※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

赤ちゃんが産まれたら、そんなの祝福するしかありません。でも、普通に祝福してもしょうもない事が起こるからこの世界は素晴らしいのです。えぇ、当人がそう思うかは別として……

と言うことでお祝い回です。またお暇な時にでもお付き合いください。


この愛する我が子に命名を

生命の誕生とは素晴らしい。それはこんなフザけた世界でも共通認識であり、多くの人がそれに感動を覚えることだろう。もしそれが女神と英雄の子であるのなら、その感動は計り知れない事になる。そう、俺達は自分達の影響力の大きさを、全く測れて居なかったのだ。いや、その影響は殆どエリスなんだが……

 

「あう〜?」

 

「はぁ〜!なんて可愛いのかしら!頑張ったわねエリスちゃん!あと、一応カズマも褒めておくわね!」

 

「あ、ありがとうございます。お義母様の予想の半分も頑張ってないと思いますが、ここは素直に受け取っておきますね……」

 

まずは関係者の間で祝うべき。そう気を遣った天使の計らいにより、俺の屋敷にはまた家族がやってきている。まぁ、孫の顔を見せるのが一番の親孝行と言うし、今回はマジで良くやったと褒めてやろう。

 

「一応とか言うなよ。俺はこの子の為に戦争までしたんだぞ?」

 

「えっ、なにそれヤバくない?やっぱり悪魔の軍勢に命を狙われたりするの?」

 

「いえ、うちの子を邪神にしたい勢力が攻めてきまして……」

 

「はぁ〜……相変わらず異世界エンジョイしてるわね?」

 

「「エンジョイ?!」」

 

と言っても、戦争の真の理由がアレでは、流石の俺達も養護は出来ない。蘇生魔法で死傷者無しだとしても、やって良いことと悪いことがある。だからその発端となった2人に関しては……

 

「あれ?じゃあ、まさかそこで縛られてる2人って……」

 

「どうか触れないでください!こんな『私は私利私欲で戦争しました』なんて札をかけられて、手錠とアイマスクで正座させられてる女神なんて居る筈が無いのです!そう、これは美しくも謎のオブジェなのです!」

 

自分で美しいとか言うなよ。

 

「くっ!我が破壊神故に、佐藤家の家族団らんの景色を破壊してしまったと言うのか!しかし頼む!後生だから、せめて赤子を一目見せてくれ!」

 

それはもう破壊神とか関係ないぞ。とまぁ、こうして現在反省中である。

 

「天界規定で決まった事ですから、流石に今回の件は擁護できません。お二人を討ち取ったカズマさんとスバルさんに神の座を渡して、天使からやり直すなら話は別ですが?」

 

「くっ!天使ちゃんってこういう時ルール完全把握してるから厄介だわ!掻い潜る為とは言えね!」

 

「これが掻い潜る為でなきゃ本当に優秀なのにな…」

 

「マジかよ……天界のトップ2人にそこまで言わせるのは本当に凄いと思うわ。全然尊敬出来ねぇけど……」

 

でも、この2人がトップだと思うと、この天使にも納得出来るから困る。これで経営が成り立つなんて、組織としてそれは大丈夫なのだろうか……

 

「ところで天使、あのゆんゆんとトランプしてる2人はどちら様で?」

 

「あぁ、孤独の神様と創造神様です。破壊神様とゆんゆん推し仲間なのですが、破壊神様に効果的に罰を与える為に来て貰いました。お祝いには虎屋の羊羹とどら焼きを頂いてますので、後で食べましょう」

 

「畜生!推し活仲間を拷問に使うとは、なんて心無い事を!いっそ殺してくれぇ!」

 

「なんだこれ、効きすぎだろ……」

 

本人は割と楽しそうだから良いけど、そんな罰ゲームにゆんゆんを使うなよ……と言うか、無関係の2人も良く来たな……

 

「ゆんゆん、なにか欲しいものはあるかな?」

 

「そうだな!次のゲームで我々に勝ったら、星の1つでもプレゼントを……」

 

「いや良いですから!トランプしてくれる友達だけで十分ですから!」

 

「「ゆんゆん!」」

キュンッ!

 

「ごふぅ!」

バタン!

