「――エヌラスさん。私、言ったよね?」
「……あ、アネモネ? 目が怖いぞ?」
「あんまり無茶ばっかりしてると――“お仕置き”するって」
――全身包帯だらけのエヌラスが、アネモネに迫られる。
リリィウッドの召集令状によってエノテラが一時的に遊撃隊のもとを離れていた。そんな折、ブロッサムヒルの旧フォス修練所から害虫が街道に溢れたという。
アネモネが辿り着くどころか、近隣の花騎士達が駆けつけた頃にはすでに害虫駆除が終わりを迎えていたという。人的被害は皆無。街道の損害はいくつ出ていたが、それでもキャラバンが通ることに支障をきたさない程度に収まっている。
結果から言えば、エヌラスが血まみれになった程度だ。
問題なのは――それが一度や二度ではないということ。そしてエノテラはそれを知っていて一緒に突撃していたこと。さらに言えば、それが一番効率的で効果的な戦術ということ。
さらには、毎日のようにエヌラスとエノテラの二人が抱き合っている事実。アネモネもそれは見知って知らぬふりを通していたのだが、流石に我慢の限界というものがある。
「英雄色を好む、って言うけれども――さすがに限度があるからね?」
「……アネモネさん、怒ってます?」
「怒ってないと思ってる?」
「思ってないです……」
「怒られる心当たりある?」
「……心当たりしかないです」
「じゃあ――わかるよね。これは、私からの“お仕置き”だって」
アネモネの言い分はわかるが、エヌラスは自分の状態を確認していた。
「あの、アネモネさん……? 俺これでも怪我人……」
「自業自得」
「おっしゃる通りです、ごめんなさい」
出血は酷かったが、すでに傷口は塞がっている。それでも痛みがまだ残っていた。異様な治癒速度があるとはいえ、エヌラスはその痺れで身動きが取れない。身体が快復するまでの間、静養に努めようとしていた矢先――アネモネに迫られた。
自分の身体に跨るアネモネの姿に息を呑む。
――スプリングガーデンの花騎士人気投票でも入賞したことがある。という話を他の団長達から聞いた。まさに団長達からしたら高嶺の花のような存在だ。
エヌラスにしてみれば、花騎士は誰もが自分には不釣り合いだと思っている。それほどまでに魅力的な女性が多い。
アネモネの白く細い指が包帯を巻かれた胸板を撫でる。
ギッ――、重心を移動させたことでベッドが軋んだ。
怒っているのか、不機嫌そうに眉を吊り上げたままアネモネはエヌラスの身体に覆いかぶさる。
豊かな胸が押し当てられ、甘い香りが鼻腔を満たした。耳元に優しい吐息が吹きかけられ、くすぐったさに声を押し殺す。
「私、怒ってるんだからね……? わかってる?」
「……はい」
「だから、これはお仕置き。怪我人なんだから、動いちゃダメだからね……? ――いーい?」
アネモネの優しい声が鼓膜から脳の理性を溶かしてくる。
胸板から少しずつ下に向けて指が肌を撫で、ズボン越しにペニスを擦った。
「もう、こんなにしちゃってるなんて……何を期待していたの? もしかして……えっちなお仕置きかな?」
「…………それは、その」
「正直に言ってくれたら――えっちなお仕置き、してあげるけど……どうなの?」
ゆっくりとした手つきでペニスに勃起を促すアネモネは、耳元で囁く。甘く、桃色の誘惑にエヌラスは唾を飲み込んだ。
「……してなかった、って言ったら嘘になるし、ちょっと、期待してました……」
「ふぅーん……そうなんだ。ちょっとだけ、なんだ……ほんとに?」
「――正直、期待してました」
「素直でよろしい、ふふん」
少しだけ嬉しそうに頬を綻ばせてから、アネモネは再び耳元に頭を寄せる。
「えっち……♡」
“ゾワゾワ”と背筋が快楽の波で襲われた。
「あ……また固くなってきてるね……ふふ。それじゃあ、えっちな隊長さんにお仕置きしてあげなきゃね……」
ズボンのベルトを外し、下着を脱がせていくとアネモネは手でペニスを優しく擦る。
「っ……」
「気持ちよさそう。こうされるの、気持ちいいんだ?」
「アネモネの手、スベスベしてて気持ちいい……」
(エヌラスさんの、こんなに大きいなんて……いっつも、これでエノテラのちっちゃい身体をいっぱい犯してるんだ……)
――アネモネの脳裏をよぎるのは、時折部屋の中から聞こえてくる喘ぎ声。そして激しく肉のぶつかる音。
ペニスのサイズを手で測りながら、アネモネの顔がみるみる赤く染まっていく。
「……ふ、ふ……! ねえ、気持ちいい?」
「ああ……!」
「こんなにおっきいので、いっつもエノテラとえっちしてるんだ……」
