※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

折角異世界に来たのであれば、冒険者稼業も見てみたい。という事で、この馬鹿な家族の冒険者デビューです。久々に新鮮なリアクションをネタにします。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この素晴らしき家族に異世界を

剣と魔法のファンタジー。それに憧れるのは何も少年だけとは限らない。子供の付添で見たファンタジー映画にハマった親など、その世界に夢中になるきっかけはどこにでもある。だから、これは決して恥ずかしい親ではない……ほんと、そう思いたい……

 

「これが……これこそが私の運命の杖なのね!」

 

「はい!これを手に出来るのは、間違いなくお母様しか居ませんよ!」

 

などと、うちの母に調子の良い営業をするウィズの手にあるのは、バニルとウォルバクが用意した魔法の杖。なんでも遊園地で見たものを再現しようと作ったそうだが、調子に乗ったウォルバクが無駄に大量の魔力を込めたり、意味もなくレアな素材を追加したので無駄な高級品になったそうだ。というか、何故ユニコーンの角とか入れたんだろう。性能には影響しないのに……

 

「こんな脆そうな杖に命かけるとか、こっちの世界じゃ正気を疑われるレベルだぞ。ロマンも程々にしろよな……」

 

「良いじゃない折角の異世界なんだから!そんなこと言うと、試しに和真にアバダするわよ!」

 

「いやそれ息子に試していい魔法じゃなかったよね?!」

 

既にお察しの方も多いと思うが、先日ギルドを訪れた際にうちの家族は冒険者登録をした。表向きは俺の職場調査だと言い張っているが、本音はただ冒険がしてみたいだけだろう。母さんは俺とエリスのお祝いと言いつつ、完全に観光に来てる気がする。まぁ、気持ちは分かるが……

 

「父さんは剣士にしたぞ!やっぱり、冒険の基本は戦うコマンドだからな!魔法なんて常に使い続けたら、MPが足りなくて隣町にも行けないだろ?」

 

「隣町に行くなら馬車使うって……と言うか、現実に戦うコマンドなんて無いし、どんな攻撃になるんだよそれ?」

 

「……剣で殴る?」

 

「いやせめて斬って?!」

 

父親に関しては、もう発想が元祖剣と魔法のファンタジーって感じがする。いや、俺も嫌いじゃないし言いたいことは分かる。だとしても、サラリーマンが剣一本で異世界を旅するのは流石に辛くないか……

 

「やれやれ、二人の気持ちも分かるけど。やっぱりそんな分かり易い餌に食いつくのは駄目だよね?」

 

「おっ、お前は盗賊か……工夫次第で色々とやれるし、逃走系スキルが多くて生存能力も高いからな。素人にしては良い職業を選んだと思うぜ?」

 

「ふふっ、確かにそう言う側面もある……でも、僕が盗賊を選んだのはそんな安直な理由じゃないよ!」

 

ほぅ、流石は俺の教えを継いだ弟。ただ用意された仕事をこなしてヒーローになろうなんて両親とは違うようだ。なら、聞かせて貰うとしよう。盗賊の真の価値ってやつを!

 

「なら聞かせてくれよ?どんな理由で盗賊なのかを……」

 

「あぁ、それは間違いなく……モテ要素さ!!」

 

「………はっ?」

 

ごめん、ちょっと意味が分からない。

 

「ルハ○ン三世には峰不○子が、へ○ルソナ5には10人もの嫁が、そしてコ○ンの怪盗○ッドには多数の女性ファンが居るんだよ?これはもう、間違いなく盗賊しかないよね!」

 

「いやそいつら怪盗だし!別にモテてる理由は怪盗とは関係ないだろ?!あと、ペ○ソナの例はシンプルにプレイヤーが軟派野郎ってだけだからな?!」

 

何こいつ何処までブレないの?!

 

「で、でも!同じジョブならメリッサさんとお近付きになれるよね?!兄さんの毒牙にかかってないし、意外とワンチャンあったり……」

 

「いやアイツそもそもレンジャーだし、どう見てもお前にワンチャンねぇよ?」

 

「そ、そんな!僕の冒険は、ここまでだと言うのか……」

ズシャッ

 

いや早い早い!これまだチュートリアルなんだけど?!

