※この作品はR-18です。

5P erosuna4   作:夜叉五郎

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コニシ酒屋のTVは廃棄されてました。そしてまさかの花村得展開。


第02章 魔術師/星

<VELVET ROOM 2011年4月15日FRY 雨 --:-->

 

「ようこそ私たちの愛の巣へ」

 

霧の中を進む豪華客船のロイヤルスィートルームで、ピンク色のベッドに腰掛けたマーガレットが待っていた。

 

「ここは私と男女の契りを果たされた方のみが訪れる部屋。あなたは見事、この船を顕現されたのです」

 

淡い色使いの内装は、さながらラブホテルのベッドルームのような趣となっている。

 

「これをお持ち下さい。それは私の貞操帯の鍵。今宵からあなたがこのベルベットルームの主人です」

 

柄の部分がピンクのハート型になっている鍵が渡される。

 

「あなたのマーラ様はとってもワイルド。他者とは異なる特別な逸物」

 

愛おしそうに服の上からマーラ様を撫でさするマーガレット。

 

「私の子宮を満たしたように、無限の射精性能を秘めています。んっ」

 

キスをしながら服を剥いでいき、互いに体を弄り合う。

 

「私を狂わせたワイルドなマーラ様は、いずれの体位に弱いのか。ご一緒に確認して参りましょう。ああんっ」

 

波の音にギシギシアンアンという卑猥な音が重なっていく。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 6:30>

 

少し早めに目が覚めた。

またエロい夢を見ていたような気がする。

夢精は・・・、していない。

 

昨日のことも夢だったのかとTVに触ってみる。

ずっぽしと手が画面に吸い込まれる。

どうやら夢ではないようだ。

 

俺がこの世界に来た意味を考える。

このTVの謎を解けばそれがわかるのだろうか。

いや、今はそう信じるしかない。

 

雨が降っている。

とりあえずまだ早いけど学校に行こう。

傘をさして家を出る。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 7:30>

 

天城屋旅館の前で邪魔にならないように待つ。

しばらくしていつもの赤いカーディガンを着た天城さんが現れた。

 

「おはよう、天城さん」

 

「え、鳴上君?」

 

「一緒に学校に行こう」

 

「・・・もしかして昨日言ってたストーカーのことで心配してくれて?」

 

にっこり笑ってこちらの意思を伝える。

 

「近頃、物騒だから」

 

「そんな。いいのに」

 

申し訳なさそうにしている天城さんを説得して一緒に登校。

途中里中さんとも合流して三人で学校に向かった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 8:00>

 

結構な強さの雨の中、校門前に傘も立たずに突っ立っている学生がいた。

あのストーカーだ。

天城さんを庇って前に立つ。

 

「どけよ!お前は関係ないだろ」

 

「いや。どかないさ。こんな朝から天城さんに何の用だ?【答えろ!】」

 

「・・・うう、ゆ、雪子を連れてこうと思って」

 

「今から学校だぞ。迷惑だと思わないのか。【さっさと自分の学校に行け!】」

 

「くっ、もういいっ」

 

悔し気な表情を浮かべ走り去っていくストーカー。

 

「「おおーーーーー」」

 

いつの間にか集まっていた周囲のギャラリーから声が上がる。

 

「すげー」

「天城越えに新たな難所の登場だな!」

「彼、転校生でしょ」

「何々?あの二人付き合ってるの?天城越え済み?」

 

登校時間での校門前での騒ぎである。

大分目立っていたらしい。

参ったな。

 

「さあ、行こう」

 

二人を即して玄関に向かう。

里中さんがキラキラした目でこっちを見てくる。

 

「かっこよかったよ鳴上君!ほら雪子、お礼言いなよ」

 

「え、うん。ありがとう。でも今の人、結局何の用だったのかな?」

 

おいおい。

この天然も天城さんの魅力の一つか。

 

「何の用って。天城さんをデートに誘いに来たんだろ。勝手に断ったの迷惑だった?」

 

「そうだったんだー。ううん全然。断ってくれて嬉しい」

 

