天明の飢饉からだいぶ経ったある日。
海岸を埋め尽くすように防御用対戦車障害物
『チェコの針鼠』が設置されてました。
八面体の軸による3本のL型鋼が無造作に置かれてる
鬼ヶ島は異様な雰囲気を醸し出しております。
「あれは……」
「どうした青おに」
「奴らだ! すぐ酋長に知らせろ!!」
血に飢えた亡者の群れが平泳ぎで
鬼ヶ島へ迫っていました。
多数のピカティニー・レールを標準装備できる
ガリルARを構えた鬼は途切れ、途切れに
引き金を海へ絞りました。
かつて椰子がそびえる美しい極楽浄土は
対
実は飢饉初期頃、安穏に暮らしていた鬼たちの前に
本土から流れ着いた人間の成り果て、飢人が
襲いかかりました。酒を醸し、蘭の花を植えたりする
鬼の妻や娘。琴を弾き踊り詩を歌う生活していた
鬼たちは為す術なく蹂躙されていきます。
子どもの足首をつかみ、縦に引き裂かれました。
鬼は鎖骨から胸骨を通って腹部まで、細く赤い線を
刀で描かれました。体の手を突っ込まれて、かきまされながら内臓、肺と心臓、下の横隔膜、胃、肝臓を
取り出していきます。それを我先にがぶりと
浪人たちは噛みついていました。
ついに島の隅まで追いやられた鬼たちは
死を覚悟しましたが──
謎の赤毛の幼女がカバネの群れに
立ちはだかりました。幼女は中心に
指入れ穴がある十字に刃が伸びた手裏剣似の
武器〝
回転させつつ、襲い来るカバネの顔面を
輪切りにしていきます。
彼女は鶴のような舞で胸骨が浮き出た
よだれを垂らす狂人たちの攻撃を避けていきました。
眼球が前へ突き出し両ほほが痩けた
カバネの顔に、鬼たちは震えるしかありません。
幼女もついに片手と脚を掴まれ万事休すかと
思われました。しかし、
「ほづみ、大回転」それはまさに電光石火でした。
性別不詳のように浪人が一瞬にしてカバネ達を
蜂の巣にして、舞い散る血飛沫と脳漿が
花道を飾っていきました。
浪人は二挺の銀色に輝く
髑髏と海賊が愛用してた2本の片手剣の
ワンポイントを埋め込んだ象牙製のグリップが
特徴的な大型自動拳銃を脇の下に戻して
「ハイ~みんな集合」と呼びかけました。
鬼たちは「感謝いたします」と手を合わせて
拝んでいきます。
身体を真っ赤に染めた幼女は「このままだと
ここ、危ないから要塞にしないとね」鬼たちの言葉を
無視して話を進めていきました。
そこから問答無用で二人による地獄の〝ぶーときゃんぷ〟が始まりました。
「クソッ……」流石に訓練の成果で
第75レンジャー連隊や都市テロ対策特殊部隊
と同格になったとはいえ、流石に丈夫な牙をもつ
犬や欲深い猿、さらに『桃』が描かれた
はちまき巻く餓えた目を血走らせる刀をふりまわす
青年には勝てませんでした。一人と二匹は仲間の
雉を喰い殺し、次なる獲物を求めて鬼ヶ島へ
侵攻してきましたのです。
官給品のSIG P226の弾はのこり一発。自らの
頭を撃ち抜こうかと考えた……そのとき奇跡が
起きました。
ドオンッ 海岸に立て続けに
吹き飛びました。鬼は爆風で倒れ込んでしまいます。
上空を見上げると、轟音ともに白煙の中から
UH-60JA 多用途ヘリコプターが三機ほど
ローター音を響かせながら浮かんでました。
「天空を飛ぶ函館……うわさの〝御伽衆〟か」
上からスカートを靡かせて大柄な誰か。
鍛え上げた筋肉に、岩石を組み上げて
人間の形にしたかのような、厳つい存在感を放つ─
バレリーナ姿の二代目〝桃太郎〟ジョニーが
降り立ちました。
「だれだぁ?」青年が振り向くより先に
背中からSW629
チアッパライノ60DSで犬と猿の頭部に
弾丸を叩きこみました。
青年は刀で斬りかかろうとしますが、ジョニーは
正拳突きをくらわせます。青年ははちまきごと
頭蓋骨片をぶちまけて一瞬だけ浮かび
砂浜に倒れました。
腰をぬかす鬼に、ジョニーは「大丈夫か?」と
太い腕を差し出しました。
森の奥から仲間たちもかけつけ
このおとぎ世界に漂流した自衛隊、御伽衆と
対面しました。
ジョニーは鬼たちに幼い少女をだきあげる
白い雪のような肌をした女性の写真をみせ
「捜してんだ。オレの妻と娘……
もし何か知っていれば教えてほしい」と
尋ねました。
鬼たちは「我々にこの世界で生きていく術を
教えてくれた母娘だ。確か本土でやるべきことある
と言って、海を渡った」と答えます。
ジョニーを含む御伽衆は物資をいくら礼として
置き、またヘリで飛び立っていきました。
鬼たちは感謝の念を抱きながらひたすら
拝み続けましたとさ。
「朗報が入ったのか?」
「なぜ、わかる」ジョニーは皮肉を言ってくる
この部隊の指揮官を凝視しました。
若く整った顔する男性自衛官、島和武3等陸尉。
ジョニーとは同じ相手を愛する心の戦友でした。
「本土へ戻るぞ。やはりタケルとあしゅらは
どこかを目指してんだ」
「竜宮城で補給するか。ここからな、そこが近い」
「わずかな可能性でも……」
「賭けてみて損はない」
二人は愛する者が時おり呟く言葉を
口に出して、笑いあい竜宮城を目指して
ヘリを進ませました。
ジョニーがあまり浮いてないのが怖いところですね。