 

「カズマカズマ」

 

「はいはいカズマですよ」

 

あぁ、めぐみんが俺のシャツを引っ張っている。どうしよう。ここでお前に乗っかられたら、余計に面倒なんだけど……

 

「一応補助魔法もかけて貰いますし、装備も一通り良いものを揃えました。しかし、この状況でいきなり実戦と言うのはどうなのですか?やはり遠くから見学のほうが……」

 

いや意外にも正論!めぐみんが言うのはなんか納得出来ないけど、やはり家庭を持つと考えが変わるのか?!

 

「大丈夫じゃない?カズマさんもいきなり実戦でカエルだったし、意外と何とかなるわよ!」

 

「安心しろ!ピンチなったら私が盾になる!最近は守る間もなく勝ってしまって、色々と不満だった所もあるしな……」モジモジ

 

「あっ、お前らはそのままなんだな……」

 

予想通りだけど、これはマジで嬉しくない……

 

「意外とって言ってる時点で勝算無いじゃないですか……」

 

「そもそもアレ大丈夫じゃなかったし、ダクネスも散々スルーされてたしな……」

 

まぁ、これでピンチになったら息子の成長を見せる良い機会としておこう。仲間達も増えたし、アクセルのクエストに苦戦することは、もう流石にないだろうし……

 

「あのカズマさん?お義母様の持ってきたクエストなのですが、少し難易度が……」

 

「なんだよエリス?コボルトの討伐なんだから、そんなに危険じゃないだろ?」

 

「あっいえ。コボルトはコボルトなんですが……場所が遠くて、しかもトロールが指揮している可能性があると……」

 

「「「………えっ」」」

 

あっ、これやばいフラグ立ってそう!

 

…………………………

 

「例えトロールが指揮していようと、私にとっては雑兵の群れ……美しき厄災と呼ばれた私の力、その目に……うぷっ……」

 

予想通りというかセオリー通りと言うか、移動距離が長いとうちの汎用にして最大火力が無能な荷物になる。まぁ、その為にセレナの馬車を用意したのだが、ウォルバクのやつ、まさか乗り物にも弱いとは……

 

「無理すんなよウォルバク。流石に歩く前に馬車酔いでダウンは想定してなかったが、歩いてダウンすることは想像してたしな?」

 

「うぅ……アニメの残念なイメージを払拭するつもりだったのにぃ……」

 

アニメのウォルバクのイメージなんて、多分おっぱいが9割だからそんな気にしなくてもいいと思うけどな。

 

「済まない和真……どうやら父さんもここまでのようだ……うぷっ…」

 

「いや、父さんは車通勤だろ?!なんで一緒に酔ってんだよ?!」

 

「そりゃ揺れるウォルバクさんの胸ばっかり見つめてたら酔うわよ……このエロ親父……」

 

「あ、あれは不可抗力で……うぷっ……ごめん……もう話すのも辛い……」

 

うわっ使えねぇ……我がDNAながらマジで役に立たねぇのな……最悪荷物持ちにしようとしてたのに……

 

「でも、意外な事に弟が無事なんだよな……お前、よくあの立体機動悩殺装置にやられなかったな……」

 

「私の胸そんな呼ばれ方してるの?!」

 

そりゃそんな胸して普段からノーブラで歩き回れば、そんな名前もつけられるだろ……近所の子供達の性癖が歪みまくってるし……

 

「そりゃそうさ。こんな至近距離で美女たちを注視してしまったら、僕は立ち上がることも出来なくなるからね……」

 

「お前……純情なのか欲望に忠実なのか本当に分かんねぇな……」

 

まぁ、俺もダクネス相手にそんな感じだったけども……

 

「取り敢えず、馬車を出る前にお弁当にしましょう。今回のは自信作なんです!」

 

「へぇ、そりゃ楽しみで……」

 

「危ない!ゆんゆんちゃん!」

 

バタン!