頬を染めて礼を言ってくる天城さん。

さ、学校に入ろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 8:15>

 

場所は変わって教室。

花村、校門での出来事を又聞きしたらしい。

 

「まったく天城も次々と言い寄られて大変だよなー。かく言う俺もその一人だったけど」

 

何かあったのだろうか。

やたら低いテンションで投げやりに天城さんを弄ってくる。

 

「そんなことあったかしら?」

 

「去年、一緒に出かけようって誘ったろ」

 

「ごめんなさい。覚えてない」

 

「やれやれ。まったく罪作りな女だぜ」

 

天城さんと花村のおざなりなやり取りが続く。

やはり好意の対局は無関心ということだな。

 

「まあいいけどな。俺にはもう小西先輩がいるし。・・・はぁ」

 

「どうしたんだ?花村。何か心配事か?」

 

「その小西先輩のことでちょっと昨日の晩に気になることがあってな。んで連絡取ろうと思って散々メールしてんだけど、一切返事をしてくれないんだ。どうしたんだろ」

 

<ウウウーーーーン>

 

警察車両の音だ。

また何かあったのか?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 13:30>

 

緊急の全校集会ということで午後の授業は中止となり全員体育館に集められる。

朝の騒ぎの説明だろうか。

 

花村の様子がおかしい。

朝から苛つきを見せていたが最早挙動不審レベルである。

 

「花村、落ち着け!」

 

「やっぱり三年の列に先輩いないしさ。電源切ってるらしくて電話も通じないんだよっ。くそっ」

 

小西先輩ならあの世界から無事に救出したはずなんだが・・・。

 

「あー静かに。今から校長先生の大事な話があるから黙って聞くように。喋ったりしたら腐った・・・」

 

相変わらずモロキンは煩いな。

 

「今日は皆さんに悲しいお知らせがあります。三年B組の小西早紀さんが今朝路上で倒れているのが発見されました」

 

何!?

 

<<ザワザワ>>

 

「あー静かに。幸いなことに乱暴された形跡は無く、怪我なども全く無かったようですが、彼女は依然意識不明の状態であり病院に入院中となります」

 

隣の花村が愕然としている。

そして俺もまた。

 

「一昨日の殺人事件との関係については警察が調査中とのことです。皆さんは不確かな噂を信じず、学生としての本分を・・・」

 

し、しまったー!

あのTVの出口、コニシ酒屋のTVじゃなかったのか!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 14:30>

 

体育館から校舎の戻る中、皆の噂話が嫌でも耳に入ってくる。

 

「小西早紀ってあの三年の美人な人でしょ?」

「絶対姦られてるってマジで」

「裏で遊んでたって噂もあったしねー」

「あーあー憧れてたのに。俺も一発・・・」

 

やっぱそうなるよなー。

参ったな。

 

「花村君、大丈夫?」

 

天城さんが落ち込んでる花村に声を掛ける。

 

「なぁお前ら、昨日の夜さ。マヨナカテレビ見なかったか?」

 

「花村、あんたこんなときに何言ってるの!?」

 

「いいから聞いてくれ!」

 

里中さんの言葉を語気強く遮る花村。

いつになくシリアスだ。

当然か。

 

「月曜日。山野アナが死んだ事件で校内放送あったろ。そのちょっと前に、山野アナが運命の相手だって騒いでた奴がいたよな」

 

「あ、うん。確かいたね」

 

「それがどうかしたの?」

 

里中さんと天城さんの二人は聞いていたらしい。

 

「つまりそいつは前の晩にマヨナカテレビで山野アナを見たってことだろ。そして俺も昨日マヨナカテレビで小西先輩を見たんだよ!偶然にしては出来過ぎだろう!?」

 

「「それって・・・」」

 

顔を見合わせる里中さんと天城さん。

面白い着眼点だ。

 

小西先輩の場合、俺が居合わせたので助かった。

だが山野アナは違う。

そういうことか。

 

花村、バカではないな。

 

「つまり、あのTVに映った人間に不幸な出来事が起こり、運が悪ければ死ぬってことか」

 