 

あ、こいつら重症だわ。と言うか、こんな凄い異物が居るのに、うちの連中のこの落ち着きはなんだろうな。

 

「カズマカズマ!そろそろ私達も抱っこして良いですか?!お義母さんとお義父さんは終わりましたし、そろそろ私達の番ですよね?!」

 

「あぁ、それで抱っこしないで律儀に待ってたのか……別に遠慮しなくても良かったのに……」

 

天使が直ぐに呼びに行ったとはいえ、うちの親を呼ぶまでに時間はあった。いや、突然父の会社に飛び込んだ天使が「佐藤様のお孫さんが産まれましたよー!!」なんてやったことを考えれば凄く早いとは思う。本当に、良く通報されなかったなコイツ。と言うかオフィス街の都市伝説だろこんなの。

 

「あぁ〜見てくださいダクネス!全身がプニプニで可愛らしいですよ!あぁ〜、こめっこにもこんな時期があったんですよね……」

 

「あ〜?」

 

「それはまだ数年前だろ……しかし本当に可愛らしいな……また守るものが増えてしまったが、それもまた喜ばしい……」

 

ダクネスはシルフィーナ、めぐみんはこめっこが居て慣れているのだろうが、他の連中はまだ恐る恐ると言った感じで眺めているだけだ。まぁ、そりゃ赤ん坊を抱くなんて怖いだろうさ。俺も凄く怖かったし……

 

「ね、ねぇめぐみん?赤ちゃんってどう抱けばいいの?私も抱っこして見たいんだけど、同じ抱き方は胸が邪魔で……」

 

「そうですか…では赤ちゃんの安全を優先して師匠は抱っこ無しです!」

 

「どういうことなの?!」

 

それはそのまんまの意味だろ。流石に赤ん坊落とすのは笑えないぞ……

 

「そういう時は、こうして椅子の上やソファーの上で膝に乗せるようにして抱っこすれば良いんですよ。ほら、これなら可愛いお顔が胸の間から見えますから?」

 

「凄いわウィズ!これなら胸が邪魔にならないわね!」

 

「……ちっ」

 

めぐみんの本音が地味に漏れているが、取り敢えず赤ん坊が安全なら何も言うまい。ちなみにそのポーズ、いつもおっぱいで挟んで貰う時と同じポーズです。まぁ、今言ったら怒られそうだから言わないけど。

 

「う〜、あむっ…」

パクッ

 

「あらあら、私の指は美味しくは……ホゲー!!」

キラキラキラ〜

 

「「「「ウィズー!!」」」」

 

不味い!この子赤ん坊ながらにちゃんと女神してる!凄く有能な女神してる!ウィズの右手がもうスケスケになってる!

 

「ちょっと、そんなの食べたらお腹壊すわよ!」

ヒョイッ

 

「あぅ?」

 

「さ、流石は無駄なことは器用なアクア!優しくも手早く赤子を取り上げたな!」

 

「なによその褒め方!私は慈愛に溢れた女神なんだから、赤ん坊の扱いなんて余裕なの!ほ〜ら、ビビリのパパよりアクアお姉さんが好きよね?」

 

「…………うぅ」

プイッ

 

「なんでよぉ?!」

 

「ははは、うちの子は見る目があるな!」

 

どうやらうちの子は、俺に似てヤバイ奴センサーの感度がとても良いらしい。これならアクシズ教団に入れられる心配もないだろう。これについては良いところが似てくれたと思う。

 

「つれない反応しないでよディーネちゃん!ほらほら、アクアお姉さんと一緒だと楽しいことがいっぱいあるわよ?」

 

「おい、そのディーネって言うのはうちの子の名前か?何お前が勝手につけてんだ!」

 

と言っても、俺もまだ浮かんでないんだけど……

 

「良いでしょ!水の精霊ウンディーネからとった名前よ。名前で司るものもが変わることもあるし、この名前ならきっと私の下に着くことになるわ。産まれながらに理想の上司が約束されるなんて、こんなに幸せなことはないんだからね?」

 

「お前が上司になったら毎日がアルハラと後始末の日々になるだろうが!うちの娘をそんな職場に送り出せるか!」

 

「なによ!この立て札の2人よりマシでしょ!」

 

「変わらねぇよ馬鹿!!」

 

「「ごふっ!!」」

ビシャッ

 

あっ、反省中の2人が吐血した。やはりアクアと同列にされたらショックなんだな。

 

「大丈夫ですよカズマ。私が素敵な名前を考えてあげます」

 

「あっ、紅魔族はお帰りください。センスがまともなのゆんゆん位なんで」

 

「なにを〜?!」

 

しかし、子供の名前に関しては俺も考えていなかった。俺とエリスの名前から取ってエリカとか考えたんだが、身近な所にエーリカが居るからな。流石にそれは紛らわしい。

 

「えっと、一応名前には候補が……」

 

パターン!

