DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
後日の早朝、俺は不動家を出て1人で外を歩く。
それを見越していたのか、背後に気配を感じて振り返れば、そこには勇者アモンが立っていた。
『覚悟は決まったようだな』
「ああ。美紀さんに……不動勇希の奥さんに、全て話した。その上で、俺たちを信じてくれると言ってくれた。その想いに、答えなきゃいけない」
『そう思うなら、さっさと準備に取り掛かるぞ。ガブリエルの言う神の器が満たされるまで、そう時間はないはずだ』
俺はアモンの言葉に頷き、彼の導きで向かった先は国防省の本部だった。
言うまでもないが、自衛隊が機能していないことから分かる通り、建物の中には人は1人も見当たらない。
「ここと不動勇希に、関係があるのか?」
『アモンとその男が一体化した場所が、ここなのだ。この中で奴は最後の変身を遂げ、この世界のアモンと心身ともに一体となって無に還った。しかし、その残留思念は残っているはずだ。強い感情を残して消滅したのならばな』
懐から大切に持ってきた勇者の兜を取り出せば、それが微弱ながら振動している。
「これは……」
『不動勇希かダイモンの勇者かはわからんが、共鳴しているようだな。魂の欠片は残っているらしい』
「アモン……あんたは、どうしてそこまでのことを知っているんだ?」
俺の問いに答えることなく、アモンは国防省本部に足を踏み入れた。
仕方なくそれについていけば、屋上まで上がって床を指さす。
そこには、コウモリの頭をした悪魔の紋様《もんよう》が描かれていた。
それも勇者の兜と瓜2つのもの。
『その中央に兜を置け。儀式を始めるぞ』
促されるままに兜を置けば、それが青く光り出しては点滅する。
「この反応は……これも、アモンの力が共鳴しているってことなのか?」
『確かめている時間はない。変身しろ、明人。俺とおまえで、この兜にエネルギーを流し込むんだ』
ゼロドライバーを腰に巻き付けて変身すれば、アモンが手をかざすのを真似て両手を前に出してエネルギーを注入する。
アモンは紅いエネルギーを放出し、俺は白いエネルギーを流し込む。
その中で、突然頭の中に声が響く。
<……邪魔をするな……>
声はアモンにも響いたのか、俺たちは目を合わせる。
「アモン、今の声は!?」
『構わずに集中しろ‼時間が無いぞ!?』
日の出が昇れば、またアンドロイド部隊が展開される。
その前に、勇希さんを…‼
<全て、無駄だ>
<おまえの>
<やることに>
<意味は>
<無い‼>
兜に流し込むエネルギーが増大すればするほど、声が大きくなる。
それと同時に、多くの記憶が流れ込んでくる。
「っ‼な、何だ……これは!?」
この感じ、覚えている。
不動明とアモンの2つの記憶が、呼び起こされた時のものだ。
しかし、あの時とは少し違う。
内側から呼び起こされた記憶が、今は外側から流れ込んでくる。
阿修羅王と呼ばれる存在や、妖鳥シレーヌと共に別宇宙で戦ったダイモンの勇者アモンの記憶。
デビルマン部隊の隊長として、愛する者を守るために戦った不動勇希の記憶。
シレーヌと愛し合った記憶、美紀さんと愛し合った記憶。
シレーヌの力を持つ
そして、最後に彼は、愛する者……美紀さんを守るために、自身が消滅することを覚悟した上でデビルマンに変身した。
最後まで、彼女のことを想いながら…‼
『さよなら美紀‼許してくれ‼オレはこの戦いから戻れない‼もう1度アモンになれば、オレは消える‼不動勇希はいなくなる‼たくさんの愛を、思い出をありがとう!愛してるよ美紀‼美紀ー‼』
美紀さんのことを想いながら、不動勇希の心は無に還った。
流れ込んでくる記憶に比例し、兜の光が強くなる。
そして、それは段々と戦士の虚像を形成していく。
「アモン、これは…!?」
『集中を切らすな‼あと少し……あと少しでっ…‼』
アモンも全力を注いでいるのか、声にいつもの余裕を感じない。
俺も本腰を入れねぇとな。
両手に力を集中させ、エネルギーを注ぎ込む。
<止めろ>
<無意味>
<全ては>
<神の>
<意志>
<なのだ‼>
俺たちを止めようとする無数の声を、怒声で振り切る。
「うるせぇえ‼‼何が神の意志だ!?俺はただ、あの人を……不動勇希を、家族の下に戻したいだけだぁああ‼‼」
不動勇希、美紀さん、次郎の顔が浮かぶ。
俺みたいに、家族に理不尽な別れなんてしてほしくない。
勇者の兜を一点に見つめ、言葉をかける。
「戻って来い……不動勇希‼美紀さんと次郎が、あんたの帰りを待ってるんだよぉおおお‼‼」
雄叫びをあげながらエネルギーを注ぎ続ければ、光の虚像が実体を帯びていく。
記憶の中で見た、ダイモンの勇者の姿が形成されていく。
そして、その輪郭がはっきりしたその時――――。
<神の意志に逆らう愚者よ。
それは大天使ガブリエルの声。
その声が聞こえて瞬間、頭上から屋上に影が落ちる。
「……そんな…‼‼」
空を埋め尽くさんとする、アンドロイド部隊。
そして、国防省から無数の白い幽体が浮かび上がり、アンドロイドと融合していく。
その姿はデーモンのように変化していき、俺とアモンを睨みつける。
さっきから俺たちを邪魔しようとしていたのは、国防省に残っていた神の使徒の残留思念だったのか。
