DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
美紀と次郎は、地上から空を見ていた。
アモントリニティの開けた次元の穴から、彼らの勝利を信じ、愛する者たちの帰りを待つ。
そして、遠目からでも1つの光が穴から出てくるのを確認できた。
「あれは…‼」
その姿を見て、感極まっては口を両手で押さえる美紀。
次郎も目を輝かせ、その光が降りたつことを待ちわびる。
それは紫の光を放ち、1人の男を運んで2人の前に舞い降りた。
「美紀さん、次郎……約束は、守ったぜ」
俺はマスクの下で微笑んで語り掛け、抱えていた勇希さんを床に降ろす。
彼の姿は人間に戻っており、ゆっくりと2人に歩みよる。
「美紀……次郎……」
愛する妻と息子に近づけば、3人は再度熱い抱擁をする。
「帰ってきたのね……ずっと、待ってたのよ…‼」
「ありがとう、待っていてくれて。そして……」
次郎に目を向け、膝を曲げて視線を合わせる。
「パパ……」
「ずっと、ママと一緒に悲しい想いをさせてすまなかったな。会えて嬉しいよ、次郎」
父に頭を優しく撫でられ、次郎は溜まらずに涙を流してはギュッと抱き着いた。
「もう、どこにも行かないよね……パパァ‼」
「ああ、これからはずっと一緒だ」
抱き止めながら、涙を流す勇希さん。
笑顔を交わす3人を遠目で見ていると、彼は立ち上がって俺の方に振り返る。
「君には、何度感謝してもし足りない。この世界のこと、俺を蘇らせてくれたこと、そして、アモンと俺の運命を変えてくれたこと。全てが、君のおかげだ」
「俺だけの力じゃないです。アモンも力を貸してくれましたから。……いや、今のアモンって言うのは、俺の世界の……さっきのアモンの話で…‼」
アモンと言う言葉だけだと、勇希さんと合体していた方と一緒になってしまいややこしくなる。
しかし、それに対して、彼はフフっと笑ってくれた。
「わかっている。彼にも感謝しているよ。……今頃、俺の知るアモンも元の世界に戻っていることだろう」
そう言って、次元の穴を見つめる勇希さん。
俺はインパルスジャックの力で、彼とダイモンの勇者アモンの繋がりを断ち切った。
その瞬間、1つの身体に宿っていた2つの魂が切り離され、次元の狭間に居た影響なのか、アモンの身体が具現化されて2つの身体に分かれた。
これで、勇希さんとアモンは別々の存在として、それぞれの愛する者の下に戻ることができたんだ。
最後に2人が交わした、力強い握手を俺は忘れない。
ちなみに、俺の知るアモンの方は次元の穴を維持するために留まってくれている。
勇希さんたちとの別れの時間を、与えてくれたんだ。
『人間たちよ。私の声が聞こえるだろうか』
テレパシーだろう、頭の中に直接、阿修羅王の声が響く。
『私は阿修羅王ルシファー。神に反逆する、阿修羅軍団の長である。君たちに宣言する。3人の勇者の活躍により、君たちを苦しめる神の脅威は消え去った‼もう、恐怖に怯える必要はない。君たちは、神の支配から解放されたのだ‼』
阿修羅王のテレパシーに対して、人々は歓喜し、地上には喜びの声が響き渡る。
愛する者や家族と抱き合う者、友人と肩を組む者、固い握手を交わす者など、その表し方は様々だ。
その光景を見て、俺は笑みをこぼす。
「これで、この世界での俺の役割も終わりだな」
小さく呟けば、次郎が歩み寄ってきて見上げてくる。
「明人兄ちゃん……もう、行っちゃうの?」
悲しそうな声で聴いてくる彼の肩に、勇希さんが手を置く。
「彼にも、彼の帰りを待つ大切な人たちが居るんだ。次郎が、パパを待っていてくれたみたいにな」
そのフォローを受け、俺は次郎と視線を合わせる。
「次郎には、ママとパパが居るだろ?もう寂しくない。おまえは強い……2人のこと、大切にするんだぞ?」
小指を出して前に出せば、彼も小指を絡ませてくれた。
「うん……約束するよ‼」
涙をぬぐい、強い眼差しで返してくれる次郎。
俺がこの世界で戦った理由は、世界を救うためだけじゃない。
この子に、家族を失う悲しみを感じさせたくなかったからだ。