「ぅ……!」
「バレてないって思ってたの? いつも聞こえてたんだからね。そのせいで私だって――」
「私だって……?」
「ぅ……。も、もう。お仕置きなんだからね、わかってる?」
「ん……! わ、わかってるって……」
手でペニスをしごくアネモネの吐息が耳にかかる。腕の動きに合わせて身体に密着している胸の形がより明確に伝わってくる。
「はぁ、はぁ……なんだか、私まで、えっちな気分になってきちゃう……コレも全部、エヌラスさんが悪いんだからね」
「アネモネ……」
ペニスをしごいていた手を止め、アネモネが身体を起こすと着ていた服を脱ぎ始めた。
部屋の窓から差し込んでくる月明かりが身体を照らす。
アネモネの一糸纏わぬ白い裸体の豊満なスタイルに目を奪われ、エヌラスは息をするのも忘れていた。
大きな胸に、引き締まった腰のくびれ、その恵まれた肢体は女性としてあまりに整えられ、異性の目を引くのに十分すぎるほどに魅力的に映る。女神のような肢体を見つめられ、アネモネは自分の胸に手を当てながら熱い吐息をこぼす。
「……そんなに見つめられると、恥ずかしい」
「アネモネの身体が綺麗だから……」
「も、もう……! そんなえっちなこと言わないで」
「……ずっと思ってたけど……おっぱい、大きいんだな」
「も、もう……! 私のこと、そんなえっちな目で見てたの!」
「……見るなってのが、無理だと思う」
「~~~~」
耳まで赤くなりながらも睨み返してくる。
アネモネは、花騎士としても女性としても魅力的だ。それは否定の余地が入り込む隙がない。理想の女性と他の団長達が口にするだけはある。
それがこうして今――自分の目の前で裸体を晒していた。花騎士を率いる団長がどれほど夢見た光景だろうか。
エヌラスはそれが少し疑問だった。
これまで純潔を保っていたアネモネがこれほど積極的に迫ってきた理由が、自分のこれまでの行いにあるとは少々思い難い。
「その、アネモネ――なんでまた、こんな…………?」
「…………」
「いやその、俺が悪いってのはわかるんだ。お仕置きってのも、わかる。ただ……こういうことするの、俺でいいのかって思っちまって……」
かわいらしく頬を膨らませて、アネモネが顔を近づけてくる。どことなくその表情がエノテラを思い出させた。
――そういえば、いつも他の花騎士と会話しているとこんな風に機嫌を損ねる。
「――本気で言ってる?」
「いや、確かめておきたくてですね……」
「あなたじゃなかったら、こんなことしないよ……私、そんな風に軽く見られてたのかな」
「そうじゃなくて――知ってるだろ、俺は」
「知ってる。記憶喪失なのも、それを気にしてるのも……でもね」
再びアネモネの身体が預けられた。包帯越しに伝わってくる体温と女体の柔らかさは先程とは比べ物にならない。女体の神秘が詰まった身体が目と鼻の先にある。
「――私はそれでもいいよ」
「アネモネ……」
「それとも……エノテラより魅力がないのかな、私?」
「そんなことは――」
「二人で、いっぱいえっちしてるの知ってるんだからね……? それに、私だって興味がないわけじゃないんだから」
アネモネの手がペニスを擦った。ズボンとパンツを脱がせてベッドの側に放り投げる。
「これから……えっちな隊長さんに、いっぱいお仕置きしてあげるね――――」
――アネモネの舌がペニスを這う。根本から先端に向けて舐めると、膨らんだ亀頭に唾液を垂らす。皮を剥き、カリ首を集中的に攻め始めた。刺激を受けることが少ない敏感な箇所を攻められてエヌラスが反応する。
それを見てアネモネが嬉しそうな顔をした。
「ここ、弱いんだ」
「そこは敏感だから……!」
「……れろ、んちゅ……ぁ、むっ」
瑞々しい唇が開かれ、アネモネがペニスを咥える。温かい粘膜に包まれ、口内で舌を絡ませてきた。だが、少ししてからすぐに口を離す。
「ん、……! はぁ……おっきくて、ちょっと疲れちゃうねコレ」
「……アネモネ、本当に初めてなんだよな」
「む……、疑ってるの? 私だって知識くらいはあるんだからね。ただ、その……経験したことないだけで」
「そっか……いや、ごめん。疑って」
「じゃあ――続けるね? ん、はむ……!」
再び口を開けてアネモネが頬張った。エヌラスの顔色を窺いながら、何度も頭を上下させる。ゆっくりとしたストロークで少しずつ慣らすようにしていくと、アネモネはペースを掴んできたのか喉の奥まで飲み込む。
「んぐっ、んむぅ、ぷぁ……! は、ぁぁ……ほんとに、おっきいんだから……」
「く、っ……」
