最近はサブキャラに注力し過ぎて、逆にレアキャラになりつつある主要キャラの3人。たまには活躍しないと忘れられそうなので、ちょっとやらかして貰います。でもオチは別の方です。
またお暇な時にでもお付き合いください。
アクセルの治安はとても良い。それは強いモンスターが少ないという地域性であったり、ダクネスの親父さんがちゃんと統治していたり、元からの環境に恵まれた部分も確かにあるだろう。しかし、エリス教の聖地となり、英雄たちの住まう街となって観光地と化した今となっても、その治安は揺らぐことはない。その理由は……
「ひったくりだ!!ひったくりの犯人がそっちへ逃げたぞ!」
「へへっ!油断してる馬鹿ほどやりやすいものは……なっ?!なんでもう衛兵が前に?!」
「現行犯です!確保を!!」
「お前たち!訓練の成果を見せてみろ!」
「「「「おぉ〜!」」」」
反則じみた統治能力を持つ検察官と、情け容赦ない訓練で精鋭部隊を生み出し続ける王女の側近が現れた事で、この国の衛兵達はとんでもない練度を誇ることになった。元からセシリーというプロハン(プロ犯罪者)が居たこともあり、間違いなく国1番の練度を誇るだろう。更には……
「西通りの路地裏に入りました!」
「くそぅ!なんで上からサキュバスが見てんだよ!ちょっ?前からも衛兵が……ぐふっ!」
ガシャン!
「確保!」
飛行能力を持つサキュバスの捜査網と、反則じみた胸と頭脳を持つ女神の作った通信魔道具の組み合わせにより、もはやこの国の追跡網に隙はない。そして、最後の極め付きは……
「あらあら。乱暴に取り押さえられて怪我をしたのですね?ほら、ヒールしてあげますから、ちゃんと話をしてくれますか?」
「あ、ありがとうございま……ハイ、ゼンブハナシマス……」
「は〜い。洗いざらい吐いてくださいね〜」
あのセレナの反則じみた取り調べ(傀儡化)により、組織犯罪まで撲滅されつつあると言うことだろう。いや本当に俺の仲間って優秀だわ。マジで魔王倒して良かったと思う。まぁ、中にはそうでもない仲間もいるんだが……
「カズマカズマ!今日はお互いに暇ですし、一緒に爆裂散歩に行けますよね!少し時間は遅くなりましたが、それでも近場ならまだお昼までに往復可能ですよ!」
「そう言えば、近所にハシリタカトビの群れが出たらしい。これは私に集まってきた所を、爆裂魔法で一網打尽にするチャンスじゃないか?」
「良いわね!あいつらのモモ肉は炙れば良いオツマミになるし、お酒も持って行きましょうよ!」
「そうかそうか……じゃ、俺は欠席にしといてくれ。今日は特に商談もないし、ハシリタカトビなら俺の出る幕もないだろ?」
近所で撃っちゃ駄目だろとか、それじゃダクネスがエライことになるだろとか、女神が昼間から酒を飲むなとか、言いたいことは他にも多々あるが、なんで1番成長すべきメンツがいまだにこれなのか……他が充実したこともあるし、もうこのメンバーで冒険とか行きたくない。ベッドで頑張るから、そっちで許してくれないだろうか?ちゃんと愛はあるわけだし……
「た、たまにはその……愛する人と手を繋いで出掛けたいと言う、愛する妻の願いを聞き入れてはくれないのですか?」
くっ!罠だと分かって居ても、めぐみんの上目遣いで甘える攻撃は凄い威力だ。以前までの俺なら、きっとこれに圧されて爆裂散歩に出掛けていた事だろう。しかし、今や夫婦となった俺にそれは効かない!そんなに可愛い素振りをみせるなら、もう思いっきり可愛がれば良いのだから!
