───南町奉行所。
チュンチュン、チュンチュン…
「いやあ、先日の捕物ではほんとに世話になったな、感謝してるぜ渚」
「そんなことないよ、ここの与力や同心たちもみんながんばってたじゃん」
ぼくの目の前にいるのは町奉行の前原陽斗くん。とてもハンサムで遊び人の彼だけど、仕事は一生懸命だし威張ったところのまるでない、とてもいい友だちだ。
「しかし、あのおとなしいくノ一が牢破りまでするとはな、驚いたぜ」
しおりちゃんのことだ、ぼくも本当に驚いた。いったい彼女は何を考えているんだろう。
「ごめん、まったく手がかりがなくて…」
「いいさいいさ、俺たちも必死で捜してるんだがな、今頃いったいどこで何をしてることやら」
うーん…考えたくないけど、もしかしたらシロのところに戻ったのかな…
「ところで、今日呼んだのはこれのことなんだが」
前原くんが懐から小さな巾着を取り出してきた。
「なんだい、これ?」
「開けてみてくれ。捕まえた連中が大事そうに隠してたものなんだが、渚はこれがなんだかわかるか?」
「そんなのぼくにわかるかな、あっ…」
「どうかしたか?」
それは例の媚薬ペドナの小瓶だった。
「…い、いや、ハハハ、なんでもないよ。そ、それよりこれなんだろうね?」
「渚でもわかんねえか、うーん」
はー、危ない危ない。奉行所はまだこのクスリの存在を知らないんだった。
「これ預かっていい?調べてみるから」
「おう、もちろん構わねえよ」
「じゃあ、いただいてくね」
ぼくはいそいそと小瓶を懐にしまうと、怪しまれないためにわざと関係のない世間話をしてから前原くんと別れた。
「なぎさぁ!おそーい!」
「ご、ごめんごめん…」
奉行所を出ると、さっそく矢田さんのブーイングが飛んできた。今日はこれから速水さん神崎さんを含めて四人で温泉に遊びに行く。
茶店での休憩を挟みながら駕篭に揺られて温泉宿に向かう、のんびりと贅沢な旅だ。
「ちょっとあんた何本食べてんの?いいかげん食べ過ぎ」
「うるさいなあ、いちいち口出さないでよ」
「お饅頭にお蕎麦にお寿司にお団子?休憩のたびに何か食べてるよね」
「はあ…!?あんたになんか迷惑かけてる!?」
「またケンカしてるよ、あの二人…」
「うふふ、仲がいいですね」
「…まあ、わたしのために温泉に行こうって言ってくれたらしいじゃない?凛香にしちゃあ上出来ね」
「当たり前でしょ、あんたが先にくたばったら私が忙しくなるだけじゃないの」
「キイイイイッ…!憎たらしい!!」
「まあまあ、落ち着いて…」
仲がいいのはいいんだけど、矢田さんをなだめるの、いつもぼくの仕事なんだよね…
さてさて、あちこち寄り道しながらも未の刻(14時頃)には目的の温泉宿に到着した。
「いらっしゃいませ潮田様、どうぞこちらへ」
「へえ、立派な宿ね」
「うう~!ご馳走楽しみ!」
「……」
ドタ、ドタ…
「ここが潮田様のお部屋でございます」
「わ~!おっきい!」
「え…!?庭にお風呂がある!」
うれしいなあ、ここだけ離れになっていて露天風呂までついているよ。ふわ~、庭一面に白い湯気が立ちこめて雰囲気満点!
