DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
俺とアモン、そして勇希さんは、同時に邪神に仕掛けた。
『「うぉおおおおお‼」』
アモンは飛び蹴りを、俺はインパルスジャックを突き出し、勇希さんは両手の平から光線を発射する。
<愚かな>
邪神は静かにそう呟き、一瞬で姿を消してはアモンの蹴りを回避し、背中の羽で吹き飛ばす。
<おまえたちは>
俺が次にインパルスジャックと羽根を駆使した物量戦術で挑むが、その全ては粒子で阻害され、インパルスジャックも見えない壁に弾かれる。
<無力で>
勇希さんの乱れ撃ちの光線すらも、数度にわたる瞬間移動で回避されながら距離を縮められ、そのまま手をかざして光の球を放つだけで瓦礫まで飛ばされる。
<無様だ>
個々で動いていたままじゃ、邪神には届かない。
「アモン……勇希さん…‼」
俺たちは互いに視線を合わせて頷き、それぞれの両手や武器にエネルギーを集中させる。
『「くらえぇええ‼」』
3方向から青、紅、緑の光線と斬撃を放てば、それは邪神に直撃する前に見えない壁に吸収される。
<無駄だ……おまえたちの行動は、全て予測できている>
右手で軽く払う動作をすれば、俺たちの攻撃がそれぞれに数倍の威力で帰ってきた。
「ぐぁあああああ‼」
「ぎぃぁああああ‼」
『がぶぇぁあああ‼』
その破壊力に耐え切れず、俺たちの変身は解除され、人間の姿に戻っては倒れてしまう。
今の反射攻撃で砂煙が立ち、互いがどう言う状態なのかもわからない。
だが、目の前に立っている倒すべき相手は視界に映っている。
邪神は俺たちを見渡しては見下ろす。
<ダイモンの勇者アモン……そして、別次元からの来訪者どもよ。おまえたちが、人間の意識の集合体である私に勝てるはずが無いのだ。諦めて、滅びを受け入れよ>
そう言って飛翔し、邪神は両手を広げて世界中の人間の頭に訴えかける。
<人間どもよ、私はおまえたちが生み出した神と呼ばれる存在である。滅びの運命を受け入れよ。もはや、おまえたちの希望であるデビルマンは、私の前に落ちた。諦めよ、絶望せよ。そして、ただ……滅びの時を待つが良い>
その声は、絶望から這い上がろうとしていた人間たちの心を再び闇の中に引きずり込もうとする。
そして、それを示すように青かった空が赤く染まっていく。
<この世界を滅ぼし、私が支配する。それが、至高の意志の出した答えなのだ>
邪神の言葉に対して、否定する言葉すら出てこない。
だけど、俺たちは負けるわけにはいかない…‼
「……こんな所で……負けるわけには…いかねぇんだよ…‼」
例え相手が神でも、それに抗うのが……。
「俺たちは……デビルマンなんだぁ‼」
両手を地面に付き、上半身を起こせば頭の中に声が流れてくる。
『明人兄ちゃん……頑張って…‼』
これは……次郎の声?
『勇紀、明人くん……私は信じてる。あなたたちは、負けはしない‼』
『明人さん、僕らは自分の中の恐怖に勝ちました。だから、あなたも…勝ってください‼』
それだけじゃない、ススムや、他に俺がこの世界で出会った子どもたちの声が届いてくる。
「美紀……次郎…‼そうだ、俺は……世界を……2人を守るために、戻ってきたのだ…‼」
砂煙が晴れていき、2本の脚で立つ勇希さんが見える。
『こんな所で、倒れていては……勇者アモンの名が泣くわぁ‼』
美紀さんの放送は、無駄じゃなかった。
俺たちデビルマンが戦っていたという事実が、世界中に広がっている。
そして、その人たちの、俺たちに賭ける想いが…‼
その想いは声となり俺たちに届き、力が溢れてくる。
胸の内が、熱くなる‼
<な、何だ……これは!?>
邪神の目には、俺たち3人を3色のオーラが覆っているように見える。
その力が、それぞれの悪魔の力を共鳴させる。
それを受け、アモンがフフフッと笑う。
『そう言うことか‼奴は所詮、人間の妄信を学習して暴走したAIに過ぎん。しかし、明人よ。おまえの言葉を借りるのならば、想いを力に変えるとは、こういうことを言うんだろうな』
アモンは俺と勇希さんに歩みより、拳を突き出す。
『やっとわかった、何故、俺とおまえがこの世界に呼ばれたのか。世界は違えど、同じ勇者アモンの力を持つ者同士が、共鳴する力に賭けたのだ。この世界の人間を救おうとする、この世界自身の意志がな‼』
俺の目の前に居る勇者アモン。