TVの中の世界がこの事件に密接に関わっていると考えて間違いない。

俺と同じように山野アナと小西先輩はあの世界に引きこまれた。

そして山野アナは帰ってこれなかった。

 

だとすると俺や彼女たちにTVに入れる力を与えた何者か。

そいつこそがこのゲームで探し出すべき俺の敵なのかもしれない。

 

「ああ。昨日TVの中で小西先輩、全裸の変態野郎に襲われていたように見えた。間違いなく奴が犯人だ!許せねぇ!」

 

ってちょっと待てい。

それ俺だよ・・・。

 

「絶対あの変態野郎を捕まえてギッタンギッタンにしてやる!小西先輩を傷つけた報いを受けさせてやる!」

 

「花村・・・」

 

「花村君・・・」

 

崩れ落ちて慟哭する花村を里中さんと天城さんの二人が慰める。

い、居たたまれない。

このままでは花村と敵対関係になってしまう!

そうだ!!

 

「違うぞ、花村」

 

「「え?」」

 

俺の意外な言葉に里中さんと天城さんが顔を上げる。

 

「何が違うって言うんだよ!」

 

「お前がやるべきことはそんなことじゃない!お前がまず真っ先にしなければいけないことは!」

 

「「ことは?」」

 

「病院に行って小西先輩の意識が戻るまで付き添ってあげることじゃないのか!?」

 

<ババーン>

 

「あ・・・」

 

立ち尽くす花村。

 

「そうよ、花村!」

 

「鳴上君の言うとおりだわ、花村君!」

 

里中さんと天城さんの二人が激しく賛同してくる。

 

フッ。

これで誤魔化せたな。

 

「【犯人を探すのは俺に任せろ。】お前は早く小西先輩のもとに行ってやれ!」

 

「あ、ああ、頼んだぜ、鳴上!」

 

ダーーーッと病院に向けて駈け出す花村。

よし花村はこれでいい。

 

「で、犯人を探す当てはあるの?鳴上君」

 

里中さんが興味深げに尋ねてきた。

二人には話しておいた方がいいな。

 

「ああ。実は・・・」

 

<ぶるるるる>

 

「あっごめん、家からのメールみたい。私、旅館に戻らないと」

 

ガクッとくる。

天城さんって何故かいつもタイミング悪いよなー。

 

仕方ない。

天城さんを家に送り届ける道中で話そう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:00>

 

「「TVの中に入った!?」」

 

「ああ。信じられないだろうけど」

 

疑いよりも戸惑い表情を浮かべる二人。

 

「一度俺のマンションに来て欲しい。俺の言葉が真実だということを証明して見せるから」

 

「「・・・」」

 

ハッ!?

言ってから気づく。

これって女の子を部屋に連れ込むナンパ男のセリフみたいじゃないか。

 

「ご、ごめん。急に変なこと口走っちゃって。忘れてくれ」

 

「その。私、今は家の旅館が凄く忙しくて無理だけど、休みが出来たら絶対行くから!鳴上君のお家」

 

「今日予定何も入ってないから、私は今からでも行けるよ。雪子より先にお邪魔しちゃおっかな〜」

 

あれ?

なんか盛り上がってる?

 

「じゃ、じゃあ里中さん、この後一緒に来てくれ」

 

「りょうかーい」

 

「えーいいなー千枝」

 

しきりに残念がる天城さんを旅館まで送ると、天城屋旅館の前にTV局の中継車が来ていた。

そして何やら旅館の中がバタバタしている。

天城さんが急に呼ばれたのはこのTV局のためだろうか。

 

「前に取材は断ったはずなのに・・・。ごめんなさい。私行かなきゃ」

 

「雪子・・・」

 

一気にテンションが下がった天城さんが、慌てて旅館の中に入っていく。

里中さんは天城さんの後ろ姿を心配気に見送っていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:20>

 

天城さんが心配だが俺たちには何も出来ることがない。

当初の予定どおり、俺は里中さんを連れて自宅に向かっていた。

だが途中で急遽行き先を変えることになる。

 

俺の話を親身になって聞いてくれた里中さん。

その彼女の何気ない一言が俺の背筋を凍らせたのだ。

 

「その・・・TVの中の世界?それが本当にあるのなら、小西先輩をそこに連れ込んだ犯人。今頃慌ててるんじゃないかなー」

 

え?