「ちょっ、お義母様?!」

 

いったい何をトチ狂ったのか、突然母さんがゆんゆんの弁当を閉じた。折角ゆんゆんが良妻アピールの為に早起きして作ったのに、何が気に食わないと言うのだろう……

 

「ここはもう魔物がはびこる危険領域よ!そんな良い匂いさせたお弁当を広げたら、間違いなく魔物に襲われてしまうわ!」

 

「母さん、ここら辺はアルラウネの縄張りだから、生息しているのは初心者殺し……つまりちょっと大きな山猫くらいで……」

 

「兄さん詳しく!裸の女の子の姿と言われてるアルラウネについて詳しく!!」

 

「うっさいわよ馬鹿!猫でも十分危険なのよ!こっちには体育2の父さんとカズマが居るのよ?!あんた親戚の家の猫と喧嘩して負けてたじゃない!」

 

「ぶふっ!カズマさん飼い猫に負けたの?!それ冒険者以前に人としてやばいんですけど!」

 

「べ、別に負けてねぇし!動物愛護の精神で反撃しなかっただけだし!と言うか初心者殺しなら中級者になってから狩りまくってるし!」

 

というか、ノルウェージャンフォレストキャットは家猫としてデカすぎるんだよ!あれはほぼ虎だし、もし負けたとしても仕方ないだろ!

 

「お母様、安心して欲しい。初心者殺しなんて噛まれても多少血が出るくらいの可愛い猫だ。私がちゃんと盾になれば、皆に危険は及ばない」

 

「そっ、そうなの?それなら少しくらいは……あら?」

 

「にゃー」

 

「えっ、何これ可愛い!ひょっとしてこれが初心者殺しなの?!」

 

「ま、まぁ……うん…」

 

まるで空気を読んだかのように、俺達の前に現れた初心者殺しの子供。実際にはこんな愛らしくも小さくもないが、このまま昼飯抜きになるくらいなら、そういうことに……

 

「この愛くるしい生き物を狩りまくってたとか……あんたマジでクソ野郎ね……これはご飯抜きだわ…」

 

「いや待って!ごめん謝る!そいつ本当はヤバい魔物で……」

 

「はっ!今更そんな馬鹿な話を信じられると思っているのかしら!ほら〜カズマの分の唐揚げ食べる?」

 

「あっ!それは流石に……」

 

「にゃ〜…ガブッ!」

バキッ!

 

「…………はっ、箸ごと?!」

 

初心者殺しなんて雑魚っぽい名前ではあるが、その名前はあくまで「初心者の冒険者を殺す」と言う意味である。早い話が金属製の武器や装備を整えても、素人程度なら普通に殺される相手と言う意味に他ならない。そりゃ子供でも箸くらい砕くし、その爪で引っ掻かれたら10針は縫う事になるだろう。俺達のような冒険者からすれば雑魚だとしても、民間人には恐ろしい相手だ。

 

「お義母様、不用意に魔物に餌を与えるのは危険です。味を覚えれば、人里を襲うようになることもあるんですよ?」

 

「ご、ごめんなさい……と言うか、ララティーナちゃんってアレに噛まれても多少の出血で済むの?」

 

「いえ、アレは流石に……」

 

「そ、そうよね!和真のバカ話に付き合ってただけで、アレに噛まれたら少しの出血で済むなんて………」

 

「子供相手になら、掠り傷もありえません」

 

「………えっ?」

 

いやこっち見られても困るから!言いたいことは分かるけども、それはマジの話だからこっち見られても困る!

 

「お、お義母様……それはダクネスが高レベルのクルセイダーだから可能なだけで、普通に私達には無理ですから……」

 

「そ、そうなんだ……レベルやステータスって素敵な要素だと思ってたけど、いざ目の当たりにするとヤバい要素なのね……」

 

「ヤバい?!」

 

それを理解して貰えただけで、俺としては今日の収穫は十分にあったかな……まぁ、ダクネスで理解されるのは、流石に予想外だけど…

 

「ガルルル!」

 

「ひっ?!何よあのジャガーみたいなの!親なの?!まさかあれが初心者殺しなの?!」

 

「えぇ、あれが初心者殺しの成体です。アレに首を噛まれれば、流石に私でも出血します」

 

「普通の子は死んじゃうと思うのだけど?!」

 

日本人の目から見れば、初心者殺しなんてチーターか豹にしか見えない。それを大体半年くらいで、しかも銃も無い状態で狩りに行くのだから、そりゃ日本人からすれば恐怖だろう。

 

「ガゥッ!」

シュバッ!

 

「「来たぁ!!」」

 

いやアクアはビビるなよ?!

 

「仕方ねぇな!セレナ!」

 

「はい!」

 

だが、それでも所詮は初心者殺し!今の俺達のパーティの手にかかれば……

 

「おしぼりです!」

スッ

 

「ちょっ!そこは迎撃だろ?!クリス不在時に最速の迎撃はお前なんだが?!」

 

なんでここでおしぼり?!そりゃあれば助かるけど!

