(注意)
この作品は作者の趣味全開、刺激強めです。回が進むと多少グロ描写等も出てきます。そういうのが苦手な方はスルーでよろしくお願いします。
シュシュシュッ…!
ズトトトッッ…!!
「ふう~…どう?こんな感じかな」
「やるじゃない、初めてにしては大したものよ?」
ぼくの名前は潮田渚、戦国大名赤羽家に仕えるごく普通の侍だ。そんなぼくはいま、目の前の女忍者(くノ一)から手裏剣を習っている。
彼女の名前は速水凛香、普段は赤羽家当主カルマの妹、カエデ姫の身の回りのお世話をするお女中なんだけど、裏の顔は凄腕の女忍者だ。
彼女のように赤羽家に仕えるくノ一は総勢約三十人。その元締めを今日からこのぼくが担うことになったわけなんだけど…
「よ、渚」
「なかなかの腕前じゃないか」
「あ、久しぶり」
現れたのは立派な身なりの侍二人、磯貝くんと前原くん。ぼくの幼なじみだ。
「たしか、今日からだよな」
「がんばってるか?応援してるぜ」
「ありがとう、二人とも」
磯貝くんと前原くんは町奉行を務める若手の出世頭。ぼくなんかより数段偉い立場だから、本当なら気軽におしゃべりなんかできる相手じゃない。それなのにわざわざ顔を出してくれるなんて。
もちろんこの二人は身分なんか気にするような人間ではないんだけどね。
「お庭番の総元締か、うらやましいな。超役得じゃねえか」
女好きの前原くんが速水さんをチラチラ気にしている。
「よかったな、お母さんもさぞかし喜んでいるだろう?」
対照的に真面目な磯貝くんはいつも笑顔が爽やかだ。
何も知らない母はもちろん大喜びしている。お庭番と聞いて、お城の庭仕事の責任者だと勘違いしているみたいだけど、息子が役職をもらえただけで御の字だから、まあそれでいいのかなと思う。
実はぼくの家、つい最近までお城のそばに大きな屋敷を構えていた名家だった。父親が勘定奉行を務めていた三年前までは。
ある日家に戻ると、母親が血相を変えて取り乱し、ぼくにこう言った。「お父様が横領を疑われて、お城で自害した」と。
結局横領は濡れ衣だったのだけど、先代城主はお城を血で汚したとして自害した父を許さなかった。潮田家はお取り潰しこそ免れたものの、屋敷を取り上げられて、食い扶持を失くしてしまった。
母親とぼくはしばらく苦しい生活をしたわけだけど、幸いその一年後に代替わりでカルマ様が新城主となってから、すぐにぼくは登城を許され仕事をもらえるようになった。
そのカルマ様のことだけど、以前は周囲から傾き者だのなんだのと変人呼ばわりされていたのに、代替わりしてからはまるで人が変わったように精力的に改革に取り組み、今では逆に名領主と呼ばれるようになっている。
そんな彼も、以前は身分を隠して城下の烏間先生の道場に通っていた。そこでぼくと知り合いになって二人で遊ぶようになった。当時一度だけお城に招待してもらい、妹のカエデ姫を紹介してもらったことがある。
月日は流れ、彼は殿様と呼ばれる立場となり、先日告げられたのがこのよくわからない人事ってわけ。正直、なんでこのぼくがくノ一のまとめ役なのか、いまだに理解できないでいる。
「そろそろ仕事に戻るぞ、前原」
「え、もう帰んのか、ちぇ、目の前にたくさん美女がいるってのになぁ」
「またいつでも寄ってよ、二人とも」
「おう、今度は昼飯でも食おうな。もちろんちゃんねーも入れて」
「こら、前原」
「「じゃあなー」」
二人を見送っていると、待ちかねたようにくノ一のリーダー格のひとり、矢田桃花さんがぼくに駆け寄ってきた。
「は~…やっと行ってくれた」
「ん…?なんのこと?」
きけば矢田さん、前原くんによく町でナンパされて困っているらしい。世間は狭いなあ。
「それよりなぎさ、そろそろ剣術の練習しよ?」
「は…?なにそれ聞いてないんだけど」
「凛香ぁ、渚は手裏剣上手みたいだし、もう練習しなくていいよ」
「は?なんでそんなことあんたに」
「ま、まあまあ…」
「ね、なぎさ、いいでしょ?」
