※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

ここまで引っ張りましたが、流石にもう産ませないと破裂しちゃいます。と言うことで出産編です。こんな時まで酷いのはどうかと思いつつ、これが私なので止めません。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この素晴らしい家族に祝福を

神と邪神の違いとは何か、俺は以前から疑問だった。厄介な物を司るから邪神か、それとも邪神だから厄介な物を司ることになるのか……女神にアクアのような地雷が居たと思えば、逆に邪神の筈のウォルバクとレジーナの方が話が通じたりするのは何故か……そんな人では到達出来ない真実に、俺は辿り着く事となる。

 

「ふははははは!幸運の女神エリスよ!聞こえているかは分からんが、取り敢えずご懐妊おめでとう!そして、その娘は邪神として誕生することをここに宣言してやろう!我らの祝福が、与えた祝福の過半数を超えるのだ!」

 

「させないわ破壊神!エリスの娘は清らかな女神として誕生するの!貴方達の祝福なんて必要ない!この愛の女神が全力で阻止するわ!」

 

「おいちょっと待て!お前らうちの子が娘だってネタバレしてんじゃねぇよ!あと、祝福の数で邪神かどうか決まるなんて初耳なんだけど?!なんだその謎の総選挙!」

 

爆音の出所を確認しに外へ出ると、何やらすごい数の魔物の大軍が俺達を取り囲んでいた。ちなみに、俺達が居たのはスタジオではなく城だったようで、そこにある大砲が爆音の理由らしい。あの破壊神の服がちょっと焦げているので、多分開幕と同時に愛の女神にやられたのだろう。生命を軽く見る連中だけあり、マジで情け容赦がない。

 

「おい天使。取り敢えず説明!」

 

「い、以前は近しい神と同じ属性になることで、周りにハブられたりしないように気を使うシステムだったのですが……逆に将来有望な方を皆で祝福することで、むしろ自分達の側に引き込もうとする輩が出てきまして……」

 

「つまり闇落ち狙いかよ!エグいこと考えやがって!そんなのほぼ侵攻じゃねぇか!」

 

「ただ、先にそれをやったのは愛の女神でして……確か殺戮の神の息子が将来メッチャイケメンになりそうだからって、こちら側に引き込んだのが最初だったかと……」

 

「…………」プイッ

 

この女神マジか?!本当、なんでコイツが偉いんだよ!神々の出世システムどうなってんだ!

 

「ははははは!エリスの娘となればその力も膨大であろう!それを邪神側に引き込むことで、我らが勢力はより拡大するのだ!」

 

「させないわ破壊神!エリスの娘は人々を導く光となるのよ!余興で集めた多くの神々が集まっている事だし、とっととお家に帰ることね!」

 

俺とエリスにとって大切な第一子誕生は、どうやら他の神々にも重要案件らしい。娘が期待されるのは誇らしくもあるのだが、正直に言えばそっとしておいて欲しかった。と言うかこれでエリスに危険は無いのだろうか?あったら即時テレポートして、日本の病院で産んでもらう方が安心できる。と言うか俺達のあれ余興かよ。この女神マジで締め上げたい。

 

「神同士の直接対決は禁じられている故、今回も地獄の使者を日雇いで用意したぞ!その城に我が眷属が入った瞬間!我らの加護がエリスを祝福するのだ!無論、安産祈願も込めてな!」

 

「なんか有り難いこと言ってる気がするけども!それやられたらうちの子が邪神になるんですよね?!安産祈願だけになりませんか?!」

 

「ならぬ」

 

「ですよね!」

 

ただ、個人的には愛の女神より破壊神のほうが良い人っぽい気がして仕方ない。さっきから気遣いの出来た言動が目立つし、性格的には愛の女神より良い人っぽいし……

 

「無駄よ!既に私達の祈りはエリスの中にあるの!あんた達根暗な邪神の祝福なんて要らないわ!と言うことで、こちらは善意で天国と人間界のエリス教徒の皆さんが防衛に来てくれています!」

 

「「「「「「「エリス様を守れーー!!」」」」」」」

 

「善意って……えっ、こっちまさか無給?!流石にそれは大丈夫なのか?!変な余興に予算使って……」

 

「しっー!!大丈夫よ!死んでも蘇生するし、これで頑張るのも信仰心だと思うし!」

 

あっ、この人のほうが心が邪悪だ!この人の祝福でも邪神が産まれそう!