「エリス様!お兄様!第一子誕生おめでとうございます!それと、お外が大変な事になってますが?!」

 

「大変なことってなに?!」

 

焦って屋敷に飛び込んで来たアイリスは、お祝いの言葉に続けて嫌な話をぶっ込んできた。この街が大変なのは日常風景だが、それでも家の前が大変なのは滅多に無いことだ。全く無いと言えないのが、辛い所ではあるんだが……

 

「エリス様、ご出産おめでとうございます!天使様にご注文いただきました綿100%の子供服と、ガーゼ生地のハンカチ8枚セットをお持ちしました!」

 

「おめでとうございますエリス様!うちもご注文いただきましたベビーベットをお持ちしました!最高の素材と最高の職人が作りましたので、どこに触れてもサラサラの一級品ですよ!」

 

「エリス様のご出産をお聞きしまして、うちの牛乳を差し入れに!」「うちからは肉を!」「野菜を!」

 

大変なことになっているのは、どうやらエリスの高い支持率が原因のようだ。商店街の皆さんが大挙して押し寄せてしまったら、そりゃ混乱くらい起こるだろう。この状況を何とか出来るのは、間違いなくエリスだけだ。だって、誰も俺の名前を出されなかったし……

 

「ちょっと待ってください!注文したものは受け取りますが、そんな差し入れは流石に困りま……」

 

「うちからは霜降り赤蟹を!」

 

「…………でもお気持ちは無下には出来ませんので、取り敢えず今来てる方の分だけ受け取ります。次からはエリス教会の孤児院にお願いしますね?」

 

「「「「「「はーい!」」」」」」

 

あっ、食べたかったんだな。霜降り赤蟹。

 

………………………………

 

「しかし、言われてみれば名前は重要だよな」

 

「「「「「「「…………………」」」」」」」

モグモグモグモグモグ

 

「って、この人数に総シカトされるって正気か?!お前ら実は俺のこと嫌いなの?!」

 

カニ食ってるからって全員無視かよ!これは流石にちょっと傷付くぞ!

 

「だって、蟹なんて中々食べられないじゃないですか?ダクネスはいつも私だけ除け者にしますし……」

 

「そ、それについては本当に悪かったと思っているから、そろそろそれでイジるのは辞めてくれないだろうか……」

 

まぁ、エリスは好きなの知ってるけどさ。イメージ的に高級食材とシュワシュワが好きとか言えないってだけで……

 

「カズマの作る飯は美味いけどよ。でも、国の英雄が作ったにしては、使ってる食材が庶民的過ぎると思うんだよなぁ〜」

 

「分かるわ!最近は生魚の頻度も減って来てるし、英雄らしく週1で舟盛りとかしても良いと思うのよ!魔王倒して沢山貰ってる筈よね!」

 

「それは元魔王軍幹部の私達が言っちゃ駄目な気がするのですが……」

 

そうだなウィズ。俺の財産の一部はセレナとウォルバクの首にかかってた賞金なんだから、下手したら出来レース扱いされるもんな。

 

「えっ……3人って魔王軍幹部だったの?!」

 

「「「あっ」」」

 

しまったぁ!母さん達の前でこれは不味かったか?!流石にこれは秘密にした方が良かった気がする!

 

「これは、もう隠せません……いえ、隠すべきではないと思います……」

 

「お、おいウィズ!それは……」

 

俺は何とかこの場を誤魔化そうと、母さん達の間に割って入ろうとした。しかし、ウィズの真剣な目を見てしまえば、そんな小細工は無意味だと分かる。それに、どうせ母さんに俺の嘘は通じないからな……

 

「魔王さんは、以前勇者として君臨した日本人と魔族の子供です。それ故か人にも魔族にも分け隔てなく接する人で、絶対に民間人には手を出さない方でした。ただ王政や貴族制を正す為に、人と言う種族が世の支配者であると言う認識を正す為に戦争を始めたんです。カズマさんとはやり方の意見が食い違った為に衝突することになってしまいましたが、時代が違えば仲間になれた方だったんです!」

 

「ま、魔王にも深い事情があるパターンなのね……」

 

えっ、何それ俺知らない。と言うかそんな理由だったの魔王?!最後に話そうとしたのはその話だったの?!