アンドロイドは、それの依り代にするために生み出されていたというのか。
<さぁ、神の使徒たちよ。反逆の愚者に、
ガブリエルの号令に合わせ、獣の姿をした神の軍団が襲いかかってくる。
何でだよ…!?あと少し……あと少しだったのに…‼
『明人‼』
アモンに叫ばれ、頭を無理矢理切り替え、エネルギーの供給を止める。
そして、ヴァイスロックとインパルスジャックを取り出し、ドライバーに刺す。
「うるぁあああああああ‼‼ヴァイスゼロ‼‼」
紫と緑のオーラが吹き荒れ、ヴァイスゼロへの変身を完了する。
「すぐに片づけるぞ、アモン‼」
『俺に命令するな‼』
俺はインパルスジャックを振るって獣の亡霊を切り裂いていき、アモンは紅いエネルギー球を放つことで亡霊の群れに風穴を開ける。
『おまえはガブリエルの下に急げ。その運命を切り裂く力を活かしてみせろ‼』
「わかってる‼」
アモンが
これから先、やるべきことは分かっている。
勇者の兜を回収し、翼をはためかせ、敵陣に斬りこみながらガブリエルの居る海まで向かう。
天使の戦艦は俺が来ることを予期していたかのように、砲台を既に展開していた。
<神の反逆者よ。裁きの時は来た‼まもなく、神の器が満ちる。この世界も終わりの時が来たのだ‼>
「終わらせない‼これは、そのための力だー‼」
ガブリエルの弾幕をくぐり抜け、インパルスジャックを両手で握り、緑のオーラを展開する。
<クックック。私を討てば、我が空間に居る人間たちを見捨てることになるのだぞ!?>
そう言って、人質を映すガブリエル。
それで脅しているつもりか?
逆に今は好都合だぜ‼
ガブリエルの映し出す空間に向かい、俺はおおきく振りかぶりながらインパルスジャックを振るった。
運命を切り裂く力を持つ、暴虐の剣。
その力は、次元を超えて俺の手に戻ってきた。
インパルスジャックの刃は、運命だけでなく、次元も切り裂く。
「
目の前に映る空間を切り裂けば、次元の穴が広がっていく。
そして、人質となった人たちが、ガブリエルの空間から、こちらの空間に戻ってくる。
今、人々は戻るべき場所に戻っているはずだ。
<そんな……バカな‼>
インパルスジャックの刃を向け、ガブリエルを睨みつける。
「これが、運命を切り裂く剣……インパルスジャックの力だ。人質が解放された今、おまえの野望もこれまでだぜ」
<おのれぇ……異次元からの来訪者の分際で、神の意志を覆すとは…‼こうなれば、私自らの力で人間を恐怖に落とすまで‼>
天使の戦艦は砲台を日本列島に向けるが、ビームが発射される前に全ての砲台を切り裂いていく。
<私にばかり構っていて良いのか!?人間どもを解放したところで、戦えるのはおまえたちのみ‼悪魔に餌を与えただけだぞ‼>
人質を解放されようと、言葉で俺を追いつめようとするガブリエル。
しかし、俺は何も無策で次元を切り裂いたわけじゃない。
『悪魔?それはこいつらのことか?』
後ろからアモンの声が聞こえ、合流を果たせばガブリエルを見下ろす。
『悪魔の亡霊など、俺の前では蚊も同然だ。残りは貴様のみ』
数の利を活かそうとしたのだろうが、アモンの前では有象無象も一瞬で
<ば、バカな……たった……たった、2人の悪魔に……崩されたというのか、私の……神の計画が…‼>
焦りの声を出す天使に対して、俺とアモンは緑と紅のオーラを発する。
俺はインパルスジャックに、アモンは右手の平にエネルギーを集中させる。
「合わせろ、アモン‼」
『これで終わらせる‼』
俺たちは同時に、ガブリエルに止めを刺した。
「バイオレンススラッシュ‼」
「ターミネーションビーム‼」
2つの技が交わり、それが天使の巨体を貫通させる。
<神よぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼‼‼>
断末魔の声をあげた後、海にその巨体が沈んでいく。
それを見下ろしながら、全ての終わりを悟ったその時―――。
ドガーンッ‼
街の方で爆発が起きた。
「何でだ……ガブリエルは倒した。そうだろ!?」
『……天使を討とうとも、神の運命を覆したことにはならないということだろう。……まさか!?』
アモンは急に焦りを覚え、街に向かって翼をはためかせる。
俺もそれを追っていく。
『何故、奴らは……わざわざ、悪魔の亡霊を解放して利用しようとした?今日、このタイミングで』
「それは、俺たちが不動勇希を復活させる儀式をしようとしたからだろ。あの国防省には、他の悪魔の残留思念も残っていたから」
『それもあるだろう。しかし、本当に雑魚の悪魔どもを解放しようとしたのか?……違う、奴らにとって、俺たちの儀式を利用し、解放しようとした者の中には……10年前の戦いには、神の一部として、悪魔から天使の力に覚醒した者が居た‼』
アモンは俺に顔を向け、その手に持つ勇者の兜を見る。
「急ぐぞ、明人‼神の器が、本当の意味で満ちる前に‼」
紫と紅の翼をはためかせ、俺たちは街へと急ぐ。
その間、兜はずっと青く、そして強く点滅していた。
ガブリエルを討って終わりではなかった。
アモンの気づいた真の危険。
次回、誰も予期しなかった恐怖の化身が街を襲う。
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