DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
『頼む……お願いだ。誰でも良い…』
黒い空間の中。
俺はその場に全裸で浮いており、辺りを見渡せど何も見当たらない。
この感覚、覚えがある。
精神の世界に入った時、俺の目の前にはいつも、最初は黒い空間が広がっていた。
誰だ?
俺の頭に、誰かの声が響く。
今まで聞いたことがない声だ。
『誰か……戦士の力が、必要だ。俺の世界を……俺の、愛する者たちが住む世界を…‼』
強い意志を感じる。
悲痛な願いが。
『助けてくれぇ‼この声が、届くのなら……俺の救えなかった……世界を…‼』
その声は段々と弱くなっていき、遠くなっていく。
最後まで、苦しそうな声だった。
空間が切り裂かれ、白い光が差し込む。
その光に身体が包まれていく。
そして、空間の裂け目に吸い込まれていく。
「これは…!?何だ!?一体……何が起きようとしているんだ!?」
状況が読み込めずに流れに身を任せていると、空間の裂け目の先に広がっていたのは、不思議な異次元の空間だった。
「うぐぁあああああ‼」
身動きが取れずにいると、頭の中に聞き覚えのある声が響く。
『明人よ、変身しろ‼このままでは、次元の狭間を漂う事になる‼』
俺の中に宿る悪魔、ゼロが語り掛けてくる。
「ゼロ!?おまえの声が聞こえるってことは……これは、夢じゃないのか!?」
『現実だ‼最悪の事態を避けたければ、すぐに変身するのだ‼』
「わかった。来い‼ゼロドライバー‼」
夢じゃないなら、俺にもやりようはある。
目の前にゼロドライバーを召喚して掴み、ベルトを巻いて掛け声をあげる。
「デビルっ‼」
純白の鎧を召喚して装着し、デビルマン・ゼロ、変身完了。
「何だって、いきなり次元の狭間なんかに飛ばされてんだよ、俺は!?」
『考えるのは後だ。今は元居た空間に戻れ‼』
ゼロの言う通りだ。
漆黒の翼を広げてはためかせ、空間の裂け目に戻ろうとする。
しかし、何かに引き寄せられるように後ろに引っ張られる。
その力は強く、デビルマン・ゼロの力を持っても抗えない。
『この声が届く戦士よ‼俺の世界を……俺の愛する者が居る…世界をぉ‼』
引き寄せられる力が強くなるにつれ、声がはっきりと聞こえてくるようになる。
苦しさに耐えながら、俺に訴える声が。
まさか、この俺を包む光は、この声の人が……。
愛する者が居る世界と言った。
この人も、守りたい誰かが居るのか。
だったら……。
「あんたの声、確かに聞こえるぞ‼俺は戦士だ‼」
悲痛な声に応え、抗うことを止める。
『明人、何をしている!?』
「助けを呼ぶ声が聞こえるんだ。この声を無視することはできないだろ」
『しかし、このままでは、おまえは自分の世界に戻れるかわからないのだぞ!?』
「……戻るさ、必ず。ここで助けを求める声を見捨てたら、俺はデビルマンではいられなくなる」
俺がデビルマンで居るために、人の道に外れたことはしたくない。
ゼロは少し唸ったが、すぐに承諾してくれた。
『承知した。おまえの想う通りにすれば良い、明人』
「悪いな、ゼロ」
美佐樹や加藤家の家族、了さん、ジュンさん、甲牙、ダンテの顔が浮かび、必ず戻ると心の中で誓う。
光の導きのままに翼をはためかせ、声に問いかける。
「俺は内海明人、デビルマン・ゼロだ‼あんたの世界に今、何が起きている!?」
俺のデビルマンと言うワードを聴き、声の主は驚く。
『デビルマン!?……そうか、ありがたい‼俺の世界が、異次元の邪悪な神の侵略を受けている。他の世界のデーモンソルジャーよ、世界を救ってくれ‼さもなくば、世界が……美紀が――――』
途中から声にノイズが走り、途切れ途切れになる。
何だ?今……美樹と、言ったのか?
いや、まさかな……。
「この光の導きに従えば、あんたの世界に行けるんだな!?」
『…そうだ……頼…む……。俺の……愛……する……世界……を……かぞ…く…をぉ―――‼』
導きのままに飛行を続ければ、1つの大きな穴のようなゲートが見えてくる。
「あそこか!?……っ‼がぁあああああ‼‼」
穴に身体が吸い込まれ、強風で飛行が不可能になる。
そして、その流れのままにゲートを通り抜ける時、遠くから紅い光の球が一瞬の内に俺の横を通り過ぎて行った。
今のは……まさか!?
