ただ今10時ぴったり可愛い後輩にキスをされました 作:猫又二丁目。
現在午後23時57分
「ねぇ渚……?」
「ん?」
ご飯とお風呂、歯磨きなどをすませてから、栞菜とベッドに入って寝ようとしていた時に栞菜に話しかけられた。
「もし...渚が私より矢杉さんのこと好きになった時、私どうすればいい...?」
震える声でポツリとそう零す栞菜の声は酷く不安そうで、でもそんなに不安にさせたのは優柔不断な私で...。
「ならない。信じてって言っても、あんな最低な事言った手前、そんな簡単に信じられないことはわかってる。でも...信じて。私は今、栞菜しか見てないわ。」
伝わって欲しい。その一心で栞菜の背中を撫でながらゆっくりと言った。
「...っうん。」
栞菜はそう言うと、震える身体で私に縋り付くように抱き着いた。
今の栞菜はあの時の、綾乃さんに傷つけられた私によく似ている。辛さは1番知ってるはずなのに、そんなに簡単に安心できないのも知っているはずなのに。また、私はこの子を傷つけてしまった。
「好きよ栞菜...本当に好きだから...。」
その夜は、栞菜と同じように栞菜を強く抱き締めて眠った。
現在午前6時24分
「おはよ...」
のそのそと寝惚けた栞菜がリビングに向かってきた。
「おはよう。よく眠れた?」
「ん...。いい匂い...。」
目をこしこしと擦りながらぼーっと私を見る。
可愛い...本当に可愛い。寝惚けた時の栞菜ってほんとに可愛い。
にやぁっとしながら栞菜を見ていると段々目が覚めてきたようで、栞菜の目がシャッキリしてくる。
「...おはよう、目が覚めたみたいね?朝ごはんもう少しでできるから食べなさい。」
「あ、ありがとう。今日仕事行くの...?」
栞菜は物凄く心配そうな顔でそんなことを聞く。
「行くわよ。栞菜のおかげで熱も引いたし。いい加減行かないと会社の方でもフォローめんどくさいでしょうし。」
「...んぅ...確かに渚がいないとしんどいけど...でも休んだ方が...。」
「ほら、食べましょう。」
何か言われる前にテーブルに2人分の朝食を並べた。
「...うん。美味しそう...へへ、ありがとー!」
可愛くてつい、ふ、と笑みがこぼれる。
「いただきます。」
「いただきまーす。」
現在午前8時50分
「佐藤さん、これお願い出来る?病み上がりなのにごめんね〜っ!?」
課長が私のデスクに書類とデータを持ってきた。
「大丈夫です。休ませていただいた分しっかり取り戻しますので。」
「全然よぉ...体調気を付けてね?」
「はい、ご心配ありがとうございます。」
出社してからずっとパソコンとにらめっこをしている。正直病み上がりってこともあってしんどい...。
「...はぁ、とりあえずここを括って...。」
混雑した内容を一心不乱に文字にしてまとめる。第一この仕事は営業部の仕事じゃないのか。今は多忙期だからまとめるのはお前らでしてくれってことかしら。
...こっちだって色々大変なのよ。
仕事が多くて段々とイライラしてくる。
「佐藤先輩これもらいますね。」
そう言って後ろを通った綾乃さんが、ずしりと並んだ書類とメモをさらっと取っていった。
「えっ!?ちょ...。」
...綾乃さんなりの気遣いなんだろうか。あの人も私が体調崩した時とても過保護で心配性だったから...。
というか本当に仕事できるわね。教育係なんて恐れ多いわ。
心の中でありがとうございますと言ってからパソコンに向き直る。
午後7時48分
「っっ...っはぁ...しんど...。」
さすがにブルーライトカットの眼鏡を付けていても普通に目は疲れる。きつかった。
「お疲れ様渚ぁ。私も今終わったぞ。」
凛子が後ろからだらりともたれてきた。
「そっちもお疲れ様、私は栞菜手伝ってくるわ。」
デスクから立ち、栞菜の方へ向かう。
凛子が抱き着いて来た時麻木先輩がムッとした顔をしてた気がしたので避難も兼ねて...。
「かん...一条、手伝える事ある?」
栞菜の肩に軽く触れた。
「え、あ...大丈夫で...。」
「私もお手伝いします。一条先輩佐藤先輩が休んでる時も詰めてたので...。」
八神が小走りでこちらにやってきた。
...え?詰めてたって...。
「ちょっと八神さん...。」
「...迷惑かけたわね...これ、貰って行くわ。」
