前回の話の後、カズマがカッコよく活躍する話が無いのが少し不憫な気持ちの私です。まぁ、でもカズマが実力者なシーンって無いしなぁ…って考えてたら、あっ、これなら少しだけカッコいい……か?ってヒドイネタを思いついたので書きました。
またお暇な時にでもお付き合いください。
勇者ミツルギ。彼はこの国で、真っ向勝負ならば最強と名高い男。だがそんな彼が今、敗北して地面に突っ伏している。その相手は神話生物などではなく、彼より一回り小さい女性……いや、角と羽の生えた悪魔である。
「き、君は本当に…サキュバスなの……か…」
「えぇ、少しばかり特殊な血が流れてはいるが、私は間違いなくサキュバスだ。勇者ミツルギ、悪いがお前では不足だったらしい。街の男へ伝えてくれ。私に見合う男を探しているとな……」
そのサキュバスはミツルギの頬に触れて精気を吸うと、簡単な手荷物を持ってその場を後にする。クレメアとフィオが街からの応援を連れてくるまで、ミツルギは立ち上がることさえ出来なかった。
__________
「という被害が、ここ数日でもう20件も出ているんです。誰も死者は出ていないので、まだそこまで大きな問題にはなってないのですが……」
「でも、流石にそれはこっちの商売に悪影響だよな……サキュバスだって名乗っちゃってるし…」
新魔王討伐から3日ほど後、俺達が王都から帰還したら、アクセルでは別の問題が起こっていた。ルナさんの説明を聴く限りでは、それほどに危険な相手という訳では無いように思える。それにしてもミツルギが負けるなんて、それは本当にサキュバスなのだろうか……
「いや、アイツはサキュバスなんて可愛いもんじゃねぇよ……」
「キース?!まさかお前のパーティーもやられたのか?!」
「あぁ、俺はまだ軽症で済んだが、テイラーはまだ病院にいるし、ダストはたつことさえ出来てねぇ……アレは恐ろしい相手だったぜ…」
そんな?!ある意味ではサキュバスの事を知り尽くしているダストと、肉弾戦ならこの街でも屈指の実力を誇るテイラーが同時に?!
「たてないって……ダストは無事なのか?!」
「分からねぇ……丸出しの所を蹴り上げられたからな…下手したらもうアイツは……」
「おい待て。あいつ何してんの?!」
まさか、アレを出して迫ったんじゃ……
「強くてもやっぱり淫魔だから、これで挑発すれば発情してノッて来て乗ってきてくれるって……」
「いや、アイツなにちょっと上手いこと言おうとしてんの?それ全然上手くないし、そもそもサキュバス店でも拒否られてんじゃん!」
ほんと、そろそろ出禁にしようかな……
「まぁ、ダストさんが不能になるのは別にいいのですが、サキュバスと人の関係に亀裂が入るのは不味いです。なので、私達も本件には調査協力をしています。ということで、カズマ様。これが被害者と被害にあった方のリスト、そして事件現場の地図です」
「お、流石はうちの従業員だ。仕事が早くて助かるよ」
俺とキースの元へ現れたのは、地図を持ったロリーサ。やはり俺達の望む共存と共栄のためには、今回の事件は困る。そこらへんをちゃんと意識してくれているなんて、本当にこの娘は優秀だ。
「しかし、やはりどうにも腑に落ちません。やられた人は全員物理攻撃でやられていて、誰一人として魅了も快楽による吸精もされていないんです。私達サキュバスのステータスでは、こんな戦いは出来ませんよ?」
「そこなんだよなぁ……上位種の危険もあるかと思ってクイーンと力比べしたんだけどさ?アイツ、純粋な腕力はめぐみんより弱いんだよ……」
「あっ、そこの比較はお前じゃないんだな…」
「しっ!カズマ様は以前めぐみんと喧嘩して負けてるんですよ?」
「あっ…ごめん……」
おい辞めろ。仕方ないだろ?スキル補正無しだと最弱職なんだから!まぁ、ベッドで一対一なら無敗ですけど!