「怪我、痛くない?」
「……ちょっと、痛むな」
アネモネに言われた通り無抵抗なまま“お仕置き”を受けるエヌラスが時折顔をしかめるのは、包帯の下の傷口が疼くからだ。
「ちょっとくらい我慢できるよね? だって、エヌラスさんは“男の人”なんだから」
ペニスに頬擦りしながら微笑みかけてくる姿に背中がくすぐったくなる。
「アネモネの頬、スベスベで柔らかくて気持ちいい」
「ん、ふふ……だって気持ちよさそうな顔してるもんね……♡」
「……お仕置きなんだよな?」
「ぁ――、もぉ……! なんでそんな意地悪言っちゃうの?」
むくれながら、アネモネが竿を握る手に少し力を込めた。絞られるペニスが苦しそうに呻き、エヌラスの表情が少し痛みに歪む。それを見て、すぐにアネモネが手を離した。
「ん、れろ……ぺろ……あんまり、意地悪なことを言う隊長さんには、こんなお仕置きがいいのかな?」
口を離したかと思うと、自分の谷間でペニスを挟む。
程よい弾力。ハリのある肌。たっぷりと詰まった肉感に包まれてエヌラスの口から声が漏れる。
「ぅお……」
「わ……すごく硬くて……やっぱりおっきいね。私のおっぱい火傷しちゃいそうだよ。ふふ、悪いけど……こんなのエノテラには出来ないもんね」
手で胸を押しつけながら、上下させると口の中とはまた違った感触で甘い刺激にエヌラスの腰が動きそうになった。それをシーツを握りしめて堪える。
「……♡ エヌラスさん、ちゃんと我慢できてえらいね」
「お仕置きって言ったのはアネモネだからな……」
「じゃあ……続けるね。ん、っしょ……!」
左右だけでなく、密着してくる胸の弾力がペニスを優しく包んで射精を促してくる。
(ほんとに、大きいんだから……! こんなの挿れられたら……たまんないよ)
リズミカルに何度も胸を上下させて、アネモネはその“お仕置き”を楽しんでいた。自分が相手を屈服させているような錯覚。征服欲にも似た感覚に、ついつい熱が入る。
たぱ、たぽっ。肉のぶつかりあう音が静かな部屋に響く。
谷間から頭を覗かせる亀頭を見つめて、アネモネが舌を伸ばして先端にキスをした。そのまま口内に溜まっていた唾液をさらに垂らして潤滑油にする。摩擦が減り、ますます滑りの良くなったアネモネの胸の動きが激しくなった。緩急のついた動きで精液を搾り出そうとするパイズリにエヌラスが堪える。
「あ、またビクビクしてる……こうしてると、あなたのこと沢山感じちゃうね。気持ちいいの、我慢できないんだ」
「っ、アネモネ……!」
「でも、まだ我慢できるよね。こんなことしてあげるの、貴方だけなんだから……」
胸の中で射精を堪えるペニスが震えるのを感じてアネモネがゆっくりと持ち上げ、先端を包み込んだまま動きを止めたかと思うと手を離した。乳圧から解放されたペニスはピンと反り返ったまま鈴口からカウパーを滲ませる。
その様子を見て、アネモネが舌を伸ばすとカウパーを吸い始めた。
「ん、ぅ……変な味……でも、嫌いじゃないよ。っ、ちゅるっ……じゅる、ぷ……」
「アネモネ、それ――ヤバ……!」
「はぁ……♡ 射精したくて、たまらないんだ? こんなに先っぽ大きくして、膨らんじゃってるんだもんね。でも、まだダメだからね……私のこと、いっぱい気持ちよくしてくれないと許さないんだから」
身体を起こし、エヌラスに再び跨ったアネモネの割れ目からはすでに透明な体液が垂れてきている。
――月明かりを浴びて輝くアネモネの白い肢体に目が釘付けになった。その美しさに思わず言葉を失ってしまう。
ペニスに手を伸ばして優しく添えると、自分の秘部にあてがった。
「今度は、こっちで“お仕置き”してあげるね――ちゃんと、んっ、我慢してね……えっちな隊長さん……♡」
アネモネがわずかに先端を沈ませ、慣らすように擦りつけると愛液がペニスを濡らす。身体を緊張で強張らせると、それに反応したのかますます硬く怒張した。
「はぁ、はぁ……ん、おっきくて……ほんとに入るかな……?」
「アネモネ――痛かった時は、途中でやめてもいいからな」
「……やめたりなんか、しないよ」
はて。アネモネの顔に嫉妬の色が浮かんだような気がする。
少し唇を尖らせて、ムキになったように割れ目をペニスに押しつけた。窮屈な入り口は異物を拒むように口を閉じている。だが、アネモネはそれでも無理矢理に腰を沈ませた。
「ん、ぅぅぅっ――!!」
キツイ挿入感を一度越えた瞬間、先端が熱い肉壁に包まれる。
別な生き物のように動く膣は、アネモネの意思とは裏腹にペニスを求めて止まなかった。その顔は苦痛に歪んでいるが、どこか悦に浸っているようにも見える。
