初めてコンプレックス 作:イーヴィル・ヒート
人差し指がショーツへもぐりこむ。普段は踏み荒らされることのない場所への侵入。先生の吐息が細かく、絶え絶えに頭上から降ってくる。興奮が空中で混ざり合う。
内側からストッキングと一緒にショーツを少しずつ落としていく。衣擦れが鼓膜をつつく。やがてショーツが隠していた……先生の、先生の……「おまんこ」が
膝辺りで手を止めて、その光景に見惚れてしまう。
「見える? 私の……おまんこ」
返事は返せない。それどころではなかった。先生のそれを細部に至るまで目に焼き付けていたから。濡れて、つやつやと陰毛が何本かまとまっている。その原因は今も彼女の内側からとめどなく、溢れていた。
また一滴、ゆっくりと伸びて、伸びて……手の甲に落ちた。それを合図に先生にむさぼりつく。
「んっ! いきなり……。息、くすぐったい」
先生が身をよじる。鼻先が小さなでっぱりにこすれた。ショーツ越しよりも濃い、体臭が甘いようで、酸っぱいようで……僕の判断能力をカリカリと頭の内側から優しく削っていく。
朦朧としていく意識、命じられるまでもなく舌を伸ばし続ける。溝をなぞって、なぞって……。入れて、舌伝いに露を飲み込んで……。そうするたびに先生の一部が僕に溶け込んでいくようで、ずっとそうしていたいと心から思った。
顔を引き離される。上向きにされて目と目が合う。先生の瞳が細く、肩を緩やかに上下させながら。何かにギリギリで踏みとどまるように。
「……ダメ。まだ舐めてなんて言ってない」
「ごめっ……ごめんなさい」
きつく、冷たい声色。逆鱗に触れてしまったかと、己の行動を顧みる暇もなく、肩を強く押された。
「そんなことされたら……我慢できなくなっちゃうでしょ」
座っていた身体がベッドに倒れた。両肩に体重をかけられて、立ち上がることはできそうにない。目の前の先生がぺろりと舌舐めずり。この明るさでもわかるぐらいに頬が紅く染まっていた。
「清志郎
唾を飲み込んだ直後、強引に唇をこじ開けられた。歯茎をなぞられて自分の深部へのカギを明け渡す。隅から隅までされるがまま。一方的に絡められる。
太い血管が走る場所を支配される危機感が、快感へと転じていく。酸素が足りなくて意識がふわふわと浮くようで……それも気持ちがよくて……。
お互いの身体が一つになって、どれだけの時間が流れたのか分からない。やがて名残惜しそうにゆっくりと、離れていく。舌先どうしを繋ぐ体液の糸が激しさを物語っていた。
お互いの荒い呼吸が混ざり合う。近づきすぎてわからなくなっていた先生の顔。その輪郭が再び明らかになっていく。
「……今度は、私が君のこと触るね」
ワイシャツが首元から順番にテンポよく外されていく。朦朧とした意識が抵抗を許さない。
肌着の下から手を入れられる。壊れ物を触るように、両手でさわさわ、さわさわと。こそばゆい。へそを両方の親指でなぞって、五指で上へ上へと僕を侵食する。神経がゾクゾクとざわめいて身体がこわばる。
人差し指が乳首をひっかけた。揺れていた神経にビリビリとしびれが来た。色っぽい声が自分から出たのが信じられなかった。
お姉さんの口が弧を描く。なんだか
「乳首……立ってる。それに気持ちよさそう。君はやらしいね」
「違っ……」
「違わないでしょ?」
先生は人差し指の爪先に、僕の乳首を何度も、何度もひっかけて、カリカリカリカリ……。甘く、身体をしびれさせる電流が連続で流れていく。僕の自由を奪っていく。
今までの人生で出したこともない甘い声が濁流のように口から出ていく。
「ね? 女の子みたいでしょ」
先生の言葉が、頭の中でぐるぐるとリフレインする。
「このまま、ずーといじめてあげるのも……とても楽しそう」
先生が何か言っている。水の中で聞いているようにぼやけて要点をとらえられない。けどこれ以上の深みに行ったら──
「やめて、ください。こんなの……おかしくなる」
「おかしくなるの? 私たちもうすでにおかしいでしょ?」
「そうじゃなくてぇ……」
「なに? 清志郎
親指と薬指が乳首をつねる。クリクリ……クリクリとこねくり回す。恥ずかしくて、気持ちがよくて……急かす「ほら……ほらぁ……」と先生の声がした。
直感だけで感じている、自分の精神を現すグラス。中の水が表面張力でギリギリに踏みとどまっている。中身は漏れたら二度と戻れないのがわかる。自分の声で、感じている嬌声で……ゆらゆらと揺れている。
「素直にならないと……」
手が離された。きつく掴まれていた乳首がジンジンと先生の残像を残した。けれど、それは刻一刻と薄れていく。
「え? ……えぇっ」
意図しない戸惑いの声。自分の行動が理解できなくて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。呼吸は細かく跳ねたまま戻ってこれない。
「素直になれないんじゃ……ここで終わりかな。残念だけど」
ズボンの上から太ももがなぞられる。羽箒みたいなフェザータッチ。だんだんと痛いぐらいに勃起した肉棒へ迫っていく。
「これから、ずっと我慢してた、こ~こ。どうしてあげようか考えてたのに」
山頂にできていた染み。そこを先生がなぞるとクチュッと音を立てて、人差し指と繋がった。先生はそれを