「すいません元締、私たちのためにこんなに贅沢をしていただいて…」
神崎さんが申し訳なさそうな顔をした。
「いいよいいよ、そんなの気にしなくて。みんなで頑張ったんだから」
「でも…」
「今日は無礼講、せっかくだから楽しもうよ」
「そーそー、なぎさの言う通り。たっくさん呑んでいっぱい騒ごうね!」
「あんたは少しぐらい遠慮したほうがいいと思うけど」
「うるさい凛香!」
ま、まあまあ…
ぼくはひとまず荷物を置いて、お茶をいただくことにした。
あれ、女性陣はもうどこかに出掛けるの?元気だなあ…
「皆さんどちらへ?」
「そこら辺をぶらぶらしてきま~す」
「そうなんだ、気を付けてね」
「「「は~い」」」
じゃあぼくは先にお風呂でも入ろうかな。
泊りがけで美女三人と温泉に行く、そう思うとのぼせちゃって昨夜はちょっと寝不足気味。
少しだけ休もうかと思って横になったら、すぐにウトウトしてしまった。
どれくらい経っただろうか。ぼくはハッと起き上がり、いそいそと浴衣に着替えて露天風呂に向かった。
そのときのぼくは例の小瓶のことなんかすっかり忘れていて、懐から落ちて転がったことにも気づかなかった。
ザバーン…
「ふ~、気持ちいい!」
この白く濁ったお湯、美肌効果があるらしいからあの三人大喜びするだろうな。
ぼくは岩を背もたれにして足を伸ばした。
チチチ、チチチ…
鳥の囀ずりが聴こえてくる。天気もいいし最高の気分。
ガラガラ…
あれ、だれか帰ってきたのかな?白い湯気に包まれてよく見えない。
ジャバ、ジャバ、トポン…
かけ湯をして脚を浸けた音がした。誰なんだろう…?
「ゴホン、ぼく入ってますけど」
「元締、わたしです」
「ああ、神崎さんか」
手拭いで前を隠した彼女がゆっくりと近寄ってくる。
「横にきていい?」
「もちろんいいよ、どうぞどうぞ」
透き通るような白い肌に
ううう…例えるなら吉祥天女か、弁財天さまか。
「こ、コホン、あとのふたりはどうしたの?」
「お酒とおつまみを買いに行きました。それより…」
「な、なんだい?」
う…その上目遣い、すごく色っぽい…!
「いまはふたりきりを楽しみたいです…だめですか?」
だめなわけないです(即答)。
ふたりで少したわいもない話をしたあと、ぼくから先に彼女にキスをした。
「ん、ん…」
すると神崎さんはゆっくりとぼくの両膝に跨がり、首に両腕を回して耳元で囁いてきた。
「大好きよ…なぎさ」
「うん、ぼくもだよ有希子…」
はあ…彼女のからだ、柔らかくて気持ちいい…
………
───その頃、居酒屋では
「これとあれと、あ、それもちょうだい」
「へい、毎度あり。少々お時間いただきますぜ、お嬢さんたち」
「じゃあ、待ってる間にお酒もらおうかな」
「へい」
「は?あんたもう呑むの?」
「いいのいいの、楽しいじゃない」
「帰るまでに出来上がったりしないでよね」
「しないしない」
「へい、お待ち」
「わーい、いただきます」
「ったく…」
湯呑みに注がれたにごり酒をうれしそうに呑む桃花をあきれた顔で見ていると、向かいの席に座る夫婦の話し声が聴こえてきた。
「…で、その白装束の男たちが宿から出てきたんだよ。全部で五、六人だったかな」
「へえ、おとといのことかい?」
え、白装束…?凛香は桃花にちらりと目配せした。
「おう、おかしな奴らだと思ったんだが、その中に異国の女がいてな、またそれがすんげえ美人なんだよ。変わってるだろ?」
「ふうん、たしかにおかしな連中だねえ。で、そいつらどこ行ったんだい?」
「それがな、その宿の話だと…」
「おう、邪魔するぜ」
ちょうど話が核心部分になってきたところで、突然やくざ風の中年男ふたり組が店に入ってきた。
「おい親父、いつもの」
「へい」
「おや…?今日はずいぶんべっぴんさんがいるじゃねえか、珍しいな」
「おう姉ちゃんたち、どこから来たんだ?」
ちっ…夫婦の話が止まったじゃないの!凛香は小さく舌打ちした。
「へい、お酒」
「おう」
「なあ姉ちゃんたち、いっしょに呑まねえか?」
「結構よ、楽しくやってるから」
「お勘定」
「へい」
あ…ヤバい、夫婦が店を出てしまう。
「なあ、おひとつどうだい」
「いらないってば」
「へへ、夜は長いんだ、仲良くしようぜ?」
男が桃花にお猪口を、もうひとりの男が徳利を凛香に差し出したそのときだった。
「「しつこい…!!」」
シュパッ!シュパッ…!
