DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
別次元のアモンの敗北を信じることができず、俺は声が出なかった。
そのアモンの力の元になっているのは、勇希さんだ。
肉体が消滅してしまったのなら、もう2人の本の一粒の希望も無くなってしまう。
「こんなこと…。美紀さんと次郎に何て言えば……」
『何だ?もうこの世界の人間と接触したのか。安易な行動に出たものだな』
「そんなんじゃない‼……2人は、戦いで倒れた俺を助けてくれた恩人なんだ」
昼の出来事を離せば、勇者アモンはそれを聞いて腕を組みなおしてフンっと鼻を鳴らす。
『これもまた、何かに引き寄せられた因果かもしれんな』
「……やっぱり、あんたもそう思うのか?アモン」
俺もその可能性は疑っていた。
倒れた俺を助けてくれたのが、アモンの力と適合した勇希さんの家族。
こんなことが、偶然で起きるだろうか。
『この世界もまた、運命の因果が関係しているのかもしれん』
「運命……また、神の仕業か?」
『いいや。今回の場合は逆だろう。神ではなく――――この世界の意志』
アモンが意味深なことを言い、俺は眉間にしわを寄せる。
「世界の意志が、俺たちの因果に干渉したって言うのかよ?」
『ありえない話ではないだろう。この次元の地球は、誰かに救いの手を差し伸べられなければ滅ぶしかない』
「……神の侵略と、それに抗おうとする世界の意志か」
兜を見つめれば、意識を集中させても何も声は聞こえない。
何も感じないんだ。
ただのオブジェクトのようだ。
「ガブリエルを撃てば、俺たちは元の世界に戻ることができるのか?」
『おそらくな。次元を操る天使ならば、その力も使いようだ。しかし、事はそう簡単ではない』
そんなことはわかっている。
美紀さんの話では、この世界に進行した大天使は、悪魔の軍団が総力を持って倒したらしい。
それを俺とアモンだけで討とうというのは、簡単なことじゃない。
「だけど、やるしかない。この世界にも神の脅威が迫っているのなら、それを打ち破るのがデビルマンの戦いだ。そこが、どこであろうとな」
『ふっ、強気なことを言うようになったものだ。おまえが加藤美佐樹以外のことで、強い眼をするとはな』
「茶化してるのか?」
『どうだろうな』
アモンは翼を広げ、俺に背中を向ける。
『その遺品は、おまえに預ける。好きに使うが良い』
「好きにって……。アモン、あんたはこれからどうするんだ?」
『世界が違おうと、おまえと馴れ合うつもりはない。時が来るまで、俺は好きにさせてもらう』
そう言って、アモンは闇夜の中に姿を消した。
勝手な奴だぜ、相変わらず。
しかし、アモンも導かれたということは、それが奴の言う『世界の意志』なのか。
俺の居る世界に助けを求めるなら、マジンカイザーの力を持つ甲牙や、魔王の力を持つダンテ、それに大魔神サタンとして了さんや、ジュンさんも導かれてもおかしくはない。
何故、俺とアモンだけが、この世界に誘われたんだ。
「世界を救ってくれ……か。そう言うなら、もっと精鋭に声をかけてほしかったぜ」
あの声が不動勇希のものだったかどうかは、確証は持てない。
だけど、最後に『美紀』と言う言葉を呟いていたことは耳に残っている。
兜を見つめ、言葉をかける。
「あんたの帰りを待っている家族が居るんだ。世界がこんな状況なのに、ヒーローのあんたは何をしていたんだ?」
言葉が返ってくることはないことはわかっている。
だけど、俺は2人の想いを聞いてしまった。
それを伝えないわけにはいかないと思ったんだ。
「死んでる暇なんて無いだろ。魂が消えている場合じゃないだろ!?あんたの奥さんは、あんたの息子に言ったんだ。パパは必ず帰ってくるって。あんたが、自分たちの元に戻ると10年間信じ続けているんだぞ!?」
手が震えだし、自分が興奮状態になっているのを自覚する。
それでも、言葉が止まらない。
「あんたの息子は……次郎は、パパが強いって信じてる。パパが戻ってくるまで、自分がママを守るって言ったんだ‼自分の子どもの期待ぐらい……答えてやれよ、不動勇希‼」
俺の叫びに乗せた訴えに対して返ってきたのは、物言わぬ静けさだった。
しかし、これは錯覚だろうか。
一瞬だけ、目の前の兜が二重になって見えた。
結局、兜を持ち帰ることになり、不動家のマンションに戻る。
次郎はともかく、勇希さんがデビルマンだったことを知る美紀さんがこれを見れば、衝撃を受ける可能性は高い。
