本当は胸の弾みだけで判別できるおっぱいマイスターカズマをやろうと思っていたけど、おっぱいデストロイヤーエリスになりました。
次はちゃんと見破るので、このまま引き続きお付き合いください。
コンプレックス。それは誰もが抱える劣等感の総称。一見して完璧に見える女神でさえ、はたまた伝説級のグラマー美人リッチーでさえ、その束縛からは逃れられない。それが女性特有のデリケートな話となれば、我を失っても仕方がない。
「ご、ごめんなさい……本当にその頭に血が上ってて…運動不足なのは自覚してるから、やっぱり緩いのかなって心配に……」
「なら俺を焼く前に運動してくれない?」
「私も深く反省しています……ですがその……やっぱりアンデッドなので加齢臭と言うか……腐敗臭が気になってしまうと言いますか………」
「流石に腐敗臭は気付くだろ……」
ウォルバクとウィズの暴走により、俺は致命的なダメージを受けた。と言っても、この2人が本気なら即死していただろうから、何だかんだ言っても威力は半殺し用に抑えていたのだろう。それでも2人同時に命中させられてしまっては、結局ほぼ全殺しである。エリスのヒールが無きゃ死んでいた。
「半殺しを2回で完全に死ぬのか、それとも半分殺してから更に半分殺して、1/4生き残るのか……長年の疑問だったけど、半殺しの技の威力が減るわけじゃないから、やっぱり死ぬが正解なんだね」
「確かに結果はそうなったけども、その発見は今じゃなくて良くない?」
俺が死にかけてもマイペースとは、あるえも悪い意味でうちの家族の一員になったと思う。一応俺だって人並みに傷付くので、こういう時は優しくして欲しい。
「それでその……私達も反省しているので、そろそろ解放して貰えないかな〜って…」
「流石に手を縛られているのは、段々きつくなってきてまして……」
ちなみに暴走した2人については、現在手を縛って拘束している。本来は無効化する為にセレナが行った事だが、今や目的はそれだけではない。
「ゆんゆん………ウォルバクのパンツ脱がしてくれる?」
「…………へっ?」
そう、このデリケートな問題はまだ、決して終わっていないのだ。
「本気で悪いと思ってるから!だからこんな場所はそう言うのは辞めて!と言うかゆんゆんも従わないで!」
「すみませんウォルバクさん……カズマさんが言うので!」
「どういうことなの?!すっごい目がキラキラしてるんだけど?!あっ、こらパンツ返してよ〜!」
今回の暴走の根本原因は、なんと言ってもウォルバクのコンプレックス。アソコが緩いと言う勘違いが無ければ、そもそもあんな暴走はしていない。となればやるべき事は1つ。ウォルバクの締まりチェックである。
「ウォルバクは決して緩くないが、俺が言ったら気遣いかも知れない。だから、ここは第三者のゆんゆんに判定して貰って、自信を取り戻して貰おうと思う」
「成程!とても合理的ですね!」
「何処ら辺が?!敵地でパンツ脱がされてる状況の、一体何処に合理性があると言うのよ!これ絶対に腹いせよね?!」
そりゃ多少の怒りは確かにあるが、それだけでこんな面倒な事はしない。妻の悩みに寄り添うのは、優しい旦那なら当然である。そして、その解決法がエッチな方法であるのなら、やらない理由は何処にもない。
「同じ理由でまた暴走されても困るだろ?だから、不安の芽は直ぐに摘む方が良いんだよ。じゃ、ゆんゆんよろしく」
「はい。指の殺菌もしたので、さっそく失礼します!」
「だ、だめ……指が…入って来ちゃ……あっ!」
くちゅ
僅かに濡れたウォルバクの割れ目へ、ゆんゆんの指がゆっくりと挿入っていく。状況的にみればありえないプレイだが、ここに居るのはほぼ全員がお楽しみ済みで、更にはウォルバクの暴走がどれだけ危険かを知っている。と言う大義名分さえあれば、止めずに見てても怒られない。と、エッチな皆は知っている。
「凄い。私の指一本にこんなに絡むなんて、こんなの絶対に気持ち良いですよ。それにとっても濡れやすいみたいですし、こんなの悩む必要ありますか?」