「ぁ、はぁ……! エヌラスさん、見え、る……っ? ほら、ちょっとずつ、食べられちゃうよ……ずぷずぷ~って……ん、っ」
慣れない感覚に少し戸惑いも感じられるが、それでもアネモネは腰を沈ませることをやめなかった。ペニスを半ばほどまで挿入して、そこで動きが止まる。
そこから先は一際窮屈な膣に阻まれ、アネモネも苦しいのか肩で息をしていた。
「はぁー……はぁー……♡ 私の中、ゴリゴリってえぐられて……! これじゃ、私のおまんこ、あなたの形になっちゃう……♡」
「……、っ。アネモネの口から、そんなエロい言葉出てくるとは思わなかった」
「――あなたの、せい、なんだからぁ!」
むくれながらもアネモネが思い切って腰を打ちつける。
射精を堪えて膨張した亀頭が肉壁をえぐりながら突き上げた。先端が強く阻まれ、肉のブラシに包まれたことでアネモネが背中を反らしながら嬌声を押し殺す。
「んんんぅ~……っ!! ぅ、はぁ、はっ、ん、ぅぅ……! ぜん、ぶ……挿入った……?」
髪をかきあげながらエヌラスの顔を覗き込むと、鼻息を荒くして迫った。
その眼は初体験の痛みよりも勝る快楽に染まっている。恍惚とした表情で熱の籠もった吐息を吹きかけてきた。
「ねぇ、見えるかな……? エヌラスさんのおチンポ、全部わたしに食べられちゃったね?」
「うぅ、っく、うっ……!」
「動いちゃだめ。これは“お仕置き”なんだから――ね♡」
アネモネがゆっくり腰を引き上げると、ペニスを包み込んでいる肉壁が“ゾリゾリ”と精液を搾り取ろうと蠢く。快楽の詰まった肉壺がエヌラスを襲った。気を抜けば、すぐにでも一滴残らず搾り取られてしまいそうなほど、アネモネの膣は本人の性格と同じで優しく包み込んでくる。
すぼめられた入り口のキツさ、柔らかな肉壁の動き、狭い膣奥は亀頭を無数のヒダで撫でてきた。初めての異物を受け入れたにもかかわらず、その身体は女として正しく機能している。肉体的にも成長を果たしている身体はエノテラとはまた違った形でエヌラスから精液を搾り取ろうと動いていた。
「あっ……、んっ! エヌラスさんの、私の中でビクビクして……射精したそうにしてる」
「アネモネの中も――熱くて、トロトロだ……!」
「んんぅっ、勝手に動いちゃダメ……! 私の、お仕置きなんだか、らぁ……!」
アネモネが腰を動かし始める。ぎこちない動きだったが、自分のペースを見つけて少しずつではあるがリズムが規則的になってきた。
身体を重ねて、耳元で何度も短い吐息を吹きかけられる。射精を寸止めされていたからか、すでにペニスの根本にはマグマのように精液がせり上がってきているのがわかった。それを懸命にこらえているエヌラスはアネモネの身体に手を伸ばしそうになるが、シーツを掴む。
「……ん♡ エヌラスさん、かわいい顔してる」
「アネモネ――すごくいやらしい顔してる」
「だ、誰のせいだと思ってるの。もう……こんなにして」
「俺のせいです……! ごめんなさい……!」
「うん。そうだよね、いい子いい子……じゃあ続き、するね?」
アネモネが腰を動かす度に、静かな部屋に二人の交わる音が響く。
「んっ。んっ、あっ。んん、あ……! 気持ちいい?」
「ああ……!」
「――エノテラよりも?」
「それ、は……!」
「ぁ、っ……また硬くなった……ふふ、ほんとにえっちなんだから」
――エヌラスの脳裏に一瞬よぎる、エノテラの姿。
「あとで、どっちが気持ちよかったか教えてもらうからね? はぁ、は――!」
「どうしても……! っ、言わなきゃダメか?」
「だぁめ♡ 絶対、言ってもらうんだから……ねっ!」
ぱんっぱんっ、と小気味良い音を立ててアネモネが激しく腰を打ち付ける。すっかり自分のペースを掴んだのか微笑むだけの余裕を見せていた。
火照った身体を夜風が撫でる。汗ばんだアネモネの胸が押しつけられ、包帯に吸い付くように密着した。胸の弾力で身体を弾ませながら、引き締まる膣が精液を求めてペニスを執拗にしゃぶる。エヌラスも流石に我慢の限界が近い。
それは相手にも伝わっているのかアネモネが根本まで咥え、ゆったりと円を描く動きを繰り返した。前後左右から快感がさざなみのように襲いかかってくる。
「アネモネ……、も――もう、射精る……!」
「あ、っん。もっと、我慢して……? 私のお仕置き、まだなんだか、ら」
舌を出してアネモネが首筋に這わせた。全身が強い快楽に包まれてエヌラスの身体がますます強ばる。歯を食いしばって射精をこらえているのを見て、胸が高鳴った。鼻息を荒くして何度も匂いを嗅いで胸いっぱいに吸い込む。
