DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
今、俺はマンションの一室に通されている。
そこはかつて、その家族で父親の役割を担うはずだった男の部屋だ。
「この部屋の服、好きなものを選んでもらっていいからね」
「す、すいません」
ぎこちなく返事をして謝り、クローゼットの中の服を拝借する。
高身長の男だったのか、袖が少し余ってしまう。
着替えを済ませて辺りを見れば、机の上に置いてある人の顔をしたロボットが視界に入った。
「ロボット…?発明家だったのか?この家の主は」
部屋を出れば、リビングで少年が椅子に座って不貞腐れていた。
「……まだ、気に入らないのか?俺が、おまえのパパじゃなかったことが」
近づいて声をかけると、顔を逸らしながら「そうじゃないよ」と答えた。
「だったら、そんな膨れっ面しないでくれよ…。はぁ」
たまらず溜め息をつけば、「こら、次郎」とコップを3つ置いた盆を持って女性がキッチンから出てきた。
「ごめんなさいね、この子。パパと会えたと思ったら、違う人だったから恥ずかしいみたい」
口に手を当てながらフフっと笑い、テーブルにコップを並べてくれた。
そして、少年と女性は並んで、俺は2人に対面する形で座る。
「改めて、自己紹介するわね。私は不動美紀。そして、この子は息子の次郎って言うの」
「内海明人です。信じられないかもしれないですけど、異次元から来ました」
紹介されても、次郎は不満そうに口を尖らせて目を合わせてくれない。
「ほら、次郎も。ご挨拶は?」
「……初めまして。こんにちは」
挨拶も乗り気じゃないみたいだな。
美紀さんは次郎の頭を撫でながら苦笑いでフォローする。
「本当にごめんね~?普段は礼儀正しい良い子なんだけど、初対面の人には内気な所があるのよ。気にしないでね?オホホホっ」
笑って誤魔化そうとする美紀さんを横目に、次郎の目は俺と棚の上にある写真立てを交互に見やる。
それに気づき、立ち上がって棚の上に飾ってある写真を手に取れば驚いた。
「確かに、俺にそっくりだな。見間違えても、仕方ない。恥ずかしいことじゃないぞ?」
笑いながら言えば、次郎は頬を染めて俯く。
「そんなんじゃないやい!」
素直になれないのか、椅子から降りて自分の部屋に戻って行ってしまった。
「次郎!」
美紀さんが追いかけようとするのを俺が「良いんです」と止める。
「でも…」
「父親に似ている男が現れたら、誰だって戸惑いますよ。俺だって、これを見て驚きましたから」
写真立てを彼女に渡せば、それを見て黄昏るような表情になる美紀さん。
「もう……10年が経つわね。あの人が……勇希が、異次元の戦場に行ってから」
「異次元の……戦場?」
美紀さんは頷き、少し悲しそうな笑みを浮かべる。
「信じられないかもしれないけど、この世界には昔、悪魔の力を使って戦う人たちが居たの。彼らはデーモンソルジャーと呼ばれていたわ。私の夫も、国防省が組織した魔人の部隊『デビルマン部隊』の隊長をしていたのよ」
「デビルマン……だって!?」
この世界にもデビルマンが居たって言うのか!?
それなら何故、今、上空であんな危険な兵器が飛び回っているんだ!?
「あなたの旦那さん……そして、次郎の父親、不動勇希さん。その人も、デビルマンだったんですね」
「も?……そう言えば、次郎がおかしなことを言っていたわ。あなたが、ヒーローになってお空の悪い奴らと戦っていたって……」
腕を組んで不審がる美紀さんに対し、俺はゼロドライバーを取り出して見せる。
「見ていてください。……デビルっ」
ベルトを腰に巻いて変身すれば、デビルマン・ゼロに変身する。
純白の鎧を装着した俺を見て、美樹さんは驚愕の顔を浮かべる。
「あなたもっ……悪魔の戦士だったのね!?」
「そうです。俺はデビルマン・ゼロ。破壊皇ゼロと呼ばれる悪魔の力を宿した人間です」
「そう……そうなのね。この世界にも、まだ……デビルマンが残っていたなんて、思ってもみなかったわ」
美紀さんは話してくれた。
異次元の戦場に向かったのは、不動勇気だけではなかった。
全ての悪魔の力を宿す者たちが別宇宙に向かったのだそうだ。
そして、その人間たちの意識は、悪魔の中に消えたと本人から聞かされたことを。
「じゃあ、勇希さんの意識も……」
「ううん、私はそうは思わない。例え、可能性が限りなく0に近いとしても、きっと……。勇希は異次元の宇宙の戦場から、帰ってくる。私も次郎も、そう信じているの」
強い意志を込めて言う彼女の想いに対して、目を逸らすことができなかった。
悪魔に意識を乗っ取られる感覚は、俺にも覚えがある。
だけど、デビルマンの意識が悪魔の中に消えるのは聴いたことがない。
そこから、消えた意識を取り戻すことは可能なのか?