「でも、それにしたって相当だろ?テイラーもミツルギもまだ病院とか、どんだけ強いんだよ…」
「はっ?いやいや、そりゃお前に原因があるだろ?!」
「えっ?俺なんかしたっけ?!」
………………………
「『ヒール』よし、これで全快よ!」
「あ、ありがとうございます女神様…まさか僕のためにカズマが戻ってきてくれるなんて……」
「お、おぉ……そりゃ、仲間だからな……えっと…タナカ…」
「仲間なのにそこまで外す?!」
俺達が王都で表彰されて宴会していた間、アクセルの街は医療不足に陥っていた。今やこの街には、格安で怪我も病気も見てくれる診療所があり、そして切断された四肢さえもヒールで治す女神が二人もいる訳で、どんな治癒師もこの街で稼ごうとは思わない。そして、ポーションの大量生産と仕入れはウィズが賄っている訳で………俺たちの不在は、実質医療崩壊と言えてしまうのだ。
「ま、まぁアレだ!取り敢えず話を聞かせてくれよ?お前が負けるなんて余程の相手だろ?」
「な、名前の件には色々言いたいところだけど……そうだね。確かに彼女の力は別格だったよ。その靭やかに鍛え抜かれた身体は勿論、技も武術を体得していたみたいなんだ……」
「悪魔が武術ですか……私としても前例は聴きませんね…先輩はどうです?」
「私も聞いたことないわね…」
そう言われてみると、俺も悪魔が武術を使うところは見たことがない。何となく戦い慣れしているように見える奴は居ても、武術の域まで達した悪魔には出会ったことはない。と言うか、習う必要もないだろうしな。
「でも、イマイチ目的が分からないんだよな。精気が欲しいなら殴る意味ないし、でも精気を吸ってはいるから悪感情欲しさってのも考えられないしなぁ……」
「僕では不足だと言ってたからね…何か目的があっての事だとは思うんだけど…」
「………まぁ、そこら辺は衛兵隊に任せておけよ。流石に数で押せばなんとでも……おい、なんで全員俺を見つめるんだよ?」
ミツルギの治療が終わってから、アクアとエリス、そして病室の全ての人間が俺に注目している。これはアレか?俺ならなんとかするよね?って奴か?!
「いや、だってサキュバス扱わせたらねぇ?」
「淫魔の王の地位は不動のものとか言われてますし……」
「てっきり彼女も配下に加えるのかと……」
「「「「そうそう、それそれ!」」」」
「病室で変な一体感を出すな!ミツルギが負けた相手に挑むわけ無いだろ?!」
「「「「えぇ…」」」」
俺のベース攻撃力じゃめぐみんさえ倒せないし、サキュバス相手じゃ搦手の技も相性が悪いし……
「よし、それならシエロを派遣しよう!やっぱ武術家には武術家をぶつけるのが1番だよな!」
「ふ、普段なら女の子をっていう所だけど、確かに彼女は相当な実力だからね……」
うん、バレーの時にへし折られかけてたもんな。そりゃミツルギでも止めないわ……
「うわぁ……なんの躊躇もなく他人に…しかも女の子に任せる気よ…」
「ま、まぁ…合理的ではありますから…カズマさんらしいのではと……」
その俺らしいって言葉、普通に活躍した時には絶対に言わないよね?別に良いんだけどさ!