 

「そんなこと言われても、傀儡人形は整理整頓して風呂敷に包まれてますし……」

 

「普段出しっぱなしなのに?!」

 

何その露骨な出来る嫁アピール!それ今じゃなくて良くない?!というか装備でやることじゃなくない?!

 

「ちょっと羽衣を噛み千切ろうとしないで!神々しさの象徴をなんだと思ってるのよ!」

 

「アクアちゃん刺激しないで!それ命には代えられないから!和真以外の命には代えられないから!」

 

「俺の命も代えられないからな?!いやボケてる場合かよ!」

 

ついツッコんでしまったが今はふざけている場合じゃない!レベル1の母さんなんて、初心者殺しの一撃で簡単に……

 

「『フリーズガスト』!」

 

「がふっ?!」

 

「今ですお義母さん!なにか魔法を!」

 

「おぉ!ナイスだゆんゆん!」

 

氷魔法で動きを封じるなんて、養殖の経験が生きているな!

 

「えっ?!その……あ、アバダケ○ブラ!」

 

「「「「…………………は?」」」」

 

いやそれ世界が違うし……というか、迷わずそれを唱えちゃって良いのか……

 

「何してるんですか!ふざけてないで早く魔法を!ちゃんとした魔法をお願いします!」

 

「ふ、ふざけてないわよ!これが日本のちゃんとした魔法なの!この杖の調子が悪いだけだもん!」

 

いやちゃんとしてねぇだろ?!あっちの世界的にも禁断の魔法だろそれ?!

 

「でも、身動きが取れないなら……斜めに首だ!」

 

「了解!」

グサッ!

 

「ぎゃん!」

 

身動きが取れなくなった初心者殺しの首に、弟の短剣が深々と刺さる。流石は血を分けた弟だ、アイコンタクトと一言だけで的確に弱点を突いたな。いや、それにしても助かった。危うく母親よりツッコミを優先して死なせるところだった……

 

「私、あんた達を産んで本当に良かったよ…じゃなきゃ死んでたところだよ……」

 

「ははは、母さんは大げさだなぁ」

 

まぁ、この世界に来た根本の理由は俺を産んだからなんだけどな……

 

「素人と思っていたが、こんなにも綺麗に脊髄を狙うとは………なかなかに生物のことを分かっているじゃないか……流石はカズマさんの弟君だ」

カキカキ

 

「当然さ。僕はこれでもコナ○君を目指してサッカー部に入ったんだ。生物の急所はわきまえているよ」

 

「いやコ○ン君を目指してサッカー始めるなよ?!あれ違うから、サッカーは紳士のスポーツだから!殺人シュートを習得しに入る部活じゃねぇから!」

 

「だって、ジークンドー部が無かったから……」

 

お前の理想の男性像は血生臭いな!あと、あるえは原稿用紙を置け!リアルなリアクションについてメモるな!

 

「と、取り敢えず、お母様と先輩が無事で良かったです!お義母様に魔法のレクチャーをしたら、次は万全の姿勢でクエストに挑みましょう!本当に万全でお願いしますよ!」

 

「そうね……じゃあ取り敢えずクルー○オから……」

 

「ファイアーボールからお願いします!」

 

だからなんで闇の魔法なんだよ……

 

………………………

 

「では『ファイアーボール』!」

ブワッ!

 

お手本となるゆんゆんのファイアーボールは、まさに理想と呼べる代物だろう。サイズとしてバレーボールのような火の玉が出現し、綺麗な球体を保ったまま真っ直ぐ前に飛んでいく。やっぱり次期族長は違うな。

 

「炎よ!我が右手に宿れ!『ファイアーボール』!」

ブンッ!

 

あるえのファイアーボールは、右手にバスケットボールサイズの火球出現させて相手に投げつけると言うスタイル。ゆんゆんスタイルでも撃てるのだが、こっちの方がカッコいいと言う理由でこれを多用している。実は射程は投げた方が長いのだが、あるえのピッチングセンスの都合で度々外れる。まぁ、外せない状況だと別の魔法を使うのであまり出番はない。

 

「『ファイアーボール』!」

 

そして、母のファイアーボールは杖の先にハンドボールサイズのモノが現れる。そして

ピュコ!ポヨッポヨッポヨッ…

 

「……兄さん、これ何処かで見た気がするよね?」

 

「あぁ、亀と栗なら倒せそうだな……」

 

何故かバウンドしながら前に進んでいく母さんのファイアーボールは、日本のスーパースターが使うような弾道を思わせる。いやおかしくない?ウォルバクの奴、アトラクションの内容が混ざってない?というか、ファイアーボールって胸のサイズに比例するんだっけ?

