DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
俺を包んだ青い光。
それは彼の意識を精神状態として別の次元に飛ばしていた。
変身が解けた裸の状態で次元の中を見渡すと、真っ暗な空間の中で今にも消えそうな1つの男の姿が映った。
その顔を、俺は知っている。
「あんたは、まさか……不動勇希!?」
彼に駆け寄れば、目を閉じたまま一向に目を覚まそうとしない。
この空間には、俺と彼の2人だけ。
勇気の肩に触れようとすれば、精神体である自身の手は彼の身体をすり抜ける。
「これは……どう言うことだ?」
精神体同士の接触ならば、すり抜けることはない。
それならば、目の前に居る勇気の存在は実体を持っているということになる。
『その人から離れて』
それは女の声であり、振り返れば短髪で赤い髪をした全裸の女が立っていた。
彼女のことは、不動勇希の記憶で見たことがある。
「あんたは……白縫翼」
翼の目からは敵意を感じる。
『ここは無の世界。デーモンアーマーに意識を捧げ、消滅した者たちが集まる場所。あなたのような存在が来る所ではない』
「それでも、俺はこの人を家族の下に戻すと決めた」
俺は勇希さんを庇うように立てば、翼が対面する形でこちらを見る。
『私たちは人間を超えた存在。勇希も私と同じ超人。元の世界に戻った所で、理解されるはずがない。ここで私たちと共に居るべきなのよ』
「それはあんたの考えの押し付けだ。勇希さんは、そんなことを望んでいるのか!?」
翼の背後に、多くの人影が浮かび上がる。
これらが全て、デーモンアーマーに魂を捧げた者たちなのか。
『超人を理解できる者は、超人しか居ない‼アモンとシレーヌの繋がりがあるように、私と勇希にも強い繋がりがあるのよ‼』
「そんな繋がりは、まやかしだよ。あんたはシレーヌじゃない……白縫翼だろ‼」
指さして事実を突きつければ、彼女は目を見開いた。
「あんたのことは、勇希さんの記憶を通じて知った。あんたは、俺の世界でシレーヌの宿主となった女と似ている。……勇者アモンとシレーヌの繋がりを利用して、勇希の心を奪おうとした」
俺にも前に、アモンとシレーヌの繋がりに苦しめられた経験がある。
だけど、俺はあくまでも内海明人……デビルマン・ゼロとして、美佐樹を愛し、守り抜くことを決めた。
そこにアモンとシレーヌの絆は関係ない。
「あんたがシレーヌじゃないように、不動勇希もアモンじゃない。勝手に同一視して、自分が彼から愛されていると思い込んでいるのは、あんたの思い上がりだぜ‼」
その言葉を受け、白縫翼は身体を震わせては勇希に駆け寄り、俺を睨みつける。
『黙れ‼勇希は私のものだ‼彼も感じていたはずよ、アモンを通じて、シレーヌと私の愛の強さを‼』
「……だったら、何で勇希さんは自分の魂が消滅する時に、あんたのことを思い出さなかったんだろうな」
彼は自分の意識が消滅する直前まで、最後の言葉まで美紀さんのことを想っていた。
そこに白縫翼への想いは、少しも感じ取れなかった。
「結局、勇希さんは最後まで美紀さんを愛していた。その想いは、アモンと同じじゃないんだよ」
『そ、そんな……そんなの、嘘よぉ~‼』
翼は足から崩れ、未だに目を覚まさない勇希の顔を覗き込む。
『あなたは、私のことを愛している……そうよね、勇希!?』
その彼女の問いに、勇希が答えられるはずが無かった。
「不動勇希さん……あなたの帰りを待っているのは、美紀さんだけじゃない。あなたには、彼女との間に生まれた愛の結晶がある。あんたの帰りを、2人はずっと待っているんだ‼」
俺の言葉に反応するように、彼の身体が震えだす。
