※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

妊娠の報告は安定期後が多いそうです。ということであれば、角川の皆さんに報告するならこのタイミングでしょう。なお、相手の状況は加味しません!

またお暇な時にでもお付き合いください。


この騒がしき友に吉報を

アインズ・ウール・ゴウン魔導国。それは魔導王を絶対的な支配者として置く専制君主制国家である。しかし、絶対的強者である魔導王を君主としているにも関わらず、この国は恐怖政治による支配をしては居ない。この国の中枢にはカリスマ冒険者のモモンがおり、彼の英雄としての絶対的な人気と信用が、この国を平和的な国家として機能させているのである。

 

「と言う体だから仕方ないのだが、お前達にはいつも面倒をかけるな。パンドラズ・アクター、そしてナーベラル・ガンマよ」

 

「これも父上の理想となる国家を作るためです!日々の見回りなど何の苦にもなりません!いくらでも申し付けください!」

 

「アインズ様の側付きなど実に光栄なこと。疲労を感じるなど勿体ないです」

 

こうしてパンドラズ・アクターとナーベラル・ガンマを連れて見回りをするのは、今や俺の欠かせない日常だ。最初は人々に信用してもらう為に仕事としてやっていたことだったが、今では活気付くこの街を眺めるのが日々の楽しみになりつつある。またナザリックの皆に会えたら見せてあげたいな。決して人を使い潰すことのない理想郷を、俺達が作り上げたんだってことを………

 

「あぁ、そう言えば今日はアルベドとの約束があったな。遅れては申し訳ないし、後は二人で頼むぞ?」

 

「「はい!」」

 

あぁ、こうして信頼して仕事を頼めるようになるなんて、パンドラズ・アクターも日々成長してるんだな。なんか、生みの親として嬉しく感じるよ。おっと、でもこの二人は油断するとやらかすから、ちゃんと気を引き締めておかないと!

 

「あ〜、一応念を押しておくが、くれぐれも冷静に、そして平和的に国の統治を………」

 

「死に晒せや!この偽物野郎がぁ!!」

 

「なっ?!」

ガンッ!

 

「いや今このタイミングで?!」

 

もしここにカズマやスバルが居たら、きっと俺がフラグを立てたと言うのだろう。二人から少し離れて振り返ったら、何故かパンドラズ・アクターに何者かが短剣を……いやあれスプーンだ!そこはせめてフォークかナイフじゃないの?!なんでそんな切れない武器を?!

 

「こ、この街で抜刀すれば殺されても文句は言えないぞ。それを分かっているんだろうな!」

 

「あぁん?なんですってこの偽物野郎!スプーン相手に抜刀してる奴が良く言えましたねぇ?それじゃ犯罪者はそっちでは?このホネホネ詐欺野郎が!お前には死因スプーンがお似合いです!」

 

あっ、なんかこの感じ見覚えがある!あの人あれだ!カズマの所の廃人天使だ!なんでこんな間の悪いタイミングで来ちゃうのあの人!というか本物ここに居ますよ!

 

「モモンから離れなさい!『ライトニング』!」

 

「デザートスプーン避雷針!」

バチンッ!

「そ、そんな防ぎ方を?!」

 

ナーベラル・ガンマが放ったライトニングは、天使さんの持つスプーンにより軌道を逸らされ地に落ちた。前から異様だとは思っていたけれど、あの人はあんな戦い方を何処で学んできたのだろう。ここまで来ると廃人とか越えて、中身がスティーブン・セガ○ルなのでは無いかと疑ってしまう。

 

「モモンズグレードソード!」

 

「おっと!」

ズドォン!