 

「だってさ。自分の顔を見たかもしれない小西先輩が、無事に中から出てきちゃったわけでしょ。目が覚めてから小西先輩に聞いたら、一発で犯人がわかっちゃうじゃない」

 

俺は何を勘違いしていた?

彼女たちはあの世界に自ら入り込んだとばかり思い込んでいた。

だが冷静になって考えてみればそれだけじゃない。

 

俺と同じような力を得た誰かが、彼女たちをあの世界に放り込んだ。

そういう線も有り得るじゃないか。

だとすれば里中さんの言うとおり小西先輩が危ない!

警察には彼女を守りきれないだろう。

 

携帯電話を取り出して花村に電話する。

 

<おかけになった番号の電話機は・・・>

 

・・・花村、電源を切ってる。

病院にいるなら当然か。

くそっ、なら直接行くしかない!

 

「ちょっと!いきなりどうしたの、鳴上君」

 

急に走り出した俺を慌てて追走してくる里中さん。

 

花村、彼女を守れ。

小西先輩を守るんだ!

TVから離れるんだ!!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:40>

 

里中さんを連れ、小西先輩が運び込まれた稲羽市立病院に移動する。

途中で上手くタクシー捕まえられたので、あまり濡れずに済んだ。

 

ナースステーションに駆けつけ、居合わせたナースに小西先輩のいる病室を尋ねる。

里中さんがいくら尋ねても梨の礫だったが、俺が真摯にお願いするとこっそり教えてくれた。

 

「・・・関係者以外は面談禁止になってるけど、特別よ」

 

名札を見ると上原さんという方らしい。

随分色っぽいお姉さんだ。

こんなナースになら是非看護されたい。

 

「ありがとうございます。【お仕事、無理しないで頑張って下さい!】」

 

ナースの仕事は激務と聞いている。

お礼と激励の言葉を送り、上原さんに教えられた病室に全速力で向かった。

 

 

 

<SYSOP 2011年8月20日FRY 雨 --:-->

 

上原小夜子は仕事で無理をしないで頑張るようになります。

上原小夜子の自然体な頑張りは周囲に好影響を与え、人間関係が大いに改善します。

上原小夜子はかつての職務に対する熱い想いを取り戻し、素敵な男性に見初められます。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:50>

 

この部屋かっ!

 

<ガラガラッ>

 

暗い病室。

 

一番奥のベッドがカーテンで仕切られていた。

そこにいるのか?

 

<シャッ>

 

「小西先輩!花村!・・・あれっ?」

 

「んー、おー、ヌシ様。遅かったの―」

 

そのベッドに横たわっていたのは、麗しい小西先輩ではなくヨボヨボのお爺さんだった。

ヌシ様って誰だよ。

 

ベッドに掛かっているネームプレートを見ると、黒田という名字が記されていた。

 

「鳴上君!ここ違う病棟だよ。小西先輩はあっちの建物!」

 

里中さんが追い付いてきて、部屋の外から俺の誤りを指摘してくれる。

しまった、うかつ!

 

「すみません。部屋を間違えてしまったようです。失礼します。ん?」

 

お爺さんに謝罪してベッドから離れようとしたとき、ベッドの傍に黒い包みが落ちていることに気付く。

拾うと、布の中に綺麗な鼈甲の櫛が入っていた。

包みがかなり上等な絹布なところを見ると、とても大切の物のようだ。

恐らくこの老人のご家族のものだろう。

 

「お爺さん。この櫛、ここに置いておきますね。【持ち主の方に渡してあげて下さい】」

 

「・・・おお、わかったぞーい」

 

お爺さんの手が届くところに櫛を置き、部屋を出る。

 