※大変効いていますが、カズマ的には負けてません。
「昨晩も両手で恋人繋ぎして、一緒に一番深い所までイッたろ?アレじゃ不満だったか?」(イケボ)
「ひ、昼から何を言うのですか?!そりゃ不満ですが?!いやすみません!夜の方に不満はないのです!だから手をワキワキして近付くのは止めてください!爆裂散歩にいけなくなります!」
ちっ!気付いたか、それが狙いだったのに……
「しかし、実際に魔王の恐怖を知らない子供にとって、カズマはただのやり手商人でしかない。エリスとの間に子供が出来た以上、少しは英雄らしい活動を増やしていくべきだろう。本当に英雄なのかと、子供に疑われてしまうぞ?」
「た、確かに俺には家柄も見てくれもないし、それらだけで次期領主と認めて貰えてるダクネスとは違うが……」
「おい待て、なんだその評価は?その評価は私も初耳なんだが?!」
しかし、だからといって俺に英雄的な活躍など出来るのだろうか?ハシリタカトビの群れを粉砕する攻撃など持ってないし、爆裂魔法を撃てば無様に地面にキスする事になるだろう。それでは英雄的な活躍とはとても言えない。だからといってあの数を相手に大立ち回りなんてしたら、間違いなく轢き殺されるだろう。でも、これだけ言われて行かないのもなぁ……
「仕方ない。結局最後はお前ら頼りだが、良い感じに活躍出来るように手を打つとするか。ほら、そうと決まれば早く行くぞ?昼飯までに帰りたいからな」
「おい待てカズマ!先に私のその不名誉な評価について詳しくだな?!」
「はいはい。それに関してはピロートークで教えてやるよ。いや、事後はキス魔になるララティーナには、それもちょっと難しいか?」
「ひ、人前で夜の生活を暴露するヤツがあるか?!あれはその……凄く良かった時だけ特別で……」
うんうん、つまりいつも良いって事だな。可愛いやつだなララティーナ。
「と言うわけだあるえ、俺の活躍をしたためる為、立会人としてついて来てくれ」
「おや?カズマさんに大群相手は分が悪いと思うが、そこまで言うなら期待させてもらおうかな。筆が乗ることを期待しているよ?」
筆が乗る確証は無いんだが、そこはあるえのセンスで盛り上げてくれる事を祈るとしよう。残念だが、俺には武力で圧倒するなんて事は最初から無理だとわかっている。でも、英雄キャラは皆ゴリゴリの戦闘派とも限らない。今回は別アプローチで英雄感を出すとしよう。
「おぅ、俺の英雄的な活躍を見ててくれ。あと、別に声をかけて無くても着いてきて良いからなゆんゆん?」
「へっ?!べ、別に寂しくて見てたとかじゃ無くて……」チラチラ
そんなチラチラ見られたら嫌でも気になるんだが………まぁ、ゆんゆんが居れば間違いなく保険になるし、今回は俺から誘うとしようか……
「しょうがねぇな。ヤバかったら援護してくれるよな?ゆんゆん」
「は、はい!任せてください!」
まぁ、その援護は夜の生活4発を対価とするんで、出来れば頼りたくないんだが……
………………………………………
テイマースキル。それはあらゆるモンスターをテイムし、共に戦う為のスキルである。本来なら屈服させたり信頼を紡ぐことでモンスターをテイムするスキルなのだが、テイムしたモンスターはテイマーの所有物となることを利用し、俺は従業員のサキュバス達とテイマースキルでも契約をしている。これで何処ぞのプリーストやら貴族も手が出せないので、割と重宝しているのだ。
「そんなテイマースキルをこんな形で使うとは、色々と覚えてみるもんだよな……」
「それはこっちが本来の使い方だと思うが……ち、ちなみにだが、私をテイムして嫌らしい欲望をぶつけることなんて事は……」
「人に使えたら大問題になるだろ……」
「はっ!?まさか紅魔族の私達なら?!」
