前回のネタで、「運が良いでこうなる?!」ってツッコミを沢山頂きました。ありがとうございます。それこそ私が求めていたリアクションです。
と言うことで調子に乗ってエリスネタ。またお暇な時にでもお付き合いください。
人の運の良し悪しと言うのは、案外自分じゃ解らないものだ。退屈な日常とは平和な日々によりもたらされ、商売の大成は大概誰かを蹴落として成立する。故に大局が見える神って言うのは、幸運な奴がよく分かる訳だが……
「す、すみません……自分はピザを配達してたら突然事故に遭いまして……その後の記憶が無いと言いますか……なんか生きた心地がしないと言いますか……」
「安心してくれ。お前の身体は奇跡的に無事で、きっと明日には目を覚ます。だが、その前にピザを何枚か作ってくれないか?多分、あんたはそのせいで事故に遭ったんだと思うから……」
「……………………貴方は何を言ってるので?」
「……………すまん。詳しくは聞かないでくれ」
運が振り切ってる奴のことは、俺にも良く分からない。だからそんな顔しないでくれ。説明したくても出来ないんだ……
…………………………………
「臨死体験したピザ職人さんが居るなんて、なんか良い時に来ちゃいましたね?」
「そうだな。なんか無性にピザが食べたいって話してたもんな?」
俺達が代理で動いていようと、やはり世界の運用には本職の判断が必要になる。と言うことで定期的に戻って来るカズマの所の三女神だが、そんな時には決まって何かが起こる。今回は罪無きピザ職人が臨死体験をして居るが、実は前回も寿司職人が居た。その時も、確かに同じ会話が聞こえた気がする。
「俺の腕なんて安いもんです!俺の病室で生き別れた家族は再会するし、事故の時に飛び出したピザがミシュ○ン判定員の口に飛び込んで星を貰うし、しかも事故相手が凶悪犯罪者で警察が謝礼まで用意しているって言うので、今から生き返るのが楽しみで!いやぁ、死んでみるもんですよねぇ!」
「それは運が良かったですね。でも、次死ぬのは天寿を全うしてからにしてください。悲しむ方が居ますから」
「そうですね。もう家族も戻ってきましたからね…」
いやそうはならねぇんだよ普通。なんだよ死んでみるものって。これ宝くじの1等当たるより数倍幸運だろ。なんで飛んでったビザがミシュラ○の人へ飛ぶ?それ食って星出すってどんだけ美味いんだ?と言うかそれで星って貰えるのか?凶悪犯と事故ったら謝礼が出るのも聞いたことねぇし、突っ込みだしたらキリがないぞ?
「難しいこと考えてないで、武神様も食べてください。考えて分かるなら、誰も苦労してないと思います……」
「お、おぉ……カズマが言うと説得力あるな……あっ、美味い……これ星出るわ……」
「ありがとうございます!」
エリスの幸運は俺達から見ても未知の部分が多く、実際どんな力か解らない。基本的にエリスの望む未来に誘導する力だと言うが、それだってこの力を利用しようとした天使の研究結果によるものだ。だが事実としてそうなるのだから、それを否定する理由もない。
「ねぇ!私もピザ食べたい!ピザ職人が焼いたピザ食べたい!なんで私だけ仲間外れなの?!」
「アクアはこれから胃カメラ飲むからよ!二日酔いのへべれけで健康診断に来た自分が悪いんだから、今日はもう諦めなさい!」
「今日を逃したら食べられないじゃない?!」
そして、アクアの方は異様に運が悪いと言うか、どっちかと言うと間が悪い。まぁ、こいつの場合は自業自得なんで、あえて突っ込まないでおこう。おつぼ……愛の女神はエリスの力を理解した上で訪ねてきたので、馴れたものだなとは思う。
「そういえば、エリスの神格が高まってるらしいじゃない?もし使い道が無いんなら、伊豆でイケメンにナンパされたいな〜なんて……」
「愛の女神様はご自身のお力でどうぞ。と言いますか、それは私に頼る必要ないですよね?」