「うぅ……分かったからもう辞めて……教え子の指でこんなになるの……流石に恥ずかし過ぎるからぁ…」
ゆんゆんの指でじっくりと探られたウォルバクは、そのあまりの羞恥に泣きそうになっている。俺には寛容で割と何でも許してくれるので、こういう顔はとても貴重だ。
「さて、それじゃあウィズの方だけど……別に準備は要らないな?」
「へっ……あっ、私のパンツ?!」
ウォルバクを見てモジモジしていたウィズについては、しれっとパンツをスティールしておいた。ウィズの場合は匂いが気になるそうなので、こちらもゆんゆんで試そうと思う。このままゆんゆんを自由にさせていると、ウォルバクがゆんゆんに寝取られてしまう。
「それじゃ、熱中してるゆんゆんの顔にこれを……」
もふっ
「な、何してるんですかカズマさん?!」
「す〜、は〜、す〜〜〜〜〜〜…」
「あぁ!ゆんゆんさんも嗅がないでください!!」
ウィズのパンツを顔に押し当てられたゆんゆんは、その瞬間に動きを止めた。それでも呼吸音は聞こえているので、多分その匂い味わっているのだろう。なんてことを考えていたら、ゆんゆんがゆっくりと振り返った。
「カズマさん……私もウィズさんに倣ってエッチーになります!」
「リッチーですよ?!」
いやエッチーだろ。少なくともウィズはエッチーだろ。と言うか、エッチーなのはゆんゆんもだろ。
「な、なんですかこの優しくて甘くていやらしい匂いは?!人の身体でも匂いの原因が色々とあるのに、ウィズさんのパンツは良い匂いしかしません!やっぱりリッチーだからですか?!」
「知りませんよ!というか、そんなの熱く語らないでください!私にだって羞恥心はあるんですよ?!」
ウィズは凄く恥ずかしそうだが、少なくともこれで悩みは無くなった事だろう。ウィズの身体は魔力で出来ているので、実は代謝と言うものが殆ど無い。それでも洗濯と入浴を欠かさないので、常に石鹸の良い匂いがする訳だ。それなのに匂いが気になるだなんて、実に無駄な悩みである。
…………………………
「さて、千里眼ではここが最深部になる訳だが……なんか俺たち、出遅れてる?」
「「「「「誰のせいだと思ってます?!」」」」」
遂に辿り着いたダンジョンの最深部、そこには苛烈な戦いの後が残されていた。と言ってもここは未踏のダンジョン。戦ったのは間違いなく、うちのパーティーの誰かである。まぁ、具体的にはダクネスだろう。地面に切り傷が出来る状況など、ぶっちゃけダクネス以外ありえない。それと、たぶんめぐみんとアクアも居た。空き瓶とおにぎりの包みが落ちているので、多分戦力にもならず捕まったのだろう。正直ちょっと悪いと思う。
「ちょっと待ってくれ。まるで俺が全部悪いみたいなリアクションだが、ゆんゆんの手で我慢出来なくなったのはウォルバクだろ?」
「べ、別に私は誘ってないでしょ?!初めたのはウィズだもの!」
「わ、私だって誘ってないです!ちょっとチラチラって見ただけで……」
「あんな目で見ておいて無罪はないでしょ?!」
この状況からお察しの事と思うが、俺達はあの後も結局ヤッた。ウィズとウォルバクの痴態を前に、健全な男子が我慢など出来る筈がない。その結果完全に出遅れてしまい、今に至ると言う訳である。
「ふっ、随分と遅かったなサトウカズマ」
「なっ?!いつの間にそこに?!」
そんな緊張感のない俺達の元へ、突如現れた見知らぬ男。その存在感はまるで大魔導士そのもので、少なくとも人の領域では収まらない。まぁ、うちのチート揃いのメンツからすると、ちょっと凄いくらいになるのだが……
「私は大魔導士ディクス。デストロイヤーで滅んだ魔導王国、その最後の国王である!」
「自分で大魔導士とか言うんだ……」
「と言うか滅ぼされた側がドヤ顔って……」
「今はそこじゃないだろ?!なんでそんなのが生きてんだよ!」
そりゃ気持ちは分かるけども!敵じゃなきゃ俺だって突っ込んでいるけども!