…………………………………………
「成る程……話は分かりました。それで、相手の流派は?」
「いや、流派は流石に……」
と言う事で、俺はミツルギとエリスを連れてシエロの元を訪れた。なお、アクアにはもう一人の候補を勧誘してもらっている所だ。
「えっと、本当にシエロさんは武術の話になると人が変わりますね……ジョブは武闘家の方が良かったのでは……」
「そんな?!ボクの信仰にご不満が?!」
「すみません不用意な発言でした!全然不満とかありません!とても良い子で助かってます!」
最近エリスも、皆との距離感が近くなってきたな。そろそろ皆にバレるんじゃないか……
「でも、やり手武術家でプリーストだもんな。悪魔討伐をするには、最高のジョブなんじゃないか?」
「そ、そうですよね!武術家でプリーストなんてとても心強いですもんね!この世界から魔法的にも物理的にも悪魔を滅ぼせますもんね!」
「おい辞めろエリス。そんなことされたら倒産する」
やっぱり根底はアンチ悪魔なんだな……
「主神エリス様の信頼……武道家として、そしてプリーストとして、必ず応えてみせます!悪魔は根絶やしです!」
「頼むからその武道家サキュバスだけにしてくれよ?!うちの従業員は駄目だからな?!」
……………………………………
「嘘だろ……ゼスタが負けるなんてあるのかよ……」
シエロの協力を取り付けた俺とエリスは、急いでサキュバスの目撃現場に駆け付けた。既にそこにはアクアに頼んでいた助っ人が来ているのだが、まさかサキュバスの尻の下に居るなんて……いや、これ負けたんだよね?プレイじゃないよね?
「くっ…引き締まった尻に椅子にされるのも…悪くは…ない…ごふっ…」
あっ良かった!アイツ最後の矜持は守ってくれてた!にしても、真っ黒のショートパンツにチューブトップって、見た目普通にインマだよな?
「あら。今日はまたお客さんが多いわね。でも挑戦者なら大歓迎よ?」
「か、カズマさん!アイツおかしいわ!私達の退魔系のスキルが全然効かないの!悪魔の匂いがするのに!」
「くっ!やっぱり神じゃなかったか!」
「こっち疑うの辞めて?!」
でも、流石に女神の退魔スキルを防ぐって何もんだよ!魔王でも髪の毛で苦しむのに!
「そ、それではシエロさんが勝つには…」
「武術で上回るのみですか……まぁ、元よりそのつもりです!!」
あっ、これもう作風が違う!こいつらは俺より強い奴に会いに行く奴だ!
「私はロイエンタール家の長女、ロイエンタール・アコード・シルエルト。貴女の名前は?」
「そうね。サキで良いわ」
頭文字じゃん!
「ではサキ、こんな事をしている理由を聞いても?」
「ふふふ、それは私を倒した相手にしか教えられないの。それならどうするべきか、アナタにはわかるでしょう?」
「そうですか……では、いざ尋常に!」サッ!
「えぇ!きなさいシルエルト!!」シャッ!
両名の構えはよく似ている。体重を乗せての一撃を放つタイプの武道の構え、つまり空手に近い流派に見える。だが、もし空手だとするなら、見たところ完成度はサキの方が上なんじゃ……
「はっ!」
パァン!
先手はシエロの正拳。だが、それを裏拳で反らして無効化するサキ。その動きは本当に最低限で…
「ふっ!」
ドゴッ!
「くっ!」
伸ばした腕の脇の下へ、裏拳を放った左手をそのまま叩き込む。やはり、技の熟練で言うと向こうが上だ。いや、と言うか日本のプロでもそうそう居ないレベルだろ!
「あら、脇腹も鍛えているなんて相当な熟練ね?並の武道家なら崩れ落ちてるわよ?」
「えぇ、父上は本当に容赦のない人なのでっ!」
ズダン!
「ごふっ!これ食らって、なお前に出るなんて……」
脇腹に一撃食らおうと、その程度ではシエロが止まることはない。むしろ前進して、そのまま頭突きをかます。技の熟練では一歩劣るが、頑丈さと筋力はシエロが勝っているらしい。
「良いわね……貴女が女であるのが本当に惜しいわ」
「へぇ、やっぱりソコは淫魔なんですね。強い男の精が好みなんですか?」
「ふふっ、そうね。強い男が好みなのは否定しないわ。でも残念な理由は、貴女と体格差があることよ!」
「っ?!」
サキが構えを変えると同時に、俺達の元へ伝わってくるプレッシャー。先程までも武術の達人のような威圧感を感じていたが、これはもう完全な強者の放つオーラだ!それも、感覚としては魔王とかそういう次元の!