約束を交わして立ち上がり、次元の穴を見上げた後で3人に視線を戻す。
「次郎…美紀さん……そして、勇希さん。あなたちと会えて良かった。あなたたちが、また会うことができて良かったです」
「私たちも、あなたに会えて良かったわ。……元気でね」
俺は美紀さんからの励ましの言葉を受け、背中を向けて翼を広げる。
そして、3人に横目を向ければ、視界が涙で潤んでしまう。
その時、一瞬だけ願望のような錯覚が見えた。
勇希さんたち3人が、幼い頃の俺と、父さんと母さんに見えたんだ。
そして、小さく聞こえないように呟いた。
「ありがとう……さようなら。次郎……父さん、母さん」
翼をはためかせ、後ろを振り返らずに次元の穴に向かって飛翔する。
俺の居るべき世界は、ここではない。
この神の侵略を受けた世界が、人間たちが手を取り合い、復興していくことだろう。
内海明人……デビルマン・ゼロの居るべき場所は、運命に抗うための戦場だ。
この世界の運命を変えたからと言って、俺の戦いは終わらない。
そして、俺の大切な者、愛する者はこの世界には居ない。
帰ろう、俺の居場所に。
「今、帰るぜ……美佐樹‼」
次元の穴に突撃すれば、そこではアモンが腕を組んで待っていた。
『阿修羅軍団は、もう自分たちの世界に戻って行ったぞ。俺たちも戻るか』
「そうだな……。ありがとう、アモン。今回の戦い、おまえが居なければ勝てなかった」
素直に礼を言えば、奴は無言でエネルギー球を放ってきたのでそれをインパルスジャックで切り裂く。
「何すんだよ!?」
『勘違いしているようだが、俺はおまえの仲間ではない、敵だ。今回は、この世界から出るために、一時的に手を組んだまでのこと。これは1つ貸しだ』
「……あぁ~、そうかよ‼変わらねぇな、おまえは」
アモンの頑固さに呆れていると、次元の穴が完全に塞がっていった。
「……今の戦いで、俺たちの世界の神との因縁とも決着がつけばよかったんだけどな」
『奴と創造主は無関係な存在だろう。……それに、あれは神ではなく暴走した人工知能が生み出した虚像。本来の神の力は、あんなものではない』
「これからの戦いのために、もっと強くならないといけない……そう言うことだよな」
『そんなことは言うまでもない』
ヴァイスロックとインパルスジャックの力でも、俺1人では邪神に勝つことはできなかった。
もっと、自身の力を高めなければならないことを、改めて自覚した。
俺が守るべき者たちを、守り抜くために。
インパルスジャックに力を込め、空間を切り裂けば俺たちの世界の次元が開かれる。
「帰ろう……俺たちの居場所に」
『そして、俺たちの戦場にな』
2人で次元の穴を通り抜ければ、アモンはもう用が無いと言うように俺から離れていく。
『この戦いで、おまえの実力を改めて認識した。しかし、まだ足りん‼もっと強くなれ。この勇者アモンに倒されるためになぁ‼』
その言葉を最後に、紅の鎧の勇者は光速で遠ざかって行った。
アモンが離れていけば、奴のあの世界での行動を思い返す。
勇者アモンの魂が引かれ合い、あの世界に集まった。
俺にはアモンの魂の転生者として引かれたのはわかる。
しかし、勇者の魂は1つだ。
不動明の魂が2つに分かれ、俺と白藤のように分かれない限り。
まさか、あのアモンも……。
いや、それにしては白藤と同じような共鳴した感覚はない。
「アモン……おまえは一体、何者なんだ?」
自身のライバルに対する新たな疑念が生まれながらも、俺は自身の帰るべき場所に急いだ。
約3日も無断で家を開けていたんだから、美佐樹も怒るだろうな……。
嫌な想像を胸にしながら、俺はマンションの自分の部屋のドアを開けた。
「ただいま!」
無事、異次元から帰還した明人とアモン。
これで『異次元の戦い』編は終了‼……かと思うじゃないですか~?
まだ終わらんよ‼
最後にお決まりの!みなさんお待ちかねの!『例の展開』になりますからね‼しかも、2本続けて‼(ぶっちゃけ、作者はこれが書きたかった)
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