通りならクリアしたらEDの流れだろ?
解決が紅魔組じゃなくて別チームだったとしても戻っては来る筈だ。
…俺のせいか?俺が余計な事言ったからか?
得意気に未来の情報ベラベラと喋ったせいで何かが改変されちまったのか?
待て落ち着け。早まるな。結論を急ぐな。ゲームとの差異を考えろ。
まず何かが起こりえるなら4面だ。恐らく相手は霊夢、博麗の巫女。
だが主人公相手だとしても二人がかりなら充分に勝機は掴めるはずだ。
それは魔理沙でとっくに実践されてる。
だがしかし…相手が霊夢じゃなく結界組だとしたらどうなる?
八雲紫、妖怪としてはトップクラスの実力の持ち主。
それが巫女と組んで襲ってきたとしたら…?
お嬢様達でも旗色は悪いかもしれない。
…更に相手が結界組だけとは限らない。
4面は自機が結界組、冥界組ならボスは魔理沙。詠唱組、紅魔組なら霊夢だ。
即ち別チームもそこで争っている可能性がある。
最悪乱戦、多勢に無勢。まずはこいつからと目をつけられるやも。
いやでも大丈夫だ、所詮弾幕ごっこだ。ガチじゃないって話だ。
トドメまで刺されたりは…しない筈だ。
お嬢様には生粋の再生力だってある。夜が続く限りお嬢様は無敵に近いはずだ。
……だがもう日の光は幻想郷に戻っている。
今お嬢様は日傘をお持ちではない。
何らかの要因で身動きができない状況だとして、その身に太陽の光をまともに浴びてしまったら……。
考えれば考える程最悪の図しか浮かばない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
血の気が引く。恐ろしい。
そんな筈はないといくら考えを振り払ってもすぐに纏わりついてくる。
心配するってこんなに怖い事なのか。
誰かを心配した事なんて今までなかったかもしれない。
こんな思いをするぐらいなら自分が死にかける目に合う方が百倍マシだ。
今すぐにでも探しに行きたい。
しかしお嬢様から留守を頼むと言われているんだ。
その任を放り出していくわけには…いかないのか?
命令に逆らったとしてどうなる?
お叱りを受ける?嫌われる?最悪紅魔館から捨てられる?
なんだその程度で済む事じゃないか。
俺なんかどうだっていいんだ。
そんな事よりお嬢様の無事を一刻も早く確認する方が重要だ。
そこで俺はようやくお嬢様の命令に真っ向から逆らう事を決めた。
「あっ。」
「妹様お願いしますどうかお力を貸してください!
俺は今からパチュリー様にも協力してもらえないか話してきます!
その後一緒にお嬢様達を探しに行ってもらえませんか!?俺は自分の足で探しますので!」
「そんな必要ないよ?今お姉様帰ってきたし、ほら。」
妹様が指差した先にはずっと待ち望んだお嬢様の姿があった。
隣に咲夜さんは見当たらない。その元に俺は全力で駆けだし飛びついた。
「お嬢様!ご無事ですか!?お怪我はありませんか!?
日に焼かれたりはしてませんか!?咲夜さんはどうしたんです!?」
「ええいうっさい!服を引っ張るな!」
大丈夫だ。
いつも通りのお嬢様だ。
服もボロボロになったりはしてない。
良かった…。杞憂で良かった…本当に。
「咲夜はロケットの材料探しに行ってもらってるわ。…ちょっとあんた何泣いてんのよ?」
「ごめんなさい…お嬢様の無事を信じきることが出来ませんでした。
留守を頼むという命令も今まさに破る所、いえ破った所です…。
無断で妹様も外に連れ出すつもりでした。申し訳ありません…。罰則なら何なりと…。」
何が信じていますだ。俺なんて所詮口だけだ。
妹様達のようにどっしり構えて待つことなんてできなかった。
お嬢様に俺が信じてもらえなかったのは当たり前だ。
だって俺もお嬢様を信じきれてなかったんだ。情けない。馬鹿野郎め。
「お姉様がさっさと戻ってこないから悪いんでしょ。一体何してたの?」
「黒幕は無事に懲らしめたのよ。で、終わった所で紫と霊夢が来て和解もできてそこまでは良かったんだけど…。その黒幕達からちょっと頼み事されちゃってね。面白そうだったからついでにそれも済ませてたのよ。」
ああ…即EXに繋がったのか。
紅魔異変では魔理沙は後日に来てたって話だったし春雪異変では咲夜さんはノータッチだったから分からなかった。
その点は考慮してなかったなぁ…。
Final stage Bに繋がる助言したせいもあるのかもしれない。
道中の話もそれから聞いたが4面の相手はやはり霊夢さん単体だけでゆかりんはいなかったとの事。近くには潜んでたんだろうけど修行がてら見守るに留めたとかかね。
霊夢さんには無事勝利したらしい。リベンジおめでとう御座います!
その後全チームそこで集合して全員で永遠亭に向かったんだとさ。
これウドンゲフルボッコにされたんじゃないか?
で、他3チームはそのまま後を追ったけどお嬢様達だけは俺の助言を覚えててくれてぐーやの方にいけたらしい。
他を出し抜く形になってお嬢様はご満悦だったみたい。
「ほら、あんたもちょっとは役にたったから罰とかはなしでいいから。
だから元気出しなさいって、あんたがそんなんだと調子狂うのよ。」
お嬢様がよしよしと俺を撫でてくれる。
これが…バブみ?お嬢様は俺の母になってくれるかもしれなかった女性だった?
今なら許されるかもしれないとぎゅぅっとハグを強めると「あんまり調子に乗るんじゃない」と頭をはたかれた。つらみ。
「今咲夜いないんだからあんたが代わりにお茶の用意しなさい、ちょっと話したい事もあるし。
フラン、悪いけどこいつ借りるわね。」
「え~なんで!?私も一緒じゃダメなの!?」
お嬢様からお誘い…?二人っきりで?
え?まじ?
・・・おや!? テーン♪テーン♪テーン♪テーン♪
つんでれみりあのようすが・・・!
BBBBBBBBBBBBBBBBBBBB
幻想郷年表的には永夜EXは本編より一ヵ月後との事ですが話の都合上即展開という事にしました。ご了承下さい。