「おそ〜い。こっちだってば!」

 

先の曲がり角で待機していた里中さんが俺を呼ぶ。

急ぎ足でそちらに向かう。

 

途中、一人の上品なお婆さんが立っていた。

俺が先ほどの病室から出てきたことに驚いているようだ。

恐らくあの老人のご家族の方に違いない。

 

すれ違うときにペコリとお辞儀する。

お婆さんは戸惑いながらもお辞儀を返してくれた。

 

多分あの櫛はこのお婆さんのものだろう。

お爺さん、きちんと渡せればいいんだけど。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月15日FRY 雨 --:-->

 

黒田ひさ乃の夫は、櫛をプレゼントした相手を思い出しました。

黒田ひさ乃は再び夫から櫛を渡され、号泣します。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 16:00>

 

途中運送業者の人にぶつかりそうになる。

「すみません!」と謝りつつ院内を進む。

目的の病室に到着すると、病室の扉の前で一騒動起こっていた。

 

「お前がJUNESの息子か!お前のせいで早紀がこんな目に合ったんだ!」

 

騒いでいるのは小西先輩の父親のようだ。

その前で土下座しているのが花村。

頬が腫れている。

 

小西先輩の父親に殴られたらしい。

その父親を背後から抑えているのが叔父の堂島さんだった。

 

「お願いします!小西先輩に会わせて下さい!」

 

「ふざけるな。帰れ!」

 

「まぁまぁ小西さん落ち着いて」

 

どうやら病室に入れろ許さんの押し問答中らしい。

 

「離せ!」

 

まだ花村を殴り足りないらしく、小西先輩の父親は叔父さんを振りほどこうとする。

あっちの世界で小西先輩が嘆いていたが相当な暴れ者だな。

 

「小西さん、これ以上暴れるならこっちも手荒なまねをしなければなりませんな!」

 

「あぐっ」

 

叔父さんが締め付けをきつくする。

 

<ガラガラ>

 

「もう〜うるさいな〜静かにしてくださいよ。ここは病院なんですよ〜」

 

前に見た叔父さんの部下が病室から出てくる。

凄く昼行灯っぽい人だ。

 

「足立!何やってる被害者から離れるな!」

 

「堂島さん。そんなこと言ったって彼女一向に目覚める気配ないですよ〜。あれ、君どなた?」

 

「ん?悠だと?お前こんなところに何の用だ!」

 

叔父さんにスッゴい迫力で睨まされた。

さすが現役の刑事だけどなんかカチンとくる。

 

「この方の言うとおりです。皆さん病院の廊下で何やってるんですか!周りの病室の方々に迷惑です。【静かにして下さい!】」

 

思わず一喝してしまった。

皆を黙らせた後、叔父さんに向き直り堂々と主張する。

 

「僕は花村の友人です。友達のことが心配で駆けつけるってそんなにおかしいことでしょうか」

 

「いやそうは言わんが。だが小西早紀さんは重要参考人でな。ご家族の方以外会わせるわけには」

 

「花村と小西先輩は付き合っていました。デートの約束までしていた。そのことは小西先輩のお父さんもご存知のはず。つまり花村は他人じゃない。【会わせてあげて下さい】」

 

平気な顔で嘘八百を並び立ててみる。

 

「・・・。はぁ〜やれやれ。仕方ないな。少しの間だけだぞ」

 

「堂島さん!いいんですか?まずいっすよ〜」

 

よし上手くいったみたいだ。

 

「【小西先輩のお父さんもいいですね!】」

 

「・・・勝手にしろ!」

 

ぷいっとソッポを向かれた。

許可は出たようだ。

 

「さぁ花村、小西先輩に会いにいこう」

 

「ほらしっかり花村!」

 

「鳴上、里中すまねぇ。ありがとう」

 

花村を抱き起こし里中さんと一緒に病室に入った。

広い病室の中、窓際のベッドに小西先輩が眠っている。

昨晩のTVの中で気絶してから状態に変わりはないようだ。

 

「小西先輩!」

 