 

しかし、いくら廃天使さんが凄かろうと、今回は連携の取れる二人が相手。以前は連携前に各個撃破で全滅してしまったが、連携を学べと指導されてからと言うもの、戦闘訓練には連携の訓練も取り入れた。ナーベラル・ガンマのレベル不足は否めないが、それでもパンドラズ・アクターの多彩な攻撃と組み合わせれば……

 

「土煙の中ならば、私の姿が変わろうと誰も気付かない!武人建御雷様の力ならば、そちらのそのずば抜けた近接戦闘能力にも対応できる!」

 

「なるほど、その変身能力でオレオレ詐欺ならぬホネホネ詐欺を謀ったと言うわけですか……どうやら余罪は多そうですねぇ!」

 

武人建御雷さんの近接戦闘力なら、きっとあの廃人天使さんが相手でも同等以上に戦うことが出来るだろう。駄目でも近接戦闘で互角に持ち込めたら、ナーベラル・ガンマとの連携でこちらが……

 

「『ファイアボール』!」

ブワッ!

 

「ふっ!そんな魔法では牽制にも……なっ?!」

ガシッ!

 

「残念。それはただの目くらましです」

 

組み付いた?!確かに密着すれば剣は振れないし、ナーベラル・ガンマの支援も難しい!でもそんな状態から攻撃なんて、筋力と体格の差でパンドラズ・アクターの方が有利なんじゃ…

 

「剣で勝てそうにないからと力比べか!しかし武術の心得があるこちらが負けるなど……」

 

「『ライトニング』!」

 

バチンッ!

「くぅ!まさか0距離で魔法とは……しかしそんな威力では……あれ?!」

 

ふわっ……

接近戦のスペシャリストと言う言葉を、僕は甘く見ていたのかも知れない。確かに剣士として戦うなら、武人建御雷さんは廃人天使さんにも負けない実力があっただろう。ただ僕らは誤解していたのだ。彼女はそもそも剣士ではなく、ただそこにスプーンがあったからそれを剣のように扱っているだけの、スティー○ン・セガールの化身であると言うことを……

 

「魔法で崩し柔術で投げる……カズマ様ならここにドレインスキルと毒も重ねる所ですが……さて、侍は逆さまに投げられたらどうするのでしょうね?」

 

「くっ!このままでは剣撃に体重が乗らない!先ずは受け身……いややはり追撃防御を!」

 

「判断が遅い!」

 

ゴシャッ!

「ごふっ!」

 

「しまっ?!この軌道は私を!」

 

ズドン!

「「きゅ〜……」」

 

逆さに落ちてくるパンドラズ・アクターの顔面に向かって、情け容赦の無いサッカーボールキックが炸裂する。そのシュートは真っ直ぐにナーベラル・ガンマへと突き刺さり、そのまま二人の意識を刈り取った。いやこれもう戦闘スキルが高いって言うか、この人だけ別のゲームやってない?

 

……………………………

 

「ま、まさか本人公認のなりすましだったとは!そうとは知らず仕事のストレス発散をして申し訳ありませんでした!これ、上司に渡された手土産の水ようかんです!お詫びの気持ちも兼ねて、皆様でお召し上がりください!」

 

「あぁ、なんか開封されて1つ減ってるんだが……取り敢えずコレは有り難くいただくとしよう。それに、あの件は人民を騙していた我々のやり方の問題でもある。なので、どうか気にしないで欲しい」

 

ダウンした二人がアクシズ教に強制入信させられる直前、僕の声に反応した天使さんがその手を止めてくれた。なんか「ゴミクズにはゴミクズの下が相応しいですよねぇ?」ってアクアさんの天使として絶対に言っちゃ駄目な言葉が聞こえた気がしたけど、口止めされたら困るから突っ込まないでおくことにした。そして、パンドラズ・アクターを襲ったスプーンは、多分これをつまみ食いしてたんだろう。それで良いのか天界の人……

 

「それで、どうして再びこの世界に?何か理由があっての来訪なのだろう?」

 

「えぇ、実はこの度カズマ様とエリス様の間に第一子がご懐妊と言うことで、数少ないカズマ様の友人にご報告に参りました」

 

「ほぅ、それは実に喜ばしいことだな。アルベド、何か祝いの品を用意してくれ。天使殿の為に手土産もな」

 