「誰とでも縁を結べるから、逆に当たりの確率も低いのよ。イケメンで性格良くて、ついでに生わさび育ててる人と出会えない?」
「どこに特産品求めてるんですか……わさび農家の人に一体どんなイメージを……」
愛の女神が馬鹿丸出しで絡んでいるが、実はエリスの神格が高い状態は好ましくない。何かが起こると決まった訳じゃないのだが、何が起こってもおかしくないのが今の状態だ。それこそ、神が死ぬような事件でさえも……
「さて、書類の整理も終わったので私たちは帰りますが、先輩は肝臓に問題ないって確認してきてくださいね?」
「数値悪かったら禁酒だぞ?」
「あり得ないから!絶対に大丈夫だから!私の子供たちを飲まないでよね!」
「飲まないって。俺が貰った大吟醸あるし……」
「何それズルい!私にも残して!!」
この和気あいあいとした空気を見るに、取り敢えず近場は大丈夫そうだ。それならそれで、今度は世界を見渡さなきゃならない。世界を管理する神様っていうのは、思ったより大変な仕事だ。
……………………………
「それじゃあ諸君!これよりオペレーションEを実行する!世界の危機を見逃すなよ!」
「「「「「「はい!!」」」」」」
天界司令本部作戦指揮エリア。シフト業務を終えた俺は、多くの天使と共にアクセルの監視業務を開始した。エリスにとっての幸運とは結果論に基づいている。つまり、エリスの庇護対象が傷付かなければ、過程や敵対相手に何があったかはどうでも良い。例えば、誰かが世界の危機を打ち倒すことと、世界が常に平和なこと、知らない奴にしたら同じことだが、神として前者は見逃せない。しかし、エリスの幸運が発動すると、勝手に死んでた。とか、何故か改心して勇者になった。なんて事が普通に起きる。普通にあってたまるかそんなもん。相手は世界の危機なんだぞ。
「武神様!元魔王軍のドッペルゲンガーがアクセルに侵入しています!「ふははは!ここで多くの人間の姿を模し、人間同士の関係を悪化させて内政から崩壊させてやるわ!!」と、頭悪く作戦内容を漏らしてました!」
「その頭の悪さは放っておけ!それもどうせエリスの力だ!」
分かりきっていた事だが、やはり俺達の行動さえ加味されての幸運。本来なら、そんなこと独り言で話す訳がないし、それを聞いている存在も居るはずがない。どこまでも都合の良い力だからこそ、あらゆる調査に手が抜けないのだ。逆に調べなかったら何も出ないって可能性もあるが、確証がない以上、そんな無責任なことは出来ない。
「ドッペルゲンガーが銭湯の窓に接近!どうやら、人の裸を再現するつもりのようです!」
「くっ!裸で出歩くだけで人の信用なんざ簡単に地に落ちる……ドッペルゲンガーのやつ、それを分かっていてこんなやり口を……」
と言うかエリス、これでカズマを狙う悪い虫まで追い払おうとかしてないよな?流石にそれは女神的にアウトだぞ……いや、無意識だから何ともいえんのだが……
「おや、まさかこんなタイミングで衛兵が?いや、貴方は………どうやら同士のようですね!」
「ど、同士……だと……」
そうして銭湯の窓を目指すドッペルゲンガーの前に、突如現れたのはアクシズ教の最高責任者。その手にあるのは踏み台のようなので、こいつは間違いなく覗きで現れた事になる。エリスの幸運の中で何故かコイツが無事でいるのは、きっとアクアへの配慮なのだろう。そうでなければ、こんなの野に放っていい人間じゃない。
「貴方も天に昇る湯煙に誘われたのでしょう?この銭湯は覗きが横行して普段は窓を閉めていますからね。こうして湯煙が上がっている時が、窓が開いていてチャンスと言うわけです」
「そ、それはお前みたいなのが沢山いるからなんじゃ……と言うかお前プリーストだよな?流石に覗きは不味いんじゃ無いのか?!」
その通りだよドッペルゲンガー。お前の目の前にいるそいつこそ、アクシズ教の最高責任者であり覗きと盗撮の常習犯のゼスタだ。本当に、なんの冗談かと思うだろうけど……