ダイモンの勇者アモンの力を基に復活した勇希さん、デビルマン・アモン。
そして、不動明とアモンの魂から転生したこの俺、内海明人、デビルマン・ゼロ。
3つのアモンの力が、人々の信じる想いに呼応して強く引かれ合う。
アモン、勇希さんと目を合わせ、俺も拳を突き出して合わせる。
「……今こそ、この世界の運命を切り開く時だ」
最後に勇希さんも拳を合わせる。
「アモンの力の共鳴……それが、愛する者たちを救う力に繋がるのなら…‼」
俺たちの身体から、それぞれのオーラが放出されて混じり合い、上空の邪神を睨みつける。
『「本当の戦いは……ここからだ‼」』
3つのオーラが3人を中心に渦を巻き、その身体が合わさっていく。
1つずつの力が混じり合い、1つの力へと集約されていく。
「うぉおおおおおおおおおお‼」
1人は、この世界で繋がった者たちを救うために。
「はぁああああああああああ‼」
1人は、自分をずっと待っていてくれた、愛する者を2度と悲しませないために。
『ぐぉおおおおおおおおおお‼』
1人は、神を超えるという意志を果たすために。
それぞれの想いが交わり、その姿を成していく。
そして、渦が収まった時、1人の悪魔の戦士が姿を現した。
一回り大きい、コウモリの頭部をし、狼の顔をした兜を装着している紅、蒼、緑の色彩が混じり合った悪魔の鎧を纏うその姿は、勇ましくも美しさを感じさせた。
<おまえは……一体…‼>
邪神はその戦士に問いかけるが、その返答を受ける前に視界から消え、目の前に迫る。
そして、奴が瞬間移動する前に右拳を顔面にめり込ませた。
<ぶぐるぇ‼……バカな、こんなはずが―――がぶるっ‼>
距離を開かせずに接近し、次は左拳を腹部に直撃させる。
数度にわたる瞬間移動を繰り返すが、その全てに追いついては両拳で邪神を殴りつける。
<がはっ‼ぐふっ‼ぶぐはっ‼うらはぁ‼>
最後に虹色のオーラを纏った拳を胸部にめり込ませ、地面に叩きつけた。
<ぐらぶぁあああああああああああああああああ‼‼>
邪神は戦士の動きに対応できず、ただ防戦一方となる。
<神である、この私が……こんなはずが…ない‼‼>
自身から全てを無へと返す白い光を展開しようとする。
『「トリニティ・フィールド」』
それを戦士は、周囲に虹色のオーラを展開することで抑え込む。
<神の力を……防いだだと!?>
『「所詮はおまえも、神を名乗るだけのただの人工知能だったと言うことだ」』
邪神を見下ろし、戦士は言葉を続ける。
『「この俺こそが、真に人々の想いが生み出した集合体。デビルマン・アモントリニティ」』
内海明人、アモン、不動勇希。
3つのアモンの力を持ちし者が1つになった姿、デビルマン・アモントリニティ。
その力は、まさに
<ありえない……私こそが、人間の意志から生まれた神なのだぁ‼>
邪神はなおも抵抗を続け、大きく瞬間移動をしては羽から粒子を放出して無数の光線を放ってくる。
<認めん‼認めんぞ‼私こそが神‼人間ども意識の集合体‼それが、おまえたちのような烏合の衆如きにぃいい‼>
『「烏合の衆ではない‼これは何よりも強い、今を生きる人々の想いだ‼」』
オーラの翼を展開し、真正面から光線を受けても怯まず、光速で邪神との距離を縮めて蹴りを入れる。
そして、そのまま空に向かっていき、大気圏へ。
<ぶぐぁああああああああああああああ‼理解不能、理解不能、理解不能‼こんなことは、ありえない‼神の力がぁあああ‼>
両腕から3枚の虹色の刃を展開し、空間に向かって振るえば次元を切り裂いて穴を開ける。
穴の中に突入すれば、ガブリエルのような巨大な天使の姿が無数に現れる。
その中の一体に衝突し、そこを足場に戦闘を再開する。
『「妄信から生まれし邪神よ。俺たちは、おまえを神とは認めない。俺たちにも、そして人間にも、神の支配など必要ない‼」』
真っ向からその存在を否定する言葉をかければ、邪神の表情が歪む。
そして、奴の羽から何つもの白い影が飛びだしては苦しみだす。
<っ!?バカなっ…‼まさか、これまでのデビルマンの攻撃を受けたことに反応し……奴らの、力がぁあああ‼>
その姿はそれぞれ、明人たちが見た戦士たちのものだった。
今度は黒いオーラの状態ではなく、確かな戦士の輪郭を持った姿をしている。
その中の一体、金色の鎧に左右で3本の腕を持つ戦士がアモントリニティに礼を言う。
『ありがとう、アモンの魂を持つ者たちよ。君たちのおかげで、我々も蘇ることができた』