 

「なんか……なんか思ってたのと違う!」

パァン!

 

「おぉい!杖を地面に叩きつけんな!大人げないぞ母さん!」

 

それ高級品だって言ったじゃん!気持ちは分かるけども!

 

「カズマもちゅんちゅん丸に同じことしてましたよね?」

 

「血は争えないのだな……」

 

「勝手なイメージで異世界に期待されても困るんだけどね……」

 

「「……あっ、なんかごめんなさい」」

 

あっ、つい俺も謝っちゃったじゃん!

 

…………………………

 

「『ファイアーボール』!『ファイアーボール』!ほほほほほ!逃げ惑いなさいコボルト共!」

ピュコ!ピュコ!

 

「な、なんだこのバウンドしまくるファイアーボールは?!」「くそぅ回避できな……あっつぅ!」「なんだこのショボさに相反する威力の高さ?!」

 

予想外と言うか、ある意味では設定に忠実と言うか、母さんのファイアーボールは威力だけは一級品だった。そして、相手が自分より低い位置にいる場合、この弾道と特性はとんでもなく強い。まぁ、凄いのは多分杖なのだが……

 

「僕の短剣にセレナさんの毒を塗って暗殺の確実性を底上げ……そして高台を奪還するためのルート確保に、敵が登ってくるであろうルートに用意された罠の数々……サイコパ……切れ者の兄さんならではの手だよね?」

 

「おい本音が漏れてんぞ。俺がサイコパスなら、その作戦を即座に理解したお前とセレナは何者だよ……」

 

「暗殺もこなせる未来のモテ男……かな?」

 

「聖女ですが何か?」

 

うん、こいつらは間違いなくサイコパスだよな……

 

「和真、父さんもなんか活躍したいんだが?」

 

「剣振っただけで腰やった人は黙っててくれます?」

 

「………はい」

 

報酬に対する遠征費と消耗品費を考えれば、このクエストは間違いなく採算が取れない。でも、こうして家族が楽しんでくれれば何よりだ。少なくとも俺の優秀さを知り、ついでにこの世界が悪くないと思わせられれば、皆安心してくれることだろう。まぁ、母さんはそれどころではないようだが……

 

「死にさらせクソ犬が!早朝から遠吠えしてんじゃないわよ!近所迷惑考えろやおらぁ!!」

ピュコ!ピュコ!ピュコ!ピュコ!ピュコ!ピュコ!

 

いやそれにしても母さんのコボルトに対する殺意がヤバい。お隣のうるせぇ犬に対する殺意が不条理にコボルトを焼いている!

 

「あっ、カズマさん見て見て!あの洞穴の入口、金貨が数枚転がっているわ!きっとコボルトの戦利品よ!ほとんど殲滅したし、アレも特別報酬として頂いちゃいましょうよ!」

 

「待てアクア!まだ問題のトロールが居ないし、そっちには接近防止のトラップが……」

 

「大丈夫よ!女神の目にそんなトラップなんて丸わかりなんだから!余裕で回避して………あっ」

 

カチッ

お前は義理の母の前でもそれをやるのか?!少しは大人しくしといてくれます?!

 

バシャッ!ツルルル〜……

「ちょっと!なんで罠の中身がローションなのよ?!これじゃ坂を滑って上がれないんですけど?!」

 

「坂を登ってくる魔物を落とすためだよ!即死級のはお前らが引っ掛かりそうだから使えねぇって分かってんだろ?!」

 

「そうだけど〜〜!」

 

いや凄い綺麗に坂を滑っていく!自然の滑り台みたいになってるじゃん!

 

「殆ど殲滅完了してて良かったじゃない!あの距離に魔法は届かないけど、和真の弓で数体なら狙えるのよね?」

 

「いやそうだけどさ……そういう事言うとフラグに……」

 

「ただい……な、なんだこれは?!貴様か青いの!俺の部下を殺したのは!」

 

「ひぃー?!」

 

いやフラグ回収早いな!トロール帰ってきてんじゃん!仲間も沢山引き連れて、狩りにでも行ってたのか?!