「違います。女性を邪な目で見ることは覗きですが、慈しみの目で見ればそれは導きです………わかりますね?」
「分からねぇよ。何いってんだお前?」
俺にもさっぱり分からん。と言うか覗きだそれ。心持ちがどうあれ覗きだぞ。
「また貴様か?!この女湯覗きの常習犯が!今度という今度は、マジで実刑にもっていくから覚悟しろよ!」
「馬鹿な!衛兵の見回りが早い?!私のプランは完璧な筈で……あっ!」
コイツもまた根が正直と言うか、欲望にも正直過ぎると言うか、自分の悪事まで漏らしちゃうのが何ともアクアの信徒っぽい。しかし、せめて法律は守れと言う戒律を追加してくれ。いくら素直に生きるとしても、犯罪は流石にアウトだぞ。
「やはりか貴様!今度は仲間まで連れてくるとは、どこまでも懲りない男だな!しかも踏み台まで用意しやがって!」
「なんと言う言い草!!彼が覗きをしようとしていたので、私が止めに入った所で……」
「ふざけんな覗き魔!その手に持った踏み台は一体何だよ!本当にお前プリーストか?!」
それについては俺も同意だ。こいつがプリーストって事に関しちゃ、俺だって信じられないでいる。まぁ、あのアクアの信徒と言われたら、妙に納得もあるんだが……
「違うのです!これは私が教えを説く為の踏み台です!そして、私はプリーストとして、彼の中に住まう悪魔を見たのです!そう、薄汚れた女戦士の身体が、再び女に戻る湯浴みを眺めたいと言う悪魔の囁きが!」
「なんだそのピンポイントな性癖!悪魔を見たと言いながら囁きとか言ってるし、胡散臭いにも程があるぞ?!」
「「そうだそうだ!」」
もはや衛兵までドッペルゲンガーの味方じゃねぇか。お前なんでここに出てきたんだよ?エリスの幸運の中で現れたってのに、お前完全に足手まといじゃねぇか……
「ならば!私が彼の中の悪魔を祓って差し上げましょう!そうすれば、私の話にも信憑性が出るというものでは?」
「ふざけんな!見ず知らずの相手に対悪魔魔法をぶっ放すつもりか?!それで怪我をしたらどうする!」
一瞬良い流れになった気がしたのだが、ゼスタの信用がなさ過ぎてそうはならない。となると、エリスの幸運はここじゃ発動してない可能性もある。となれば、この場は誰かを派遣して……
「と、見せかけて『セイクリッド・エクソシズム』!!」
ペカー
「くっ!こいつ聖魔法を目眩ましに!!」
「貴様本当に聖職者か!」
「ははははは!これもアクア様のお導きで……あれ?」
「あぁーー!!なんだこの威力は!貴様は一体何者なのだ?!」
ガクガク
といった所でまさかの大逆転!馬鹿が鉢合わせてドッペルゲンガーの存在が明らかになりやがった!本当に何でも有りだなエリスの力!
「………ふっ、私はアクシズ教の最高責任者であるゼスタ。そう、貴方のような悪魔を決して許さぬ、アクア様に仕えし正義の使徒!!」キリッ
「いや正義ではないだろ」「覗き未遂の直後に何いってんだコイツ?」
「悪魔ってだけで、覗き魔に悪とか言われたくねぇよ……くっ……」
「だまらっしゃい!!今この状況では私は正義です!」
いや悪だよ。悪対悪の状況だよこれ。
「しかし、ドッペルゲンガーが風呂を覗こうとしたなら話は別だ。街の人間の姿に成り代われば、この街に混乱を招くことも容易だからな!」
「あぁ、裸まで模されたら判別は困難だ。中々考えたじゃねぇか!」
「た、確かに美人の裸を見せられてしまっては、私も冷静さを欠いてしまう!」
「「お前本当にいい加減にしろよ?!」」
相手がドッペルゲンガーだと判明したのに、それでもブレないゼスタのスタンス。ここまで来ると逆に凄いが、事態は何も解決しない。
「良いことを聞いたぞ!丁度私が水浴びしていた所を見た女が居てな!その女の身体なら完全再現可能だ!ほ〜ら、冷静さを欠くが良い!」
シュバッ!