「亡国の王だと侮ると、少々痛い目をみるぞ!」
「不味い!皆構えろ!!」
王と名乗った男の身体から、突然に魔力が溢れ出てくる。それだけなら多分押し返せるが、この魔力の感じは……
「に、偽物が床から大量に?!」
「人海戦術で来やがった!お前ら、偽物だと確信のある相手にだけ魔法を放て!判別が難しいのは俺かセレナが対応する!」
何度も出会ったクレイゴーレムが、ここに来て大量に現れた。しかも魔力の薄い粗悪品でなく、明らかに戦闘用の魔力量だ。こんなのいちいち相手をしていたら、先ず間違いなく勝ち目なんて無い。
「それで捌ききれるかな?仲間のクルセイダーも随分と粘ったが、最後は仲間を見失い武器を捨てたぞ!自分の剣で傷付けられないとな!」
「くっ!やっぱりダクネス達がやられていたのか!」
どうせ剣を持ってても当てられない癖に、変な所で格好つけやがって!
「さぁ、我が眷属の力にひれ伏すが……」
「『ライト・オブ・セイバー』!」
「『インフェルノ』!」
「『カースド・クリスタルプリズン』!」
「『トルネード』!」
「良いぞ!出て来てる最中に潰せば何も出来ねぇ!即時土塊に戻してやれ!近くの敵はあたしが物理的に潰す!」
「おい待て!流石にそれはズルくないか?!出待ち狩りは人として最低だぞ!あっこら!まだ頭しか完成してない個体まで!」
普通ならゴーレムの群れに囲まれ、相手の魔法に防戦一方になるのがお約束だが、こっちはリッチーと女神と紅魔族。普通に魔力で殴り合った場合、たぶん軍隊にだって拮抗する。
「とは言え、こちらは地脈から吸い上げるほぼ無限のリソース!いくら高い魔力を持っていようが、消耗戦になればこちらが……」
「じゃあ、『ディスペル』」
「おいふざけるな!それはいくら何でもズルいだろぉ!!」
………………………
「さて、聞きたいことは色々とあるが、あんなのでも大切な仲間。先ずはうちの仲間を解放して貰おうか?」
どれだけ偉大な魔法使いでも、魔法が使えなきゃただの人。俺達は魔法を封じられた王様を縛り上げ、更に持ち物も取り上げた。これでお互いに攻撃は出来ないので、ある意味理想的な解決である。
「くっ!セックスして時間浪費してた奴の台詞とは思えないが、負けた以上は仕方あるまい……そっちの部屋に捕らえてある」
「えっ、なんで知ってんの?このダンジョンの監視システムどうなってんだよ?!」
「ダンジョンでセックスする奴にどうなってんだとか言われたくないんだが?」
「くっ!それは確かにその通り!」
的確に刺客を送ってきた辺り、それなりに監視されている気はしていた。しかし、まさかやってる所までバレているとは、流石は魔導王国の国王。魔法の腕はかなりのものらしい。
「それと、天界の叡智の書がここにあるって話なんだけど、それについても知ってることを話して貰うぞ。俺達の目的はそれだから、それさえ渡せば危害を加えるつもりは……」
「やはり私が目的だったか……」
「えっ、この短時間で耄碌した?」
「お前らさっきから失礼が過ぎるぞ?!」
このダンジョン唯一の話が出来そうな相手は、残念ながらいつも通りのポンコツだった。別に期待していた訳では無いのだが、登場がラスボスっぽかったので、なんか裏切られた気分である。
「いえ、彼の言っている事は間違ってません。私達が求めていた叡智の書は、まさに彼そのものです」
「本当かエリス?!こんな薄汚いおっさんが?!」
「遂にお前も礼節を投げ捨てたな?!」
しかし、確かにこんな場所に1人でいるなんて、普通の人間ではありえない。リッチーとかの可能性は考えていたが、まさかそもそも人間じゃないなんて……
「ふっ、そんなに気になるなら語ってやろう。人格を持つただの本だった私が、どうして人となりこんな場所に居るのかを!」
「あっ、こっから語り入るんだ……」