それを気にしている暇も無く、俺もゲートの中に吸い込まれた。
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ゲートの先に広がっていたのは、青い空だった。
そして、俺の身体は――――降下していく。
「って、いきなり空からの急降下かよー!?」
変身は解除されていない。
翼を上手く動かし、風に乗るようにして姿勢を安定させる。
「ふうぅ、危なかった。……な、何だよ…これ!?」
上空から地上を見れば、唖然としてしまった。
一言で表すなら、全てが空虚だ。
マスク越しに視界を拡大して見たり、建物を透視して生物の姿を捉えようとするが、どこにも誰も居ない。
「どうなってるんだ…?——————っ‼」
頭上から急に影がかかり、日光を隠す。
見上げれば、巨大な戦艦のような彫刻が目の前にあった。
そして、機械的な声が聞こえてくる。
<生体反応確認。デリートする>
戦艦から人型の戦士が出てきては飛行ボードに乗って迫ってくる。
「問答無用ってか!?いいぜ、やってやるよ‼」
次から次へと出現する戦士たちは、両手で光線銃を構えて一斉射撃を仕掛けてくる。
「おまえたちにやられてやる、デビルマン・ゼロじゃねぇ‼」
両腕から3枚の刃を展開し、翼をはためかせて回避しながら接近し、1体1体切り裂いていく。
「クラッシャー・スラッシュ(破壊者の斬撃)‼」
そして、切り裂いた時に気づく。
切断面から血は流れず、代わりに回路が露わになる。
「こいつら……アンドロイドか!?」
驚いている暇などなく、次々と増えるアンドロイド戦士を倒していくが物量で押されてしまう。
っ‼ゼロフォーム……あるいは、ヴァイスゼロに変身できれば…‼
絶え間ない攻撃の中、フォームチェンジをしている余裕はない。
両腕を交差させて防御するが、それでも後ろに押されてしまう。
そして、翼に被弾してしまい、数か所に穴が空く。
「しまった…‼うわぁあああああああ‼」
飛行不可能になって落下し、艦船型の彫刻に手を伸ばせど届かない。
落下していく俺を追撃することなく、アンドロイド戦士は上空に留まる。
無数の戦士に、その本体の戦艦。
これは一体……。
力が抜けていく感覚に襲われながら、意識が遠のいていった。
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1人の少年が、人の居ない街の中を歩く。
この子は見ていた。
上空で戦う、純白のヒーローが戦う姿を。
空から見られないように建物の影に隠れながら、少しずつ前に進んでいく。
ヒーローが落下した場所を目指して。
「あ、居た!」
少年は見つけた。
落下の衝撃によって地面が凹んでおり、その中心にヒーローはうつ伏せで倒れていた。
変身は解除されて裸の男性の姿になっていたが、少年は彼が確かに先ほどまで戦っていたヒーローだと確信する。
恐る恐る近づき、その横顔を見た少年は、今まで写真でしか見たことがない、母から聴いたその人物の面影を見る。
「……パパ……?」
声をかけられれば、ヒーローは目を覚まし、薄く開けて少年を見上げる。
「…あ?……パ…パ…?」
ヒーローは身体を起こし、少年と目を合わせる。
すると、興奮気味に抱き着いてきた。
「パパ!パパ!パパなんでしょ!?」
「はぁ!?……パパ……って、どういう…ことだ…?」
頭が混乱していると、遠くから女性の声が聞こえてくる。
「次郎ちゃ~ん‼どこに居るの~!?早く出てきてぇ~‼外は危険なのよ~!?」
多分、子どもを探している母親の声だ。
「ママー‼居たよ、居たんだ‼パパが、帰ってきたんだー‼」
少年が興奮したまま大声をあげれば、ポニーテールで髪をまとめた女性が俺たちの位置を把握し、走って近づいてくる。
「次郎‼どう言うこと!?パパが居たって――――え!?」
女性が近づき、少年と俺が視界に入れば目を見開いた。
そして、ゆっくりと歩みよっては目の前で膝を付いて唖然としている。
「そんな…でも……そっくり。若い頃の……彼に…‼」
その目からは一筋の涙が零れる。
涙を流す女性と喜ぶ少年を交互に見て、俺は困惑が隠せなかった。
「何が……どうなってんだぁ?」
この時、この俺、内海明人は気づかなかった。
目の前に居る親子との出会いが、この世界の運命を変える物語の始まりだったと言う事を。
そして、2人の信じる想いが紡ぎだした、奇跡の物語の始まりだったのだと言う事にも。
明人が遭遇した母子の正体は、次話で判明‼
そして、明人とそっくりな男の正体とは…‼
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