「いやお前らも人扱いには変わりねぇよ?!」
全く、ダクネスとあるえは本当にブレないのな。もう試したし、女神も紅魔族も駄目だったです!あ、あとちょむすけも駄目でした。やっぱり中身は女神だもんな……
「カズマさ〜ん、群れがこっちに向かって来てるんですけど〜?私もう離れてて良いかしら?」
「支援魔法も貰ってるし、アクアはそっちで優雅にお茶でも飲んでてくれ。最悪そのテーブルを盾にしたら、多分大丈夫だと思うから〜!」
「分かったわ〜!」
さて、アクアの支援もばっちりだし、そろそろ始めるとするか。舞い上がる砂埃も近付いてきた事だしな。
「しかし、テイマーのスキルはあの群れをまとめて捕縛などできるのかい?私達までダクネスさんの近くに居たら、群れが突撃してきて危険だと思うんだけど……」
「あんな数をまとめてテイム出来るわけないだろ?それに、今回のダクネスの仕事は囮じゃないぞ」
「はっ?いやハシリタカトビ相手にそんな筈は……」
不思議そうに俺の方を見るあるえとダクネスだが、その視線は舞い上がる砂埃の方へと向きを変えていった。そう、俺達に向かっていると思いきや、少し軌道を変えてアクアの方へと向かっていくその群れへと……
「えっ?ちょっとなんかこっち見てるんですけど?!ハシリタカトビがこっち狙って……いやぁ〜〜!!」
ドドドドドド!
「ま、まさかあのティーセットに何か……」
「オリハルコン製のポットとマナタイト製のカップ。あっちが囮だから、ダクネスは俺とハシリタカトビの捕獲にいくぞ」
「あ、あぁ……出来れば私もあっちが良かったが……」
アクアには悪いと思っているが、今回の目的はハシリタカトビとの和平である。あの硬いものに突撃する行動がメスへの求愛行為であると言うなら、その群れのメスをコントロールすれば群れの位置さえコントロール出来る筈なのだ。だってメスが見てないのにやる意味ないし?それならもう、メスをコントロールして人里から遠ざければ良いわけじゃん?
「『鑑定眼』……っと最後尾の数匹がメスだな。まぁ、そりゃ男の勇姿を見て相手を選ぶなら、その位置に居るのが確実か……それじゃ、『ボトムレススワンプ』!行くぞダクネス!!」
「あぁ!肉弾戦なら任せておけ!」
さぁ、あらゆるもふもふを知り尽くした俺にとって、鳥類なんて取るに足らない存在のはずだ。一瞬で手懐けて、そのまま騎乗生物にしてやるよ!
「喰らえハシリタカトビ!これが俺の……全力だぁ〜!」
…………………
「ぴぃぴぃ…」「ぴよぴよ…」
「ふっ……勝ったな……」
俺の手が触れたハシリタカトビ達は、いとも簡単にその身体を地に伏せた。やはり所詮は鳥類、サキュバス相手に上げたテイムスキルがあれば、手なづけるなんて余裕だったな。
「あの獰猛なハシリタカトビが小鳥のように……確かにこの方法なら無駄な犠牲を出さずに制圧が可能だ。まさに英雄の制圧方法じゃないか!」
「あぁ〜!!こっちにオスの群れが来てるんですけど!!メスが止まっても止まらないんですけど〜?!あぁ〜!!あぁ〜〜〜!!」
「あっちのアクアさんは良いの?!あれは無駄な犠牲じゃないの?!」
「残念だけど、犠牲のない勝利なんてないんだよゆんゆん……まだ気付いてないだけで、あいつらもこっちを見たら止まる筈だ。それまではアクアに頑張って貰おう……」
「で、でもあれって……硬いティーセットだけあれば良かったんじゃ……」
あっ、そう言えばそうだわ。なんかいつもの癖でつい……
「群れが引き返してきたぞ!さぁ、今度は私を見ろ!」
「いやそれじゃ駄目なんだよ!メスはもうあいつらを見てないわけだし、これはもう止まって貰わないと困るわけで……」
「「「「「「………キシャーー!!!!!!」」」」」」
あれ、なんかマジギレして加速した?!なんでそんな目をこっちに?!