自分のグラスが砕けて、中身が溢れた。
「下ぁ……下をっ! いじってほしいです」
身をよじって、先生の真下にあるイチモツをアピールする。先生の目線が前髪に遮られた。ちらりとピンクの舌がわずかに見えた。
「下じゃわからないなぁ。ベロのこと?」
口に人差し指を突っ込まれる。舌を何度も指の腹でなぞる。時折、爪が鋭く刺激する。
「違う……っんん。ちんこぉ! ちんこですぅ!」
「ふーん、おちんちんをどうしてほしいのかな?」
「しごいて! しごいて欲しいです……!」
「そんな普通のおねだりじゃあ、お預けかな」
口から指が引き抜かれる。唾液にまみれた手が、僕の頬を撫でた。目と目が合って先生の淫靡で恍惚とした表情が視界を奪う。
「もっと、私が続々とするような言葉……言えるよね?」
燃えるような体温が、ハッハッと犬みたいな呼吸が、頭に残る快楽の残像が、最後の一押しをする。
僕はもう戻れない。
「先生のすべすべの指でっ……、僕のぉ、焦らしに焦らされて、びくびくして、我慢汁まみれのおちんちん……ぐしゃぐしゃにぃ……してください!」
二人きりの部屋に僕の言葉が響く。極上のオーケストラのコンサートみたいに先生は聞き入って「よくできました」と言った。
乱雑にベルトを奪われ、ズボンに手をかけられる。腰を浮かされて、ボクサーパンツごと剥ぎ取られて、反り返った僕の分身が我慢できずに跳ね上がる。
自分でも見たことがないぐらいに反り返っていて、激しく脈打って、鈴口からとろとろと透明な液がしたり落ちて、シーツに染み込んでいく。
先生はそれをじっと、うっとりと宝石を眺めるみたいに眺めて。鼻息を当てて、それから──
「でもごめん、清志郎君。やっぱり私、我慢できなくなっちゃった」
露にしていた先生の下の口。そこから垂直に僕の肉棒に愛液の雨が降った。そして間もなく、ずりゅっと彼女の内側へ吸い込まれる。息をつく間もなく肉棒を完全に収めてしまった。
ひだにくるまれている。ぎゅうぎゅうと締め付けられる。佐渡先生の中に自分が入れてかき分けて、味わったことのない刺激。精神的な興奮が受け止めきれずに、暴発する。これまでしたことのないぐらい、長い、長い射精。ちかちかと意識が今度こそ途切れそうになる。
虚ろな僕の頬に両手を添えられる。目が合わせられる。吐息交じりの先生が「ああん……」とこれまでで一番の甘い声を上げた。
「その表情とってもいいね。もうちょっとこのまま……私がイくまで付き合って」
口がまたこじ開けられる。さっきよりもたやすく、より深く交わる。先生の身体が跳ねて、僕の体から更なる快楽を暴力的にむさぼっていく。
「奥ぅ、奥まで届くのねぇ。
耳元で囁かれる。純白の自意識に喜びが強烈に響いていく。
「気持ちいいところに集中して。二回目は一緒に、最高に気持ちイイ……絶頂。迎えちゃいましょう」
肉壺の最奥に押し込まれたままで、ぐりぐりと先端を内部に押し付けるような腰使い。刺激が変わってさっき味わった快楽がまた昇ってくる。
「ダメ、我慢して。我慢してぇ……。最後に思いっきりィ……がイイんだから」
食いしばる歯がガチガチと震える。背骨が水に上がった魚みたいにびくびくと跳ねる。追い打ちをかけるようにまた、お姉さんの爪が乳首にかかる。口の力が抜けて、我慢していた声が漏れる。
「こんなに乳首で感じる子見たことない。君は、逸材だね」
恥じらいが掻き立てられて、睾丸の奥が押し出されるようにじくじくと疼いてくる。乳首からのしびれがどんどん大きくなっていって。助けを求めるように先生の身体に縋り付く。
豊かな胸の隙間に顔が埋もれる。蒸れた汗の湿気が顔を包む。
「あら? ああ……」
動きが止まる。顔をうずめたまま、先生の顔を見る。
「そういえば……忘れてたね。期待させていた……おっぱい。そんなに楽しみだったんだ。そんなに好きなら……このまま──」
「ちがぁ、違ぅ……。先生ぃ……! 先生ぃい……、もうダメっ、……もうぅ」
精一杯の、限界すれすれで絞り出された甘い声。柔らかな肩に爪を立ててしまう。それでも先生は笑っている。
「君はズルいね。今のでイッキにぃ……高ぶっちゃう。もっとも~っと……楽しもうと思っていたのに」
頭をおっぱいに押し付けられる。水中で足をぐっと引かれたときみたいに呼吸を忘れてしまう。
「いいよ。私ももう……限界が近くなっちゃった」
背中にシーツが当たった。仰向きでされるがまま。先生の激しい腰の動きが僕の太ももを強く叩く音。ぐちゅぐちゅとお互いの液が混ざる音。そして先生の喘ぎ声がやけに大きく聞こえて……。
「イけそう……! イキそううぅ! ほら一緒に……!」
お互いを抱き寄せあった。境界線が歪んで、混ざって……
「イッッッックっううううううううううううう」
限界まで塞き止めていた絶頂が、濁流のように押し寄せる。呼吸が飛び飛びで、うまく酸素が取り入れられない。
埋もれていた鼻と口が解放されて、快楽に溶けて、ぼやけた意識のまま先生と目が合った。
紅潮した肌、上下する肩。潤み、蕩けた瞳のまま耳元で囁く。
「また……しましょうね。清志郎君がまた、素直になれるなら」
その言葉に溺れるように、僕はこの世界との接点を断った。