「試合相手なら悪くない。でも、これから先は死合の領域……その体格で踏み込めるかしら!」
「気圧されません!ロイエンタールは決して引いたりは………くっ!」
「ねぇ!なんでシエロは止まったの?!さっきみたいにガンガンいかないの?!」
「やはり、このプレッシャーに気圧されているんじゃ……」
武術スキルさえ持っていない二人には、多分この状況が分からないのだろう。シエロは動けないのではない。もし全力でカウンターを食らえば、その瞬間に決着が着くからだ。いや、本人がどこまで見えるのかは知らないが、少なくとも見通す目には目まぐるしくシエロの未来が切り替わる姿が見えるのに、その中に勝ちパターンが1つもない。いや、なにこれこの作品ってこんなのだっけ?!
「……ここまで到達しているなんて、サキュバスだからと侮ったことを謝罪します」
「貴女こそ、その歳でこの領域に……気当てだけで先を読める領域とは恐れ入ったわ……さぁ、決着と行きましょうか!」
「「はぁぁ!!」」
パ…パァンッ!
ロイエンタールの先手必勝は確かに実戦で有用だ。故に攻撃の到達は明らかにシエロが先だった。しかし……
「ボクの打撃を……自分の攻撃に上乗せするなんて……」
ドサッ…
「貴女の流派は私との相性が悪かったみたいね。でも、その熱意と鍛錬を持ち続ければ、それさえも引っくり返せるかも知れないわ……」
食らった打撃を左手で受け、その加速を胴体の捻りに変換、そのまま右手の拳を叩き込む。自分の攻撃力を上乗せされた打撃を溝落に食らったシエロは、そのまま力無く倒れ込んだ。
「この子を治療してくれるかしら?この子は死なせるには惜しいけど、ちょっと加減が出来る相手じゃなかったのよ」
「そうだった!アクア、ゼスタとシエロと一緒にセレナの所へ飛ばす!急いで治療を頼む!」
「任せて!」
「『テレポート』!」
しかし、やはり何かおかしい。コイツはどこか悪魔とは思えない性格をしている。まるで人間の……更に言うなら心身ともに鍛えた武術家のような……
「さて、最後は英雄様と女神様だけなのだけど…逃げるなら追わないわよ?」
「あぁ〜、本当なら尻尾巻いて逃げたいんだけど……流石に事件になっちゃほっとけ無いんだよ。せめて闘ったという実績がないと、色々と難しい立場でさ…」
これで何もなく戻るとリアに殴られて、ギルドにも散々文句言われそうだもん。それに、サキュバスのイメージも下がりまくりだし、何もしないのは流石に不味い。
「うふふ、嬉しいわ。貴方にはとっても興味があったの。父の成し得なかった魔王討伐を成した男。その実力にね!」
「ち、父親って!まさか転生者がサキュバスの魔の手に?!」
なるほど、そりゃ強いわけだ。どうやらこの子はチート能力を引き継いでいるらしい。それも、相当な訓練で使いこなすまでに至っていては、普通の冒険者に勝ち目はないだろう。
「カズマさん不味いです!あんなのこの世界に残しておけません!討伐か封印しないと、魔族に危険な一族が誕生します!」
「いやもう誕生してんだろ!つうか、サキュバスに付いてくようなやつを勇者にしちゃ駄目だろ!」
「あれ?それカズマさんには言う権利は……」
「そうだったごめん!」
しかし、こりゃ下手したらアイリス級の悪魔も生まれかねないって事だろ?!そこら辺の管理が雑すぎるんだよ天界は!
