DEVILMAN REBORN ~SIDE STORYS~ 作:カナト
<目覚めよ。汝の役割を果たす時が来た>
明人とアモンがガブリエルの下に向かっている時、悪魔の亡者の中で、1つの巨大な力がその声に呼応するように目を覚ましていた。
悪魔だけでなく、天使より授かった力を受け、神の一部とかした存在。
<クックックック……この感覚……久しぶりだ。俺は目覚めた……この天使ジンメンは、復活したのだぁ~‼‼>
10年前、神の側に寝返り、その力を得た亀のデーモンだった存在。
その原型は留めていながらも、甲羅から数本の大きな棘が生えては飛行を可能にしている。
ジンメンは高らかに笑いながら、その力を思う存分に解放する。
<ハアハハハハハハハハハッ‼これが天使の力ぁ‼憎きアモン、そして阿修羅軍団が消滅した今‼この世界で、もう俺の敵は居ない‼>
周辺の建物を破壊しながら、1つの廃工場の倉庫が目に入る。
さらに焦点を当てれば、そこには複数の子どもの姿が。
<キヒヒヒ‼久しぶりに食べるなら、子どもの柔らかい生肉も良いかもなぁ‼>
飛行能力で工場に近づきながら、周囲に雷撃を飛ばすジンメン。
その被害は人々の悲鳴を誘発し、その声から生まれる負のオーラが彼に集まっていく。
<泣けぇ‼わめけぇ‼その声が、俺の力を強くする‼もっとだ、もっと怯え震えるが良い‼>
倉庫の上空から雷撃を落とせば、建物が倒壊して子どもたちの悲鳴が響く。
「きゃぁああああああ‼」
「恐いよぉ‼お母さぁああん、お父さぁああああん‼」
「助けてぇえええ‼」
子どもたちの声を聴き、激しい攻撃を仕掛けるジンメン。
<素晴らしい‼この力があれば、この俺に敵はない‼この天使ジンメンこそが、最強の存在なのだぁ‼>
その意識は、身体の基になった亀井迅と悪魔ジンメンの残虐性を掛け合わせており、そこに力に対する傲慢さが見える。
もはや、彼に人間性など欠片も残っていない。
「止めろぉおお‼‼」
ジンメンの猛攻の中で、1人の少年が地上から声をあげた。
ススムだ。
彼は空に浮かぶジンメンを睨みつけ、その目からは恐怖と同時に怒りが見える。
「許さないぞ‼僕たちの世界を……滅茶苦茶にしたおまえたちを……僕は、絶対に許さない‼」
<許ぅさぁなぁいぃ?>
復唱し、ススムの前に降りるジンメン。
<おまえが許さないからと言って、何ができると言うのだぁ!?人間……しかも、ただのガキがぁ‼>
目に涙を溜めながらも、必死に目の前の恐怖に抗おうとするススム。
床に落ちていた鉄パイプを拾い、「うぉおおお‼」と雄叫びをあげて縦に振るうが、それは軽々と受け止められてしまい、捻じ曲げられる。
そして、ジンメンが軽く蹴りを入れただけで吹き飛ばされる。
「うわぁあああ‼」
地面に倒れようと、すぐに立ち上がって立ち向かおうとするススム。
「負けるもんか‼大人たちが居ない今、戦えるのは僕たちだけなんだぁ‼」
彼の覚悟はその周りの子どもたちにも少しずつ伝わっていく。
「そ、そうだ」
「私たちが…」
「僕たちが…」
「やらなくちゃ……いけないんだぁ‼」
子どもたちの目から、徐々に恐怖が薄れていく。
そして、覚悟に目覚めていく。
<気に入らん……ガキの分際で、神に逆らうつもりかぁ‼>
ジンメンがススムたちに向かって力を振るおうとした瞬間―――。
床に倒れていたラジオにノイズが走り、ザーザーと音が聞こえる。
『―――きこ――――ますか?―――みなさん、聞こえていますか?この放送が、聞こえていますか?』
それは女性の声であり、ジンメンの動きを止めた。
<この声は……‼>
死んだとしても、忘れられるはずがない声だった。
何故なら、この女の声は、亀井の憎き存在の伴侶だった存在。
『私は元レポーターの不動美紀です。私の声が聞こえているのなら、皆さん、希望を捨てないで。私たちにはまだ、世界のために戦ってくれている戦士たちが居ます。その戦士の名は、デビルマン‼』
美紀の声が、日本中の電子機器を通じて広がっていく。