 

「ふむ。詳しい事情は良く分からんが、早い話がこの場を悪鬼共から守れば良いと言うことだろう?……いや、いっそ全て倒してしまっても構わんのだろう!」

 

「おぉ!アインズがメッチャ頼もしい!流石はナザリックをまとめる魔導王!」

 

「まぁ、見た目的には完全にあっち側だけどな……」

 

「それと海パンなのも少し気になるがな……」

 

「そ、それを言うな!私だって好きで水着ではない!ちょっと着替えるから待っていろ!」

 

そう言えば、アインズは男性として扱われたんだな。骨だから性別わからんけど……

 

「良く言ったわ鈴木悟!愛の女神として、貴方達に最大級の祝福を授けてあげる!神々はそういう展開大好きだから、友情パワーでやっちゃいなさい!」

 

「貴女も本名で呼ぶのは辞めてくれないか?!と言うか、貴女がもし本物の女神だった場合…『ブレッシング!』…あぁ〜〜!!!」

じゅ〜!!

 

「「「アインズー!!!」」」

 

後先考えぬ愛の女神により、アインズが即座に黒焦げにされた。こんな何処をどう見ても闇属性の塊みたいな奴に光の支援魔法とは、こいつはマジで何を考えているのだろう……

 

「あ、悪は滅んだわね……」

 

「おいアンタいい加減にしろよ?!アインズがアン◯ンマンのホラー◯ンみたいな顔になったじゃねぇか!うちで唯一の軍隊持ちをどうしてくれるんだ!アインズ無事か?まだ戦えるか?!」

 

「ホラホラ~…」

 

駄目だ!中身もやられてる!

 

「大丈夫よ!私の加護は凄いから、彼の穴は他のメンバーで埋められるわ!なにせ私の加護を受けた勇者は、一人で師団にも匹敵すると言われてるもの!ほら、スバル君も魔法を撃ってみて!」

 

「そ、それがマジならイケるか?!よし、『ミーニャ』!」

ポヒュッ

 

………………あれ?不発?

 

「なぁ、まさかその加護を受けていると、闇魔法使えなかったりします?」

 

「……するかも」

 

「俺、闇魔法しか使えないんだけど……」

 

「……あっ」

 

あっ、じゃねぇよ!この女神マジで使えねぇな!!

 

「もう駄目だ!これじゃうちの娘がウォルバクと同じ邪神になっちまう!」

 

「おい」

 

「そう言われると邪神も悪くない気がしちゃうけど、でもやっぱりエリスさんのキャラ的に邪神は不味いよな!」

 

「だから、おい!」

 

「し、仕方ないわ!ここはスバル君に囮になってもらって、悪魔を遠くに引き離して……」

 

「アンタそれでも女神か?!」

 

「人として最低な発想だぞそれ!」

 

「おい!わざとか?!お前達、私をわざと無視しているのか?!強化されているのは私もだろう?!」

 

「「「えっ、でも貴女闇属性ですよね?」」」

 

「誰が闇属性だ!私の魔力は問題なく強化されているし、この力で悪魔共を蹴散らせばいいのだろう?」

 

「出来るのかターニャ?!」

 

意外にも闇属性では無かったターニャの提案は、今の俺達にとって救世主みたいなものだ。この役立たずの女神と違って、今はこの幼女が女神に見える。まぁ、実際に見た目は可愛いので、ビジュアルとしては女神でも良いのかも知れない。中身は間違いなく悪魔だが……

 

「任せておけ。友人の第一子誕生の日だ。それなりに活躍させて貰うさ」

 

「ターニャ……」

 

「ふぅ……第二〇三航空魔導大隊に告ぐ!即時装備を整え隊を組め!我らはこれより聖戦に挑む!友の新たな門出に水を差す悪鬼共に、天罰とは何かを教えてやれ!!」

 

「「「「「イエスマム!!」」」」」

 