「アナタは寝技は凄いって聞いたことあるけど……ふふっ、私相手に寝技に持ち込めるかしら?」
「それ意味違うって理解してんだろ?男のあれ蹴り上げる気満々の相手に、そんな気分にゃならねぇよ」
まぁ、許されるのなら、良い身体だなとは思うけど……
「………視線がいやらしい!」ビクッ
「カズマさん、遂にサキュバスにまで引かれるなんて……どんだけ性欲お化けなんですか……」
「違っ?!健全な男子なら仕方ないだろ!」
あと、エリスには言われたくない!しかし、なんでサキュバスがそんな恥じてんの?
「あれ?ひょっとしてお前、快楽による吸精の経験が……」
「な、無いわよ悪い?!たとえ食事と分かっていても、初めては好きな人とがいいじゃない!手からもドレインできるんだから、別に籠絡する必要もないでしょ!」
「「サキュバスなのに清い?!」」
これはなんと言うレアキャラ!!全部初めての無知シチュサキュバスだなんて!これはもう、薄い本的なお仕置きもありなのでは?!
「いやぁ、それでも人に暴力を振るうんだから、これはもう悪いサキュバスだよな。うんうん…」ヌギヌギ
「ちょっと待って!なんで薄着になってんの?!しかもちょっと大きくなってない?!」
「お構いなく!ちょっとお腹の内側にくる打撃を放つ準備してるだけだから!別に興奮してるとかじゃないから!」
「ど、どこを突くつもり?!う、内側って……ぶっ潰すわよ?!」
よしよし!こいついい感じにビビってやがる!これは最低の方法だが、これで逃げてくれりゃ……
サッ!シュバッ!
『自動回避』
「あっ……ぶなぁ!!お前その会話の流れで股間蹴り上げるって最低だろ?!武人の誇りはないのか?!」
「うるさい!貴方を見ていると、さっきからいかがわしいビジョンばかり見えるのよ!このどすけべ!!」
見えるって、まさか『直感』スキルか?!経験や研ぎ澄まされた感覚から未来を読むって聞いてたけど、まだ何もしてないのに見えんの?!ガチの達人じゃん!そりゃシエロに分が悪い訳だ!
「いや待てよ…そんな先まで見えるってことは……」
むしろ、フェイントの先まで勝手に見えちゃうなら、それはこっちも使えるんじゃ……
「よしよし、俺がお前に引導を渡してやる!さぁ、かかってきな!」
「ふっ…どうやら正々堂々戦う準備ができたようね!それなら……遠慮なく行くわ!」
相手は強敵だが、それでもバニルのお陰で大体の動きは察知できる。連撃を許さなきゃ、俺には自動回避スキルもある。やるだけやる価値はあるだろ!
「はっ!」
「おっと!」
パァン!
一撃目の正拳を振り払って懐に入る。恐らくこれは罠だと思うが、それでもそれを上回る方法が俺にはある筈だ。この難敵に普通に勝つのは無理でも、やりようによっては何とかなる!
「まだまだぁ!」
シュバッ!
俺の接近に合わせ、頭を狙った容赦ない回し蹴りが迫る。普通に考えればこんなの回避できないが、恐らく回避する必要もない!クイッ
「ひっ?!」
スカッ…
「よし貰ったぁ!」
スリッ
「はうっ!!」
ビクッ!
俺の策略は完璧にハマり、相手の蹴りは俺の上を通過した。挨拶代わりに尻を撫でると良い声で鳴くし、これならいける!間違いなくこいつ、俺と最高に相性がいい!
「な、何があったのか分かりませんが、これカズマさんが押してるんですよね?!頑張ってカズマさん!」
「おう!そこで安心してみてな!勇者らしく勝ってやるからさ!」
「くぅ…こんな方法を使うなんて…でも、一撃入れれば貴方なんて!」
シュルッ…
今度は身体を回転させ、突き刺すような後ろ回し蹴りを放とうとしている。しかし、これも俺には届かない。お前の特性が、俺の動きを察してしまうからな!
