DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
気が重いながらも不動家に戻れば、美紀さんと次郎が心配した表情で出迎えてくれた。
「明人兄ちゃん……大丈夫?」
「あ、ああ。……さっきは、取り乱して悪かったな。今はもう、大丈夫だ」
美紀さんが後ろから強く背中を叩き、喝を入れてくれた。
「シャキッとしなさい。私たち、何とも思ってないんだから」
「……すいません」
美紀さんの笑顔があまりにも眩しく、目を伏せてしまった。
上がるように促され、俺はすぐに勇希さんの部屋に向かった。
そして、クローゼットに閉まっていたアモンの兜を取り出す。
「2人に言うべきなのか…。勇希さんのことを」
異次元の戦いに向かった勇者アモン……不動勇希の身体は消滅してしまった。
しかし、それを蘇らせる方法がある。
ダイモンの勇者を復活させることができれば、彼の意識も戻ってくるのか。
今の俺とアモンだけで、ガブリエルを叩ける保障はない。
3人目の戦士が居るのであれば、その力を借りたいのも本音だ。
アモンの兜を睨みつけていると、後ろから「明人くーん」と俺を呼ぶ美紀さんの声が聞こえた。
すぐにクローゼットに再度隠して返事をし、リビングに向かえばテーブルの上に御馳走が並んでいた。
和食は刺身や寿司、洋食はステーキやスパゲッティなど、スタミナのつく物が並んでいる。
「美紀さん!?これは……」
「落ち込んでる時は、お腹いっぱいにしないとね。ほらほら、育ち盛りも居るんだから、食べたい物は早いもの勝ちよ~?」
「えー、僕、こんなにいっぱい食べられないよー」
次郎がお腹を摩りながら困ったように言い、俺はフッと笑ってしまう。
本当なら、美紀さんも恐いはずなんだ。
ガブリエルの宣戦布告によって、いつ何が起きるかもわからない状況だ。
このたくさんの料理は、俺を励ます以外にも美紀さんと次郎が元気を取り戻すためにも必要なものだったんだろう。
3人で席につき、食事を始める。
「いただきます、美紀さん。あいつらと戦うためにも、身体は作っておかねぇと」
「よーし、僕だって‼」
大きなフライドチキンを掴み、豪快に噛みついて食べれば、それを真似して次郎もハンバーグにフォークを刺しては噛みついた。
「もぉ~、2人とも行儀悪いわよ!?」
俺たちに注意をしながらも、美紀さんは頬杖をついて微笑ましそうに見ていた。
今は、ガブリエルと戦うために体力をつけることが先決だ。
恐怖に囚われている暇があったら、食って未来のための準備を進める。
この席に座るはずだった、あの人の分まで。
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腹いっぱい食べたからか、次郎はすぐに眠ってしまった。
外はもうすっかり暗くなっており、黒い闇が広がっているように見える。
インパルスジャックの鍵を握りしめ、来たるべき戦いに向けて闘志を高めていると、美紀さんが話しかけてきた。
「思い詰めた顔してるわね。ごはん、口に合わなかったかしら」
「いや、そんなことは無いです‼凄く美味しかったですよ。何か……変な懐かしさがあって。家庭の味を感じたって言うか…」
「そう?それなら良かったけど」
ソファーに座り、俺に隣に来るように手招きしてくる。
怪訝な顔を浮かべながら座れば、頭に手を置かれてはそのまま流れるように太股の上に身体ごと促された。
「えっ……み、美紀さん?」
「ふふっ、どうしてかしらね。急にしてあげたくなっちゃって、膝枕」
そういう彼女の笑顔に抗うことができず、そのまま膝枕を受け入れる。
そして、頭を優しく撫で始めた。
「不思議な感覚ね。彼に似てるからかな。あなたのこと、気になっちゃって」
「……俺、そんなに勇希さんに似てますか?」
呟くように聴けば、美紀さんは「そうね」と返す。
「まるで、勇希の生き写しを見ているみたい。1人で悩み事を抱え込んじゃう所も、そっくり……。優しい人の特徴なのかもね」
「悩み事……ですか。凄いですね、美紀さん、超能力者みたいだ」
冗談を言ってはぐらかそうとすれば、彼女はフフっと笑ってくれた。
「そうだったら良いんだけど、そうじゃないのが残念ね。明人くん、1人で抱え込んで辛くなったら、ちゃんと私たちにも相談してね。話を聴いてもらえるだけでも、心は軽くなるはずだから」