「ん……すぅ、はぁ……エヌラスさんのにおい、なんだか癖になりそう……」
「アネモネも……すごくいい匂いがする」
「すー……んっ……、私も、えっちな気分になっちゃう……!」
アネモネも我慢していたのか、浮かせた腰を激しくピストンさせ始めた。エヌラスも不意を突かれて堪えていた性欲を抑えきれなくなってくる。
お互いに限界が近いのがわかる――膣の痙攣が激しくなっていた。アネモネが小刻みに震える。その些細な振動に陰茎もまた限界を迎えた。
エヌラスの手が腰に伸びそうになる。だが、アネモネを求めて彷徨う手を止めて、自分の顔を覆った。
「くっ、あぁ……くぅぅぅっ……!! アネモネ――!!」
「んんぅぅっ! エヌラスさ、ん――!!!」
いっそう強く引き締まる膣の中で暴れるペニスからは精液がとめどなく吐き出される。アネモネが自分の膣内を満たす熱い精液の感覚に腰を抜かした。
「あっ! んっ、まだ出て……ふ、あぁああ……!! すごく……熱くて、んんぅ……! エヌラスさんのせーえき……私の中で、びゅーって……いっぱい、射精してるね……♡ そんなに……私のおまんこ……きもちよかったんだ……?」
「ふ、うぅ……くっ……アネモネ――!」
「ぁ――ああぁ……、えっちな隊長さんなんだか、らぁ……! あっ!」
まだ自分の中で跳ねるペニスにアネモネは嬌声を抑えきれずにいる。
火山の噴火のように精を吐き出していたものがようやく収まったのか、膣から押し出される形でペニスが肉壺から開放された。
「ん、ぁ……ぬけ、ちゃったぁ……ふぅ、はぁ……あ、んん……」
「はー、はーっ……! く、ううぅ……!」
「……エヌラスさんの、おちんぽ……ほんとにおっきくて、私……はじめてなのに……こんなにきもちよくなっちゃった♡」
耳元で囁かれる優しい声色。脳の思考を甘く溶かしていくアネモネの声に、肩で息をしていた。
手を胸に当てて上体を起こすアネモネがエヌラスを見下ろす。
「はぁ、ん……エヌラスさん、この“お仕置き”に懲りたら……エノテラとえっちなことするの。ちょっとは我慢して――」
どさっ、と。一瞬、自分の身に何が起きたのか、アネモネは理解できなかった。
自分が身体を起こした瞬間、エヌラスに腕を掴まれた。そして次の瞬間には――自分がベッドに組み伏せられている。目を白黒させるが、そこには汗ばんだ肌で息を荒くして肩で呼吸をしている隊長の姿があった。自然と視線は裸の下半身に向けられる。
そこでは、先程精を吐き尽くしたばかりだというのに屹立してアネモネを睨むペニスがあった。
「え、っと……エヌラス、さん……ちょっと、顔がこわいよ?」
「……割と気にしてるんだから言わないでくれ」
「そ、そうだったんだ……ごめんね? それで、えっと……」
もじもじと、アネモネが太ももをすり合わせる。視線はエヌラスのペニスと顔を交互に見つめていた。
「……私のこと、どうしちゃうつもり……かな?」
さっきまでは自分がリードを握っていただけに、少し弱気な態度で尋ねてくる。抜けた腰はまだ力が入らないのか、逃げ出そうにも逃げ出せない。
赤らんだ頬に、潤んだ瞳。火照った身体は未だ冷めやらぬのか、透明感のある白い素肌に紅が差していた。肩で息を整える度にたわわな胸が重力に身を任せて揺れている。
初体験を済ませたばかりの割れ目は貪欲に精を求めてひくついていた。なだらかなお腹に、引き締まった腰、健康的な肉付きの太ももからは雌のフェロモンが漂ってきている。
自分の中のケダモノを抑え込むのも限界だった。そんな極上の女体が無防備に晒されていて、我慢などできるはずがない。どれほど高嶺の花と讃えられていようとも今は一人の少女に変わりなかった。
戦場でどれほど凄まじい戦果を挙げていたかも知っている。どんな活躍をしてきたのかも。だからこそ、今。
その身体を抱けるというのは、どれほどの幸福なのか。
打って変わって、一転攻勢の立場となったエヌラスははやる気持ちをどうにか抑え込みながらアネモネの耳元で囁く。
「ふぅ、ふぅ……! アネモネは、ほんとに悪い子だな――仮にも隊長に向かって、あんな意地悪な事するなんて……」
「で、でもアレは……お仕置きだったから……」
「じゃあ――ここからは、そんなえっちなアネモネに“お仕置き”の時間だ」
ペニスを割れ目にあてがってから、身体を起こす。膣口から溢れる精液を塗りたくって、再び先端を沈みこませていくとアネモネの口腔から喘ぎ声がもれた。
