DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
気持ちの整理がつかないまま、飛行を続けていた時、突然地上から子どもの悲鳴が聞こえてきた。
「助けてぇ~~~‼‼」
その声に身体が反応し、降りてみるとアンドロイド戦士の部隊が子どもを追い回しているのが視界に入る。
「やめろぉおお‼」
全身にオーラを展開し、光線を乱れ撃ちする。
「クラッシャー・ビーム(破壊者の光線)‼」
すぐにアンドロイド戦士を一掃し、子どもたちの前に降りる。
さっきのガブリエルの放送を聞いて、地下から人が出てくるとは思えない。
地上に住んでいる人類は、美紀や次郎だけじゃないってことか。
「ダメじゃないか、今は外は危険なんだぞ?お父さんとお母さんは、どうした?」
膝立ちになって聞けば、両親という言葉が禁句だったのか、小さい子が「ママ……パパァ~……うわぁあああんっ‼」と泣き出してしまった。
それに戸惑ってしまうと、その中でも年長者の子どもが泣いている子をあやしながら言う。
「僕たち……お父さんも、お母さんも居ないんです。全部……あの、今の悪い奴らに…‼」
3か月の襲撃期間中に、親を失った子どもたちか。
可哀想に。
「あなたは……僕たちを助けてくれる、デビルマンって言う正義の味方ですか?」
「え!?あ、ああ……俺はデビルマン・ゼロ、内海明人だ」
変身を解除して人間の姿を現し、子どもたちは目を見開く。
「お兄ちゃんが、悪い奴らをやっつけてくれるの!?」
「私たちを、助けてくれるんでしょ!?」
デビルマンという言葉が、子どもたちに希望を与えているのか。
ガブリエルの、あの放送で。
奴を倒し、神の降臨を阻止すれば、この子たちを助けることに繋がるのか?
だけど、それはすなわち、この子たちの親を見捨てることになるんじゃないか。
心の影は晴れない。
ヒーローを歓迎したい子どもたちの今の住処に案内される。
子どもたちが住んでいるのは、今は使われていない工場の倉庫だった。
そこで共同で生活し、その中で一番年上の少年がまとめているらしい。
「僕の名前はススムです。ようこそ、僕たちのアジトへ」
「……子どもたちだけで作ったにしては、真面な場所だな」
倉庫の中を見回せば、即席でも子どもたちなりに考えた作りになっている。
床を見れば、お菓子の袋がチラホラと見える。
「僕たちは、大人が地下に逃げたので空になったコンビニやスーパーから商品を取って生活しています。それも、いつまで続くかはわかりませんけどね」
「どうして、子どもたちだけで生活しているんだ?地下に避難すれば、まだ安全なんじゃないのか?」
興味本位で聞いてみれば、ススムは険しい顔で首を横に振る。
「最初の頃は、大人も子どもも一緒に協力しながら生活していたんです。でも、段々と食料も尽きてきて、地下と言う閉じられた空間の中で生活する生きづらさもあって、地下でも疑心暗鬼の世界が広がっています。親の居ない弱い子どもはその中でも、暴力の的になりやすいんです」
地下も地上と変わらず、子どもにとっては危険な空間になっているってことか。
ススムは周りの子どもたちを見回し、悲しい表情になる。
「本当は、親や友達と一緒に暮らしたい子どもも居ると思うんです。でも、あのガブリエルが地上で僕たちを探している以上、平和が崩れた今はそれもできなくて……」
「頑張ってるんだな、ススムも……みんなも」
「……はいっ…‼」
涙ぐみながら頷くススムの頭を撫でてやり、みんなに見えないように背中で隠してやる。
この子たちを、安心できる親の元に返してやりたい。
しかし、そのための手段は……。
やはり、この壁にぶち当たってしまう。
選ぶべきは、2つに1つなのか。
最善の道はないのか…‼
俺の力は、敵を排除するためだけにあるわけじゃないだろ。
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ススムたちに見送られ、倉庫を出て街の中を1人歩く。
人間たちにとっては危険でも、デビルマンの俺にとっては日常茶飯事のことだ。
戦う力があるから、そこまで警戒はしていない。
神の降臨まで、タイムリミットが迫っている。
ガブリエルを止めなければ、世界が終わる。
選択の余地は無いと言うのか。
世界か、人類か。
どちらかを選ばなければならないのだとすれば、俺は…‼