「ちょっと!剣術ぐらい私が教えられるし、あんたがお得意なのは口だけでしょ!?」
「はあっ!?言ってくれるじゃない凛香!」
「だ、だめだよ、ケンカしちゃ…」
「渚は…」
「なぎさは…」
「「黙ってて!!」」
「はい…」
そんな感じでわいわい騒いでいると、おとなしそうなくノ一の一人がぼくに近寄り、にっこりと笑った。
「元締、イリーナ様がお呼びです」
「はい、今行きます…って、あれ?き、君はもしかして、しおりちゃん!?」
そこにいたのは、まだぼくが幼かったころに近所でよくいっしょに遊んだ女の子だった。
名前は間宮しおり。おとなしくてやさしい女の子だ。
「久しぶりね渚。あのとき以来かな」
「しおりちゃんは元気にしてたの?」
「うん、まだくノ一は見習いだけどね」
「え、いつから?」
「まだ三ヶ月かな、やっと慣れてきたくらい」
「へえー、じゃあぼくの先輩だね」
「えへへ」
二人で庭を歩いてイリーナさんのいる母屋へと向かう。
「でも渚、成長したよね。ほんとカッコよくなった」
「そんなことないよ、相変わらずひ弱だし背は低いままだし、何も変わってない」
「ふふ、くノ一のみんなからモテモテのくせに」
「…え?そ、そんなことないよ」
「みんな言ってるよ、あの乱暴で嫌われ者の鷹岡を追い出してくれて、胸がスカッとしたって」
「あー…」
またその話か、あれはほんとまぐれだったんだ。
それは今年の春、年一回のお城の武術大会でぼくはなぜか武術師範の烏間先生に指名されて、侍大将の鷹岡明と闘うはめになってしまった。
あのときの鷹岡は、ぼくを見くびってたから隙だらけだった。身のこなしが大きすぎて、たまたまぼくに背中に回り込まれただけだ。
あんまり悔しかったのか鷹岡は怒ってお城を飛び出して行方知れずになってしまったし、今考えるとなんだか後味の悪い出来事だったとしかぼくには言いようがない。
「いらっしゃい渚、待ってたわ」
「イリーナさん、おじゃまします」
「じゃあ、わたしはこれで」
しおりちゃんは振り向いてみんなのところに戻って行った。玄関にはイリーナさんの荷物が山積みになっている。
「明日ですよね、本当にお疲れ様でした」
「ええ、あんたに託せてわたしも安心だわ」
「ほんとにぼくなんかで務まるんでしょうか…」
「ふふ、なに言ってんのいまさら」
「そうですよね、イリーナさんはもう帰ってしまうのに…」
「まあ上がって、いろいろ話したいことがあるの。紅茶でいい?」
「はい」
畳の上に豪華な絨毯、その上に椅子とテーブルが置いてある。ぼくが一人がけのソファーに腰かけると、すぐに彼女がお茶の用意をしてきた。
イリーナさんは、くノ一の指導のために一年間だけ招聘された外国人だ。
「母国に帰ったら、なにかされる予定があるんですか?」
ぼくは挨拶がてら、軽い話題をしたつもりだった。
「そのことなんだけど、渚はペドナってわかる?」
「いや、初耳です。なんですかそれ?」
「媚薬よ」
「媚薬って、惚れ薬の?」
「惚れ薬なんて生やさしいもんじゃないわ、超強力な催淫薬ね」
「それが…なにか?」
「上流階級で蔓延しているの、なんとかしないとこのままだとわたしの国が亡んでしまう」
「そんなに…?」
「とても高価なものでね、それで大儲けしてる闇の商人たちがいる。他人の貞操を勝手に操ってね」
「……」
「これは警告よ、この国も狙われてる。いま桃花に調べさせてるけど、どうやら手引きしてる連中がいるようなの。はやく手を打たないととんでもないことになるわ」
「ほ、ほんとですか…?」
「わたしが一年間手塩にかけて育てたあの子達をあんたに預ける、その意味はわかるかしら」
「は、はあ…」
「教えられるかぎりのことは伝えた。優秀よ、特にリーダーの三人は」
三人というのは速水さんに矢田さんにもうひとり、神崎有希子さんのことだ。
「凛香の戦闘能力は総合力で一番、あらゆる場面で頼りになる。桃花は剣術と交渉術が得意で、普段は城下で情報収集をしているの。あの子は使えるわ」
「それと有希子、頭脳明晰で状況判断がピカ一。隠密行動の確かさで右に出る者はいない」