『デビルマンは異世界から、私たちのこの世界を救うために、今も命掛けで戦ってくれているのです。希望を捨ててはいけません。彼らを信じてください。そして、デビルマン……私は、あなたの勝利を信じています。だから―――‼』
<黙れぇえええ‼‼>
彼女の声援を耳ざわりに感じ、ジンメンは近くに在ったラジカセを破壊した。
そして、子どもたちには目もくれずに空に飛翔する。
<不動美紀……あの時、殺し損ねた女‼不動勇希と関わりがある者は、全て俺が殺してやるぅ~~‼‼>
ジンメンが向かう先は、テレビ局。
ラジカセを1つ壊そうとも、周囲のスマホなどから流れる声は耳に入ってくる。
『希望を捨てたら、全てが終わりです。今、私たちを守るために戦ってくれている者たちが居る限り、私たちも諦めてはいけません‼頑張って、負けないで。その想いを、デビルマンたちに届けましょう‼』
その放送は地下にも届いていたのか、次々と地上に顔を出す避難民たち。
彼らは一様に空を見上げる。
その視界に捉えているのは、亀の姿をした天使ではない。
ススムたち子どもの大きな目にも、確かにその希望の戦士の姿は見えていた。
「……届いたよ、あなたの声も……みんなの想いも…‼」
紫色の翼を広げた悪魔の戦士が、ジンメンの背後を捉えた。
「アサルトブレイク・ビーム‼」
羽根を展開し、複数の方向からビーム攻撃を仕掛ける。
<ギィァアアアアアアア‼>
それはジンメンに直撃して悲鳴をあげるが、すぐに持ちこたえて振り返る。
<貴様ぁ……何者だぁあ!?>
その問いに対して、俺は底知れぬ怒りを込めた目で指さしながら言った。
「デビルマン・ゼロ……。おまえを止め、この世界を救う戦士だ‼」
目の前に居る亀のデーモンの姿を、忘れるはずが無かった。
「おまえは……ジンメン…なのか?」
<ほぉ、俺のことを知っているのかぁ?そうさ、俺は天使ジンメン‼悪魔を超え、神の一部となった存在だぁ‼>
その名乗りを聴き、両手に拳を握って震わせる。
闘志がたぎり、空気が震える。
思い出すのは、過去の悲劇。
母さんに父さん、そして、美紀さんや次郎の笑顔。
「もう2度と……おまえには、何も奪わせない‼家族の絆も、大切な存在もなぁ‼」
それは奪われた者の怒り。
絶対に守るという覚悟。
インパルスジャックを握り、翼をはためかせてジンメンに接近した。
「覚悟しろ、ジンメェエエエエエエン‼‼」
憤怒と共に刃を振るえば、それを奴は紙一重で回避しては冷や汗をかく。
<何を怒っている!?頭が可笑しいんじゃないのか?……まぁ良い。初めて見るデーモンソルジャーだが、神の力を持つ俺の敵ではない‼>
ジンメンは全身から光線を放出し、俺だけでなく辺り一帯に攻撃を仕掛けていく。
「やらせねぇよ‼」
しかし、それは全て羽根を集めてバリアを分散させることで防御する。
「無差別攻撃を仕掛ける……そう言うところも変わらないなぁ‼」
<俺の戦い方が読まれている……だと!?>
天使だろうと悪魔だろうと、ジンメンの残虐性は変わっていない。
それがまた、俺の怒りを増幅させる。
「俺はおまえに家族を奪われた。だからこそ、もう誰にも‼家族を奪われる苦しみを味合わせない‼」
<そんなことは知るかぁ‼俺の邪魔をするなら、おまえから殺してやるぜぇえ‼>
ジンメンは頭と四肢を甲羅の中に仕舞い、穴から光線を発しながら横に回転して接近してくる。
「そんな攻撃―――っ!?ぐぁああああ‼‼」
受け止めようとしたが、想定外の光線の威力に吹き飛ばされてしまう。
こいつ、神の一部と言うだけあり、俺の世界のジンメンとは格が違う。
『何をしている、明人ぉ!?』
アモンの声が聞こえれば、遠方から赤いビームが飛んできてジンメンに直撃する。
<ぐぅううっ!?……その姿、まさか…!?>
奴は接近してくる紅の鎧の悪魔を睨みつけ、光線を発する。
それをアモンは両腕を交差させることで受け止める。
『神の力とはこの程度か……所詮は卑怯や騙し討ちでなければ殺せぬ小物というわけだな』
今の一撃を肉体で受け止めたのか!?