「……次郎は、父親がデビルマンだってことは知ってるんですか?」
「いいえ、言ってないわ。今は別の宇宙の戦場に行って、ヒーローをしてるって伝えた。パパが悪魔なんて知ったら、恐がるかもしれないから」
「それも……そうかもしれませんね」
この世界でも、悪魔の力は恐れられる存在なんだな。
まぁ、当然か。
「美紀さん、聴きたいことがあります。あの空を飛んでいる巨大戦艦……あれは一体、何なんですか?それに、街に人の姿が見えなかったのは何で…」
「……あれは、天使よ。10年前に、似たような物を見た気がするわ。勇希たち……いいえ、その時にはもう、アモンだったのかもしれない。悪魔の戦士たちは、あの巨大な敵に立ち向かっていったわ」
アモン…!?不動勇希の力となったデーモンは、アモンだったのか!?
俺にとっては衝撃の事実だけど、ここで話を遮るわけにはいかない。
「天使を倒した後、戦士たちは異次元の戦場に旅立っていった。そして、今、10年の月日を経て、また過去の脅威が繰り返されようとしている。……そう、あれは3か月前のことよ」
美紀さんは話してくれた、この世界に何が起きたのかを。
-----
その日は、いつもと変わらない晴天の平和な1日だった。
人々はいつも通りの日常を送り、これから来る脅威に気づく兆しも無かった。
そんな時、日本の上空で強い光が炸裂し、空間にひびが入った。
そして、それを突き破り、古代ギリシャの彫刻を意識したような巨大な戦艦が姿を現した。
人々は空を見上げ、未知の存在に恐怖を覚える。
「何だ、あれは!?」
「きゃぁ~、恐い‼」
「不気味ぃ~」
それぞれに声をあげる中、人々の頭に声が直接流れ込んでくる。
<愚かなる人類よ。今わの際、一時の平和は楽しめたか?>
機械的な声が聞こえ、日本中が騒然となる。
<私は神の分身、大天使ガブリエル。これより、この宇宙を支配するため、再度の攻撃を仕掛ける。人類よ、神の名の下に、おまえたちは制裁を受けるのだ>
戦艦の砲台が富士山に向き、強力なビームが放たれる。
ビウゥゥゥゥゥ……ドカーンっ‼
富士山が燃え上がり、それを皮切りに人々の悲鳴が日本中で響き渡る。
空を見上げながら、少しでも安全な場所に逃げようとする人類。
<逃げても無駄である。滅びの運命を受け入れよ>
無差別にビームをまき散らし、人類に攻撃を仕掛けるガブリエル。
そして、戦艦からは無数のアンドロイド戦士が出撃して人類を追いつめていく。
自衛隊が出撃し、戦闘機や戦車などで迎撃しようとするが、人類の技術を超越した天使には傷1つ付けることはできなかった。
「きゃぁああああ‼」
「助けてくれぇええええ‼」
悲鳴や助けを求める声が響く中、ガブリエルが地上に展開する光のフィールドが人々を吸収していく。
<さぁ、もっと泣け‼助けを請うて見せろ‼おまえたちの絶望が、神の器を満たすのだ‼>
大天使の笑い声が、全ての人類の頭に流れ込む。
そして、大天使の侵略行為が3か月続いた後、世界中の人口は残り3割まで減少してしまった。
-----
「大天使……ガブリエル…」
大天使の力は想像以上だった。
この世界にデビルマンが居ないなら、太刀打ちできないのも訳はない。
それに、俺1人でも戦えるかどうか……。
「残った人類は、今、どこに?」
「地下のシェルターに隠れてるわ。でも、それもいつまで持つかはわからない」
「シェルターがあるんですか?じゃあ、何で美紀さんと次郎は地上のこの家に?」
「10年前のことを経験しているから、わかるのよ。いくら逃げても、意味はないって。だから、地下でビクビク怯えて生活するよりも、最後まで自分らしく……あの人の帰りを待ちながら、大事な1人息子と暮らす、当たり前の生活を続けることを選んだのよ」
強い人だと思った。
日常の中に圧倒的な恐怖があるにも、それに怯えている様子もない。
しかし、次郎は不安でいっぱいだろうな。
「本当は、次郎1人でもシェルターに逃がそうとしたのよ?だけど、『パパが居ない今、ママを守れるのは僕だけだから』って、一緒に居てくれている。そう言う勇敢な所は、勇希に似たのかしらね」
勇希さんの写真を見つめながら、フフっと笑う美紀さん。
俺もその写真を見て、この世界に導いた声を思い出す。
もしかしたら、あの助けを求める声は……。
不動親子と接し、明人の中で何かが胸をくすぶる。
勇希の帰りを信じる美紀と次郎の想い、ガブリエルの襲撃。
次回、2人目の戦士が手土産を下げながら彼の前に現れる。
感想、評価、お気に入り登録、いつもありがとうございます。