小西先輩の元に駆けつける花村。

その手を握って彼女が目覚めるよう必死になって呼びかけていた。

 

「起きてくれ先輩!一緒に映画を見に行こうって約束したじゃないか。ウワワーン」

 

ついには小西先輩の手を両手で押し包み、泣きだしてしまう。

 

「花村・・・グスン」

 

里中さんも居たたまれないようで貰い泣きしそうになってる。

俺は花村を慰めるように、彼の手を上からギュッと握ってやった。

小西先輩の細い指にも触れる形となる。

 

その瞬間スーーーッと俺の躰の中から手のひらを伝って何かが抜け出していった。

 

「うううっん」

 

小西先輩の蒼白だった顔に赤みが刺す。

そして。

 

「ハナ・・・ちゃん?」

 

小西先輩は意識を取り戻した。

 

「小西、先輩!?先輩!よかった!」

 

感極まった花村は小西先輩に抱きつく。

花村の勢いに戸惑っていた小西先輩であったが、やがて嬉しげな表情を浮かべてその抱擁を受け入れていた。

 

「どうした!!!」

 

部屋の中の歓喜の叫びが外にも聞こえたらしい。

大挙して病室の中に人が雪崩れ込んでくる。

当然先頭は叔父さんだった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 17:00>

 

「何も覚えていない・・・だとっ!?」

 

目覚めたばかりの小西先輩に対して、早速事情聴取をしようとする叔父さん。

小西先輩のお父さんや俺たちは反発するが、当の小西先輩が花村と一緒ならという条件で受け入れていた。

花村の方は俺と里中さんの立ち会いを望み、結果俺も病室の中に残ることになる。

 

まず叔父さんが小西先輩から昨日一日の行動を聞き出そうとするが、小西先輩の答えは要領を得なかった。

 

「夕方にハナちゃんから貰ったチケットを父さんに破かれて、家を飛び出たところまでは覚えてます。でもその後がわからないんです」

 

不安なのだろう。

叔父さんの質問に応える間、小西先輩はずっと花村の腕に縋り付いていた。

 

「その後誰かに会ったような気がするけど、そこから記憶に霧がかかったように思い出せなくて」

 

花村に抱きつき震える小西先輩。

 

「小西先輩・・・」

 

花村も守るように彼女を抱き寄せる。

 

「やれやれ。手がかりは何もなしか」

 

叔父さんも諦めるしかないようだ。

しかし叔父さんの部下の足立さん。

尋問中に凄い表情してたな。

 

睨みつけるような視線を小西先輩に浴びせていた。

重要な犯人の情報が得られるかもしれないから、一言も聞き逃すまいとしてたんだろう。

なんて仕事熱心な人なんだ。

 

「足立、また犯人が小西さんに接触しにくるかもしれない。当分お前が彼女に張り付いてろ。交代の人員はあとで呼んどいてやるから。ん?どうした?」

 

「いやーその、うらやましーなーなんて」

 

慌てて睨むのを止め、戯ける足立さん。

彼の視線の先には抱きしめ合う若い恋人たちの姿。

言わんとすることはわからないでもない。

昨日の今日で急速に接近し過ぎだろ。

これもあのテレビの中で小西先輩の影を説得した影響なのだろうか。

 

「何バカなこと言ってるんだ!いいか!決して彼女から目を離すなよ!」

 

よかった。

彼なら信頼できる。

俺からもきちんと頼んでおこう。

 

「足立さん。はじめまして鳴上悠と言います。堂島さんの甥に当たります。僕からもお願いします。【二人のこと守ってやって下さい】」

 

「・・・あ、ああ、よろしく」

 

グッと握手する。

これで花村と足立さんの二人で小西先輩を警護する体制が整った。

犯人もそうそう手を出してこれないだろう。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月15日FRY 雨 17:00>

 

鳴上悠の「神言」により、足立透は小西早紀と花村陽介の将来を守る義務を負いました。

足立透は生暖かい目で二人を見守り続けます。

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 17:40>

 

「悠、ちょっと話がある」

 