「…え?」「あ…」
目にも止まらぬ速さで真っ二つとなるお猪口と徳利。
チン…!
ふたりの懐刀がスッと鞘に収まった。男たちは自分の手に残ったお猪口と徳利の片割れを呆然と見つめていた。
「す、すげえ…」
一部始終を見ていた店主が感嘆の声をあげる。
「邪魔したね、お金置いとくよ」
「あ…!姉さんたち、酒と肴」
「ありがと」
急いで包みを持って通りに出ると、残念ながら先ほどの夫婦は人混みに紛れて見えなくなっていた。
「ちっ…」
「は~あ…残念」
ふたりは肩を落として仕方なく宿に戻ることにした。
………
パシャッ…ザブンッ!バシャッ…ドポンッ!
「はあッ…!ああんッ♥️い、いい…!」
ぼくはいまお風呂のなかで神崎さんにいわゆる四十八手のひとつ、絞り芙蓉(背面座位)の体位で挿入している。
「んッ…んむ…♥️(レロ…レロ…)」
左手で彼女の乳房をやさしく揉み、右手でクリトリスを愛撫し、腰を突き上げながら舌を絡ませ合う。
「ぷは…♥️はあん…!あんッ♥️あんッ…♥️(す、すっごく気持ちいい…)」
一度に四ヶ所も攻められて、神崎さんは我を忘れて興奮している。その表情は見たことないほど蕩けていて、すっかりぼくに溺れているのが丸わかりだ。
いつもの彼女は真面目でやさしくて有能なぼくの仕事のパートナー。
その神崎さんに性技の限りを尽くして徹底的に淫らにさせていく。
「あんッ♥️あんッ♥️んんっ…!ああんッ♥️」
ジュポッ…!ズプッ!グプッ…!ジュプッ!
ああ…そろそろ限界だよ!は、はやくイキたい!
さっきは対面座位で
彼女を前屈みにして岩に手をつかせると、背後からもう一度しっかりと挿入し直した。
ジュププッ…グプッ!
「はあんッ…♥️い、いいっ…!!」
ううッ!肉棒に吸い付いてくるこの感触、すごいよ…!!
「な、なぎさも気持ちいい…?」
「もちろんだよ、最高すぎるよ」
「よかった…もっともっとわたしのなかを味わって…?」
「うん!」
ズリュッ!ヌプッ…!グプッ!ジュプッ…!
「あんッ♥️あんッ!す、好き、大好き、なぎ、さ…♥️」
よし、そろそろ本気だすよ…!
パンッ…!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
ぼくは夢中になって彼女のお尻に腰を打ち付けた。真珠のような白い背中にむっちりとしたかわいいお尻。
すごいよ、有希子の身体すっごくきれいだ…
「ひゃんッ!アンッ♥️アンッ♥️アンッ♥️はああッ…♥️い、イクッ…!い、イッちゃうッ…!!」
「ぼ、ぼくも…!げ、限界ッ!」
「な、なぎ、さ…♥️い、いっしょに、い、イこッ…?お、お願いッ…!」
す、すごい、あの神崎さんがこんなに乱れるなんて…!
「うん、ぼ、ぼくも、いッ…イクッ…!!」
ドビュッ…!ドクドクッ!ビュクンビュクンッ!ビュルビュルッ…!
くはあッ…!!気持ちいいッッ…!!
ビュクン、ビュクンッ、ビュルビュルッ…!
はあッ…!はあッ…!