「お気遣い頂きありがとうございます」

 

そうか、カズマもお父さんになるのか……ユグドラシル時代の友達には会えないけど、今の僕にもこうして連絡をくれる新しい友人が居る。そう思うと、あの学園生活も悪くなかったような気がするな。ちょっと個性強すぎるし、友達少ないとか言われてるけど……

 

「しかし、まさか女神と人との間に子を成すとは、サトウカズマを研究すれば、異種族交配の研究は劇的に進みそうですね?」

 

「はぁ……そういう人任せなのが眼鏡の悪いところですよ?貴方はアインズ様の御子を他人に任せるおつもりですか?」

 

「なっ?!他人任せとは失礼な!と言うか眼鏡って呼び方は辞めて頂きたいのですが?!」

 

この天使さんは本当にデミウルゴスが嫌いだよな。まぁ、悪魔と天使じゃ仕方ないけど、なんでアルベドは良いんだろう……

※片想いの処女だからです

 

「そうやって他人任せな実験をしているから眼鏡なのです。アインズ様を本当に愛するなら、自ら率先してその寵愛を受けて孕んでみせなさい!他者を実験台にして、何をアインズ様を知った気になっているのですか!」

 

「な、何と言う正論……私はアインズ様を誰より愛していた筈なのに、最も大切にすべき事を私がないがしろにしていたなんて……」

 

「いや待てデミウルゴス!私はこれでも男性だぞ!例え生殖可能になったとしても、お前も性別は男性だろう?!」

 

それはシンプルに無理だから!?その妄信的な愛がもう恐怖だよ!天使さんも余計なこと言わないでくれますか?!

 

「安心してください。こちらの世界では女性器を備えるに至った男性悪魔が居ます。他者の実験より先に自らを省みて、アインズ様の理想に近付けるように努力すれば、不可能など無いはずです……」

 

「な、なんですって!直ぐにでもアインズ様の理想になるべく努力をせねば!そして今後は身体の構造変化に重点を置き、アインズ様の子を孕んでみせます!先ずは裸エプロン用の可愛いエプロンを用意せねば!」

 

ちょっと本当に何してくれてんの?!僕ノーマルなんでデミウルゴスは無理なんだけど?!と言うか産もうとしないで!裸エプロンとか用意しないで!でも好感度故の行動だから、ストレートにヤダって言い難い!

 

「や、やはり友人に子供が出来たのであれば、そこは直接祝うべきだろう!各員、全ての業務と研究は中止せよ!友の祝福に向かうぞ!」

 

「「「「はっ!アインズ様!」」」」

 

取り敢えずコレで時間は稼げた。後はもう、祝うついでにカズマに相談しよう!階層守護者と子供を作るとしても、せめてそこは女の子にしてください!!

 

__________

 

「く、来るな!来るなぁ!」

 

魔女教大罪司教暴食担当ライ・バテンカイトス。レムの記憶を奪ったそいつを、俺達は遂に追い詰めることに成功した。いや、この言い方は多分正しくない。なんか俺たちが来たら追い詰められていた。って方が正しい気がする。ちょっと何言ってるか分からないかも知れないけど……

 

「何を日和ってるんですか!オラ食えや!!私の名前を食って周りの人から記憶を消しなさいよ!好感度リセットで再トライさせなさいよぉ!」

 

「イヤだ!そんなドブ川より濁った人生を食うなんて!それに量が多過ぎる!こんなの食べたら頭がおかしくなる!」

 

「泣き言いってんじゃねぇですよ!それでも暴食を司る司教ですか?!」

 

神々しい羽を携えた天上の存在が、今まさに魔女教と言う悪を追い詰めている。って言ったら聞こえは良いんだろうけど、アレはもう普通にカツアゲだ。カズマの所の天使さんに壁際に押し込まれ、ライ・バテンカイトスは若干涙目になってるし。まぁ、それに同情はまったくないんだけどさ……

 