絶対に、見られないようにしないといけない。
勇希さんの部屋に行き、兜をクローゼットの中に仕舞う。
ここなら、絶対に見つからないはずだ。
リビングに戻ってソファーに寝転がり、考え事をする暇も無く夜が明ける。
朝日が部屋に差し込み、新しい1日の訪れを告げる。
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この世界の朝は、ラジオから始まるらしい。
テレビをつけても誰も放送していないが、地下ではまだ根強くラジオは流れているらしい。
『皆さん、おはようなのだ!今日も良い朝なのだぁ~。さてさて、今日も今日とて、みんなを元気にするラジオをお届けするのだ!アルフォンス先生のぉ~、ラジ……ジッ……ジィーーーーー』
いきなり、ラジオにノイズ音が混じり、何も聞こえなくなる。
「なぁ~に~?この機械、そんなに古い機種じゃないはずなんだけど」
美紀さんが不満を漏らしながら、平手で機械を叩いたりして荒行時で直そうとすれば、すぐにノイズは治まった。
しかし、ラジオからはしばらく静寂が流れる。
「・・・もしかして、止め刺しちゃったかしら~?」
「もぉ~、ママァ~」
苦笑いで頬をかきながら言う美紀さんに、次郎が呆れたように言う。
しかし、機械の故障などではなかったことは、すぐにわかった。
再び、ザーザーとノイズ音がなった後で、ラジオから声が聞こえてきたからだ。
<――――……愚かなる人類よ。安息の時は終わりだ。神の目覚めは近い>
それは大天使ガブリエルの声だった。
奴は、ラジオを電波ジャックしたのか!?
<神の器が満ちるまで、残りあと少し。神が降臨するカウントダウンが始まったのだ‼>
神の降臨を告げるガブリエルの声は歓喜に満ちている。
<残された時間を、怯え、恐怖し、絶望しながら待つが良い。そして、この世界に新たに現れたデビルマンよ。おまえに神の降臨を止めることができるかな?>
これは人類に対する宣告であり、俺に対する挑発だ。
<精々足掻くことだ。悪魔如きの力など、神には届かぬと知るが良い。約束の時、人類も、おまえたちも、無へと還るのだ>
それ以降、ガブリエルの声は聞こえなくなり、ラジオは正常に戻る。
この放送、アモンも聴いていたのかはわからない。
しかし、ガブリエルの言う『神の降臨』は間近に迫っていることを直感した。
この事態に対処できるのは、俺とアモンしかいないだろう。
悪魔の力を持つ戦士2人で、ガブリエルを止めなければならないんだ。
「明人くん……さっき、ガブリエルが言ってた、デビルマンって……」
「俺のことです。そして、あいつは邪悪なる神をこの世界に呼び出そうとしている。そうなった場合、俺でも太刀打ちできるかどうか……」
神の力を持つ者と戦ったことはあっても、俺は神と戦ったことがあるわけじゃない。
ガブリエルの計画通りに事が進めば、俺とアモンだけで勝てるかどうかはわからないんだ。
「明人兄ちゃん……」
次郎が顔を見上げてくる。
その顔は不安に染まっており、目が泳いでいる。
ガブリエルを倒せば、それで済む話なのか?
いや、奴を倒せたとしても、それは人類の6割を犠牲にすることになる。
残された美紀さんや次郎たち、4割の命を救うために、それは仕方がないことだと割り切れるのか?
俺はまた、自分の力不足で、多くの人を犠牲にすることになってしまうのか…‼
「……っ‼」
顔を上げ、ベランダに出れば飛び降りる。
「明人くん!?」
驚く美紀さんの声に耳を貸さず、俺は変身して翼を広げて空を飛ぶ。
何かないのか、方法は!?
ガブリエルを倒そうと倒すまいと、この世界の人類は多くの命を失うことになる。
こういう時、いつも俺はどうしていた?
了さんに考えを仰いでいた。
甲牙に喝を入れてもらっていた。
ガーラさんに諭してもらっていた。
冬夜やダンテなど、他の仲間も支えてくれた。
そして、何より……美佐樹が折れそうな心を救ってくれていた。
しかし、今はここには俺とアモンしか居ない。
俺が決めなくちゃいけないんだ。
この世界を救う、数少ない戦士として。
世界が変わっても、やっぱり苦悩する明人くん。
しかし、いつも彼を支えてくれている仲間や恋人は居ない。
彼の心の成長が、今、試される。
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