「すごいですね」
「あなたがあの子達をどう扱うかにかかってる。生かすも殺すもあなた次第」
「ぼくにそんな大役を…」
「あんた以外には不可能なのよ」
「そんなことないでしょ」
「鷹岡を倒したのは偶然じゃない、必然よ。カラスマも認めてるの。あなたにはとびきり高度な暗殺の才能があるってね」
「あ、暗殺の才能…?」
烏間先生がそんなふうにぼくを…
今までそんなの考えたこともなかった…
「近いうちにあんたはくノ一たちをこの媚薬戦争に巻き込むことになる。上に立つ者として、時には非情さも必要、死を命令することも、ね…」
「ぼくが選ばれたのは、それが理由ですか?」
「そうね、暗殺の才能、やさしさと非情さ、そしてアレよ」
「アレって、なんですか?」
「あそこがとても立派ってこと」
「はあっ…!?」
「見せてもらったわ。お風呂をのぞいて」
「はああっ…!?!?」
「それだけいいものぶら下げてんだから、あの子たちが媚薬でおかしくなっても大丈夫ね」
「な、なにが大丈夫なんですか…?」
「ペドナを吸引すると、女は猛烈にセックスしたくなるの。それも尋常じゃないほどペニスを欲するようになる。もしそれがかなわなければ、10分以内に狂い死ぬとも言われているわ」
「は、はあ…」
「もしそれを敵に利用されたらどうなると思う?」
「そ、それは困りますね…自白に使われたりとか」
「そうね、最強のくノ一がやつらの思い通りになってしまう。だからあの子たちがもし敵にペドナを吸引させられるようなことがあったら、すぐに取り返してあんたがじっくりと犯すの、彼女らをね。それしか救う道はない」
「えええええっ…!?!?」
「ペドナ吸引による強い欲情は、一度の性交だけで収まるから安心して。ただしあんたに対する好意は収まらないだろうけどね」
「…そ、それはどういうことですか?」
「一度最高のエッチを味わった女が、それで済むと思う?またしたくなるのは当然よ」
「…は、はあ」
ぼ、ぼくが、あの子たちと、エッチ…?
三人の並み外れたきれいな顔立ち、レオタードに包まれた躍動する若い肢体、近くにいるだけで香る甘い女の子の匂い…思い出しただけで頭がぼーっとしてくる。
「そうだ、いい忘れたけど必ず子宮のなかに確実に射精するのよ、本気で着床させる気でしないと効果がないからね?」
「…そ、それはマズいでしょ!さすがに」
「ペドナには避妊効果があるから、間違っても赤ちゃんができたりはしないわ。ま、それだから上流階級で広がってるんだけどね。…あれ、顔が真っ赤よ渚」
「え、いや、その…」
「それにあんた、アソコが凄いことになってるんだけど…」
「あっ、し、しまった…!」
───翌日の夕方。
「あーあ、行っちゃった」
駕籠の小窓からイリーナさんが手を振る姿を、ぼくは恨めし気な顔で見送っていた。
「ふふ、渚もさびしい?」
矢田さんが目尻を拭きながらぼくに笑いかける。
「うーん、これから大変だなって。責任重大だし」
「さっそくだけど、気になることがあって」
「なんだい?」
「例のペドナの件、密売しようとしてる連中の正体がわかったの」
「え…!?も、もう?」
「うん、それはね…」
彼女が言うには、元々はお城に仕えていた侍で、素行を咎められてクビになり、浪人から海賊化した奴ららしい。なかでも特に凶悪なグループがこの件に関わっているという。
「アジトはわかる?」
速水さんの目が光った。
「大体は。まずは潜入してみない?」
「そうね、神崎と三人で手分けして」
「二人一組で、新人の勉強も兼ねてどうかな」
「わかった」
この二人、仲が良くないのかと思いきやこういうときは息が合うんだな、驚いた。すぐにメンバーが決まり、他のくノ一にも指示が飛ぶ。
「なぎさー、わたし速水さんとコンビになっちゃった。緊張するなあ…」
しおりちゃんがため息をついた。ぼくは矢田さんとコンビか。まあ、とにかくぼくは新人なんだから、先輩方の足を引っ張らないようがんばらないと…。
つづく