「えぇっと……カズマの所の天使さんですよね?ちょっとこの状況を説明して貰いたいんですが……」

 

「おぉ!スバル様から来てくれるとは幸運でした!実は降臨先がずれてしまいましてね?丁度居合わせたこの方に場所を訪ねてたんですよ。そしたら名前を食べれば私か私を知る人の記憶を消せる方と聞きまして、これは自分のキャラ設定をやり直すチャンスと思って名前を教えたのですが、なんか好き嫌いして直ぐ吐き出したんですよ。ほらっ!良いからもう1回ごっくんして!食べ残しは居残りですよ!」

 

「やめろぉ!コイツ殺しても何食わぬ顔で即蘇生するし、自分から記憶を食われに来るし、食ったら食ったで語るもおぞましい死に方の記憶を数千回以上味わうハメになるし!頼むからもう帰ってくれよぉ!!」

 

精霊の時間間隔は人間とは違う。なんてことをベア子に言われたが、どうやら精霊から見ても天使ってやつは相当に長い時間を生きているモノらしい。何百人と人の人生の記憶を食って来た暴食が、たった1人の天使の人生に胃もたれするってとんでもねぇな。

 

「七大罪を背負ってるくせに何を小さいことを!死なんざそこら辺に転がった自然現象の1つ!躍り食いした魚は生きたまま溶かされ、踏み潰されたアリは全身の激痛を味わいながら死に、餌をもらえないハムスターは家族にその肉を食われバラバラにされるのが世の常!この程度の苦痛で騒ぐんじゃありません!」

 

「なんでお前はそういう死に方を片っ端から体験してんだよ?!やたら長い人生で無限に蘇生しやがって!お前何年生きてんだよ!!」

 

「永遠に23ですが?」

 

「意味わかんねぇよ!もうやだよコイツぅ!」

 

あっ、それに関しては俺も同意だわ。

 

………………………

 

「はぁ……殺して食うとかじゃないんですか?これでは、私はただの死に損じゃないですか……」

 

「ねぇスバル?私、このやり方は人として最低だった気がするんだけど……こんな方法で魔女教を捕まえたなんて、騎士隊にもお口チャックな気がするの……」

 

色々と狂った価値観をお持ちの天使さんのお陰なのか、と言うかマジで神に仕える存在が段違いと言うべきなのか……ライ・バテンカイトスが途中でロイ・アルファルドとか言う謎の凄い力を発揮したにも関わらず、この戦いで死傷者は出なかった。いや正確には出たんだと思うが、死に戻らず即時無限蘇生する頭のおかしい奴を前に、何をどうやったら勝てるというのだろう。と言うかどんだけ人間関係やり直したいんだよこの天使さんは………

 

「お口チャックって今日日聞かねぇな……でも、今日はユリウスも一緒に居るわけだし、俺たちが何か報告する必要はないだろ?」

 

「スバル、君は僕に「仲間が何度か真っ二つにされましたが、何食わぬ顔で蘇生し続けたので何とかなりました」って報告しろと言うのかい?間違いなく正気を疑われるんだけど……」

 

それに関しちゃユリウスに同情するが、この人は俺の死に戻りに影響されない世界の人間だ。つまり、この周回の理想的勝利を逃してしまえば、次の周回で半分にされるのは俺ってことになる。それはマジで勘弁してほしいので、ユリウスには是非頑張って欲しい!

 

「あっ、なんなら説明の為に私も一緒な王都に行きますよ?ちなみに、この国に国教はありますかチグリス・ユーフラテス様?」

 

「私はユリウス・ユークリウスです!この国には神竜崇拝や自然崇拝はありますが、特定の国教と呼ばれるものはなかったはずです。なので、別に貴方が天使だからと害為す存在などなかったと……」

 

「………勇敢なる騎士よ。そなたの活躍、私はしかと見ておりましたよ」

 

「えっ?まさか国教ポジション狙ってるんですか?こっそりこの国を手中に収めようとしてますよね?いま王選の最中なんですが?!」

 

「大丈夫です!私はお金と甘やかしてくれるイケメンを用意してくれれば、どの陣営でも無限蘇生します!今の低賃金でも無限蘇生なので、それならこっちのほうがずっと良いですし!」

 

えっ、天使って低賃金なの?!それで死に馴れてるとか救いはねぇのか?!