自分の胸を押さえながら、挿入されていくペニスを見つめる。
「ん、んぅぅ……。私、エヌラスさんに犯されちゃうんだ……!」
「さっきまであんなに乗り気だったのに、どうしたんだアネモネ」
「だって……、こんなの……恥ずかしいよ」
「その恥ずかしい真似を、さっきまで楽しそうにしてたのにな」
「そ……それ、はぁ……!」
「――アネモネならわかってると思うから、言わなくてもわかるよな?」
「……“お仕置き”だもんね……ぅ、ん。あなたの、すきにして……?」
「そういうことなら」
ゆっくりと挿入していたペニスを一息に押し込むと、アネモネの腰が跳ねた。
「は、あぁっん!」
「アネモネの中、さっきより締まりが良くなってる」
「そん、なこと……言わない、でぇ……! はずかしい、んだから……!」
浅く呼吸を繰り返すたびに豊満な胸がこぼれ落ちそうに揺れる。エヌラスは手を伸ばして鷲掴みにした。火照り、汗ばんだ身体は手のひらに密着して自分から離れようとしない。
珠のような肌はモチモチとした手触りだが、乳首は硬く勃起していた。
急に胸を触れられたアネモネが慣れない上半身からの刺激に甘い声を挙げる。
「ん、ぅ……♡ も、ぉ……男の人って、ほんとにおっぱい好きなんだから……!」
「めちゃくちゃ柔らかいのに、しっかりハリもあってこれはたまらないな……それに、こんなに先端も尖らせてて、アネモネもエッチな身体してるな」
「ふ、ぁ! すりすり、しないで……!」
焦らすように乳首を摘み、すり合わせるとコリコリとした触感がエヌラスの指に伝わってきた。その刺激に身体をよがらせてアネモネが耐える。
力を入れるたびに、ますます膣が引き締まった。弧を描くように揉みしだかれる胸をジッと見つめ、アネモネは目尻に涙を浮かべながら無抵抗に愛撫を受け入れる。
「っ……アネモネ、めっちゃエロい」
「だ、って……! エヌラスさんの手が、きもちよくっ、てぇ! おっぱいもおまんこも、こんなにされちゃったら……!」
腰を動かすたびにアネモネの口からは甘い声が漏れ、膣の動きが小刻みに痙攣していた。
「あ、んっ! えっちな声、出ちゃ……あぁぁ! エヌラスさ、んぅぅ……!」
その甘い声も。その魅力的な肢体も。蠱惑的な態度も。アネモネという花騎士がどれほど異性として完成されていたかがわかる。これほど女としての逸材もそう出会えるものでもない。
声を押し殺そうとしているが堪えきれない様子でアネモネは自分の身体を蹂躙されるのをただ見つめる。それがますますエヌラスの性欲をかき立てた。
自分の中にある留まらない欲を一心不乱にアネモネにぶつける。
「っ……アネモネ」
胸から手を離し、身体を覆いかぶせて抱きしめるとエヌラスはアネモネを吸い込む。
シャンプーの爽やかな匂い。どこか甘さの漂うフェロモンの分泌、そこに透明感のある汗の臭いが混じり、獣じみた欲が加速する。
今度は自分のペースで何度も激しく膣をかき乱していく。
「ひ、ぅ! あんっ! エヌラス、さ――! はげ、しいよ……! んっ、あぁああ!」
「くっ……! いちいち声が、エロいんだよ……もう……!」
「あっ、また、おおきくなって……! おちんぽ、ビクビクしてる……!」
「このままだと、また
「んっ、いいよ……好きにして……お仕置き、なんだもんね――っ!!」
「これじゃお仕置きじゃなくて“ご褒美”になっちゃうな――?」
エヌラスは射精をねだるアネモネの耳元で囁いた。その言葉を聞いた瞬間、いっそう膣の締まりが強くなる。愛液と精液の混じった白く濁った液体がいやらしい音を立てて室内に響く。
ベッドの上で繋がる男女の営みに、部屋の中を満たすフェロモン。その臭いを吸い込んでアネモネが恍惚とした笑みを浮かべたままエヌラスの首に手を回して強く抱きしめる。それだけでなく両足も使ってしがみついた。
「お仕置きなのに、そんな気持ちよくなってたら……! ダメじゃないか……!」
「あっ、んっ! ふぁ、う! ご、ごめんなさ――! で、もぉ! こんな、えっちなの好きになっちゃ――!」
「ならどっちがいい? お仕置きと、ご褒美……!」
「んっ、あっ……どっちも、じゃ……ダメ?」
「……この、欲張りさんめ!」
奥まで挿入してから一気に引き抜かれていく。膣をかき乱して止まず、容赦のないピストン運動にアネモネは為す術もなく津波のごとく押し寄せてくる快楽に身を任せていた。
「アネモネ――出すぞっ!」
「ふ、あぁぁぁっ!! あ、んぅくぅぅぅっ!!」