流石は勇者アモン。
俺のライバル…‼
『それに対して、おまえはどうだ?デビルマン・ゼロ。怒りに身を任せるから、こう言うことになる。ジンメンの姿を見るや否や飛びだしたかと思えば、この体たらくだ』
何も言い返せずにいると、アモンは俺の隣に来ては横顔を向ける。
『この世界で言う神の力は未知数だ。気に食わんが、下等な亀であろうとも2人で取り掛かるぞ』
「……わかった」
本当なら、俺1人で戦いたい気持ちはある。
ジンメンが相手ならば、尚更だ。
だけど、今の俺では勝てるかわからない。
ジンメンの持つ神の力。
それがどういうものなのかがわからない限りは。
<この感覚……我が宿敵、アモンと同じ気配を感じる。気に食わん‼先に貴様らをぶち殺してやるわぁ‼>
奴の怒りに答えるかのように、ドス黒いオーラがジンメンに集まっていくのがわかる。
あれはまさか、ガブリエルの集めた人々の絶望のオーラか。
<もっとぉ……もっとだぁ‼神よ‼この天使ジンメンに、大いなる力をぉおおお‼>
力を増幅させては、全身からでたらめに光線を発射するジンメン。
その攻撃は、周囲の建造物に直撃しては被害が大きくなる。
「きゃぁあああ‼」
「やめてくれぇえええ‼」
人々の悲鳴が下から聞こえ、地上から溢れ出る恐怖の感情を力に変えて吸収していく。
『これ以上、奴に力を集中させてはならん‼行くぞ、ゼロ‼』
「ああ‼」
アモンと共に突撃を仕掛ければ、その前に黒い
その中の一体が視界に入った瞬間、ドクンっと胸が強く打たれる感覚があった。
それは頭から大きな翼を広げている、女性らしい身体付きをしたデーモンの姿。
「あれは、まさか……シレーヌ!?」
『それだけではない、見ろ。ゼノンやサイコジェニー、そしてサタンの面影がある戦士の姿もある。ここに居るのは、この世界で戦った阿修羅軍団の精鋭たちだ‼』
アモンの指摘を受ければ、確かに3人の雰囲気を漂わせる幻影が見える。
そして、他にも俺の世界で見たことがあるデーモンの面影を感じる者たちの姿が。
<クックック、これが神の力ぁ‼神の記憶と共に流れ込んでくるぞ。阿修羅軍団、神に反逆した愚者たちが無様に消滅する光景を‼次元の狭間で消滅した奴らの力を、神の力で具現化させて復活させたのさ‼>
高らかに説明するジンメンを睨みつけ、俺は身体を震わせる。
「おまえは……どこまで、死者を
インパルスジャックを振るい、奴に攻撃を仕掛けようとしても、その前をシレーヌが阻む。
そして、背後から阿修羅軍団の一斉攻撃を受けてしまう。
「ぐぁああああああ‼‼」
『正気を保て‼こいつらは所詮、偽物だ‼』
アモンが果敢に挑んで阿修羅王に向かって拳を振るうが、それは右手をかざされただけで防がれる。
『何!?』
<愚かなり、別次元のアモンよ‼そいつらはガブリエルのアンドロイドを依り代にした者に非ず。根源は奴らの力を基に再生させたもの。その力は、奴らのものと同等……いや、我が神の力を授けたゆえにそれ以上だぁ‼>
不敵に笑うジンメンに対して、俺は憤りを隠せない。
「絶対に、おまえを許さない‼ジンメン、俺と戦えぇ‼」
<この俺が戦わずとも、そいつらが居れば貴様らを葬ることなど容易いこと‼俺は目的を果たさせてもらおう‼>
そう言って、亀の甲羅を回転させながらテレビ局に向かう。
それを追いかけようとしても、阿修羅王の幻影が俺たちを阻む。
このままじゃ……美紀さんが…危ない…‼
復活した天使ジンメン。
その姿と行動を見て、自身の世界で起きた悲劇を思い起こし、怒りの炎を燃やす明人。
しかし、神の一部となったジンメンの力は、彼の世界のジンメンのものとは格が違う。
復活し、敵となった阿修羅軍団の前に道を阻まれる明人とアモン。
次回、不動親子に危機が訪れる。
その時、遂に…‼