初めてコンプレックス 作:イーヴィル・ヒート
1話・2話まで取ってきた人物名伏字スタイルですが、この度追加キャラが導入された影響で続けることが難しくなったので修正します。
__先生→
__君 →
何卒宜しくお願い致します。
また今回は百合要素を含む回になります。
間接照明が薄暗く、落ち着きをばらまいていく。先生の
今日はソファに座って、目の前のテレビで先生の横で乱れる少年の姿を眺めていた。私も彼のことを知らないわけではない。何度か保健室へ来たこともある。確か、水泳部に所属している生徒だったはずだ。こういうイメージが全くもって無かったからギャップがある。
スピーカーから漏れる彼の嬌声。見ているうちに恥ずかしくなってしまって、誤魔化すために缶酎ハイを煽った。やや人口的な味がする液体は初めて飲んだ時から慣れないままだ。
「あなたのおかげで良く撮れてるわね」
奥のバスルームからショートカットの髪を拭きながら、
「下着……それと服を着てきてください」
「どうせするんだから別にいいでしょう?」
「ムードもひったくれもないことを言わないでください」
ズイっと耳元に詰め寄る先生。肩に触れた毛先がこそばゆくて、身をよじる。けれど白衣の上から抱き着かれて、私の行動を阻害された。
「そんなこと言って……」
彼女の腕が背中から回される。ベルトがするするっと奪われて、ブラウスの下からボタンを外される。私はそれを拒むことは決してない。
白衣とジャケット、ブラウス。学校での私を構成していた鎧がまとめて奪われる。先生と初めて会った時の自分に戻っていく。下着に先生の指を潜り込んでくる。強固に守られている二つの果実。表面を傷つけないようになぞって……
「ほら、やっぱり
確認するようにクリクリと先端を回すように弄る。事実を刻み付けるように「ほら……ほらぁ」と耳元での囁く。背中にツゥーっと撫でられたようだった。ぞくぞくと鳥肌が立っていく。
「興奮しちゃったんだよね。私と清志郎くんとのセックスで」
「……」
「顔、紅くなってる。かわいい」
耳に暖かく湿り気のあるものが侵入してくる。水音が鼓膜を揺らす。自分よりもわずかに高い温度が伝わってくる。聴覚と触覚を同時に犯され、私の理性が溶かされていく。体の力が抜けて行って、ぼんやりと開いたままの瞳にディスプレイで行われている行為が映し出される。
日常にはない、異常性。そこに自分がいるという興奮。それが私の体温を上昇させていく。呼吸が荒く、飛び飛びになる。
「静香、気持ちよさそう……」
先生が真横に座るとクッションが歪む。だらりとしていた私の手が、先生に引かれる。自分の中指が先生の膣にあてがわれた。既にそこはしっとりと濡れている。愛液が指を伝っていく。
「おいていかないで。私も……気持ちよくして」
吐息交じりの懇願に従って中指に力を籠める。抵抗を受けながらも奥へ、奥へ……。先生の押し殺すような喘ぎ声が獣のような画面越しの彼女の声とも混ざる。彼女に囲まれているみたいで、気持ちが高ぶっていく。
「清志郎くんが触れなかったところ、触ってるね」
濁流に流されるままだった少年と比べられる。正直癪に障った。けれど、彼に勝ってるというのは悪い気持ちではない。
いつもよりも多い愛液が奥から溢れて出てくる。先生はこのシチュエーションに興奮しているのだと思った。だから、付き合ってあげることにした。
「……私の方が、
彼女がいらずらを仕掛けた学生のように微笑んだ。私の掌にまで伝った粘液に視線が向いていた。私の太ももの根本を撫でながら先生は言う。
「あら、溢れてきちゃったみたい。彼、そんなにいっぱい出してくれてたのね」
奥歯をかみしめる。さっきまで感じていた優越感があっという間に反転した。自分には絶対にできないこと。自分だけの“先生”が他の人間に取られてしまったかのような不快感。
「久々の男の子とのエッチ。気持ちよかったぁ……ねえ見て」
彼女が画面を刺す。清志郎くんを押し倒して、イチモツを飲み込んだ先生が甘く、蕩けるような喘ぎ声を漏らしている。極上の食事を味わうように、喜びの表情を浮かべている。
先生の跳ねるような声で述べられる感想。それが私のアイデンティティを削り取っていくようで……。足元が崩れ落ちていくような感覚に陥る。
「手、止まってる。貴方の方が上手くできるんじゃなかったの?」
冷たい、見下すような声。それがまた彼との違いを見せつけられるようで……。でもそれを認めたくなくて……。弱弱しくも拒絶する。
「そう……です。私の方があの子よりも……っ」
「だよね。なら……ほら」