二回目だと言うのにエヌラスの射精は勢いが衰えずに腟内を再び精液で満たしていく。その二度目の射精に反応してアネモネの身体が激しく痙攣した。初めての絶頂を体験して、声にならない声を挙げる。
「イッ、ちゃっ……たぁ……♡ エヌラス、さんの……えっちなおちんぽ、好きに……なっちゃいそう――」
「はぁー……はぁー……! つっ、アネモネの中……ヒクヒクして、えっちだな」
「や、っあ! なん、でそんな元気なの……! こんなの、されちゃったら私――えっちな花騎士になっちゃう……!」
「――ほら、アネモネ。エノテラはもっとがんばってくれたぞ?」
その名前を出されたアネモネが頬を膨らませた。唇を尖らせて、エヌラスを睨む。
「わ、私だって……まだ頑張れるもん……! 他の花騎士の名前、出しちゃダメ……!」
「あ、ああ。ごめんな……じゃあ、今度はお詫びってことで」
「もう……そうじゃ、なくってぇ! えっちなこと、したいだけじゃないの」
「アネモネがエロいのが悪い――ほら、動くぞ」
「あっ、んぅぅ……!」
すっかりベッドに身体を投げ出したアネモネの腰が持ち上げられる――。
――それから、どれほどお互いの身体を欲望のまま貪りあっただろう。時計の針はすっかり傾いていた。日を跨ぎ、時刻は深夜を過ぎている。
二人は狭いベッドに身体を納めて裸のまま抱き合っていた。
息を切らしてアネモネが枕に頭を預けながら優しい眼差しを向けてくる。
「……♡ エヌラスさんのえっち、すごいね……」
「……その、ごめん。自分でも途中から歯止めが効かなくなってな」
「もう私のお腹いっぱいになっちゃった……こんなにされちゃうなんて思わなかったよ」
「……ほんとごめん」
エヌラスはそれに謝罪をするものの、自分のペニスが欲望に忠実なことには何も言えなかった。それにはアネモネも気づいたのか、すぐに顔と交互に見比べる。
「も、もうダメだからね……! 明日もお仕事あるんだから」
「わかってる、わかってるから。だからそんな顔しないでくれ、我慢できなくなる」
「……ねぇ、エヌラスさん。どうしてあんな無茶したの?」
「えーっと……どの無茶?」
「むぅ~」
その視線にいたたまれなくなってエヌラスが視線を逸らした。
「今回の」
「あー……」
「あー、じゃなくて。私ほんとに怒ってるんだからね」
「それは……えっとだな……」
バツが悪そうに言葉を濁す。だがアネモネの責める視線に、仕方なく理由を話し始めた。
「……子供」
「子供?」
「ああ。その、街道の近くに子供がいたんだ。そんな時に害虫が出てきたもんで……花騎士の到着を待ってるわけにもいかなくて」
「――無茶、しちゃったんだ」
「あい……ごめんなさい」
最初こそ驚き、目を白黒させていたアネモネが再び微笑み返す。
「そっか。なにも考えてなかったわけじゃないんだ」
「……普段の俺の態度からしてなんも考えなしにバカやったと思われてた?」
「あ、えっと……えーっと……」
「……えーと、じゃなくて」
「……やさしいんだね、エヌラスさんは」
手を差し出して、エヌラスの左目の刀傷を撫でる。理由は何も知らないけれども、その身体中の傷跡がなんとなく理解できた。
「くすぐったいぞ、アネモネ」
「……でも」
「ぅぐ……」
ずいっと顔を寄せて、アネモネがエヌラスを睨む。
「エノテラとえっちなことするのは、程々にしてね」
「善処します……」
「じゃあ……それで許してあげる」
「アネモネは本当に優しいな……人に恵まれているっていうか、なんというか……俺ももう少しがんばんないとな」
「…………」
顔を赤くするアネモネがしどろもどろになりながら視線を逸らした。
「ぁ、えっと、ね……その、まだ……これ以上がんばるの……?」
「……仕事の方だからな?」
「あ――――そ、そうだよね。お仕事、がんばらないとだもんね」
「無粋なこと聞くが、アネモネ。俺がなにを頑張ると思ったんだ?」
「い、言わせないでよ……そんなえっちなこと……」
「……つまり俺がえっちなことを頑張ると思ってたわけか。こんな、ふうに」
エヌラスが再びアネモネを押し倒すと、驚いた顔をする。
どこか期待を込めた瞳で見つめてきた。
「だ、だめ……! もう、えっちなことしちゃダメなんだから……!」
「部下の期待に応えるのも上司の仕事だと思う」
「……念のため聞いておきたいんだけど」
思い出したように、アネモネが顔を背けながら視線だけ向けてくる。
「エノテラと、私と。あと、サボテン以外に……仲の良い花騎士って誰かいる?」
「え? えーっと……そうだな……仲が良い、っていうか話したことのある花騎士だと」
エヌラスが指折りで数え始めた。
