幻想入りしたオタクは理想の2次嫁にお仕えしたい 作:トテツクlv0,01
「いやまぁ隠してるわけでもなんでもなく単純に自分の名前が大っ嫌いだってだけの話なんです」
じゃあなんでそんなに嫌いなのかって話だが答えは単純、キラキラネームである。
なーにが田中
こんなふざけた名前つけてくれた事と本当の両親には恨みしかない。
お陰でどれだけ苦労させられたか…。
「恥ずかしい響きでもありますし、出来るだけ言いたくなかったと。後はまぁ絶対無理だとは思うんですけど自分もお嬢様に名付けしてもらえたらな~ってちょっとだけ思ってました。先に名前ばらすとその機会すらなさそうでしたし」
ここでお嬢様がぴくりと反応した気がする。
「ふぅん。で?言ってる意味わかってるの?」
「と言いますと…」
「色々とあるけどまずは名を明かせと言ったでしょう。さっさとしなさい次はないわよ」
「アッハイ田中
くそぅ本名情報と引き換えに名付けてもらう作戦失敗。
いや餌にすらなりゃしないのは分かってたんだけどさぁ。
成功するとも思ってなかったし。
でも万が一億が一上手くいったらいいなーって少しぐらいは期待してたのよ。
それにしても意外だったのは別に普通じゃないとすんなり受け入れられてしまった事だ。
何…だと。キラキラネームの概念がないとでも言うのか。響きだけなら横文字っぽいからか。
なんとか理解してもらおうと頭捻って悪魔なのにエンジェルって名付けるようなもんだと言うと名付けセンスが異端という事は分かってもらえた。
本質的にはちょっとどころじゃなく違うかもしれない。例に出すならタロウとかだったか?
「後は名付けに関してだけどお断りよ。なんで一日泊まるだけの客にそんな事しなきゃいけないのよ。うちで拾うわけでもないのに、考えるのも面倒だわ」
ぐうの音も出ない。正論である。
名付けって責任も伴ったりするしなぁ。魔術的には契約概念もあったりしそうだし。
ここで少しティンときた。
もしかしたら運命を操る程度の能力すら関わってくるかもしれないと。
あれお嬢様自身もうまく扱えてるかどうかわからないってパターン多いんだよね。
咲夜さんの過去がこの世界線でどうなのか全くわからないけど、十六夜咲夜の名を与えられた時点から運命が変わった、という説もなくはない。
始めはお嬢様に名付けてもらえるとか羨ましいなー程度だったがこうなると少し話が変わってくる。今後紅魔館に留まれる可能性が上がるかもしれないのだ。
もう少し食らいついてみるか。厄介ファンムーブ決めることになって本当すみませんお嬢様。
「そこをなんとか。」
「しつこい。」
「あだ名程度の物でいいんです。カッコいいのじゃないと嫌とか言いませんから。」
「何度も言わせないで面倒なの。」
「ほらさっきのお菓子の礼とかで。私お嬢様の大ファンなんですお願いします。」
「あれは貴方が勝手に持ってきたんじゃない。
それに礼なら泊めてあげるんだから充分でしょう?」
「それはそうですが思っていた以上に喜んでいただけたようですし。宿泊の対価はお嬢様が先程仰ったように、明日のお願いを聞く事でよしとする、でしょう?」
「むぅ…。」
恩着せがましいのは百も承知。下手な助言が入る前にここは勢いでゴリ押す!