私が休んでる間仕事面でも色々してくれてた...。
色々しんどかったはずなのに看病までしてくれて、情けないわね...。
自分に対する怒りと情けなさで軽く泣きそうになる。恋人に迷惑かけて、いっそう頑張らないと...。
「なぎ、無理せんで。」
耳元でそう呟かれた。
「...っ!?」
バッと振り返ると心配そうに私を見つめる綾乃さんがいた。
「一条さんは無理して欲しいわけじゃないやろ。
どうせまた申し訳ないとか情けないとか思ってんねやろ。熱出たんも渚が仕事詰めすぎるからやろ?心配させんといて。...休んでる時にあかんって分かってるのに...家行こうかと思った。」
「...っ、でも後輩に」
「後輩でも頼って欲しい時はあるやろ。しかも...恋人やで。」
「...でも」
「でもじゃない。みんなで手分けしたらすぐ終わるから。ほら、さっき取ったぶんも半分貸して。」
ぽん、と頭を軽く撫でてから綾乃さんはデスクに戻って行った。
「あとでお礼言わないと...。」
そう呟いて、またパソコンに向き合った。
現在午後9時32分
「あの、ありがとうございました。」
栞菜が八神と綾乃さん、私に頭を下げた。もう定時から1時間近く経っており、オフィスには私達だけしかいない。
「大丈夫です...教育係してくれた時の恩はこれくらいじゃ返せませんから...。」
「ええよ、んじゃ私帰るわ。」
「こちらこそ休んでる時フォローしてくれてありがとう。ちょっとごめんなさいね。」
栞菜達に断りをいれてから、帰ろうとする綾乃さんを引き止め廊下に誘導する。
「なにー?そんなに必死で引き止めて。私のものになってくれるん?」
ニヤニヤとしながら私を見つめる。
「あの、ほんとにありがとうございました。自分のできる最大範囲で仕事することにします。助かりました。」
「...ん、なぎはさぁ...こん詰めすぎ。1人でなんでも出来るって自分のこと過大評価しすぎ。なぎは私の事嫌いかもせえへんけどもっと頼って?」
そう言って綾乃さんは私の両頬に両手で軽く触れた。
「綾乃さ...」
「好きやよ...ほんまに、なぎの事が好き。諦められへん。あの時、あんなやつじゃなくてなぎの事引き止めたら良かった。傷付けてごめん。泣かせてごめん。...っ...好き...好きなんよ...なぎ...っ。」
ぼたぼたと大粒の涙流して私を見つめる。綾乃さん、私の事になると本当に余裕無くすようになったなぁ...。さすがにこの涙には心が揺さぶられた。
「...ごめんなさい、私には栞菜しか...栞菜じゃないと...駄目なんです。綾乃さんはもう私の好きな人じゃありません...。」
「...ふっ...はは...あはは...そんな事言うと思ってた...」
綾乃さんはそう呟くと、壁にもたれ掛かり、ゆっくりと座り込み顔を俯かせた。
「...。」
「さすがにもう無理やなー...身もたへんわ...。」
「諦めて貰えると助かります...。」
「それはっ...無理...ごめんなぁ...好きやから...身がすり減っても諦められへん...ごめん...。」
あの綾乃さんが裏返った声で嗚咽を漏らした。胸がギュッと締め付けられた。
「...分かりました...でもこれからも私は栞菜しか愛しません。栞菜が拒んでも、諦められないと思います...。」
「うん...。」
「夜は冷えるので...気をつけて帰ってくださいね。」
「ただいま、2人とも帰らないの?」
オフィスに戻り、2人に声をかける。
「おかえりなさい...あの、私はここで失礼します。」
いそいそと八神がオフィスから出ていった。
必然的に2人きりになり、沈黙が続く。
「...あの、栞菜。」
「何話してたの...。」
「栞菜が好きだから、綾乃さんのことは絶対に好きにならないって言ってきた...。心配かけてごめん。」
「...」
「不安に...なったわよね?あの人も私が病み上がりなのに仕事量多いから心配してただけなのよ。...あの人も心配性だから私の事気にかけて...」
「うるさい...っ」
「え...」
「あの人の話しないで...。」
栞菜は俯いたまま震えた声でそう言う。鼻も啜ってるから多分泣いてる。
「...ごめんなさい...栞菜、あの、休んでる時いっぱい助けてくれてありがとう。仕事とかも任せちゃって...それにうちに来て看病してくれたり...助かりました...。」