「サクラとウメと、あとオレンジ……だったっけな。リリィウッドではエルダーフラワーの薬に世話になったし……でもなんでまた急にそんなこと……聞い、て…………」
「…………変態」
無知って恐ろしい。
名を挙げられた花騎士の知名度と実力を知らないからこそ気軽に声をかけられるのだ。
――数日足らずでリリィウッドの召集令から戻ってきたエノテラは、いつになく距離の近くなったエヌラスとアネモネを見つめて口をへの字に曲げたまま部屋の入口に突っ立っていた。その表情から察するに、恐らく気づいているのだろう。
怒られると思った。確実に、そして滅茶苦茶嫌われるであろうことも想定している。ぶっちゃけ考えるだけで気が滅入るし泣き出したくなる。エヌラスは、だが部屋の入口に立ったまま背丈を超える十字架の剣を携えて動かないエノテラに害虫以上の恐怖を覚えた。
「その……おかえり、エノテラ」
「えっと、早かった……ね……?」
「…………愛しいエノテラが、早く戻ってくることになにか不満ですか。不安でしたか。不審な動きは特にありませんでしたか?」
「いや、特には……なかったです……」
ガリガリと十字架の切っ先で床を削りながらエノテラが室内に入ってくる。足取りはまっすぐエヌラスに向かっていた。隣のアネモネには目もくれていない。
「エヌラスさん」
「はい……」
「率直に聞きますし、単刀直入に尋ねます。エノテラがいない間に、アネモネさんとえっちなことしましたね?」
ギク、と身体を強張らせたアネモネを見てエヌラスが息を詰まらせた。しかし、嘘をつくわけにもいかず素直に頷く。
「……しました」
「…………」
「その、怒るのもわかるし、エノテラに嫌われるのも無理ない話だけど」
「――ふふっ」
笑っているのに背筋が凍りつきそうだった。
「エノテラは怒ってません。嫌いにもなりません。むしろ、ワクワク、ドキドキしています」
「なんで?」
「リリィウッドに戻る間、エヌラスさんのことを考えてました。このままずっとイチャイチャ、ラブラブな関係でいるのも悪くないと思ってましたが――やっぱり、恋は障害があってこそ燃えるものだとエノテラは気づきました。なので、その相手がアネモネさんでよかったと思ってます」
そこで初めてエノテラはアネモネに視線を向ける。
「アネモネさん。精華祭や花騎士の人気投票での勝ち負けは、エノテラにはどうでもいいです。でもエヌラスさんのことだけは負けたくないです」
「……私も、負けないからね」
「あの、俺仕事中なんだけどな……」
なんとも言えない居心地の悪さに、椅子に座っていながら落ち着かなかった。
修羅場とも言えない雰囲気、好敵手同士を認め合う空間に身を置いていたエヌラスは助けを乞うわけにもいかず、ただ執務机に向かって書類を片付けていく。
そんな時である。扉がノックされた。規則的な音が二回。
執務室の扉を開けたのは、サボテンだった。少々汗を流しているのはここにくるまでの間、鍛錬場で他の花騎士とトレーニングに励んでいたからだ。
「失礼します……」
「サボテン、どうした」
「……隊長に、伝言頼まれた」
「俺に? 誰からだ」
これぞ天の助け、と言わんばかりにエヌラスはサボテンに話の続きを促す。
「オレンジ隊長さん」
地雷だった。
「今度、一緒に呑みに行こう――だって」
ダラダラと冷や汗をかくエヌラスの両側から突き刺さる絶対零度の嫉妬。
「……オレンジさんと言えば、特殊部隊の隊長さんです。害虫に狙われやすい果実を運搬するエリートです」
「うん、そうだねー。すごいね、エヌラスさん。私達の知らない間に、いつ、どうやって、どんな方法を使って仲良くなったんだろうねー」
「違うんです……! いや、オレンジとは何回か話したことがあるだけで」
「「もう呼び捨てなんだ」」
「……ちゃうねんて」
エヌラスが顔を覆った。
「じゃあ……ちゃんと伝えたから、鍛錬に戻るね」
「うん、ありがとうなサボテン……」
「あ、そうだ――アネモネさん」
「ん、どうしたの?」
「……えっと」
サボテンが部屋を出る前に声を掛け、顔を赤らめている。
「……この間の、聞こえてたから。気をつけてね……」
「~~~~っ!!」
「そ、それじゃ……それだけ、だったから……失礼しました」
――バタンッ。
サボテンが執務室から立ち去ると、中から異様な空気が伝わってきた。静かな威圧感に満ちた雰囲気が廊下の空気まで歪ませている。どうやら自分は爆弾を届けてしまったらしい。
そのことに少々罪悪感を覚えつつもサボテンは鍛錬に向かう足を早めた。