 

「すみません。ちょっと騎士隊でも取り扱いに困るので勘弁してください。と言うか、どちらかと言えば貴方も仕える立場ですよね?」

 

「ふっ……己が主は、常に自分ですよ?」キリッ

 

「天に使えてくれませんか?!」

 

ユリウスがここまでペースを乱されるなんて、やっぱりこの人はカズマの関係者なんだな。俺達には出来ないことを平然とやって、なのに全然凄い感じを出さなくて……凄いんだけど全然憧れは湧いてこないんだよなぁ……

 

「そう言えば、天使さんはスバルに用があったんですよね?一体何の御用だったんですか?」

 

「おぉ!新しい私デビューを前に忘れてました!カズマ様とエリス様の間に第一子がご懐妊されまして、これはもうカズマ様の数少ない友人の元へご報告をせねばと馳せ参じた訳です!あ、これ手土産の水ようかんです」

 

「これはご丁寧に……ってカズマが父親に?!と言うか友達少ないって言うのは辞めてあげましょうよ!それ敢えて言わなくていいやつですから!」

 

何気に俺にも効くんでそれ!

 

「ほぅ、サトウカズマに子が……それは実にめでたいな!良し!僕からも祝いの品を用意しよう!天使様は直ぐにでもカズマの元へ祝いの品を持って行ってください!ほら、スバルも早く準備しろ!」

 

「えっ?いやまだ生まれた訳じゃないんだから…」

 

「良いから行け!」

 

「あっはい」

 

これ、完全に天使さんを厄介払いしてるよなぁ。まぁ、俺は遊びに行くだけだから良いんだけどさ……

 

____________

 

 

「くそっ!やってくれたな存在X!こんな所に大部隊が陣を張るなど、戦略的に有り得んだろう!」

 

少数精鋭による強襲作戦からの帰路。我々は連合軍の大規模部隊に遭遇した。普通に考えれば迂回、または潜伏してやり過ごす程の戦力差があり、本来何も悩むことはない。そう、悩む必要など全く無いのに、私の精神は穏やかではない。

 

「じ、自分はまだ大丈夫ですから……どうか最善の判断を……」

 

「そんな出血量で何を強がっているんですかグランツ中尉!今生きているだけでも奇跡なんです!どうして私を庇ったんですか!」

 

「ははは…身体が勝手にってやつですよ……」

 

我々の強襲作戦は成功した。しかし、それは決して無傷の勝利ではない。重要拠点の破壊という多大な功績には、相応の対価を副官の血で払わされることになった。そう、ただそれだけの良くある戦場の光景……

 

『しかし、お前はもう割り切る事など出来ない。信頼を知り仲間を得たお前は、眼の前で死にゆく部下に情が湧いてしまっている。そう、例え神に祈りを捧げても、その者を助けたい程にだ』

 

「やはり居たか存在X!本当に貴様は悪趣味だな!それで良くも神が名乗れたものだ!」

 

灰色に染まる世界の中、場違いに置かれたくるみ割り人形が話しかけてくる。やはりこれは存在Xの仕業だった。不運では説明の付かない絶望的な状況を作り出すなど、何処まで悪趣味なんだコイツは!