「くぅ!」スカッ!
「ははは!何処を狙っているのかな!」
さわさわ
「ひゃうん!」
ドサッ
先程と同じ手を使って太ももを撫でてみたが、これでもう確信に変わった。こいつは信じられないほどに感度が高い。ソレは察知能力の強化にも繋がるが、その予測が見え過ぎることが何よりの弱点になっている!
バサッ!
「エリス様!ご無事ですか!」
「天使!大丈夫です!カズマさんが押していますから!」
「へ?!アレは武神様の用意した転生特典『武術家の血』ですよ?!あんな無尽蔵に強くなり続けるチートを持つ相手に、まさかカズマ様が?!」
あっ、凄い人の特典だったこれ!そりゃ普通に戦ったら勝てねぇし、血が特典アイテムなら浄化も効かないわ!良かったこれが有効で!
「うぅ……そんな攻撃が私に届く筈が無いわ!そんな筈…無いのにぃ……」
「なら、一撃受けてみろよ?一撃で負けるほどヤワじゃないだろ?」
「そんなの受けられるわけ無いでしょ?!」
だよな!俺がさっきからやろうとしてることを把握できちゃうのなら、そりゃ絶対に逃げの一手になるよな!俺の腰の動きを止めなかった場合、狙われてるのはお前の割れ目だからな!
「ほら!今度はこっちからだ!」
「ふっ!そんな見え見えの攻撃がっ……ちょっ何する気?!……あっ!」
ぐらっ
崩れた!よし、そこで脇腹!
さすさす
「ひやぁー!」
なにこれ楽しぃー!
「あの、所でこれはどういったスキルなのですか?カズマさんは何もしてないのに、相手が倒れたり怯んだりしているような……」
「恐らくですが、アレは気当てです。達人の領域に達した者は、その動作の前兆からその先を読むことが出来ます。故に、本来脳で反応できない攻撃にも、達人は対応できるのです。しかし、だからこそ微動のフェイントにさえ引っ掛かるので、それを逆手に取っているのでしょう」
「す、すごいです!カズマさんがそんな高度な戦闘を繰り広げるなんて!」
「スキルを多重に重ねる事で、一瞬の爆発力を生む戦い方を開発してましたからね。もしアレがあらゆる攻撃に転用できると言うのなら……今のカズマ様は、間違いなく英雄の実力です!」
うん、その説明の前半部分は正解だ。だが、相手が読み取っているのは攻撃ではない。期待を裏切ってごめん!
「あ、貴方のアレはどんだけバリエーションがあるのよ?!なんでどの攻撃にも合わせられるの!!」
「そりゃ、俺だって鍛錬を欠かしてないからな!さぁ、ソレで終わりか!」
「くっ!舐めないで!」
シュバッ!
今度は踏み込んでの鋭い突き。だが、足腰が痙攣していては、その威力も半減だ!
「カウンター!」
クリュッ
「ひゃうん!」
ガクンッ!
よし!ついに膝を着かせた!
「あれ?今の攻撃、胸元を掠めただけだったような…」
「あれはきっと発剄とか言う、なんか内側に破壊のエネルギーを送りつける技ですよ!武神様が生卵の黄身と白身を割らずに完全に混ぜるときに使うやつです!」
「すき焼き食べる時のアレって、そんな高度な事をしてたんですね……でも、カズマさんがその領域に近付きつつあるなんて、こんなに誇らしい事はありません!」
……ごめん。ただ乳首こねただけです!と言うかあの人そんなことできるの?!
「くそっ!なら、力付くで組み伏せて……」
シュパァンッ!
「んなっ?!」
「一瞬で仰向けに倒して股の間に?!これは完全にマウンティングポジションですよ!」
いいえ、正常位ポジションです。
「凄い!本当に凄いですカズマさん!まさに英雄の活躍ですよ!」
うん、その声援は辞めて。後で凄く申し訳なくなるから!