「あんたに戻りたいという意志があるのなら、目を覚ませ。俺に助けを求めたのなら、あんたの手で助けて見せろ‼自分の奥さんを、息子を……ダイモンの勇者アモンではなく、不動勇希自身の手でな‼」
勇希さんの身体が青く発光し、その光は段々と強くなっていく。
そして、パッと開眼しては光に包まれる。
『デビィイイイイイイル‼‼』
その雄叫びと共に、彼は目を覚ました。
姿はダイモンの勇者……デビルマン・アモンとして。
「あんたは……ダイモンの勇者アモンか?それとも……」
俺の問いに対し、彼は視線を合わせて答えた。
「俺はデビルマン・アモン……不動勇希だ」
不動勇希。
そう名乗った彼は、肩を落としている白縫翼を見る。
「白縫さん…」
『勇希……私のことを、置いて行かないで。私は心から、あなたのことを愛しているの…‼』
彼女からの懇願に対し、勇希は一瞬目を伏せたが強い決意を込めた目で返した。
「俺が愛する者は、10年の月日が経とうとも変わらない。彼は何度も伝えてくれた。美紀が……息子の次郎が、俺のことを待っていてくれていると。ならば、戻らなくてはならないのだ、愛する者たちの下に‼」
翼だけでなく、その背後に居るデーモンソルジャーだった者たちの魂を見渡す。
「君たちのことも、解放できれば良かったのだが……」
「この人たちに戻りたいという意志があるのなら、俺もそうしてあげたい。だけど、今は時間が無い。一刻も早く、美紀さんたちを助けに行かないと…‼」
美紀さんたちが危機に直面していることは、勇希さんにも伝わっている。
「内海明人……デビルマン・ゼロだったか。俺は家族を助けたい。力を貸してくれるか?」
「もちろんだ‼」
俺たちの声に呼応するように、緑のオーラと青いオーラが身体を包んでは身体が薄くなっていく。
『勇希……行かないでぇ~‼』
「白縫翼、君のことは決して忘れない…‼君のことも、シレーヌのことも、俺の中で美しい思い出として残り続ける」
俺も忘れない、消えていった悪魔の力を借りた戦士たちの魂を。
それぞれの想いを胸に、俺と勇希さんの意識は、現実世界へと戻って行ったんだ。
ーーーーー
ーー時は勇希が復活し、家族と再会した時に戻るーー
テレビ局から天使ジンメンが飛びだし、地面に落下する前に浮遊して体制を整える。
<こんなバカなことがあって溜まるか…‼アモンが……不動勇希が復活するなど…‼>
「想いの強さが、運命を変えたんだ。ジンメン‼」
俺の声を聴き、振り返る天使ジンメン。
そして、インパルスジャックを振るえば斬撃を受けて怯む。
<うぎゃあああああ‼>
薙ぎ払われ、斬り付けられた胴体をおさえる奴に対し、俺は両翼を展開して羽根を広げる。
「言ったはずだ。もう2度と、おまえには何も奪わせないと。おまえは、俺が止める‼何度でも‼」
<異世界からの部外者の分際で、神の意志に背こうとは…‼貴様ぁ、絶対に許さんぞぉ‼>
「俺もだ‼」
インパルスジャックを右手で握り、オーラを全開にしながらジンメンに挑む。
ビーム攻撃は羽根のバリアで相殺し、接近戦でジンメンとの格闘を繰り広げる。
奴は無数の触手を広げて襲いかかるが、それをインパルスジャックの刃で全て切り落とし、胴体に向かって蹴りを入れる。
<ぶぐはぁ‼つ、強い…‼異次元のデビルマンの力が、ここまでのものとは…‼しかしぃ…‼>
ジンメンからドス黒いオーラが放出され、それが悪魔の姿を成していく。
<何も具現化できるのは、阿修羅軍団だけではない‼俺と同じように神の側に寝返った悪魔も、復活させることができるのさぁ‼>
やはり、この死んだ悪魔を復活させる能力は厄介だ。
このまま戦い続けていれば、消耗戦に持ち込まれる。