『選ばなければならないのなら、その運命を壊せば良い』
頭の中に、聞き覚えのある声が聞こえた。
それはいつも、俺が苦悩している時に導いてくれるもの。
「明……不動明なのか!?」
その声に反応すれば、目の前に緑色の光の球が現れ、それを掴む。
手を開いて、確認すれば、光は消えて小さな鍵になる。
「インパルスジャック……運命を断ち切る力。次元を超えて、俺の元に来てくれたのか」
まさか、ゼロドライバーだけでなく、インパルスジャックまで次元を超える力があるとは思わなかった。
「次元を超える……力。もしかして…‼」
1つだけ、手があるかもしれない。
だけど、それが俺にできるかはわからない。
『気づいたようだな、その鍵の使い方に』
その声が聞こえて後ろを振り返れば、勇者アモンがそこに居た。
「タイミング良過ぎだろ、アモン」
『ふんっ、知るか』
アモンは腕を組み、インパルスジャックの鍵を見る。
『ガブリエルを討つために、そして、奴に囚われた人類を救うためには、インパルスジャックが必要不可欠だ。そんなことは、この俺に言われるまでもなくわかっているな?』
「ああ。俺たちでガブリエルを倒し、神の降臨を阻止するんだ」
『気に食わんが、そうなるな。貴様がどれほど強くなったのか、見極めさせてもらうとしよう。しかし、戦士は俺たちだけではないかもしれん…』
アモンが意味深な言葉を呟き、俺は訝し気な顔になる。
「どういう意味だ?」
『俺たち2人が、この世界に導かれた。俺たち、2人だけが。それは、何か意味があってのことだと思っていた。そして、それは確信に変わった』
「説明してくれ、アモン。俺もその確信に触れたい」
説明を促せば、アモンはゆっくりと頷く。
『勇者アモンの因子が、俺たちを導いたのだ。ダイモンの勇者を、復活させるために』
「勇者を……復活させるだと!?そんなこと、可能なのか!?」
悪魔を復活させるなど、聴いたこともない。
『可能性が無いわけではない。しかし、成功するかどうかは五分五分と言った所だろう。俺が渡した、あの兜。あれが、復活の鍵となる』
この世界の勇者アモンの復活。
それができれば、心強い味方になるはずだ。
『しかし、人間の魂が返ってくるかどうかは……別の話だがな』
「ダイモンの勇者アモンは復活しても、不動勇希の魂が戻ってくるわけじゃないってことか」
『それは、その男の意志次第だ』
「意志……か」
意識が悪魔の中に飲まれたら、人間の意志は残っているのか。
いや、必ずあるはずだ。
俺をこの世界に導いたのは、ダイモンの勇者の意志ではなく、不動勇希の声だったはずだから。
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その男の意識は、10年前に無へと還った。
しかし、それは魂が消失したことを意味するわけではなかった。
わずかに意志は残っており、それは世界と同化していた。
彼は認識していた、世界の危機を。
だからこそ、戦うことができない自分の代わりとなる戦士に声をかけ続けた。
そして、その声に応えてくれた戦士、内海明人に賭けた。
『あんたの帰りを待っている家族が居るんだ。世界がこんな状況なのに、ヒーローのあんたは何をしていたんだ?』
どこからか声が聞こえる。
『死んでる暇なんて無いだろ。魂が消えている場合じゃないだろ!?あんたの奥さんは、あんたの息子に言ったんだ。パパは必ず帰ってくるって。あんたが、自分たちの元に戻ると10年間信じ続けているんだぞ!?』
美紀が、そして、俺の子どもが、俺の帰りを待ち続けてくれている?
しかし、俺はもう戻ることはできない。
完全にアモンと同化してしまった俺は、彼が異次元の戦場で消滅してしまった今、もう戻る術はない。
『あんたの息子は……次郎は、パパが強いって信じてる。パパが戻ってくるまで、自分がママを守るって言ったんだ‼自分の子どもの期待ぐらい……答えてやれよ、不動勇希‼』
戻れるものなら、俺も戻りたいさ‼
美紀の元に……そして、まだ抱きしめたこともない、息子の元に…‼
強く念じれど、その夢が実現する兆しは見えない。
俺は、このまま見ていることしかできないのか。
戦いたい、自分の意志で。
大切な者を……守るために……‼‼
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