「これ、良く考えたらアピールしてたメスを根こそぎカズマさんに奪われた訳だから……あっちからしたらネトラレって事になるんじゃないかい?」
「な、なんて俺は罪深いことを……」
ガクッ
ハシリタカトビとはいえ女の子を寝取るなんて、人として最低の行為じゃないか!畜生!後でエリスに懺悔しないと!
「あの……交際前に取られても、それはネトラレじゃないような気が……」
「ごふっ!」
「えっ?何でフォローしたのにカズマさんにもダメージが?!」
「ごめん……それは辛い黒歴史なんだ……」
想いは全然残ってないけども、掘り返されるとちょっとキツイです。
「おい遊んでいる場合か!もう群れがこっちに来て……」
「「「ぴゃー!!」」」
あれ、まさか俺達の前にメスのハシリタカトビが?!まさか俺達を守ろうと?!
「この絶体絶命な状況で、私達の前に出てきたのはテイムしたメスのハシリタカトビ達だった。それは愛するものを守るために、自らを愛してくれたものに牙を剥く行為……そう、まさにこれは修羅場!鳥とは思えぬ愛憎劇!!ものすごい筆が乗るストーリー!!」
「いや後半やめろ!前半だけなら俺との友情物語だったじゃん!なんで昼ドラにしちゃうんだよ!!あと、筆が乗るのは構わないんだが、原因が俺とは書かないでくれ。なんか罪悪感で胃が痛い」
「間違いなく英雄とは思われないストーリーですし、むしろ悪名が増しそうですもんね……」
うん、それにはなんの申開きも出来ないよね。
「よし、それじゃ今日の所は解散だ!めぐみん!!跡は頼んだぞ!!『テレポート』!」
「はぁ、結局それですか……でも、私としては期待通りです!『エクスプロージョン』!!」
カッ!!!!
転送先から見る爆炎の炎は、何故かいつもより熱く感じた。今回はうまく行かなかったが、いつかはきっと動物型のモンスターとも分かり会える日が来るはずだ。俺は目を回したアクアを担ぎ、可能性という明日に向かって歩き出した。
「ねぇ、これっていたずらにハシリタカトビの乙女心を弄んだだけみたいな気がしない?結局全部討伐したし……」
「し〜……何とか終わりよければで誤魔化そうとしているだから、そこは突っ込んでは駄目だよ」
あっ、そうですよね。やっぱり流れで誤魔化すとか無理ですよね!
「おい待て!そんな事より林の方に火が回ってないか?!」
「そんな事とかいうな!そもそもそんな筈ないだろ!めぐみんの爆裂範囲はちゃんと計算したし、間違っても林まで火が及ぶなんてことは……」
パチパチ……
いや燃えてるな。そりゃ普段より熱い気がするわけだよ。だって事実として熱いもんな。
「おいめぐみん。説明」
「ハシリタカトビは貴重な食料ですから、吹き飛ばさないように熱量重視で撃ってみたのです。まぁ、その結果が火の付いた瓦礫をバラまくことになったわけですが、これも魔法の進歩の為の犠牲と思えば安いもので……痛い!すみません!謝るので頬を引っ張らないでください!」
「ふざけんな!これで俺の悪名が増えたらどうするつもりだ!ゆんゆん、あるえ!直ぐに消火するぞ!アクア、お前も消火に……」
「きゅ〜……」
あ、やっぱり何でもないです。思ったよりボロボロだし、今日は1日優しくします。
……………………………………
「それで、結局英雄らしい活躍はできたんですか?帰ってくるまでに随分とかかったみたいですけど?」
「それはその……聞かないでくれると……」
動物との分かち合い作戦に失敗した俺は、ちょっとやけになって色んなクエストを受けていた。戦場後に湧いたアンデッドの討伐に、近くに現れたというワイバーンの討伐、そして誘拐された貴族令嬢の救出までこなしたと言うのに、結局英雄譚が生まれることはなかった。
「アンデッド討伐は珍しくダクネスが機能してアクアの独擅場になるし、ワイバーンは狙撃して落ちてきた所に巻き込まれて俺が怪我をするし、誘拐された貴族令嬢をスティールで助けたら、右手が胸に触れたってビンタされるし……あのサイズで触れたとか言われても……」