「...。」
だいぶ不機嫌...そりゃ自分の恋人が元カノと2人で話してたら不安よねー。
「栞菜、ごめんなさい...。」
「私は...渚以外の人をこんなに好きになったことない。好きな人とかは...いたけど、でもこんなに苦しくなったりした事ない。」
「うん...。」
「こんなに好きなのは私だけなのかなぁ...」
え、え?なんでそうなるの、私好きってすごく言ったと思うのだけれど。
「...そっち行っても良い?」
「...。」
コクリと頷いたのでゆっくりと栞菜のデスクに向かう。
「...ぎゅってしていい?」
「...っうん。」
あーーー中学生とかのピュアな恋みたいじゃない...。恥ずかしい...。
「私は...今までこんなに好きになったのは栞菜とあの人だけなのよ。」
「...っばかしねっ!」
「...し!?...え!?」
突然の暴言に狼狽えた。栞菜からそんな言葉出るとは思わなかった...。
「...。」
「あー、えと、正直今までまともな恋と言うかもう恋ですらなかったんだけど。学生からずっと恋に対して荒んでて、それで...まともな恋っていうのを覚えてなかったのよね。」
「...ん。」
「それで...栞菜にあの時キスされて、普通だったらなんとも思わないはずが、栞菜に対してだけなんかこう、んー、いつもと違ったの...よね。」
「...どういうこと...?」
「...興味が...沸いた?って言うのかしら。付き合ってって言われたら普通断った。あの時はい、なんて言うつもり無かったの。でも気付いたらはいって言ってた。」
「う...ん?」
「ごめんなさい、私でもよく分からないけど、今は少し分かるかも。私はあなたの真っ直ぐな目と恋心に惹かれたんだと思う。多分ね?.....あー今めっちゃ恥ずかしいこと言うてるかもせえへん...。」
「ふふ、すごい恥ずかしいこと言ってる。」
「...あはは...栞菜...あのねー、」
「んー?」
「...好きよ?」
顔を上げて目を見つめて言ってみるけど、恥ずかしくてニヤケてしまう。
「...っ...ふっ...ぅ...私も...好き...っ。」
八の字眉毛であまりにも可愛く泣くものだから笑いが込み上げた。
「私と付き合うとめんどくさいでしょう?傷付けるし、すぐに押し倒しちゃう。」
「凄くめんどくさい...。」
栞菜のストレートな言葉が刺さる。
「でも私、栞菜の事好きなのよ。...私面倒臭いけど栞菜にはもう少し付き合って欲しい。」
「...私も好きだけど...」
もご、と何か不満そうな顔をする。まさか振られちゃうのかしら...。
「だけど...?」
「もう少しでいいの...ずっとじゃないの...?」
きゅる、と目を潤まして困り眉でそんなこと言われたら心臓潰れる。
「うわ...可愛い...ずる...。」
「え?」
「あーもうずっと。嫌って言っても離せないわよ。だめ、もう外出したくなくなってきた。」
「あはは...今家の外だけど...でも私も渚に離されたくない...です。」
恥ずかしくなったのか目を泳がせてもごもごと言う。私の彼女可愛すぎる。
「...栞菜、私とずっと一緒にいて下さい。」
「...いまさらなの?ずっと前からそのつもりだよ?」
どちらがいうでもなく、私達はキスをした。
カチリ
ただいま10時ぴったり可愛い後輩、いや、可愛い彼女とキスをしました。
この後もその後や、2人以外の目線、凛子の話など書いていこうかと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。なろうの方でお読みただいていた方々、なろうの方で完結できなくて申し訳ございません。本当に皆さんのおかげでここまでかけました。ありがとうございます。バリバリ素人の私の小説に応援をして下さった方々には本当に感謝以外ありません。大好きすぎてつらいです。
ガチレズ教師の方はなろうにて連載を続けていきますので、良かったらそちらもよろしくお願いします。
途中、書いていた所を半分ぐらい消して書き直したんですよね...なんかバトル漫画みたいになっちゃって草ってなりました...笑
まだ出演回数少ないけど出したいキャラが多いので、その後とかは気長に書いていこうと思います。