怖い顔した堂島さんに部屋の外に連れてかれる。

そしてクドクドと事件に顔を突っ込むなと説教される。

ろくな証拠もないのに俺がこの事件に関わっていると肌で感じてるらしい。

これが歴戦の刑事の勘ってやつか。

 

「最初は帰宅途中に偶然通りかかっただけで、今回は被害者の彼氏がクラスメイトだっただけです!」

 

逆ギレして黙らせる。

 

イライラしながら堂島さんは去っていった。

まあ堂島さんがイラつくのもある意味仕方がないかな。

自宅には妊娠中の千里さんがいるのに、殺人事件で家に帰る暇も無いのだろうから。

 

<ガラガラ>

 

「あちーあちー、もうお腹いっぱいだわ。あたし、もう耐えらんない」

 

「全くもうやってらんないよー、あーあー若いってのはいーねー、チッ」

 

里中さんと足立さんが病室から出てくる。

二人はうんざりした表情を浮かべていた。

 

「どうした?」

 

「どうしたも何も。鳴上君も覗いてみれば」

 

投げやりな態度の里中さんに勧められてドアを開け中を覗く。

 

「ハナちゃんごめんね」

 

「どうしたんだよ先輩」

 

「ハナちゃんに貰った映画のチケット、破けちゃって使えなくなっちゃった」

 

「そんなこと大したことじゃないさ。もう一枚用意するって」

 

「ありがと。でもお詫びをさせて。んん」

 

「んん・・・うわっ、せ、先輩」

 

「フフ、ハナちゃんの唇、柔らかい」

 

バカップルの姿がそこにはあった。

この後めちゃめちゃセックスした、とモノローグが出そうな勢いだ。

 

あれ?

一瞬小西先輩の瞳が金色に輝いていたような。

気のせいか。

 

さすがに病室に入って二人の邪魔をするほど足立さんは野暮ではなかった。

病室入り口に椅子を用意してそこで過ごすようだ。

 

小西先輩のお父さんももう大丈夫だろう。

「【二人のこと暖かく見守ってやって下さい】」と真摯にお願いしたら、大人しく引き下がってくれた。

やはり大事なのは真心だよな。

 

ラブラブな二人に中てられ疲れきった俺と里中さんは、判定負けしたボクサーのようにヨロヨロと病院を立ち去る。

帰り際、花村には「【TVに気をつけろ】」と助言をし、当初の目的は一応果たす。

さすがにこれから俺の自宅へという雰囲気にはなれず、里中さんの自宅訪問は明日に持ち越しになった。

 

「明日いろいろと荷物届くんでしょ。ちょうどいいから私が設置手伝ってあげる。花村はあんなだし」

 

「ありがとう。里中さん」

 

「いいっていいって。それじゃバイバイ」

 

里中さんと別れて家路に付いた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 18:40>

 

八十稲葉中央商店街にある中華料理屋さんの"愛屋"から出前を取る。

里中さん絶賛メニューの肉丼を頼んでみた。

すると出前に来たのはクラスメイトの中村あいかさんだった。

 

「まいど」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

ちょっとビックリ。

そうか。

中村さんってあの店の娘なのか。

 

パンチの効いた味と匂いのする肉丼をガッツキながらTVを見る。

ニュース内の報道特集はまた稲羽市の殺人事件ネタだった。

やれやれと思って眺めてると画面の中に天城さんが現れる。

ああ、やっぱり昼間天城さんはこの撮影のために呼び戻されたのか。

 

<女子高生で女将ということですが>

 

<いえ、私は母の代役で>

 

<でも跡継ぐんですよね。と言うか和服色っぽいね。男性客多いでしょ?>

 

レポーター、見事に脱線してる。

ただ同じ男として脱線したくなるのもわかる。

桜色の着物の天城さんにはえも言われぬ色気があった。

天城さんってまさに日本美人って感じで華奢で細くて柳腰だから、和服が他の人より断然映えるんだよな。

 

<え、あのっ>

 

<山野アナは死の直前おたくの旅館に泊まっていたそうですね>

 

<ええ>

 