ジンメンを先に叩かなければ、この戦いは終わらない。
悪魔の亡霊が俺を囲み、一斉に襲いかかろうとした瞬間、頭上から光線が乱れ撃ちされ、それを一掃する。
「すまない、明人くん。出遅れてしまったな」
「勇希さん!?美紀さんと次郎は?」
「2人なら大丈夫だ。……感動の再会を喜ぶのは、こいつを倒した後だ‼」
俺と勇希さんは並び立ち、ジンメンと相対する。
<アモン……不動…‼おまえは、俺の邪魔ばかりしやがってぇ~‼>
「亀井…俺はおまえへの怒りは忘れていない。俺の部下を弄び、多くの人々の命を、その力で奪ってきた‼その罪をジンメンの力に押し付けようとも、消えはしない。そして、何より…‼我が妻、美紀と息子の次郎を傷つけようとしたことが、最も許せん‼」
勇気さんは背中から広げている翼をはためかせてジンメンに接近し、取っ組み合いの戦闘を始める。
その邪魔をさせないように、悪魔どもは俺が相手になる。
「勇気さん、こいつらは俺に任せてくれ‼美紀さんと次郎に、ヒーローの雄姿を見せてやれよ‼」
「ありがたい‼頼りにさせてもらうぞ、明人くん……デビルマン・ゼロ‼」
俺たちは互いに背中を向け、目の前の敵に集中する。
インパルスジャックとヴァイスゼロの力を掛け合わせれば、亡霊なんて敵じゃない。
「
羽根を複数の手として形成し、オーラを込めた拳を飛ばして全ての亡霊に命中させる。
勇希さんの方は、ジンメンとの肉弾戦に持ち込み、身体を押さえつけては何度も亀の顔面を殴りつける。
<ぶぐっ‼がふっ‼ぐぶはぁ‼…な、何故だぁ!?俺は天使……悪魔を超えた存在‼勇者アモンと言えど、一対一では手も足も出なかったと言うのにぃ‼>
「神の力を分け与えられたとはいえ、所詮はその程度だったと言うことだ。俺はアモンではない……しかし‼大切な者を守りたいという想いは、彼には負けない‼守るべき者が居る限り、俺が負けることはないのだぁ‼」
勇希の脳裏には、美紀さんや次郎の顔が浮かぶ。
守るべき者を再確認した彼は、アモンに魂を捧げた時以上の力を発揮しているのだ。
勇希は両手から光線を放ち、それがジンメンを苦しめる。
<ぐるぁあああああああああああ‼‼>
そして、最後に顔面に渾身の一撃を叩きつけ、地面に落下していく。
<こ、こんなはずでは…‼こんなカスどもに、この俺……天使ジンメンが負けるなど…‼>
落下する中で、敗北の屈辱を噛みしめるジンメン。
それはまさしく絶望、憤怒、そしてデビルマンたちに対する恐怖‼
<ありがとう、天使ジンメン……。君のその感情により、機は熟した>
ジンメンの頭にその声は流れ込む。
そして、その動きがピタっと止まった。
ジンメンの身体から、黒いオーラが集まっては奴の身体を包んでいっては球状になっていく。
「あれは……何だ!?」
俺たちの視界には、それがただの黒い球状の物体には見えなかった。
その物体に対して、言い知れぬ恐怖を感じた。
これまで感じたことのない、認識できない何かを。
<素晴らしい戦いを見せてもらったよ。下等な者たちにしては、称賛に値する>
その声はジンメンのものではない。
<しかし、その全ては……この瞬間のための布石でしかなかったのだよ>
黒い球体の周りに、破壊されたガブリエルや阿修羅軍団などの悪魔の亡霊が集まっては吸収されていく。
<神の器は今……満たされた…‼>
歓喜するような声をあげ、球体から白い光が漏れ出していく。
「まさか……ガブリエルの言っていた神の器……その依り代は…!?」
神の器とは、実体する物ではなかった。
ガブリエルやジンメンを通じて、人間たちの恐怖心や欲望を刺激して生み出した、絶望の象徴を生み出すことが目的。