 

『敵国からすれば英雄を仕留めるまたとない機会だ。きっと私に感謝するだろう。しかし、心からの信仰を持って私に祈れば、今回ばかりはそちらに手を貸してやっても良い。お前だって分かっているはずだ。多量の魔力があればこの場を突破する事が出来るかも知れん。しかし、それは私への祈り無くして得られる量ではない。さぁ、選ぶが良い。祈りか、仲間の死か』

 

「そんな……」

 

存在Xの問いかけに、私は答えることなど出来なかった。眼の前にある事実は余りに衝撃で、冷静な思考など許してくれない。だって……

 

『いくら時間の止まった空間とは言え、私も暇ではないのでね。決めかねているなら……「ガチン!」んなっ?!』

 

「あれ?くるみ割り人形って意外と難しいですね?あ、ターニャ様。よろしければこれの正しい使い方を教えてくださいません?特売で買ったピスタチオの殻が固くて……」

 

この状況で存在Xのくるみ割り人形の口にピスタチオ詰めようとしてる天使が居たら、冷静でいられるはずがない。と言うかカズマの所の天使がなぜここに?!

 

『き、貴様!今ちょっと真面目な話を……「カリッ」ってピスタチオの殻を割るなぁ!』

 

「こ、これはまさか!この世界の自称神の存在X様でしたか?!これは大変失礼をしました!」

 

『自称って付けるのが1番失礼だろうが!お前は……「カリッ」おい辞めろ!くるみなら割って良い訳では無い!ピスタチオに腹を立てている訳では無い!』

 

「くるみ割り人形なのにですか?!」

 

あれだけ高圧的だった存在Xも、どうやらこのイレギュラーには冷静で居られないようだ。同じく人知を超えた存在であり、ついでに常識まで超えてしまっている天使が相手では、奴は文句を言うしか出来いようだ。仲間が危機的な状況なのは何も変わっていないが、存在Xが困るのは気分が良い。良いぞもっとやれ。

 

「くっ!それにしてもこのくるみは硬いですね……これ、もうこの人形をハンマーの代わりにしたほうが楽なのでは……そいっ!」

ガンッ!

 

『ごふぅ!貴様!せめてくるみ割り人形として正しい運用を……がふぅ!』

ガンッ!バキッ

 

「口に咥えさせて叩きつけるほうが割れるとか、もはやコレが正解なのでは?」ポリポリ

 

お前、良くそんな不気味な存在で割ったくるみが食えるな。私だったら絶対に無理だぞ……。

 

『い、良いだろう!この不敬を答えとして受け取った!私はもう救いなど差し伸べぬ!精々絶望するが良い!』

 

「あっ!待て存在X!まだ話は……」

 

「……はっ!作画が仕事開催した?!」

 

色のない世界を作画担当の怠慢だと言うのはどうかと思うが、まさか存在Xがヘソを曲げるとは……神を自称する癖に、随分と沸点が低いな。

 

「しかし、貴殿は本当に良いタイミングで来てくれた。確か貴殿もアクア同様、癒やしの力を持っていたよな?」

 

「えぇ!私、癒し系天使なので!」キュピン!

 

イラッ

くっ!落ち着け私!存在Xに祈るよりはマシだ!そこは割り切れ!割り切るんだ!

 

………………………

 

「お、俺は助かったのか……」

 

性格は少しふざけているが、やはり神の御使いに変わりはないらしい。ヒールの一言と共に放たれた光は、瀕死のグランツを容易に完治させ、その意識を取り戻させた。存在Xもこういう方法で信仰を得てくれれば祈る気にもなるのだが、どうして奴と言いアクアと言い、神とはここまで身勝手なのか……

 

「グランツ少尉!良かった!本当に良かったです!」

 

「セレブリャコーフ中尉?!心配してくれるのは嬉しいですが、流石にそんなしがみつかれると……」

 

「上官を心配させた罰です!もう少しこのまま大人しくしててください!ぐすん!」

 

全く、うちの副官共には困ったものだ。長く共に過ごして情が湧くとは、そんなもの辛いだけだと言うのに……

 

「まぁ、私も人のことは言えんのだがな……グランツ、二度とこんな心配をかけるなよ?」

 

「はっ!二度とこのような失態は犯しません!」

 

「約束ですからね!」

 

ムギュー………ビクッ!