「くぅ!変なものを………当てるなぁ!」
俺の正常位ポジションがお気に召さなかった彼女は、体を跳ね上げて俺に逆肩車で食らいつく。なるほど、このまま俺の頭をフランケンシュタイナーで叩きつけるつもりだろうが、それはちょっと無理だ。だって、そんなショーパン履いてたら舌が届くもん。
「このまま床に叩きつけて……あぁんっ!」
スポンッ…ビターン!
「おぉ!あの勢いで振られて微動だにしないなんて!」
「やっぱり強くなってたんですね!」
いいえ、愛液で滑らせただけです。
「くっ…こんな奴に……こんな奴相手に……負けてたまるかぁ!」
シュバッ!
おっ、これは良い開脚からの踵落とし!もう、このまま合体しちゃおっかな!クイッ
「ひぃぃ!」
スカッ!
やっばり相手の動きを完璧に読めると、嫌でも回避行動取っちゃうよね?そりゃ、さっきから攻撃も決まらないさ。だって俺は、ほぼどんな姿勢からでも挿入できるんだからな!
「残念……俺とは相性が悪かったな!」
スパァン!
「くぅ…こんな……変態にぃ……」
バターン
「い、いまのはボディへの掌底?!だとしてもこんな強敵をダウンさせるなんて!カズマ様はいつからそんな攻撃力を?!」
「凄いですカズマさん!今日は本当に格好いいです!」
ごめん。ただパンツの上からクリト○ス擦って逝かせただけです。本当、最後まですみません!
「ま、まぁな!これも日々の鍛錬の成果かな!」
練習はしてるし、嘘は付いてないし!
____________________
「さて、では取り調べをさせて頂きます」
「もう、好きにしなさいよ…」
話が分かるとは言え、相手は間違いなくサキュバスである。人と魔物の間に流血沙汰が発生しては、流石にお仕置きしたから無罪とはならない。ということで、いつものセナさんの出番だ。俺とエリスも一応立会人として同席している。
「先ず、このような暴力行為に走った理由をお聞かせ願えますか?」
「……む、婿探しよ……私より強い男を探してたの!」
「………サキュバスって、婿探すんですね?」
「何よ悪い?!私は一途なタイプなの!父さんがそう育てたんだから仕方無いじゃない!」
ん?父さんが育てた?
「あれ?それじゃ、お前の父親って生きてんの?」
「なに勝手に殺してるのよ?!お母さんはお父さんしか知らない純粋な淫魔で、魂の契約までしてるから早々死なないわよ!」
なにそれ母親もピュアすぎる!それ本当に淫魔なのか?!
「うちの従業員といい。サキュバスの概念が私の中で崩れていくのですが……」
「いや、まぁ飲酒して嘔吐する女神がいるんだから、そんな淫魔が居ても良いのかもな…」
「そこで先輩を引き合いに出すのは、流石にどうでしょう……」
だが、どんな理由であれこのやり方は色々と不味い。道場での試合ならまだ武道家の争いと証明できるが、外で好き放題やられたらたまったもんじゃない。
「ただその、出切ればその乱暴な婿探しの方法は辞めてもらえると……」
「もう出来ないわよ!貴方が私の事を穢したくせに!私の処女返してよ!なんなら責任取りなさいよね!」
「「………は?」」
おっと、お二人共ゴミを見る目を向けないでくれます?流石にそれは勘違いだから!
「おい待て!俺は一線を超えてないぞ!」
「嘘よ!戦ってる間ずっと私の身体を狙ってたくせに!何度もマ…ヴァ……下半身を狙ってた癖に!」
いちいち恥じるなよ!お前本当に淫魔か?!
「はぁ?!そんなの狙ってねぇし!」
チーン
「「…………」」ジーー
あ、不味い。そういえばあったなこれ!