 

「ちょっとヤバいんですけど!私、物理戦闘とか絶対に無理なんですけど?!誰か下に降りてきてよ!」

 

「任せろアクア!直ぐに行……ごふっ!」

ゴンッ!

 

颯爽とアクアの元に向かったダクネスが、ローションで滑って顔面を強打した。そのまま滑ってアクアの元には向かっているが、これでなんの役に立つと言うのか……まったく、今日は悪い方向に絶好調だなお前ら!

 

「不味いよカズマさん!この距離を正確に撃ち抜けるのは電撃魔法しかない!でも、アクアさんが濡れてたら……」

 

「くそっ!あの馬鹿、マジでピンチを作る天才かよ!ダクネスはともかく、アクアを巻き込むと死にかねないぞ!」

 

「ララティーナちゃんは兎も角って何よ?!妻には愛情持って接しなさいよ!」

 

いやだって事実だし!

 

「カズマ、即効性の神経毒ならあるぞ!お前の狙撃ならトロールを狙えるよな!後のコボルトなら接近戦で何とでもなるだろ?!」

 

「それだけじゃ無理だ!この距離でトロールの皮膚を貫ける威力は俺じゃ出せない!皮膚をかぶれさせるのが精々って所だ!」

 

だからって紅魔の二人を滑り込ませるなんて危険すぎる!アクアが焦げる程度の威力でいくなら、やはりトロールだけはなんとしても無効化しないと……

 

「そうだ!水の女神なら純水を出せるはずだよね!不純物のないH2Oは完全な絶縁体!それなら電気も防げるはずだ!」

 

「分かったわ!じゅんすいね!」

 

と、弟の提案に自信満々に返事をするアクアだが、悪いがアイツにそんなオツムがあるとは思えない。いや、一応水の女神だし、万が一って事も……

 

「あはっ」キラキラキラキラ…

 

「えっ何こいつ怖っ!突然ハイになった怖っ?!」

 

あぁやっぱり……あいつに純水なんて伝わる訳がないよな……もうトロールまで引いてるし……

 

「えっと?兄さん、あれはまさか……」

 

「あぁ、純粋さを表している表情だろうな…あいつの学力は小学生並みだぞ…そんなの伝わるはずがない……」

 

「嘘でしょ……」

 

くっ!期待して数秒無駄にした!分かってただろ俺の馬鹿野郎!せめてあるえのピッチングがイチ○ーばりなら………あっ、飛ばすだけなら投げなくても良いのか?!

 

「おい!お前の憧れてる少年探偵だったら、この状況をどう切り抜ける?」

 

「この距離でぶち抜けって?この世界にあんな便利シューズあるのかい?」

 

「そりゃ魔法でなんとかする!それならイケるだろ?一年からレギュラーのお前ならな!」

 

「なるほど………そう言うことなら、しょうがないね!!」

 

ふっ、良い目をしやがる!俺が死んだ後、コイツはしっかり長男やってたみたいだな!

 

「エリス!」

 

「はい!支援魔法ですね!」

 

「あるえ!ゆんゆん!」

 

「高密度のファイアーボール、直ぐにでも行けます!」

 

「熱量はなるべく内側に集めておくよ!」

 

「セレナ!」

 

「おぅ!耐火ポーションだな!」

 

良かった!こっちもちゃんと絶好調だ!

 

「凄い……和真の戦略に全員がちゃんと付いてくるわ。これが和真の力なのね……」

 

「そうです。カズマの力は我々の強みを100%以上に引き出すこと……どんな危機的状況も、カズマの力で乗り越えてきたのです!」

 

カッコいいこと言ってるつもりかも知れないが、お前らが一人でも活躍できれば俺はもっと楽が出来るんだがな……

 

「へぇ……あれ、めぐみんちゃんの出番は?」

 

「私が魔法を撃つとアクアも死ぬので、私は待機です」

 

「そ、そうなんだ……他の魔法は……」

 

「覚えません」

 

「えぇ……」

 

あっ、家庭を持って変わったと思ったが、やっぱりそうでもないわアイツ……

 

「カズマさんカズマさん!トロールが来てるの!何でも良いから早くなんとかしてよ!」

 

「へへへ!さっきは良くもビビらせてくれたな!てっきりバーサーカーかヤバいジャンキーかと思ったが、ただの頭の悪いプリーストじゃねぇか!ぶっ殺してやる!」

 

「ひぃー!!本当にもう無理ぃ!!」

 

さぁ、今日はお前に譲ってやるぜ!主人公っぽく決めてくれ!