 

「えっ、ちょっと待って!何故か魔王を倒した息子が一番信じられないって顔してるんだけど……あんた、そんな立派な思想を知らず、まさか賞金欲しさに……」

 

「あっ、いや……その……」

 

「それは違いますお母様!」

 

良かった!ここでウォルバクの助け舟が来た!正直アクアとエリスの為に頑張っちゃった訳だけど、良く考えたら魔王を悪と出来る根拠を何も持っていない!と言うか騎士道精神と倫理観に溢れていたし、ぶっちゃけこの国の貴族よりは好感持てた。

 

「元の発端は悪魔と神々の戦いの延長なんです。人が悪魔を嫌うのは、神の信仰に邪悪と書かれているからです。しかし!殆どの悪魔は契約に従順で尽くすタイプの子が殆ど……そう、そこでずっと鍋の灰汁を取っているアーネスがまさにそれです!」

 

「お、お邪魔してすみません……鍋奉行など出過ぎた真似は出来ないので、せめて灰汁取りだけでもと……」

 

「「「うわっメッチャ良い子だ!」」」

 

アーネスに関しては本当にそう思う。取り分けるついでに自分の皿にガンガン蟹を積んでいく天使とは大違いだよ。ニラとモヤシしか取ってないし……

 

「神々の「なんか気に食わないから悪魔滅びろ!」みたいな感情には流されず、カズマは自らが悪魔との共存の道を人々に見せてくれています。神々が挑もうともせず、魔王さえも断念した、全ての種族が手を取り合える世界を、カズマはいま作っているんです!」

 

「「「なんだってぇ!」」」

 

ねぇ、それ本当に俺のこと?悪魔っていうかほぼサキュバスだし、悪魔とか関係なく可愛くて抱けたら大抵は許せちゃうってだけなんだけど……なんか美化が凄まじくない?後さ、ウォルバクも女神って忘れてない?自分は違いますって顔してるけど、お前も女神だよね?

 

「私、まだ和真のこと誤解してたみたい……本当に、本当に立派な男になっていたのね…」

 

「父さんも悪魔は悪いやつって固定観念に縛られてたよ。和真はその人の本質を見ていたんだなぁ……」

 

「い、いやいや……そこはほら、出会った悪魔が良かっただけで……」

 

駄目だ!これ何も言えねぇ!俺にだけ必中する嘘発見器が眼の前に居るんだもん!勝手にどんどん持ち上げられるんだけど、これで最後に落とすとか本当に辞めてくれよ?!

 

「………ねぇ兄さん。本当は可愛くて抱けたら何でも良いんでしょ?サキュバス系漫画も家にあったし……」(小声)

 

「それはノーコメントで頼む……」(小声)

 

「あっ……うん」(小声)

 

やっぱ弟にはバレてるし!

 

「そうして、今では人と魔族の争いは殆ど無くなりました!カズマはこの功績から、魔界では次期魔王候補筆頭と呼ばれているのです!」

 

「「………えっ?」」

 

やりやがったぁ!遂に両親まで巻き込んで俺を魔王にしようとしてるじゃん!それは魔王の娘でいいじゃんかよ!!あと、争いが起こってないのは魔王の強化が無くなって数集まるようになったからです!お互いに手を出したらタダじゃ済まない軍隊の規模になってるだけです!あと魔王の娘のカリスマとかです!

 

「そ、そうなんだ……息子が魔王なのはちょっと困るわね……命を狙われたくないし……」

 

「そ、そうだな……交渉材料にされても困るしな……」

 

「おい待て。俺だって魔王になる気はないが、さっきまで立派な思想がどうこう言ってた2人がそれを言う?!そこは息子を誇りに思うとかじゃないのか?!」

 

「人は誰しも、自分の命が一番可愛いのよ!モンスターなんて赤白のボールに入ってるのしか認めないから!!」

 

「こっちの世界には関係ないだろう!ゲームの中に入るのは憧れるが、ジュマンジの初期は普通に怖いじゃないか!」

 

「うわ言い切った!思想より我が身って言い切ったよ!それで良く息子にあーだこーだ言えたな!」

 

魔王になる気は毛頭ないが、それでも両親の反応には納得がいかない。俺のことをクズだと言うのなら、それは間違いなくこの両親のDNAから来てると思う。

 

「あら?でもそれなら、なんでウォルバクさんは魔王軍側に居たの?貴女は確か女神様って……」

 

「私は、そこのアクアの信者に勝手に邪神扱いされて封印されてたんです。なので、そこの身勝手な女神にキツいの一発かますまでは魔王軍に入ろうかなって……」

 

「そ、その件は謝ったじゃない!ご両親の前で言わないでよ!」

 

………謝ったっけ?