彼女の下、さっきまで指を入れていた肉壺をいやらしく、両手の人差し指で広げる。奥まで続く、先生への入り口。音を立てて、糸が引いている。奥から私を誘う香りが鼻孔を突く。
「だったら、私を思いっ切り気持ちよくして」
その言葉を合図にむさぼり着く。入り口から舌を入れて彼女の体液を舐め取っていく。さっきまであった液体を上書きするように自分の唾液を塗り込んでいく。
「ふふっ……それでいいの」
頭をなでられた。逃がさないように太ももが思いっきり閉じられる。先生のぬくもりがいろいろな所から伝わって、香りがより一層強くなって。さっきまでのことを忘れさせてくれる。
けれど、先生はそれを許さない。
「やっぱり、似てるわね。彼と貴方」
そんな風に言われるのは不快だった。先生には自分のことだけを見て欲しかった。舌の動きを激しくする。
ずるっと一気に舌を引き抜く。先生の脚がぴんと張られて、私の背中を追い越した。
「あっああぁッ……イク、イクぅぅぅ!!」
びゅっと奥から来た潮を至近距離で浴びた。顔の全体になすりつけて、マーキングされている。先生の所有物になるという実感を高めていく。
ハアハアとお互いの吐息が混ざる。余韻に浸る先生を眺める。満足気にほほ笑む彼女にホッとする。
流れていた映像は止まっていて、私と先生だけの時間が戻ってくる。
「……私と彼は似てません。一緒にしないで下さいよ」
「そうかしら、私への目線の向け方とか……」
「だから、やめてくださいよ」
露骨に声を強めた。そっぽを向いて、自分の気持ちを大げさに見せた。先生が少し慌てたのがわかっる。ああ、自分が嫌になる。こんなことをしないと彼女を繋ぎとめることができない。もっと彼女を釘付けにできるだけの何かが自分にもあったらいいのにと思う。
画面の向こうの彼のような初々しさはもうないから、とても羨ましい。
「ごめんなさい。
先生が髪に触れる。頬に添えられた掌。しっとりと濡れた自分の顔がさっきまでの嫌悪感を忘れさせてくれる。
「本当ですよ。私だって人間なんですから。今度そんなことをしたら、知りませんからね」
「ありがとう静香。次はあなたの番ね。おねだりして……ご褒美に、思いっきり気持ちよくしてあげる」
自分のスカートに手をかけた。ショーツの上からでもはっきりと分かるぐらいに濡れている。嫉妬によるかつてないぐらいの興奮。その余韻に身をゆだねて……おねだりする。
「私の……焦らされて、ぬちょぬちょに濡れて、温まったおまんこ……いっぱい弄って」
彼女の目と鼻の先に自分の秘所を見せつける。脱いだばかりのショーツを先生の目の前に落とす。
「じゃあ、望みどおりにしてあげる」
▼
自分しかいない労働空間でため息をついた。昨日はやりすぎてしまった。事後処理、人払い、それから自分の嫉妬を片付けるために致した行為。
すべてに時間を割きすぎておかげで今日は寝不足だ。朝あった先生は別段問題がないように振舞っていたけれど、あの人はもともと取り繕うのが上手い。だから、表に出さないように努めているだけだと、私にはわかっていた。
私は本当に面倒な人間だと改めて自覚してしまって、嫌になる。
自分は利用されているだけの人だ。けれど先生に自分のことだけを見て欲しくて、“遊び”を看過できなかった。
このままだと結くんに、先生を取られてしまうんじゃないかという危機感は募るばかりだ。こんなことなら、カメラを回すなんて許さなければよかったと思う。
憎らし気に回収した小型カメラを小突いて、机の上にうなだれる。そうしたまま過ごしているとガラガラと戸が引かれた。どうやら仕事をしなければならないらしい。
「はいはい。どうしたのっと」
体を起こして入り口に目を向ける。そこには私の思考を独り占めしていた彼、結くんが居て、寝不足で幻でも見たのかと目をこする。けれど、彼は実体を保ったままこちらへ近づいてきた。
「先生、あの奥のベッド使わせてもらってもいいですか?」
彼はそう言って昨日座っていた場所を指さした。顔色は悪いようには見えないけれど、私はひとまず体温計を手に取った。
「いいけど……とりあえず体温を測ってからね。具合悪そうだったら連絡しておくから」
「……はい」
事務的な対応をして、体温計を腋に挟んで座る彼を眺めた。無言の数秒そわそわと時折これから行くベッドへ視線を向けている。それで彼の目的を察した。
「シーツならもう取り換えたよ。昨日はお楽しみだったね」
魔が差した、といえばいいのだろうか。余計なことを口走った。けれどもう取り消しようもない。私は私が望むまま、彼に嫉妬の刃を向ける。
「隠し事ってなかなかうまくいかないものだよね。結……清志郎くん」
血の気が引いた彼の表情、それが実に甘美に感じられた。
つづく。