「本当に適当なものでいいんです。名無しの権兵衛とか外来人Aとか、それとかポチとかでも」
「ああああもううっさい!わかったわよじゃあそのポチで!はい決定これでいいでしょ!?」
お嬢様が一から考えてもらえる名前がベストだったがここいらが限界だろう。
俺の提案した名前をお嬢様が承諾した。これで名付けの定義は成したと信じたい。
ネーミングセンスの無さには突っ込まないでくれ。
俺は全世界ナイトメアを笑える程じゃないんだ。
しかしポチか。どうせ犬っぽい名前ならゴン太とかにしとくべきだったか?まぁいいや。
とりあえず俺は幻想郷では今後ポチとして生きていこう。
目指せ悪魔の犬。
あ、ダメだ悪魔の犬は咲夜さんの二つ名で既にあった気がするわ。
よしじゃあ目指せ悪魔のバター犬。ちんちんだってできるぞわぁい!うん最低ですね。
さて願望の一つは叶ったがお嬢様のご機嫌を損ねてしまった。
これが吉と出るか凶と出るか。
「はぁ…。じゃあ聞きたいことの二つ目だけど、貰ったお菓子と飲み物だけだと貴方が外来人なのかはっきり言いきれないのよね。で、外の世界由来の物がまだあるんだったらそれを見せてほしいの。結構な大荷物の様だしね。」
まぁそりゃそうだよな。ポテチなんてただ芋薄く切って揚げて塩振っただけのもんだろうし。
珈琲についてはどうなんだろう。香霖堂辺りに転がってたりするのかね。
とりあえずスマホを立ち上げてカメラモードを起動。
1枚目は周りの本棚をパシャリ。その場の風景を画面に記録するものだと説明する。
2枚目は自分を含めてパシャリ。危険性が無いことをアピール。
3枚目でお嬢様と咲夜さんを含めてパシャリ。
だがお嬢様はカメラに写っていなかった。
吸血鬼は鏡に映らないというのがダメなんだろう多分。
一人しか写っていない画面を見るとお嬢様も咲夜さんも残念そうだった。
俺もがっくりだよ、待ち受けとかにしたかった。
ただこれについても珍しいだけで似たような物はあるはずだと説明しておく。
天狗なら持ってるだろうしなー。
次にライターだがこれについてはショボイとしか言えない。
なんせ火の魔法が現実にある世界だ。
ティンダーもどきの物を見せた所で何がどうなるというのか。
それでも魔法の使えない人にとってはそれなりに有用という事は分かってもらえたみたい。
後は同人誌なんだが…これについては見送った。
本人達出演の本の山を一体どうやって説明しろというのか。
少なくともいい印象は与えられないような気がする。
いや隠すわけじゃないよ?そもそも隠せる量してないし。
「それだけ?ふぅん…まぁいいわ。それじゃあ本題の三つ目ね」
そう言うとお嬢様は手元にグングニルを召喚してーーえっ?
「最初美鈴から客人はお嬢様に宜しくと言っていたと聞いたわ。
どうして相手が主人だと思わなかった?
次に生お嬢様って何よ?生じゃない私がいるとでもいうの?偽物かしらね?
最後に、お前は自分『も』名付けてほしい、と言った。
私が名付けた相手が他にいる事を既に知っているんでしょう?
お前は何をどこまで知っている 吐け。」
ーーー威圧。
殺気の暴風とでも言うべきか。失神やら失禁やらしなかったのは奇跡だと思う。
いやギリギリしない程度に抑えてくれてるのかな。多分そうだろう。
歯がガチガチ鳴るのは止まらないけど。
思えば舞い上がってたんだろう。幻想郷に来ることができてラッキーだと。
そして調子づいてたんだろう。事前に命の危機を知れるならセーフだと。
虫の知らせさっきまで全然仕事してなかったろうが、今更したっておせーんだよ。
そして心のどこかで、相手が二次元のキャラクターなら自分を害する事はないと油断していたんだろう。
だが目の前の相手は、自分など一息で消し飛ばせる大悪魔なのだ。
そんな相手に取れる行動なんて一つしかなかった。
「ここっここっこ降参です!!何もかも全部洗いざらい話しますから!!」
「そっ、物分かりのいい子は好きよ」
そして手元から槍を消し悪戯が成功したようににっこりと笑う少女の笑顔はとても恐ろしくて綺麗だった。