「「「おぉ!!」」」
ゼスタの余計な言葉を聞き、ドッペルゲンガーはその姿を裸の少女へと変えた。そして、偶然にもドッペルゲンガーが出会った少女と言うのが………
「あ、アクセルハーツのシエロさんだと?!」
「くっ!アイドルの生裸なんて、とんでもない背徳感じゃないか!これは俺達も冷静では居られない!」
「こ、この美しさを傷付けるなんて、私には出来ない!」
寄りにもよって寝盗られた女。いやこれにはきっと他意はないはずだ。あったとしても、狙ってやってる訳じゃない。まぁ、女神としてはほぼアウトな気もするが……
「ふはははは!これは中々に気分が良い!そうだお前達、そのプリーストを再起不能になるまでボコボコにしたら、次は青髪の女になってやろう!私にとって1番の脅威はそいつだからな!」
「な、何を馬鹿な!彼らは街を守る衛兵です!私のような罪無き一般人を……ごふっ!」
バキッ!
衛兵の判断が早い!なんの躊躇もなくゼスタを殴り倒したぞ!
「よく考えたら、お前は現行犯なのに逃げようとしてたじゃねぇか!」
「ドッペルゲンガーは確かに脅威だが、お前の方が実害が多くて有害なんだよ!と言うことでこれは正義の鉄槌だ!」
「な、なんと身勝手な!あなた達の正義はそれで良いのですか?!」
どの口が言うんだ覗き野郎。しかし、大義名分を得たとは言えその対応は流石に不味い。2人いるのだから1人ずつ取り押さえるべきだ。それなのに日頃の鬱憤を晴らすかのようにゼスタを狙うなど……気持ちは分からなくもないがよろしくない。
「ははは!良いぞ衛兵共!なら次はこの姿だ。ほ〜ら、こいつが見たかったのだろう?」
「リアちゃん!くぅ偽物だと分かってても可愛い!」
「胸元を隠す所がまたいやらしい!たまらん!!」
「………くっ……プラマイゼロ……むしろプラス……ぐふっ」
お前ら本当にそれでいいのか?!にしたって、またしても不倫相手への変化とは、これ本当に狙ってないんだよな?
「おっと!そんな前屈みでは走れまい!悪いが、最後の一人は私を見つけられたら考えてやろう!さらばだ馬鹿共!」
シュバッ!
「ま、待てドッペルゲンガー!くっ!最後の最後でゼスタになりやがった!」
「クソッ!まだエーリカちゃん見てねぇのに!」
こいつらにいずれ左の大胸筋だけ肥大化する天罰を与えるとして、問題は逃走したドッペルゲンガーだ。ゼスタの姿では誰も近くに寄らないので、このままじゃ間違いなく逃げられる。だが、一目でドッペルゲンガーを見抜ける奴なんて、女神連中くらいしか……
ドンッ
「おっと!すみませんね、お嬢さん。お怪我はないですか?」
「あっ、はい……私は大丈夫で……へっ?!」
いや居たわ。そういえば、男性と無性を本能で嗅ぎ分ける奴が居たわ。さっき裸を晒されて、殴っておきたいであろう張本人が……
「し、シエロさん!そいつはドッペルゲンガーです!出来れば取り押さえてください!」
「な、何を馬鹿な!そう言うあいつらこそドッペルゲンガーですよシエロさん!仕事で魔力切れを起こした私を狙って……ごふぅ!!」
メキッ
馴れ馴れしくシエロに助けを求めたドッペルゲンガーは、その顔面をひしゃげて宙を舞った。男に触れられないシエロにとっちゃ、ゼスタを殴らないなんて違和感しか感じないはずだ。そこら辺の調査を怠ったのが、多分こいつの敗因である。
「触れた時の不快感が少ないので、貴方は偽物です!」
その見分け方は流石にゼスタが可哀想だろ。でも、これで状況は好転した。後はコイツが祓われてくれれば、俺たちとしては言う事はない。
「くそっ!プリーストの癖になんて物理火力してやがる!だが、ぶっ飛ばしてくれたお陰で距離が取れたぜ!俺はこのまま逃げさせて貰う!」
ガクガク
「くっ!浅かったですか!」
いや膝に来てるから間違いなく深かったろ。と言うか、その足取りで逃げられないだろ?