「いや、そこはほら、牽制と言うかね?本当にする気は無かったからね?」
チーン
「「………」」ジトーー
「いやだって、俺が勝つ方法なんて他になかったし……最終手段としてはもうそれくらいかなって…思って………」
くそう!やっぱりこの魔導具嫌いだ!
「淫魔相手に、抱けば勝てるというのもおかしな話ですけどね……」
「ま、まぁ…否定は出来ないですけど……そんな人間か居るんだ……とは思いますよね…」
べ、別に勝てるとは言ってないし?確率が高いってだけたし?
「あの、でも最初に普通に戦ってたのは……」
「ソイツは最初から愛撫しかしてないわよ!拳はヘロヘロなのに愛撫は私より速くて的確ってなんなの!それで胸を弄るわイヤらしく撫でるわ……この変態!淫魔!」
「マジの淫魔に言われた?!」
うわなんかショック!
「いやそりゃ言われますよ…」
「私の感動、返してくれます?」
「……すみません!」
くそっ!結局こんな扱いかよ!
「しかし、嘘を看破する魔導具でも貴女はまだ純潔と出ています。そこは安心していいですよ」
「本当に?!良かった……運命の人に会う前に傷物に…しかもこんな鬼畜野郎に穢されなくて本当に良かった……」ジーン
「……珍しくカズマさんが人外にモテないのは、やはり彼女の感性が人寄りだからでしょうか?」
あれ、これ遠回しに人にはモテないって言われてる?
「しかし、今後このような婿探しは辞めていただきたいです。貴女は淫魔であり、人を傷つければ討伐対象です。アクセルの街はカズマさんの意向で特例処置がありますが、流石に討伐されてしまいますよ?」
「し、しかし!それでは婿探しが出来ない!私は18の適齢期ギリギリで、売れ残るのは困るのよ!」
「ぐふっ!ま、まぁ適齢期の話はさておき…我々とて代案くらい出しますよ…えぇ…売れ残るかどうかはあなた次第ですが!」
セナさん……そろそろ21だけど強く生きて!
「代案っていうのは?」
「そうですね。この件に関しては、サキュバス店を通じて花婿募集の通達を出すことを提案します。貴女は自分の道場で待ち構えてくれれはば後は男性からやってくるというわけです。無論、道場内であれば試合ですから我々は関与しません。お客さんはサキュバスに偏見のない方々ばかりなので、直ぐに候補が見つかりますよ。それに、カズマさんの庇護下にあると言っておけば、アクシズ教徒も手が出せません」
「そ、それはこちらとしては願ったり叶ったりだけど……良いの?」
「はい。我々役人の立場から見ても、貴方と敵対するのは得策ではありません。その目的に手を貸すことで、こちら側に着いて頂く為の取引です」
「そ、それならまぁ、取引に応じるわ…」
「ありがとうございます」
おぉ、流石は出来る女!結婚は出来ないけど仕事は凄くできる!本当に不思議だよな。美人なのに……
「いやー、良かった良かった。これで全部解決だな!じゃ、後の報告はセナさんからお願いして、俺は帰ることに……」
ガシッ
「……何かなエリス?」
「敵対してる相手に欲情するカズマさんには、自分が誰のものかじっくり理解して貰う必要があると思いまして……ほら、良い子でこっち来てくださいね?」
「……あの、大変可愛らしい笑顔がむしろ怖いです!ちょっと!俺何されるの?!なにそのロープと手錠?!て言うか力強っ!」ズルズル
※この後、縛られて反撃不可のままカラカラに干乾びるまで搾られた。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
文明の進歩は性欲によりもたらされると信じている作者です。
格好良く書きたいけどそんなキャラでもないカズマさんですが、これなら皆ニッコリですよね。なお、本人はニッコリさせません。オチ要因です。
また不定期に垂れ流しつつ、いっそ別シリーズでもなんて考えてるお年頃ですが、またお暇な時にでもお付き合いください。