彼女の背中に大量に飛び散った、ぼくの白濁液…
「んッ…♥️は、はあっ…♥️んあ…(ビクンビクン…)」
ああ…すごい、神崎さんまだ絶頂が続いてる…
「だ、大丈夫…?」
「はあ、はあ、大丈夫だけど…す、すっごく、気持ちよくて…」
「よくて…?」
「気絶するかと思っちゃった、なぎさのばか…」
神崎さんは肩で息をしながらにっこりと笑った。
「ご、ごめん、ちょっとがんばりすぎたね」
ぼくは照れ隠しにポリポリと頬を掻いた。
それからふたりでお互いの身体を洗いあいこして、ようやくお風呂からあがった。
ふう…涼しい風が火照った身体に気持ちいい。
浴衣に着替えて縁側に座っていると、神崎さんが耳掻きをしてくれるという。
「え、いいの?」
「もちろんよ、こちらへどうぞ」
正座をした神崎さんが、自分の太ももに頭をのせろと促した。
「えっ…!?膝枕だなんてそんなの申し訳ないよ」
「今日は無礼講だって言ったのは、なぎさでしょ?」
「そ、そうだけど…い、いいの?じゃ、じゃあ遠慮なく…」
ぼくは恐る恐る横になり、彼女の柔らかな太ももにそっと頭を置いた。あー…お花のようないい香りがする…
「ふふ…なぎさかわいい」
見上げると神崎さんがやさしい瞳でぼくを見つめている。ははは、なんだか照れくさいな。
「横向いて?」
「うん」
「あ、よく見える」
「どう?いっぱいある?」
「んー、そうでもないかな」
ふー…幸せすぎだよ。
「はい、取れました」
「ありがとう」
ドタ、ドタ…
「おーい、帰ったよー」
「帰りましたー」
あ、ふたりとも帰ってきた。
それからすぐに仲居さんたちもやってきて、お部屋にズラリと美味しそうなご馳走が並べられていく。
焼き牡蠣に牡蠣鍋、鮑の天婦羅に鰻の蒲焼き。なんだかずいぶんと精のつきそうな料理ばかりだなあ…!?
「「「「かんぱーい!」」」」
「うーん、おいしい!」
「味付けいいね」
一通り食べ終わったらお次はお酒の時間。
「これよ、これがまたお酒に合うのよ!」
「はあ~…暖まる!」
夜更けまで四人でおしゃべりを楽しんでいると、遠くの寺から亥の刻(22時頃)を告げる鐘が聞こえてきた。
「あれ…?」
気づくと神崎さんがぼくの肩にもたれてウトウトしている。
「お疲れね、神崎」
「いつも気を張ってるから、こんなときぐらい早めに休ませてあげないと」
「そうだね、よっこいしょっと」
彼女を抱き抱えて隣の部屋に連れていき、布団に寝かせて浴衣の帯を少し緩めてあげる。これで少しは楽になるかな。
「ん…」
ふふ、かわいい寝顔だなあ。
「ねえ、行灯がちょっと暗くない?」
「ほんとだ、油が少ないのかな」
「あんたが入れてよ」
「もう横着者、凛香がしなよ!」
矢田さんがぶつぶつ言ってる。
「あれ、これかな?」
「はやくしなって」
「うるさいなあ、やってるでしょ!」
トポトポ…、ジュジュ~…
ん…?なにこの変な匂い。
たちまち部屋中に立ち込める不思議な香り。あ、あれ、も、もしかしてこの香りは…
「ああっ…!や、矢田さん、行灯になにを入れたの!?」
「こ、これだけど…?」
矢田さんが困った顔をして小瓶をぼくに見せた。
「そ、それ、ヤバいやつだよ…」
「え、どういうこと?」
あ、あ、ぼくら三人とも吸っちゃった…
「ね、ねえ…」
「な、なぎさ…」
は、はい…
「「エッチしよ…?」」
や、やっぱ、そうなるよね…!
こ、今夜、ぼくの身体、もつかな…
アハ、アハハ、アハハ…(苦笑)
つづく