幻想入りしたオタクは理想の2次嫁にお仕えしたい 作:トテツクlv0,01
「フランの言ってた通り本当にいまいちね。」
「やっぱり下手に混ぜるより処女の血100%とかのが味良かったりするんじゃないです?」
「そんなのダメよ。味に深みも面白味もなくなるわ。」
言いたい事は分かりますが面白味は味の表現で使うものじゃないと思いますお嬢様。
なにそれフライドチキン的な間違い?
さっきまで本当に俺らしくない状態だったが近距離からおぜうニウムを大量摂取したお陰で元に戻れた。癒し効果すげぇよオキシトシンなんて目じゃないぜ。
しかもねんがんの二人っきりよ?ここで押さなきゃいつ押すんだよって機会だ。今でしょ。
「いやーお嬢様、今夜も月が綺麗ですねぇ!」
「死んでもいいわなんて言わないわよ?」
軽いジャブは見事にかわされる。
流石お嬢様、かの漱石もご存じだとは。500年も生きているだけあって博識でいらっしゃる。
俺なんてその台詞ぐらいしか知らないのに。
「咲夜さん今ロケットの材料集めてるんでしたっけ。今度は月に向かうんです?」
「そのつもりよ。話聞く限りなんだか面白そうな所だしね。」
お嬢様の行動理念はとりあえず面白いか否かという事らしい。
まぁ退屈は人を殺すなんて言うしな。長命種はそれがより顕著なのかもしれない。
て事は次に起こるのは儚月抄になるのかね?
時系列については本当にわけわかんないからなぁ。
発売順なら花映塚か風神録かどっちかかなーと思ってたけど。
「月についても貴方は何か知ってるの?」
「ほんのちょこっとは知ってますけどほぼ知らないですね。もう何も教えませんが。」
「何でよ言いなさいよ。」
「ネタバレはつまんないんでしょう?」
儚月抄について俺が知ってる事なんてお嬢様がよっちゃんにけちょんけちょんにされる事ぐらいだ。お嬢様が負けるってのは個人的には嫌だがお嬢様的にはアリなのかもしれない。
なんせ霊夢さんに興味もったのも一回負けたからっつってたしな。
強敵に飢えてるって所はあるんだろう。
そうなるとよっちゃんにも惚れこみそうなのは嫌だなぁ。
教えないのはネタバレになるって以外にも理由はできた。
怖いのだ。
改変ってのはいい方向に転ぶ事もあれば悪く転ぶ事もある。
今回の事でそれが身に染みてよく分かった。
あれが想像の中だけで済んだのは運が良かったに過ぎない。次はないかもしれない。
そりゃパッチェさんも止めるわ。知識人のいう事は聞いとくべきだな本当に。
「個人的には行ってほしくないですけどね、寂しいですし。」
儚月抄が解決までにどれぐらいの期間かかるのかもさっぱりわからない。
何の役にも立てない俺はまた留守番だろうし。
すぐ戻る筈が戻らないという不安感もあったがたった2、3日であの有様だからな。
数週間、数ヵ月、最悪数年?
そんな長期間離れてしまったら今度こそ気がふれてしまうかもしれない。
そうなってもおかしくない程俺の中でのお嬢様の存在は大きい。
でもお嬢様が行きたいならそれが優先されるべきだ。俺の心情など二の次でいい。
「まぁそんな事はどうでもいいとしてお嬢様俺に話したい事ってなんです?
俺に答えられる事なら何でも答えますよ?未来の情報は無しですが。」
「ああそれね…。」
お嬢様はそこでカップを置いて肩肘をつき、何でもないかのように振舞って告げた。
「咲夜にね、ちょっと振られちゃったのよ。遠回しにだけど。」
ああ…あれか。
咲夜さん寿命問題にも関わってくるEXでのあの問答。
『そう、咲夜も不老不死になってみない? そうすればずっと一緒に居られるよ。』
『私は一生死ぬ人間ですよ。大丈夫、生きている間は一緒に居ますから。』
『咲夜がそういうなら仕方が無い、残念ね。』
原作やってる時もこれ言われたおぜうさま内心結構ショック受けてたりするんじゃないかって思ってたんだよな。気を引き締めよう。ヘラヘラした顔で聞いていい話じゃない。
「霊夢にもね、振られちゃった。血を吸われるわけにはいかないって。」
これは勝った時のお願いとして言ったんだろうか。
勝利後台詞に『借りは返したわ。血は飲まないでおいてあげるから、さっさとお帰り。』ってあったけど、その前に持ち掛けてたのか。
吸血鬼にとって吸血を断られるというのはやはり重い意味を持つのだろうか。
「私はね、人の寿命は短すぎると思ってる。それに対して何とかする力を私は持ってる。
それを使って大事な人と、もう少しだけ長く一緒にいたいと願うのは…勝手だと思う?」
そう告げるお嬢様は、俺の目には弱弱しく、まるで泣いているかのように見えた。
「思いません。」
だから俺はそれをなんとかしてあげたいと思った。
「確かにそれを相手を無視して実行したなら勝手かもしれません。
しかしお嬢様は相手の言い分を聞いてそこで引いてます。そこで止めたなら決して勝手なものじゃない。優しい願いだと、俺はそう思います。」
「…なんでダメだったと思う?」
「それについて真実を知りたいといわれるならば本人達でしか答えられないかと。
俺の口から言えるのはあくまで予想に過ぎません。それでもいいなら。」
「それでいいわ。話して。」
「はい。その寿命を伸ばす方法というのは…そうですね、気化したお嬢様を吸うといった方法かもしれませんが、今回は吸血による眷属化という前提で話させて頂きます。
それ即ち人から妖に変わるという事、霊夢さんやメイド長はそこが認められなかったのではないかと。人間としての自分に誇りを持っているか、或いは人は人として死にたいという信念があるか。決してお嬢様の傍にいる事が嫌なわけではないと、俺はそう思います。」
人間讃歌なんて言葉もあるしな。
博麗の巫女はいわば人としての代表のような立ち位置だ。
それが妖に転じるとあれば大問題になるだろう。
咲夜さんについては…わからない。
自分以上にお嬢様を愛している節はあると思う。
なのに一生人間だという眷属化も否定できる言い方をした。
過去に何かあったのかもしれない。俺とは真逆で一生人間で居続けるという覚悟をする何かが。
「そう…。」
お嬢様の気晴らしになるような何かはないか。
必死に考えて頭の中に思い浮かんだのは魔理沙から受けた助言だった。
自分の事を知ってもらう。
ただ今までのような半端な知らせ方じゃあ駄目だ。
隠してたつもりはないが知らせないようにはしてきた部分はある。
それも含めて何もかも、洗いざらい、全部知ってもらう。
「お嬢様、ちょっとした小話を三つ程させて貰えませんか?
つまらない話になるかもしれませんが。」
「つまらないかどうかは聞いてから判断するわ。話して頂戴。」
「有難う御座います。一つ目はお嬢様の500年に比べればとても短い時間ですが、
二十一年と少し生きた男の話です。」