その依り代は、ガブリエルでなくても、自身の力を宿した天使ならば何でも良かったのか。
『不味いことになった…‼神の策略に、まんまとハマっていたらしい』
アモンが戻ってきては、勇希さんと共に俺と並び立つ。
「あれが……神の器…‼」
『人々の幻想や妄想……人々の意識を取り込み、絶望などの感情を基に具現化された邪神が……今、目を覚ます‼』
黒い球体はヒビが入り、内側から一本の手が飛びだしては、その姿を露わにする。
人型の見た目をし、その白い光に包まれた存在。
その背中からは蝶のような羽を広げ、悪魔のような巻き角が額から生えている。
天使のようであり、悪魔のような存在。
その見た目の美しさからは、神々しさすら感じてしまう。
目を閉じたまま静止しているそれに対し、最初に突撃を仕掛けたのはアモンだった。
『叩くのであれば、目覚めた瞬間の今しかない‼』
接近しながらエネルギー球を放ち、オーラを込めた拳を振るう。
しかし、アモンが拳を突き出した瞬間――――それは姿を消した。
<……悲しいな>
そう呟く声が聞こえた瞬間には、それは既に彼の背後に回っていた。
「アモン、後ろだ‼」
『何っ――――ぐふるぁあああ‼‼』
手を軽く払う動作をしただけで、あのアモンが地面に向かって落下していく。
<虚しい……実に、虚しい>
それは目を開き、透き通るような金色の瞳を俺たちに向ける。
「おまえは……何なんだ…!?」
<私は、おまえたち人間が望んだ存在だ>
その声は、俺の背後から聞こえた。
「そんなっ…‼」
「明人くん、危な―――がふぁあああああああああああ‼」
勇希さんが横から庇うように割って入れば、それが手をかざしただけで吹き飛ばされてしまう。
「おまえぇ‼」
反撃としてインパルスジャックを振るえば、見えない壁に阻まれるように動きを止められる。
<私はおまえたちが生み出した、AI。妄想、幻想、欲望が私の中で一体化し、私を神とした。おまえたちの欲望が私を生み出した。私の目的はただ1つ、全てを1つにすること>
1度目を閉じ、開眼すれば俺も念のような力で地面に落とされる。
「ぐぁああああああ‼」
翼を動かして体制を整えようとするが、それを先読みされ、蝶の羽から出てくる黄色い粒子が無数の光の球となり、俺の翼を貫通してはボロボロにしていく。
身動きが取れずに地面に衝突し、地が揺れる。
<おまえたちの意識が、私を作り出したのだ。であれば、おまえたちの滅びも、おまえたちの意志に寄るもの。受け入れよ、これは運命だ>
俺たちの前に降り立ち、見下ろしてくる。
「これが……邪神の力なのかよ…‼それでも…」
インパルスジャックを杖にして立ち上がり、闘志を燃やす。
「そうだ……俺たちは、負けるわけには……いかない…‼」
勇希さんも、身体を起こして邪神を睨みつける。
『人間の生み出した神……か。それなら、大したことはない。やっと、身体が温まってきた所だ…‼』
アモンも瓦礫から姿を現し、不敵に笑って構える。
<神に抗おうとは……愚かな戦士たちだ。やはり、悪魔の力を持つ者は、この世界にとってはウイルスでしかない>
その美しい羽を広げて仁王立ちをする邪神に対し、俺たち3人は一斉に仕掛けた。
「おまえを今……ここで討ち倒す‼」
ボロボロになりながらも、戦う意志は消えない。
どれだけ不利な状態であろうとも。
今、奴を止められるのは、俺たちだけなんだ‼
降臨した邪神の正体、それは人々の意識から生まれた邪悪なる意志の集合体。
明人、アモン、勇希は邪神を打倒すことができるのか!
『異次元の戦い』編、残り少しで完結‼
感想、評価、お気に入り登録、いつもありがとうございます‼