「…流石に心配になってきたわね」
遅くとも3日以内には帰って来るだろうと思っていた魔理沙が帰って来ず、霊夢は異変の始まりを感じていた。
「全く、嫌な予感ほど当たるんだから…」
霊夢が魔理沙を送り出す時に感じた嫌な予感。それが当たったのだ。
(やっぱり私も付いて行くべきだったかしら)
いや、今さら考えても仕方がない。状況を変える為にするべき事はただ一つ、行動を起こすことだ。
そこまで考えて霊夢が謎の城への出発を決めた時、境内から思いがけない来客があった。
「ああ、やっぱりまだここに居たのね。良かったわ」
それは魔理沙と同じくらい、霊夢にとっては聞き慣れた声だった。
「八雲紫…」
そう。声の主の名は八雲紫。霊夢にとっては少なからぬ因縁を持った相手だ。
「ごきげんよう、博麗の巫女」
いつもは優雅な気品を纏った絶世の美女だが、心なしか今はその気品が薄らいでいるような気がした。
「今回の謎の城…もしかしてまたあんたが…」
「いいえ。今回は違うの。どちらかと言えば、今回はあなたと同じ、被害者ね」
霊夢は紫の言葉に違和感を覚えた。
「被害者?あんたが?それってどういう事?」
「端的に言うと、魔理沙が危ないの、霊夢」
「どういう事?詳しく説明しなさい」
「悪いけどそんな時間は無いの。城に向かいながら説明するわ。付いてらっしゃい」
そう言って、紫は宙に浮かぶと、霊夢を手招きした。
「どっちみち、あんたが来なくても行くつもりだったわよ。ちょうどいいわ」
霊夢も宙に浮かび、二人は博麗神社を出発した。
「あれは魔城なの」
城に向かいながら、紫は状況を説明してくれた。
「古来より、様々な世界に現れては、世界を何度も滅ぼしかけた。古の遺跡よ」
「まさか人間界にも?」
「いいえ。人間界には現れた事は無いわ。少なくとも、私が知る限りではね」
「それで、どうして魔理沙が危ないの?」
「あれは入った者を惑わす城なの。具体的には、堕落ね」
「堕落?」
「そう。中に入った者が一番欲しがっている物を与え、外に出る気を削いでいく。そして与えて与えて与え続けて、気付けば廃人になるって言う仕組みよ」
「…何よ、それ…それじゃあもう魔理沙は…」
「落ち着いて、霊夢。あの子の生命力なら、一週間程度なら大丈夫よ。ただ、それ以上長引くと危険ね」
「うん…。ところで、何であんたは協力してくれるの。」
「私にとっても、今魔理沙を失う訳にはいかないの。幻想郷のバランスの為にも。私自身の為にも。それに、あの城は入るのが少々難しいの。レミリアが入口を見つけられなかったでしょ?」
「そうね…確かにそうだったわ。じゃあ、何で魔理沙は入れたの?」
「その説明は城に入ってからするわ。とりあえず、入口は私のスキマの能力で強引に突破するわよ」
紫からの説明が一通り終わった後、その城は見えてきた。その時はまだ、私達が摩訶不思議な経験をするとは、思ってもいなかった。
ここまで読んで下さり感謝です。