 

「ん?どうしたセレブリャコーフ中尉?」

 

グランツ少尉の無事を1番喜んでいたセレブリャコーフ中尉が、何故か突然その身を強張らせた。そして、そのセレブリャコーフ中尉の顔はゆっくりと赤く染まっていく。あぁ、その胸を下から押し上げているアレか……男だもんなグランツ少尉は……

 

「ぐ、グランツ少尉!こんな状況で何を考えているんですか?!」

 

「こ、これは天使殿の回復力が素晴らしく!無意識にこうなってしまった生理現象であります!決してセレブリャコーフ中尉が可愛いからとか、いい匂いがしたからとかでは無く………」

 

「語るに落ちているぞグランツ少尉。いくら危機的状況を救ったからって、そんなラブコメディは帰還してからやれ。しかし、妊娠による除隊だけは勘弁して欲しいがな?」

 

「「中佐殿?!」」

 

やれやれ、まだ戦場の真っ只中だと言うのに困ったものだ。まぁ、今くらいは大目に見てやるが……

 

「しかし、私は怪我は治せても病気は治せません。あれだけの重症では細菌性の感染症や鉛中毒も懸念されますので、ちゃんと医者にも見てもらってください。特に感染症は恐ろしいんですからね?」

 

「はい。無事に戻れたら直ぐに内科に向かいます。貴方に救ってもらった命、無駄にする訳にはいきませんからね!」

 

「あっ、あと泌尿器科にもいってください。それ多分伝染るやつなんで……」

 

……すっ

先程までの暖かな空気が、この天使の一言で凍りついた。グランツ少尉にくっついていたセレブリャコーフ中尉の顔からは感情が消え、そのまま数歩後ろに下がる。いや、確かに治療は大事だが、それは後で個人にだけ教えてやれば良いだろう!取り敢えず話題を変えねば、流石にグランツがいたたまれない!

 

「そ、そう言えば!貴君は何故この世界へ?我々を救いに来た訳ではないのだろう?」

 

「そうでした!カズマ様とエリス様の第一子がご懐妊になりまして、カズマ様の数少ない友人の皆様には是非ご報告をと思った次第です!あっ、これ手土産の水ようかんです!」

 

「友達が少ないって言う必要は無かったと思うが……そうか、あいつが父親になるのか……」

 

それにしても、それは実にめでたい話題だ。そういう明るい話題なら、この空気も多少は……

 

「産む気もない商売女から病気だけ貰う方より、カズマさんのように奥様と子を成す方が絶対に健全ですよね……」ネチネチ

 

「す、すみません!」

 

駄目だった!下ネタには耐性のあるセレブリャコーフ中尉だが、やはり乙女心を裏切った代償はデカ過ぎる!

 

「折角ですし、皆様もアクセルに来てお祝いに参加しますか?まだそこまでする気は無かったのですが、アインズ様とスバル様が来ると仰って居るので……」

 

「お気持ちは有り難いが、我々はこの状況を突破するので手一杯だ。もし万が一戻った時に敵兵と鉢合わせないとも限らない。だから、すまないが我々は……」

 

「それなら、帰りはお家まで送りますよ?」

 

えっ、家までだと?!と言うことは、この存在Xが用意した危機的状況をスルーして帰れると言うことか?!そんな救いの手を差し伸べるなんて、これが天使か?!

 

「総員!これより敵陣へ強襲をしかけ、敵の戦車と飛行ユニットを鹵獲する!それをカズマへの手土産とするぞ!!」

 

「「「了解!」」」

 

「ふむ、まさかここまで盛り上がるとは予想外でしたが……まぁ良いです。どうせもてなすのはカズマ様ですし、私は戦車を運べる魔法陣でも書きますか!」




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

カルテットのメンバーを呼び集めるだけで騒動を起こすのが私の作風です。そして次はあっちの世界でも一騒動起こします。ラブコメ期待してたらごめんなさい。まだもう少しふざけます!

また不定期ですが、お暇な時にでもお付き合いください。
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