部下たちの返事を聞いたターニャは、自らも武器を取りに走り出す。あの小さな背中がこんなに大きく見えたのは、きっと気の所為ではないのだろう。あれが国の為に戦う軍人の背中だと思うと、自然とそんな考えが過った。

 

「あいつ、マジで格好いいな……」

 

「あぁ、年下の幼女なのに憧れるぜ……」

 

「「何処ぞの女神とは大違いで……」」

 

「何よその反応?!貴方達が主人公なのに光属性じゃないのが悪いんでしょ!」

 

いや流石にそれは偏見だろ。アクアだって水属性だし……

 

「カズマ!そちらは無事ですか!」

 

「おぉ、めぐみん!皆も無事で良かった!」

 

ターニャの出撃から少しだけ遅れ、水着から普段の装備に戻った皆が俺達の下へと集った。しっかり戦闘準備をして戻って来る辺り、流石は修羅場慣れしているだけのことはある。別に慣れたいことじゃないんだけどさ。

 

「おや、これは終末でも迎えたかのような光景だね。それで、私達は何をすれば良いんだい?」

 

「あの悪魔共がこっちに到達すると、エリスの子が邪神として産まれるらしいんだ。だから、それを止めようと画策しているんだけど、アインズが諸事情で戦闘不能になってしまって……」

 

まぁ、諸事情は女神の偉い人なんだけど……

 

「じゃ、邪神だって?!そんな事になったら、エリスさんの子がお腹を打ち破って出てくる事になるんじゃ……」

 

「それじゃエリスが死んでしまう!カズマ!何としてでも食い止めるぞ!」

 

「ねぇあるえ、ダクネス。私も元邪神なのだけど、私のことどんなイメージで見てたのかしら?」

 

「「……あっ」」

 

これ、元邪神って認識が抜け落ちているんだろうな。基本的には人畜無害な巨乳だし……青少年以外にはなんの悪影響もないし……

 

「そう言われると、なんか困らない気がしてきたな。レジーナ様も元々邪神だし……」

 

「闇の勢力って意味ではリッチーの私もですけど、そんなに害はないと自負していますよ?」

 

「あれ?では光の勢力となるのは………」

 

「えっ?なに私?そりゃ確かに神々しさ溢れる女神ですけど、流石に代表は言い過ぎかなって〜……」

 

皆の視線が集中したのは、一応光の勢力っぽいアクアの顔。そりゃ確かにこいつもそっちだろうけど、これを代表とすると……

 

「「「「いっそ邪神で産まれたほうが良いのでは?」」」」

 

「なんでよぉ〜?!」

 

そりゃそうなるだろ。お前は実質貧乏神だし……

 

「でも、エリスから邪神が産まれたりしたら、困るのはカズマくんじゃないかしら?清純派のエリスから邪神が産まれる原因なんて、それこそ父親くらいしか無いと思わない?」

 

「確かに邪の文字はヨコシマとも読むから、疑われるとしたら父親のカズマさんよね……そうなると、エリスガチ勢が黙ってない可能性も……」

 

「おい辞めろ!嫌な不安を煽るな!流石にガチ勢の皆さんは相手にしたくないぞ?!」

 

何これおかしい。愛を司る女神に子供のことで脅されるってある?しかも1番付き合いの長い女神まで不安を煽ってくるし、天界には倫理観とかないのかよ?!

 

「今はそんな事で言い合ってる場合じゃないでしょ!皆自分の都合ばっかりだけど、エリスさんは初産なんだよ!先ずは安心して子供が産めるように、この状況を何とかするのが先でしょ!」

 

「「………ごめんなさい」」

 

あっ、ちゃんとあるんだ倫理観。エミリアの良い子発言に反省させられる辺り、血も涙もないって訳じゃないんだな。それなら、最初から余計なことしないで欲しいけど……

 

「アインズ様から話は聞いたわ。エリスの安産を守る為なら、私達階層守護者も全力で手を貸すわよ。そう、同じママ友としてね!」

 

「……ホラホラ~」

 

「アルベド……アインズ……」

 

お前まだママじゃ無いだろとか、良くそのアインズと会話成立するなってツッコミは置いとくとして……アインズは自分の方が大変なのに、まだ俺達の為に手を尽くしてくれるのか。やっぱり、邪神の方が良い子に育つ気がしなくもない。でも、その気持ちは無下にはできないよな!