なんでこんな撮影許可出したんだろう。

女将さんが倒れていると言ってたな。

 

天城屋旅館の従業員の誰かがTV局の押しの強さに断りきれず。

尻拭いの形で天城さんが無理やり出演、という嫌な流れが容易に想像できた。

 

マスゴミはほんとにしょうがないな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 24:00>

 

外はまだ雨が降り続いている。

今日はマヨナカテレビは映るのだろうか。

 

<シャッ>

 

かっこつけてカーテンを閉めてTVに向き合う。

時計の針が零時を刺した。

 

<ピーピョロロ>

 

映った!

和服の女性のようだ。

 

ん?

んん?

これ天城さんか?

 

映像は影しか映っておらず、はっきりとはわからない。

だが、さっきのニュースで出てた和服姿の天城さんにシルエットがよく似ていた。

 

そうだ。

天城さんとは連絡先を交換していたんだ。

確認してみよう。

 

<トルルルルル>

 

<はい、もしもし天城です。鳴上君、こんな夜更けにどうしたの?>

 

・・・出たよ。

ってことは、これは天城さんじゃない?

 

「ごめん。今どうしてたのかなって思って」

 

<今?お仕事終わってお風呂を頂いてたところ>

 

え、湯上りの天城さん?

色っぽそう。

 

いかんいかん!

 

「そうなんだ。やっぱり迷惑だったみたいだね。大したことではないんだ。明日学校で直接話そう」

 

<迷惑だなんてそんなこと。逆に嬉しい、かな。あ、ごめん。明日学校行けないんだ。団体さんの予約が突然入っちゃって>

 

「へー、急だね」

 

<うん。夕方のニュースを見て興味を持ってくれたみたい>

 

困惑気味な天城さんの声。

彼女自身、図らずも自分が客寄せパンダにされてしまったことが不本意なんだろう。

 

「ああ、あのニュースか。着物姿の天城さん初めて見た。とても似合ってたよ」

 

<もうっ。鳴上君までそんなこと言わないで>

 

「はははは、ごめんごめん」

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 25:00>

 

天城さん、なんだかんだでストレスが溜まっていたみたいだ。

零時を回っているのにも関わらず、結構な時間話し込んでしまっていた。

凄く楽しい時間だけど、さすがにこれ以上は天城さんの明日の仕事に障ってしまう。

 

「じゃあそろそろ切るよ。おやすみ。天城さん」

 

<うん。おやすみ。また電話してくれると嬉しいな>

 

「ああ、明日も頑張って」

 

<ツーツーツー>

 

とっくの昔にマヨナカテレビは放送を終えている。

TVに顔を突っ込んでみたけど、誰もいない。

 

寝るか。

 

後になって考えると、やはりこのマヨナカテレビは天城さんとは無関係ではなかった。

何者かが天城さんを狙う先触れであった。

そして悔しい事にこの時点で俺が打てる手は何もなかったのである。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月15日FRY 雨 --:-->

 

小西早紀が助かったことで、花村陽介がペルソナに目覚める機会が失われました。

花村陽介は結局マヨナカテレビに入らず、小西早紀とデート三昧の充実した高校生活を送ります。

花村陽介は将来JUNESに入社し、鳴上悠が仲人になって小西早紀と結婚します。

花村陽介は父親と同じく八十稲羽支店長に上り詰め、八十稲羽商店街とのコラボを成功させ稲羽市の救世主となります。

魔術師のアルカナが消滅しました。

 

小西早紀が己の影に殺されなかったことで、星のアルカナはクマに譲渡されません。

小西早紀の花村専用マゾ奴隷として充実した高校生活を送ります。

小西早紀は将来鳴上悠を仲人として花村陽介と結婚し、立派なマゾ花嫁になって一姫二太郎を産みます。

小西早紀の夫の花村陽介がJUNESで出世し、八十神商店街を復活させたことで父と和解します。

星のアルカナが消滅しました。




星のアルカナの委譲うんぬんは完全にオリジナル設定です。次話からやっとエロ本番。
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