と言うか人格ある段階でただの本じゃねぇだろ。突っ込んだらきりが無いから、流石に今は言わねぇけど……
………………………
「相棒の転生者に恋心を抱いていて……」
「大魔法を駆使して人の肉体を手に入れたのに……」
「ぽっと出の美女に掻っ攫われたと……」
「「「「「成程、辛い」」」」」
「おい!私の人生を3行にまとめるな!途中で茶会まで初めておいて、流石にそれはあんまりじゃないのか?!」
神器の話をまとめてみたら、まさかの痴情のもつれが原因だった。どっかのロリコン鎧もそうだったが、神器に人格は持たせちゃ駄目だと思う。
「冒険の前半はまだ良かったんだ……身体は本だけど、なんて言うかスライムの脳内にいる賢者みたいな感じで通じ合ってたし……」
「まぁ、確かに大賢者ってリムルの生命線だよな。スキルのシステムとかアイツ頼りみたいだし……仲が良いかはちょい疑問だけど……」
「あ、コラボしたから名前が出せるんですね……」
だが、どれだけ相棒として優秀だとしても、そこから恋に発展するかと言われたら話は別だ。信頼関係がどれだけあろうと、恋愛とはまたベクトルが違う。俺からしたらセナさんとか、多分天使もそれに該当する。何よりコイツの名前だって、辞書って意味のDictionaryから取ってるらしいしな。
「だが、それで諦める私ではない!相棒とは袂を分かつ事になったが、それでも私の愛は不滅!威厳のあるおっさんボディで王選に挑み勝ったのも、デストロイヤーで世界の魔法を手にしようとしたのも、王国滅亡後にこうして研究を続けているのも、全ては愛のなせる業!いつか理想の可愛い女型ボディを手に入れ、あの人の子孫と一線を超える為!ついでに私から彼を寝取ったあいつの姿は、複製しまくってそこら辺で野糞させまくってやる!」
「それで記憶からゴーレムを作るなんて高度な魔法を……」
「頭オカシイのに優秀なのが、神々のアイテムの質の悪さだよな……」
「しっかり王選で勝ってるあたり、多分真面目で努力家なんでしょうね……」
「その目的がアレだけどね……」
しかし、あらゆる情報を記録、閲覧できるなら、そもそも理想のボディだって作れそうなもの。一体何故ここまでやる必要があったのだろうか……
「ちなみに振られた原因は分かっているのか?相手の理想を解析出来るなら、そうそう負ける事は無いと思うんだが………」
「分からないから理想のボディを作っているんだろうが!私だって万全を尽くした!彼の最も愛する人の姿を模倣し、男子の喜ぶシチュエーションで告白もした!それでも嫌悪感を持たれて振られたんだ!」
まさかそこまでやって振られるなんて、一体何が不満だと言うのだろう。異性として見られないと言う懸念はありそうだが、それでも嫌悪感まで抱かれるなんて、いくら何でも不憫過ぎる。まぁ、俺も天使には近い感想を持ちそうだが、勃たなかったとしても嫌悪感は……多分無いと思う。
「何故なんだ……最も大切な異性である母親の姿を模したのに……ちゃんと裸エプロンで迫ったのに……どうして嫌悪感を持たれなきゃならないんだ!!」
「そりゃ嫌悪感しかねぇよ馬鹿!なんだそのトラウマになる告白は!」
ちょっとは同情の余地があるかと思えば、やらかしていたのはむしろこっち側。そんな罰ゲームみたいな告白されたら、嫌悪感どころかトラウマになる。
「何故だ!あいつの最も大切な女性であり、誰よりも特別な存在だぞ!エッチな告白されたら嬉しいだろう?!」
「特別の方向性が違うんだよ!実の母親の裸エプロンとか、一体どんな罰ゲームだよ!」
しかし、それならそれで話は早い。同情の余地があると封印し難いが、こいつはもう即封印で良いだろう。正直この迷惑神器は、シンプルに有害だと思う。
「エリス、ディスペルを解くから封印してくれ。こいつはもう色々と駄目だ」
「分かりました」