 

「ありがとう皆……俺達の子供が産まれるまでの間、あと少しだけ力を貸してくれ!」

 

「「「「「「「「おぉーー!!!」」」」」」」」

 

ただ、やっぱこれ出産の時のテンションじゃないんだよな。本当に今更なんだけど……

 

……………………………

 

「くっ!雑魚の群れと侮っていたけれど、相応の強敵が紛れているわ!決して油断しないで!」

 

「こんなの日雇いで雇える戦力じゃありゃせんよ!一体何処から湧いて出たでありんすか!」

 

眼の前で苦戦するアルベドとシャルティアに、俺は自分の浅はかさを呪っていた。正直、アインズ陣営が居ればこの戦いも余裕だと思っていたのだが、残念ながらそう簡単には勝たせてくれないらしい。下らないイベントだと思っていたのに、どうしてここまでガチ戦力を揃えてくるのか……もっとやるべき仕事があると思うのだが……

 

「アルベドの相手は機動性重視の遠距離型で、シャルティアの相手は隠密能力の高い魔法強襲型か……まるで狙い澄ましたみたいな構成だな……」

 

「ラインハルト相手に普通に切り合える奴まで居るし、間違いなく対策されてるよな……」

 

スバルの言う対策というのは、俺から見てもされていると思う。神々が俺達の事を娯楽としていたのなら、少なくともラインハルトやアインズの事は知っていた筈だ。それでこんなイベントがあったら、対策しない訳が無い。

 

「カズマ様!エリス様の出産までもう時間がありません!防衛は皆様に任せて、1度エリス様の所へ!」

 

「でも、それじゃ全体への指示が……」

 

「十分だ!これだけ時間を貰えれば、千里眼など無くとも戦況は理解できる!だから行けカズマ!」

 

「おうよ!俺の視力は両目とも2.0だ!何も気にしないで行って来い!」

 

危機的な状況に変わりはないが、それでも行けと背中を押してくれる仲間が居る。例え痩せ我慢だと分かっていたとしても、今は二人の言葉を信じよう。二人の目に映る覚悟と言うのは、それだけのものに見えた。

 

「すまない皆!後は任せる!」

 

本当にクソみたいな世界だけど、それでも俺が幸せにしたい娘が居る。だから、せめてこういう時くらいは平和に迎えさせてあげたかったな。

 

「っても、原因も嫁も神様だから難しいか……本当に、この世界は頭おかしいにも程があるだろ!」

 

……………………

 

「あっ、カズマさん。意外と早かったですね?」

 

「あぁ……エリスも元気そうで良かったよ……」

 

天使の案内で到着した部屋は、この城には似つかわしく無い近代的な部屋だった。そこには医療器具がズラリと並び、素人目に見れば日本の病院と変わらなく見える。

 

「ようこそ天界の産婦人科へ!と言っても、女神の出産なんて滅多にないから、産婦人科はここだけなんだけど……あ、私が出産を担当する生誕の女神だから、気になることがあったら何でも聞いてね?」

 

「すみません。取り敢えずこの部屋の皆さんが凄く落ち着いているのが凄く気になるんですけど……外は戦争みたいになってるの知ってます?」

 

エリスが無事なのは安心したのだが、それにしたってこの温度差はおかしい。これではまるで何もかも知ってて準備したようにしか………

 

「あぁ、新人争奪戦は何時もの事よ?辞令とかイメージとかで邪神か神かなんて変わるって言うのに、本当に飽きない連中よね?ただ、今回はガチに戦争なのが気になるわ。普段はサッカーとかなのに……」

 

「えっ?邪神かどうかってそんな簡単に変わるのか?!それじゃエリスが余裕なのも……」

 

「えぇ、ここでどっちに産まれたかなんて、新人歓迎旅行の行き先をどちらの派閥が決めるかって事にしか影響しませんからね。どうせ最終的には破壊神と愛の女神が話し合って、結局は神になるかと……」

 