 

「アクア、思い切り後ろに飛べぇ!」

 

「いっけえぇ!!」

 

ズバァン!

女神の支援にチート種族の魔法、そして元魔王軍幹部の作る最高峰の薬……これだけあれば届く筈だ!あの名探偵の一発に!

 

「これがカズマさんの言っていたサッカーの真の姿なのか?!筆が、筆が止まらない!」

 

「駄目よあるえ!外したときの為に、次の火球を直ぐに用意しなきゃ!」

 

「必要ないよ!僕は、顔面シュートを外したことがないのだからね!!」

 

いやそれは誇るなよ?!それはサッカー部が絶対に誇っちゃ駄目なやつだろ!

 

「くぅっ!」

 

シュッ!ダァン!

「「「かわされた?!」」」

 

「いや、まだだ!」

 

シュルシュルシュル!パァン!

トロールの後ろの木の幹に突っ込んだボールは、かなり強力なサイドスピンでトロールの顔面に向かって跳ねる!いやこれはマジで凄いって!お前本当に才能の活用先間違えてるって!!

 

「なっ?!バウンドして軌道を……[ズドォン!]ぶもぉー!」

 

「「「捉えた!!」」」

 

マジかよサッカー部!動機はクソみたいに不純だったけど、お前の信念はマジで本物じゃ……

 

スパァン!

「ぶっふぅ!……きゅ〜」

 

「「「あっ」」」

 

トロールからバウンドした火球が、そのままアクアの顔面にも綺麗に入った。いやこれ大丈夫か?!ローションに濡れてたからやけどは平気そうだけど、物理ダメージで失神はしたぞ?!

 

「くっ!本気で怒ったぞ人間!今すぐこの女を殺し!俺達に挑んだことを後悔させてやる!」

 

「不味い浅かった!ワンバウンドしたから威力不足だったんだ!」

 

「ノーバウンドだったらアクアさんが酷いことになってた気がするけどね?!」

 

それはそうだけども!でも、これじゃどっちにしろアクアが…………あっ……

 

「んっ?なんか焦げ臭いような……あっ……」

 

なんか森燃えてる!あっ、木にワンバウンドさせたからか?!いや違う!母の方からも火が出てるじゃん!

 

「くそぅ人間め!火攻めとは卑怯な……次出会ったら必ず殺してやるからな!コボルト共!直ぐに避難だ!」

 

「「「はい!」」」

 

よし!取り敢えずトロールの危機は去った!いや、でも今度は火の手が……

 

「くっ……ローションで転倒するなんて情けない……はっ?!何故に森が燃えているんだ?!」

 

「よし、良いタイミングだダクネス!アクアを連れてその場を離れろ!馬車で街に戻るぞ!」

 

「おい待て!この火事はどうなっているんだ?!ここはそれなりの身分の貴族の土地で、ここら辺には別荘もあるぞ!」

 

嘘だろ!それで地味に報酬が高かったのか?!

 

「と、トロールが火をかけたんだよ!ほら逃げるぞ!焼け死ぬ前に逃げるぞ!」

 

「くっ!なんて卑劣な許せない!次にあったらぶっ殺してやる!!」

 

どうか出会いませんように!どうか二度とあのトロールには出会いませんように!!そしてお前らそんな目で見るな!今回の件は俺じゃなくない?!

 

「えっと……報告終わったら私達帰るわね!ほら、カズマたちも忙しくなるだろうから………取り調べとかで……」

 

「そ、そうだね!次はもう少しゆっくりできる時に来るよ!…………保護観察終わった辺りで……」

 

「ちょっ?!なにシレッと逃げようとしてんだよ!実行犯が真っ先に異世界逃亡とか………あっ……」

 

「お前たち……全員そこに正座しろぉ!!」

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

佐藤家はやらかす血筋。なので、異世界に来てもろくなことにはなりません。ある意味やらかす方法のない日本で良かったな!的な連中です。

また不定期ですが、お暇な時にでもお付き合いください。
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