俺はディスペルの魔法を解除して、後の始末をエリスに託した。普通に攻略したら危険なダンジョンだったのだろうが、今回は相手が悪かったな。
「なんて、この瞬間を待っていたぞ!」
どろっ
「か、身体が溶けて逃げていきます!」
「しまった!あいつの身体もクレイゴーレムか?!」
勝利を確信して油断した瞬間、おっさんの身体が泥となって逃げていく。泥の上には分厚い本が置かれているので、多分アレがアイツの本体なのだろう。本当に、最後の最後まで手を焼かせてくれる。
「入口の方から大群が来てる!こいつ、あたしらを確実に殺す気でいやがる!」
「ははははは!存在がバレた以上、生かして逃がす筈がないだろう!そして、この先にいるのは完全スキャンが終わった娘たち!成り代わりNTRを狙っていた私なら、完璧なコピーが可能と言うわけだ!さぁ、苦悩の中で朽ち果てるが良い!」
「くそっ!お前が選ばれないのそういう所だと思うぞ!」
バンッ!
溶けた泥の身体を追いかけた先、鉄の扉を勢い良く開け放つ。そこには囚われのダクネスが居る訳だが……
「か、カズマ!さっきコイツが部屋に飛び込んで来たんだ!そうしたら突然私の姿に変わって……」
「何を言うんだ偽物!私の身体を模したのはお前の方だろう!」
予想通り、偽物も居るので2人居る訳だ。
「くっ……NTR用完全スキャンだけあって、マジで偽物が判断できねぇ……」
「それが凄いのかは分かりませんが、確かにこれは難解ですね……」
現れた2人のダクネスの姿は、どちらも本物にしか見えない。俺とエリスでも混乱するのだから、多分他の皆では話にもならない。
「後ろからくる偽物は私達が何とかします!だから、カズマさんとエリスさんはダクネスさんを!」
「なるべく早くお願いね!私達の魔力にも限度があるわ!」
魔法使いの皆が足止めに走ってくれたが、正直長くは保たないだろう。ウィズとウォルバクの暴走の件もあり、皆の魔力は消耗している。だから、俺達は一刻も早く偽物を割り出さなきゃいけないのだが……
「成程、危機的状況なのは理解できた。なら、そのダガーで私の身体を貫くが良い。これで私から血が流れたら、そっちの偽物を倒せば終わる。それに、万が一私が死んだとしても、仲間達は守れるからな……」
「ダクネス……」
「お、おい待て!私だってそれくらいの覚悟はあるぞ!本当だぞ!」
状況的には、これを先に言えるのはクルセイダーっぽいのだが、とは言え偽物もそれを考えるだろう。しかし、今は考える時間も惜しい状態だ。となれば……
「すまないダクネス!」
ドスッ
「ぐっ!」
「ダクネス?!」
腹部に刺さったダガーを伝う、温かくて真っ赤な鮮血。痛々しく歪んだダクネスの顔に、エリスの表情にも陰りが見える。でも、これで偽物は判別できた。
「どうだカズマ……これで……私が本物だと……」
「ふっ!」
ドシュ
「がはっ!な、なぜ……こんな……」
俺はダガーを更に深く刺し、そのまま胸元まで刃を滑らせた。顔に飛び散る鮮血を浴びながら、それでも刃に力を込める。そう、偽物は間違いなくコッチだからだ。
「舐めんなよ偽物……うちのダクネスは、こんなダガーは2ミリも刺さんねぇんだよ!!カッチカチだからな!」
「んなっ?!」
「あっ、言われてみれば確かに……」
「おい待て!もっと他に判断方法あっただろ?!私だってカズマの妻なんだぞ?!」
そりゃ頑張って考えればあったかも知れないが、正直これが一番早い。どれだけ高度な魔法であろうと、ダクネスの硬さは再現出来る筈がない。ウォルバクとウィズの防御魔法より硬い腹筋など、他に存在するとも思えない。
「まだだ!まだこの先に2人いる!」
「もう諦めろクソ神器!お前がどんなに偽物を生み出そうと、俺達を欺くなんてできっこない!」
「えぇ!判別理由はアレですけど、私達は騙されませんよ!」
バタンッ!