「あぁ、そう言えば破壊神と愛の女神ってデスク近いんだっけ?」

 

「そうなんですよ。一緒に子猫の動画見たり、おやつ分け合ったりしてるんで、本当は仲良しなんですけどね」

 

おかしい。外の血で血を洗う抗争の首謀者が仲良しってなんだよ。ノリでやるにしても本気が過ぎるし、そもそも戦争じゃなくて球技にしてくれれば平和だったのに、なんでこんな馬鹿な事を……

 

「あれ?さっき歓迎旅行が何とか言ってたけど、天界にはそんな文化があるのか?」

 

「えぇ、大抵は転生とか昇格により神が増えるので、その方を歓迎するためにやるんです。今回は出産なので、少し普段とは感じが違うんですけど、そこは伝統に則って派閥の長が行き先を決めると思います。まぁ、結局は皆で行くんですけど……」

 

なんか、凄く嫌な予感がしてきた。いくら何でもそんな神様居ないと信じたいんだが、この世界の神様ならマジでやりそうで……

 

「なぁ、天使。お前ならその2人のデスク近くにもテレポート出来るよな?エリスの出産まで時間あるみたいだし、ちょっと確認しに行きたいんだが……」

 

「わ、分かりました。突拍子もない話ではありますが、目がマジなのでご案内します。『テレポート』!」

 

いや、まさかそんな馬鹿な話は無いと思いたいんだけどさ?一応確認はしておきたいかなって……

 

……………………………

 

「さぁ戦うのよ信仰深き者たち!あなた達がエリスの希望よ!」

 

「進め地獄の兵共!我らの勝利は目前だぞ!!」

 

激化する最前線の上空まで来ると、指揮を執る諸悪の根源が良く見える。直接戦闘が禁止されているが故に、巻き込まれないように上空に居るのだろう。その安全地帯からやりたい放題すると言うのも、今となってはただ腹が立つ。だから、これから思い知らせてやろうじゃないか。

 

「悪いなアーネス。危険な仕事を頼んでさ?」

 

「いいえ。愛の女神と破壊神を1度に討ち取るなど我が主に相応しき行い!全力でサポートさせていただきます!」

 

うん、それはちょっと違う気がするけどね?

 

「それと、スバルとベアトリスも準備はいいか?」

 

「おうよ!流石にそんな身勝手が許されて良い筈がないからな!キツイの一発かましてやるよ!」

 

「きっちり落とし前つけさせてやるのよ!」

 

強者の多い戦場において、俺とスバルなんてなんの脅威でもないだろう。だが、それ故にきっと気付かれることはない。だからこそ、この作戦は上手くいく確信がある。

 

「ふははは!エリスの信徒も所詮は人間!これほどの数に心が保つ筈がない!さぁ!そろそろトドメを……」

 

「どっせい!!」

ゴシャッ!

 

「ごふっ!!ま、まさか我への奇襲だと?!」

 

高笑いする破壊神の背中へ、スバルが全力助走からドロップキックを放つ。ベアトリスの近距離テレポートは加速力も残ったままらしく、この方法なら上手くいく確信があった。と言っても、これはまだ途中である。

 

「さ、流石は修羅場馴れした現代っ子ね!神にも全力ドロップキックなんて!マジで神を恐れぬ所業……」

 

「せいっ!!」

ゴシャッ!

 

「みぎゃっ!」

 

アーネスの全速力の滑空から、今度は俺のドロップキックが愛の女神の背中を捉える。既に予想は出来ていると思うが、本件の諸悪の根源はこの二人だ。

 

「か、カズマくん?!私エリスの味方なのだけど?!狙うならあっちの破壊神を狙うべきで……」

 

「……ディズ◯ーシー」

 

「んなっ?!」

 

この戦争の発端は、信じられないことに例の歓迎旅行の行き先論争だ。愛の女神は◯ィズニーシーに行きたくて、破壊神は伊豆へ行きたい。そして、議論が平行線になった結果、互いに自分が勝てそうだからと戦争による決着を望んだのだ。それもきっちり企画書まで用意して、本当にいい加減にして欲しい。

 