「カズマさん」
「……すみません。女性の胸にサイズは関係ないです。胸は全部素晴らしく、合意もなく触っちゃ駄目です」
「そうですね」
でも、こんだけ色々とやっても英雄のような活躍はなかったし、やっぱり俺には英雄なんて向いていない気がする。正直、貰ってきたハシリタカトビを捌いている今が今日1の活躍だ。ちなみに今夜は唐揚げです。
「でも、無理に英雄ぶる必要なんて無いと思いますよ。いつも優しくて、ご飯が美味しくて、女神の私さえ癒してくれる人なんてカズマさんだけなんです。だから、それで十分じゃないですか?」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ。やっぱり父親になったら「お父さん格好いい!」って言われたいだろ?まぁ、割と難しい願いみたいだけどさ」
国の英雄って立場は、実のところ面倒の方が多い。しかし、受け取ってしまった以上は返せないし、それなら憧れてもらえる方が良い。俺だって健全な男の子、勇者に憧れるのは本能みたいなものだ。凄い嫁を貰い過ぎて難易度を上げたのも俺なんだが、それは後悔してないので良しとする。
「ねぇカズマ、そっち終わった?油は良い感じに温まってきたよ?」
「おっ、それじゃそろそろ始めるとするか。エーリカはちゃんと離れとけよ。油ハネで顔に傷なんてつけられないからな」
「オッケー!後よろしくね!」
そして、そんな絵空事に憧れるより、今は孤児院の子達の為に唐揚げを作るとしよう。こうして子供達の血肉になったと思えば、きっとハシリタカトビたちも許してくれる筈だ。いや多分許してくれないとは思うけど、俺の気分的には少しマシだし……
「サトウカズマ。言われた通りかもねぎのネギを用意したが、カモネギがどれだけレアモンスターか考えてくれよ……子供達の為とは言え、1日中走り回ったじゃないか……」
「ありがとなカブラギ。本当は家庭菜園のネギでも良かったんだが、たまには良いものを食わせてやりたくてさ。これで美味しいネギダレが作れるよ。それに、あいつらうちのネギを勝手に持って行きやがるし、減らしてくれたほうが助かるしな……」
「おい待てカズマ。いまネギを持っていくって……それじゃ僕の取ってきたネギは下手をすると……」
「あっ、これうちのだな……庭で取れば良かった……」
うん。これは悪気があったわけじゃ無いんだ。だからその殺意のこもった目を辞めろ。今回に関しては俺は悪くない!
「あらシラタキじゃない!今日はカズマさんの奢りらしいから、あんたも唐揚げ食べていきなさいよ」
「アクア様!まさかお食事に誘っていただけるなんて……ふっ、今日はアクア様の唐揚げに免じて許してやろう!本当に次はないからな!」
うん、それ揚げるのは俺だけどな……
「でも、カズマさんが孤児院で唐揚げを振る舞うなんて何かあったんですか?これだけのお肉なら、売れば数万エリスにはなりそうですのに……」
「単なる罪滅ぼしと自己満足だよ。あとはまぁ、こういう光景が好きだからかな……」
「カズマさん……」
唐揚げを揚げながら周りを見ると、そこにあるのは笑顔の子供達。この光景が俺の手で作られたというのは、思いの外気分が良いものだ。それに……
「さぁ!今日はアクセルハーツのゲリラライブだ!今日の私達は可愛いケモミミコスチュームだぞ!」
「アクセルでは一夜限りの特別ライブ!また見たい人は獣人の里まで来てね!」
「ケモミミライブツアーは明後日からだよー!」
めぐみんの燃やした林の賠償についても、真剣に考える必要がある。取り敢えず群がってくる大人用に、割高のシュワシュワを用意しておこう。英雄になるよりやるべきことは、まず借金を作らないことだ。そう、切実にそれだけは譲れない!