 

「それに、そもそも怠惰と暴虐なんて司ってるから悪いんじゃない!そんなの実質邪神でしょ!封印されても仕方ないわよ!」

 

「勝手に割り振られるんだからしょうがないじゃない!私だってもっと良いのが良かったわよ!」

 

遊園地行きたくて戦争するやつが愛を司っている訳だし、正直この選定条件は当てにならない。ただ、もしウォルバクが真っ当な女神だった場合、あのサイズが同僚として比較され続けたエリスのメンタルがどうなっていたか……あまり考えたくない。

 

「でも、それじゃ尚の事名前は大切よね?これで死を司るとかになったら、イメージだけで邪神になりそうだし……」

 

「死の女神様はもう居ますから、死を司る事はありません。美人でスタイルが良く仕事も出来るのですが、何故か婚活界隈で爆死している女神様です」

 

「婚活でも死を司ってるなんて、辛い運命を背負っているのね……」

 

いや、それは多分本人の問題だと思うけどな……

 

………………………

 

「それで今日の夕飯の席で最終審議ねぇ。あいつら本当に忙しないなぁ……」

 

「なぁ〜?」

 

うちの娘の名前を考えると言い出したあいつらは、そのまま街へと出掛けて行った。俺とエリスは娘と留守番なのだが、これはこれで名前を考える時間をくれたんだと思う事にしよう。変なの付けられても困るが、名前が無いのも困りものだ。

 

「カズマさんが本気で決めてくれたなら、私はそれで良いと思ってます。何か候補はないんですか?」

 

「この子の一生を決めるかも知れないからな。候補だってまだ1つだよ。それにあくまで俺が好きなだけの候補だ。エリスはどうなんだ?」

 

この子は俺より立派になって、きっと女神として活躍してくれるだろう。そんな時に呼びにくい名前は不親切だし、だからってベタ過ぎると同じ名前の人に不自由を強いる。中々に良い塩梅がないのだ。一応候補がありはするのだが、これだって客観的に見てどうか……

 

「私も1つだけ候補があるんです。でも、これは私の我儘で選んだ名前です。きっとカズマさんの候補の方が素敵ですから、そちらを選んでくれて良いですよ」

 

「なら、2人で紙に書いて同時に出そう。俺達が皆に見せる名前は、その良かった方のどちらかにしよう」

 

「分かりました。なら、それで……」

 

そういって紙にペンを走らせるエリスは、何故か少しだけ寂しそうに見えた。紙に綴られた名前は、やはりエリスにとってはかけがえのないものなのだろう。そういう意味では、俺の候補も似たようなものだ。

 

「じゃあ、いくぞ?」

 

「「せーの!………あっ」」

 

名前の候補を書いた紙を捲ると、俺達は見つめ合って数秒固まった。そして、その驚きが笑顔になってから、お互いにその理由を語り始めた。

 

「俺にきっかけをくれた名前だからな。方法は最低だったけど、あの出会いがあってエリスの隣に居られるんだ。だから、この名前を娘に継いで欲しい」

 

「大切な人と繋がる為の名前だったんです。ダクネスと友達になる為の、カズマさんに頑張って貰う為の、そしてアクア先輩を見守る為の名前だったんです。でも、この名前をちゃんと愛してあげたいんです。だから、2人の一番大切な人に、この名前を託したいんです」

 

「「良いかな、クリス」」

 

「あう!」

 

まだ意味なんて理解もしていない筈の赤ん坊が、俺達の目を見て声を挙げた。だからこれは偶然か何かで、きっと本人が気に入ったとかそういう話では無いのだろう。でも、俺達にはそれで十分だった。

 

「決まりで良いよな?」

 

「はい……少しだけ寂しい気もしますが、もう偽る必要なんて無いですから!」

 

そう言って満開の笑顔を見せるエリスの顔は、何処か自然体で笑うクリスに似ているような気がした。いや、きっと笑い方なんて演じ分けられないだろうから、これがエリスの本来の笑顔なのだろう。偽らずとも自然に笑える場所が出来たのだから、もう彼女の仕事は終わったのだろう。

 

「今までお疲れ様、クリス……」

 

その後、本人が気に入ってくれた点と俺達の想いが決め手となり、娘の名前はクリスで決まった。盗賊のクリスが不要となったのは寂しいが、それでもエリスが偽らないで居られる場所が出来たのだから、俺達はそれを誇りに思うとしよう。

 

※その夜。出産の間に溜まった性欲を発散すべく、再びクリスの身体になって激しい夜を過ごす訳だが、それは当人達と赤ちゃんしか知らない。

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

当初からエリスの居場所を作る話だったので、そしたらクリスの役目は終わりでは?って事で子供の名前はクリスです。

また不定期更新ではありますが、お暇な時にでもお付き合いください。
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