「旅行先を決めるだけで戦争なんて起こしやがって!神様だからって何でも許されると思うなよ!このままサーフボードにして叩きつけてやる!」

 

「くっ!バレてしまっては仕方ない!しかし我はメッチャ強い破壊神!この闇の加護が身を守る限り、我はそう簡単には倒れんぞ!」

 

「そ、そうよ!私だって高位な女神だもの!この光の加護がある限り、そう簡単には負けないんだから!」

 

例えクソ迷惑だとしても、確かにこの2人は高位の神様だ。俺達の魔法では簡単には倒せないだろうし、下手すれば数秒で返り討ちだろう。だが、その突破口はちょうど足元にあったりする。そう、光と闇の頂点の2人が丁度手の届く範囲にな……

 

「なら、例えばその加護と逆の加護を持つ人にぶつかったらどうなります?」

 

「加護が相殺なんてしちゃったら、この高さで俺が乗ったまま落ちて大丈夫ですかね?」

 

俺達のドロップキックの進行方向は、丁度お互いに直線でぶつかるように行っている。つまり、このまま俺達のサーフボードにされた2人の行き先は地面より先に………

 

「いやいやいや!ちょっと待ってぇ!!」

 

「貴様ら正気かぁ?!」

 

「「もう直接対決で決着つけろ!!『強制フライングヘッドパッド』!」」

ゴシャッ!

※人間サーフィンからの正面衝突

 

………………………………

 

「急いでくださいカズマ様!もうお産が始まりますから!」

 

諸悪の根源を打ち倒した俺は、戦争の後始末を皆に任せてエリスの病室へと舞い戻った。これなら自分の子供が産まれるのだから、立ち会わないわけにはいかない。俺に何が出来るか分からないけれど、せめてエリスの手は握ってあげようと思う。

 

「大丈夫かエリス!諸悪の根は打ち倒したから、安心してお産に臨んでくれて良いからな!」

 

「はぁはぁ……大丈夫…ですよ。お腹の子は、カズマさんが来るのを良い子で待ってくれてましたから……んぐっ!」

 

「本格的に陣痛が始まったわ!このままお産に入るから、ご家族以外は外へ出て!」

 

突然苦しみだしたエリスの手を握り、俺はただエリスの無事を祈った。厄介者の相手をして忘れかけていたが、本当の戦いはこれからなのだ。女神でも命懸けのお産という戦いは、そう簡単には……

 

「よし触れた!『ウィンドカッター』『テレポート』!」

 

「「「「…………えっ?」」」」

 

「お、おぎゃ……」

 

この場にいる誰もが固唾をのんで見守る中、エリスのお産は予想を裏切り一瞬にして完了した。そりゃ母子共に、健康そうなのは何よりはなのだが、これには赤ん坊もポカーンである。

 

「えっ、それだけ?!」

 

「お腹の中でへその緒切って、そのままテレポートで取り上げたからね!いや〜、子宮口がここまで簡単に広がる初産は初めてだよ!随分と深い所まで愛されてるみたいで羨ましいねぇ!ほらエリス、あんたの子供を抱いてやんな!」

 

「あ、ありがとう……ございます……と、とても可愛いです…はい…」

 

「ば、ばぶぅ……」

 

何これおかしい。母子共に健康なのはとても良いことだし、苦しい時間が少ないのも何よりの筈なのに、なんでこんな微妙な空気になっているのだろう。と言うか、生誕の女神様にはデリカシーとかないんですか?そんなこと言うから看護師の皆さんが部屋の隅で盛り上がってるんですけど?!

 

「子宮口までってマジ……」「勇者の聖剣エグっ…」「そんなので抱かれたら絶対にとんじゃうよ……」「エリス様って受け入れる力も半端ないのね……」「聖剣、いいなぁ……」

 

「………消えてしまいたい」

 

「いやそれは俺が困る。と言うか赤ちゃんも困る」

 

やっぱり日本で産ませてあげるべきだったかな……

 

 

 

 

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

愛情深くてロマンティックな出産を描こうと思っていたんですが、身体が拒絶反応起こしたので辞めました。反省してます。でも後悔はしてません。

不定期更新ではありますが、またお暇な時にでもお付き合いください。
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