「ありがとう…ございます」
どうしてだろう。
美紀さんの顔を見上げると、その姿が美佐樹と重なる。
彼女と顔が似ているからだろうか。
きっと、美佐樹が大人になったら、こんな綺麗な美人になるんだろうな。
でも、感じるのは美佐樹の雰囲気だけじゃない。
美紀さんと次郎を見ていると思い出す。
幼少期の、俺と母さんのことを。
彼女に、母さんの面影が重なるんだ。
『明人』
俺を見て微笑んでくれた母さんの姿が、脳裏に蘇る。
すると、視界が潤んできては目の端から涙が零れる。
「あ、あれ……」
「え?急に泣き出して、どうしたの?」
身体を起こして手の甲で涙を拭き、首を横に振る。
「す、すいません‼……ちょっと、昔のこと……思い出して」
「それは……悲しいこと?」
「いや……懐かしい感じで……でも、もう取り返せない光景で…。何でですかね?美紀さんと、俺の母さんが…ちょっと、似てるからかな」
涙を拭きながら言葉を続ければ、美紀さんは俺の頭を包むように抱きしめ、胸の中に迎えてくれた。
「良いわよ。今なら……この世界に居る間は、私のことをお母さんって思ってくれて」
美佐樹とは違う、愛の温かさを感じる。
燃えるようなものではなく、優しく包み込むような。
まるで、身体が赤ん坊に戻り、母の腹の中で眠っているような感覚だった。
安心感を感じれば、自然と溢れてくる涙が止まらなかった。
「うっ…うぐっ……いっ……ぐっ‼母さんっ…‼」
彼女の胸の中で、泣き崩れてしまった。
もう2度と、感じることが無いと思っていた。
これが本物じゃないこともわかっている。
俺が自分の手で、終わらせた愛の形だった。
だけど、少しだけ……ほんの一欠片だけでも、母の愛というものを感じることができたのが嬉しかった。
「うぁあああああああああんっ‼」
この時だけ、この美紀さんの胸を借りて泣いている時だけ。
俺は悪魔の力を振るう戦士ではなく、1人の人間に戻れたような気がしたんだ。
しばらくして涙が収まれば、彼女から離れて俯いてしまう。
恥ずかしさを覚えながらも、心が晴れたのがわかる。
ずっと、心の中で秘めていた家族の愛への渇望が満たされたような気がした。
「少しは、私も役に立てたかしら?」
「は、はい…。ありがとうございました」
顔を合わせることができず、ぎこちない返事をしてしまった。
こんな所、美佐樹には見せられないな。
気持ちのモヤが晴れた今なら、俺も覚悟を決めることができた。
深呼吸をし、強張る身体を緊張から解放する。
「美紀さん……今から聞くことに、真剣に答えてください。俺も、生半可な気持ちでは聴きません」
「……どうしたの?改まって」
怪訝な顔をする美紀さんの前に、俺は勇希さんの部屋からアモンの兜を持ってきて見せる。
「それは…!?」
「ダイモンの勇者アモン……不動勇希さんと一体化した、悪魔の鎧です」
兜を凝視し、彼女の額から汗がにじみ出てくる。
そして、目を強く閉じては開眼し、覚悟を決めた目を向けてくる。
「アモンは……勇希は、死んだの?」
「その表現が合っているのかはわかりません。だけど、あなたが10年前に見たデビルマンの軍団は……神との戦いに敗北したらしいです」
「そんなっ……うぅぅ‼」
美紀さんの身体に衝撃が走り、身体が床に崩れそうになる。
そうなる前に彼女を支え、兜に触れさせる。
「だけど、俺なら……俺ともう1人のアモンなら、蘇らせることができるかもしれません」
「蘇……らせる?勇希を?」
「……勇希さんが、この世界に戻ることを望むのなら」
絶対に戻ってくるとは言えない。
俺はこの人に、嘘をつきたくない。
だけど、最後の希望を奪うようなこともしたくない。
「美紀さん……俺を、信じてくれますか?」
彼女の手を握り、その覚悟を問いかける。
10年間も待っていた愛する人を、取り戻したい。
その強い気持ちを持つ美紀さんに、迷いなどあるはずが無かった。
「……わかった。あなたを信じるわ、明人くん」
その強い声に対して、俺は静かに頷いた。
心の奥底に抱えていた想いを解放した明人。
ついに、美紀に真実を伝えることができた。
次回、明人とアモンが、ダイモンの勇者復活の儀式に取り掛かる‼
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