「……カズマさん。言いにくいかも知れませんが、今度は何をしていくらの賠償に?」
「建築用の植林を燃やして400万エリスの賠償だってよ……モンスター退治したのにマジで1エリスもまけてくれなかった……」
「あぁ……それでこんなに大量の唐揚げとシュワシュワが……子供達には十分配ったと思ったら、これ売り物だったんですね……」
畜生!もう嫌だこんな生活!!
……………………
「これでギリギリ赤字回避か……クエスト後に露天商とか、これ英雄のやることじゃねぇよ……」
英雄には憧れるのだが、やはりそれよりまず金である。以前の借金まみれの生活がトラウマとなり、今でも多額の賠償や目減りする貯金には猛烈な拒否反応が起こってしまうのだ。まぁ、こんな小心者な所も英雄らしくないのだろう。それに関しては自覚がある。
「お疲れ。ほら、冷たいシュワシュワの差し入れだ」
「サンキュー。リアもお疲れさん」
リアは疲れ果てた俺にシュワシュワを差し出し、そのまま俺の隣に座った。普段ならこんな気遣いなんてしてくれないので、多分エリスの差し金なのだろう。リアならお世辞なんて言ってくれないし、ある意味では1番言葉に説得力がある。全く、うちの嫁は優しさが過ぎるな。
「どうせ黙っててもバレるだろうから先に言うぞ。私はエリス様に頼まれて来た。でも、この後の言葉に嘘はないから安心してくれ」
「いやそれ言っちゃうのかよ……それで、嘘のない言葉っていうのは?」
不器用な奴だとは思っていたが、普通そこは自分から切り出さないだろ。まぁ、そこも含めてリアらしいか……
「カズマは私にとって英雄だ。決して目立たないが、私達がここまで来れたのはカズマのお陰だと思ってる。それに、死に別れた両親にも会えて、シエロの為に身体を張ってくれて、エーリカの孤児院の為にここまで行動してくれた。確かに目立たないしイマイチパッとしないが、それでも自分を卑下する必要はない。少なくとも、この国のトップアイドルがお墨付きをやるんだ。少しは胸を張って良いだろ?」
「リア…………その言葉、子供が生まれたら定期的に言いに来てくれない?」
「そ、それは流石に恥ずかしいから無理だが……」
「なんだよケチ。でも、ありがとうなリア。俺は俺のやり方で英雄って言ってもらえるように頑張るよ。子供に自慢してもらえるようにさ」
「あぁ、そうしてくれ。
」
しかし、国のトップアイドルにそこまで言わせたって言うのは中々に気分が良い。子供が出来たら俺の活躍した土地を巡って、何とか過去の栄光だけで憧れてもらえるように頑張ろう。本音を言えば、もう頑張りたくないし……
「しかし、カズマのくれたクッキーは凄いな。本当に猫の動きが可能になるなんて、私も予想して無かったぞ?」
「あぁ、それ一応神様のアイテムだしな。激しいダンスだとカチューシャは落ちるし、だからって手入れされた髪の毛に無理やり固定するのも嫌だったから、都合よく使わせて貰ったんだ」
まぁ、それでもムーンサルトを軽々出来るのは、リアの運動神経ありきだろうけど……
「おっ?猫耳の端にゴミが引っかかってるぞ?」
「そうなのか?自分がモフモフだから細かいゴミには気付かないんだ。良ければカズマが取ってくれ。英雄の仕事としてな?」
これで英雄になれたら苦労はないが、きっとこういう小さな事を積み重ねていくしか無いんだろう。まぁ、流石にコレは小さ過ぎる気もしなくもないが……
つんっ
「ひゃうっ!」『テイムが完了しました』
「「……………はっ?」」
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
最近リアが可愛いと思いつつ、可愛い子には苦労させたくなるので「踏みとどまれ私!」とか考えていた今日このごろです。
すみませんやりました。
また不定期ではありますが、お暇な時にでもお付き合いください。