「お、追いつきましたよドッペルゲンガー!さぁ、次はエーリカさんの裸を!」
「おっと!良いところに来たな死に損ない!お前が居れば……『カースドライトニング』!」
バシュッ!
「なっ?!」
最低の理由で追いかけて来たゼスタの前で、ドッペルゲンガーは魔法を地面へと放った。それにより砂ぼこりが大きく舞い上がり、2人のどちらが本物か分からない状態だ。これでは下手に攻撃出来ないし、不用意に近付けば危険もある。中々知恵を使うなコイツ。
「ふっ!甘く見ましたねドッペルゲンガー!私はかまいません!さぁシエロさん!2人まとめてやるのです!」
「なっ?!偽物の癖に馬鹿なことをシエロさんがそんなこと出来ないと知って!」
確かに心優しいシエロなら、罪無き人を殴れないだろう。と言う心理を突いたとすれば、間違いなくこのドッペルゲンガーは有能だ。ただ、1つ勘違いがあるとしたら……
「さぁ、シエロさん!私に構わ……」
「鉄拳制裁!!」
メキッ!
「「ごふぁ!!」」
罪人に化けたら駄目だろその作戦。二人共殴れば話は終わりだぞ。
「ちょっ!本当に情け容赦が……ぐふっ!」
「き、貴様!こいつは仲間じゃ……あがっ!」
「すみません!どっちが偽物か分からないので!!」
バキッ!ゴリッ!
いやお前は触れば判るだろ?!さっきそれで判別してたじゃねぇか!
「くっ……ま、まさかこんな馬鹿な理由で……こんな駆け出しの街でぇ!!」
シュー
「やりました!私も自己犠牲精神を発揮した甲斐が……ごふぅ!ちょっとシエロさ……がふぅ!」
ガクッ
「あっ……やり過ぎちゃった……」
遂にダメージが限界を超え、ドッペルゲンガーの身体が霧散を始める。変態と奇人のコンボに救われるとは思わなかったが、一応これで街の危機は去った。エリスの幸運にしてはショボかったと言うか、なんかアクセルじゃ日常風景だったような気もするが、街の危機が去ったのなら贅沢は言うまい。実際の幸運なんてこんなもの。悪人しか傷付いて居ないのであれば、エリスにとっては幸運なのだ。まぁ、ちょっと女神として微妙な部分もあるが……
「武神様!アクセル南方に武装勢力を確認!女神エリスを奪還し、国力強化を図っている危険思想国家です!」
「あ、アクセル北方にも国家手配の盗賊団が!」
「何だと?!そんな大規模な軍隊が2つ同時に?!」
一応覚悟はしていたのだが、どうやら最悪のシナリオが始まってしまったようだ。エリスの幸運は、国家滅亡を都市滅亡にまで軽減する可能性も示唆された。アクセルは王国においては大した価値を持たない為、結果論で言えばこの事態は幸運なのだ。しかし、数年後の大波乱を今の小さな波乱に変えた所で、戦争を起こしてしまう事に変わりはない。それに備えようと監視を続けていたと言うのに、まさかここまでの規模になるなんて……
「わ、我々の介入は?!武神様が降臨して止める事は可能なのですか?!」
「駄目だ。国家レベルの戦争に介入すれば、俺達の神格が剥奪されかねん。エリスの身柄とベルゼルグ王国の存続を優先し、可能な限りの人を逃がすしかない……」
「そんな?!」
だが、それでもきっと幸運だった。この規模の軍が同時に王都を攻めていたなら、不安定になった国の方が他国に落とされていただろう。しかし、それでもエリスは泣いてしまう。自分の力で起きた戦争だと、もし自覚してしまったら……
「女神エリスを奪還せよ!我らの前に立ちはだかる者は、全て薙ぎ払って進め!!」
「そこの者邪魔だ!死にたくなければ道を空けろ!!」
そして、南方の騎兵の目と鼻の先、子連れの青年がその前に立った。いくらベルゼルグが平和な国家とは言え、それはあくまで他国との比較。中世程度の国家であれば、こういった死者は少なくない。すまない若者よ。君は本当に運が悪かっただけなんだ。せめて、次は日本と言う国家で安全に生涯を終えてくれ。今の俺に出来ることは、死んだあとのフォローくらいなんだ。
「あァン?!」
ダァン……ぐしゃ!