「「「んん!」」」
そして飛び込んだ最後の部屋には、2人のめぐみんとアクアが居た。全員の口が縛られているが、恐らくこれも罠なのだろう。万が一偽物を助けようとすれば、そこで不意打ちを入れるつもりなのだ。これは中々に厄介な方法を使ってくれる。後ろに敵が迫っていると言うのに、時間のかかる方法を……
「ぷはっ!カズマさん!エリス!本物のめぐみんは左よ!さっき泥人形がそっちに化けたわ!高度な変装をしてるみたいだけど、私の脱出マジックは想定外だったようね!」
「んんーー?!」
そんな危機的な状況の中、アクアから重要な情報が得られた。となれば、左のめぐみんが偽物と言うことになる訳だが……
「分かりましたアクア先輩!左のめぐみんさんに魔法を……」
「そいっ!」
ガッ!
「ごふっ!」
「えっ、なんでアクア先輩を?!」
俺はアクアの寄越した綺麗な石を、縛られたアクアに投げ付けた。一応弁明しておくと、俺の後頭部で割れて小さくなった奴であり、ぶつけてもめっちゃ痛いくらいのサイズである。
「な、何故私が偽物だと気付いた?!普通なら2人居る方を疑う筈では……」
「…………長年連れ添った仲間だから?」
「お前普通に女神を狙って攻撃したな?!」
いや、だってこの状況はアクアのせいだし?今なら「偽物だと思った!」って言い訳できるじゃん?
「なにはともあれ正体を明かしましたね!『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」
カッ!
「くっ……私の野望が……こんな……ところで……」
ドォーン!
………………………………
「はぁ……結局神器は破壊しちゃったし、今回は収穫無しで終わりか〜」
エリスの魔法が直撃し、叡智の書はバラバラの紙くずになってしまった。知られたくない秘密は守れたが、あんな苦労して収穫無しでは、いくら何でも割に合わない。
「でも、私には収穫があった気がするわ。エリスが私やウィズを即見抜けるなんて、意外と可愛い所あるじゃない?」
「ソウデスネ」
エリスの見破り方は置いておくとして、実際に今回はいい経験だったのは間違いない。微妙に異なる発音のアクセントやら、歩き方の僅かな違い。そして視線の動かし方に至るまで、俺は案外覚えていた。もしまたドッペルゲンガーに襲われたとしても、皆ならきっと見抜けるだろう。それを言うのは小っ恥ずかしいので、今はあえて黙っておくが…
「あれ?そう言えば本物のアクアは……」
「そう言えば見てませんね。あのダンジョンに残っているのは、何故か崩壊しなかった私の偽物だけで………」
「「「「「「「「………………あっ」」」」」」」」
その後、めぐみん型の泥に包まれたアクアが発見されたのは、ダンジョン攻略の翌日だった。それからアクアはマトリョーシカを見ると怯えるようになったのだが、それはまた別のお話である。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
リアルが忙しくて更新遅くなりました。
まだまだ消えるつもりはないので、引き続きお付き合い頂けたら有り難いです。
また不定期更新ではございますが、お暇な時にでもお付き合いください。