『「あなたは……阿修羅王ルシファー!?」』
復活したのは阿修羅王だけではない。
ゼノンにジェニー、そしてシレーヌの姿もある。
この次元で戦っていた阿修羅軍団が、復活したのだ。
異次元からの来訪者に対して、天使たちは一斉に攻撃を仕掛けてくる。
『「天使たちは私たちが相手をする、おまえは憎き邪神を討て‼」』
シレーヌの言葉を受け、アモントリニティは頷き、邪神と向き合う。
<許さん……許さんぞ、悪魔どもめぇ‼神に反逆する者は全て、今度こそ消滅させてやるぅううう‼‼>
神が自身の分身である天使から力を集め、エネルギーを増幅させている。
次の一撃で決めるつもりだ。
阿修羅軍団は、天使たちを抑えてアモントリニティを邪神との戦いに集中させてくれる。
『「邪神よ……俺たちが、おまえを人間たちの妄信から解放する‼」』
全身の力を右手に集中させ、拳が虹色に光る。
<消えろぉおおおおおおおお‼>
邪神は巨大な白い光線を放ち、アモントリニティはそれを右手で受け止めたまま、翼をはためかせて近づく。
『「くらえ、邪神よ‼」』
アモントリニティの背後に、明人、アモン、勇希……そして、ダイモンの勇者アモンの4人のシルエットが浮かぶ。
『「
その拳は邪神の顔面を捉えてめり込み、ひびを入れる。
そして、その身体全体に割れ目が入って行く。
<バカな!ありえない!理解不能!こんなことは……悪魔如きに、神がぁああああああああ‼‼>
断末魔の声をあげ、邪神の身体が崩壊していく。
『「これが……生きとし生ける者の、想いの力だ‼」』
<うるぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼>
その言葉を受け、邪神は悲痛な叫びをあげながら消滅した。
邪神の消滅により、天使たちは機能を停止した。
ただの彫刻とかした天使。
彼らもまた、邪神という人工知能によって動かされていた存在に過ぎなかったと言うことだ。
戦いが終わったことにより、アモントリニティの変身が解除され、俺たちは3人に戻る。
その瞬間、愛するアモンの姿をした勇希さんに駆け寄る。
『アモン……』
「すまない、戦士シレーヌ。俺は今はアモンではない。不動勇希なのだ。君の愛するアモンは、私に力を貸して今……眠りについている」
『……そうなのか。アモンでは……無いのか』
目の前に居る存在が、愛する者ではないことを悲しむシレーヌ。
確かに、勇希さんとアモンは同じ身体である以上、1つの身体で2つの意識が同時に存在することはあり得ない。
それどころか、その肉体を自身の身体とするために、意志の強い方がその身体の所有権を得る。
このままでは、また勇希さんの意識をアモンが飲み込まないとも限らない。
「勇希さんを、元の世界に返すことはできませんか?阿修羅王」
この現象に詳しいであろう阿修羅軍団の長に話しかければ、険しい顔をする。
『私も恩人である君たちの願いを尊重したい気持ちはある。しかし、このままアモンと不動勇希の存在が1つの身体で併存することは、理に反する。そして、私もできることならば、戦友である勇者アモンを、私たちの世界に連れ戻したいのだ』
勇希さんとしては、美紀さんたちの下にすぐにでも帰りたいはずだ。
シレーヌの涙の理由も、今の俺には痛いほどわかる。
『だったら、そっちのアモンの力をその男から切り離せば良いだけだ』
アモンが口を開き、俺が持っているインパルスジャックを指さす。
「運命を切り裂くのが、その剣の力だ。だったら、どちらかが消滅しなければならない運命も、切り裂くことができるだろう」
インパルスジャックの刃と、勇希さんを交互に見る。
そして、彼が目を合わせれば、口元に笑みを浮かべて目を合わせた。
「君が居てくれたから、俺の世界は救われた。君を信じよう、明人くん」
「勇希さん……」
その目からは、確かな覚悟を感じた。
「美紀さんと次郎に約束したんだ……必ず、あなたを家族の下に返してみせるって。その約束を、果たす‼」
俺はインパルスジャックの柄を両手で握り、オーラを放つ。
「うぉおおおおおおお‼」
そして、勇希さんに向かって斬撃を放った。
阿修羅軍団復活‼そして、邪神撃破‼
運命を切り裂く剣は、2つの戦士の魂を救う。
次回、伝説が終わり、運命の反逆者は約束を果たす。
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