生々しく生き物が跳ね上げられるような。まるで交通事故でもあったかのような音。跳ね上げられた一人の人間が、そのまま地面へと激突する。だが、少々不可解な事が1つ。それは、何故か武装した騎兵の方が、地面に叩きつけられていると言う事実だ。
「人をいきなり馬ではねようたァ……お前らには常識はねェのかァ?それとも、コレがこの世界の追い剥ぎって奴ですかァ?!」
「ゆ、弓騎兵狙え!接近すれば謎の術を使うぞ!距離を置いたまま殺せ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
シュパッ!
「チッ!!めんどくせェなァ!」
カチッ……キィン
「ぐふっ……な、何故……こんな……」「我々の腕に矢が……」「間違いなく当たった筈なのに…」
謎の聞き慣れない音が響くと、何故か次々と落馬する弓騎兵達。俺の目には矢の動きが見えていたのだが、それでも何故かとしか言いようがない。当たった矢が180ターンするなんて、どうやっても説明なんて出来る筈が無い。
「あ、あれは……あらゆるベクトルを自在に操る力を持つ、学園都市に7人しか居ないレベル5の超能力者の頂点、『一方通行』(アクセラレータ)です!」
「いや何でこのタイミングでそんなのが居る?!こっちとしちゃ好都合だが、突然訪ねてくる相手じゃないだろう?!」
「ファンタスティックデイズでコラボして以来、時折手土産を持って訪ねてくるそうです!なんでも、「こっちじゃ俺を狙うバカが居ねェからなァ……長期休暇んときゃァ、このガキ共々世話になるわァ……」だそうで!」
「育児と仕事に疲れ切ったサラリーマンか?!いや立場的にそうなのかも知れんが、だからってこんな窮地にそんな奴来るか?!」
もう何なんだよエリスの力は!本当に何でも有りか?!
「ほ、北方に今度はアンデッドの軍勢!あっ、いやこれは……友軍!!魔導王アインズ・ウール・ゴウンの軍隊です!!」
「そら来た!なんかそんな予感してたわ!むしろそっちが先だろ普通!」
軍隊持ってる仲間なんてアイツくらいだし、何となく来るような気はしてたんだよ!あの骨実は仲間想いだし!
「ち、ちなみにですが……アインズ様はカズマ様に貰ったポケ○ンを持ってきており、交換進化したいからと尋ねたようでして……」
「来た理由ゲームかよ?!何処まで都合が良いんだエリスの力は!」
「あっ、敵対組織殲滅完了です……アクセルの危機は警報も鳴らずに解決しました……」
正直覚悟はしていのだが、やはり今回も徒労におわった。いや良いんだ。何事も無ければ本当にそれで、なんか凄く疲れたけど、皆が平和なら別に良いんだ。
「………よし諸君。今日はもうあがって良いぞ。後は俺だけで十分だ。なんというかその……ゆっくり休んでくれ……」
その夜。大量の色違いポ○モンを手にした連中の笑い声を聞きながら、俺は1人ビールを呑んでいた。そのビールの味は、何故かいつもより苦い気がしたのだが、その理由は今でも上手く言語化出来ないでいる。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
ファンタスティックデイズ起動したらセロリさんが居て思い付いたオチです。ちなみに、とあるも全話見てますが、あんなカッコいい作品は書けないのでネタにして終わりです。
また不定期ではありますが、お暇な時にでもお付き合いください。