絡むのはいつもリアなのでヒロイン感の少ないエーリカ。しかし、可愛い女子がデレて嫌な男子は居ないので、しっかりここらでデレて頂きましょう。
またお暇な時にでもお付き合いください。
貴族令嬢。それは絢爛豪華な貴族界の華。手入れの行き届いた身体に華美なドレス、家名を象徴するその立ち姿は、まさに女の子が憧れるお姫様さながら。そんな華々の中で今最も輝いているのが………
「ごめんね……ご飯を作るの知らなくて、おにぎりとお味噌汁しか出来なくて……」
「仕方ないわね!エリカさんの事だから許しますわ!」
「えぇ、そういう事もありますよ!」
「可愛いから良い!」
「むしろおにぎりが良い!」
昨日と変わらずエーリカである。ちなみにクレアはと言うと……
「くっ……歩けるギリギリとは聞いていたが、まさかこんなにも歩けないなんてぇ……」
ガクガク
「情けないですよクレア。それでもアイリス様の護衛ですか?」
ツヤツヤ
俺の作ったお弁当を、か弱いを超えて老婆の足腰になって運んでいる。この光景を見たら俺がやり過ぎたように見えるかも知れないが……
「全く、こんなになるまで求めるだなんて、クレアは卑しい女ですね?」
「レインが目の前で見せ付けるからだろ?!これ見よがしに甘々子作りして、私だって……女なんだからな……」
と言うことなので、俺は一切悪くないと思う。少々遅れての参加にはなったが、一応参加は出来たわけだし、悪いとしてもギリセーフだ。
「み、皆さん。良ければ私のも食べてみて頂けますか?」
「これはこれはカr…クレア様。良ければ寸胴をお持ちしま……おや、今回はお重なのですか?」
「おい、あの貴族今カレーって言わなかったか?」
「いつもカレーを振る舞う以外に何もしないので、遂に外でもカレーの妖精に……」
「なっ!貴殿は私をそんな目で?!」
そもそも貴族の見合いでカレー作るだけの奴がおかしいのだが、そう呼ばれる自分を顧みるつもりは無いようだ。一応手作りではあるし、手料理を振る舞っているとか言ってるんだろう。それが朝からカツカレーだなんて、いくら何でも予想出来ない。
「ち、違います!今日も可憐だなと口に出てしまっただけで……」
「可憐ですか?」
「咄嗟に誤魔化すにしても可憐はなぁ……」
「おい、お前ら後で覚えておけよ?」
普段なら胸ぐら掴まれそうなこの状況でも、腰砕けのクレアは文句しか言えない。ちょっぴり言葉は乱暴だが、これなら充分に可愛い令嬢に見える。まぁ、夜は普段からこれなんですけど、それはまた別の一面だしな。
「と、取り敢えずお弁当を広げましょう。クレア様が作る食事は美味しいですから、きっと皆喜びます」
「あ、ありがとうございます。では、これを……」
プルプル
クレアの飯が美味いと言うより、俺の作ったルーが美味いだけだと思う。しかし、それでも料理上手と思われているなら好都合だ。クソ下手だと思われている場合、そもそも弁当の信憑性がなくなってしまう。
「えっ?お重に手が震えているのですか?!それ程の重量物がそこに?!」
「違います!これは疲労によるもので……」
「あぁ成程。料理に寸胴を使っての疲労が……」
「ちょっとカレーから離れませんか?!」
あっ、やっぱり駄目かも。これじゃ料理上手って言うかカレーの人だ。これで普通の弁当を見て納得して貰えなかったら、そもそもこの作戦は失敗に終わる。
「クレアさんは元々アイリス様の側付きを任されるほどの才女です。今までカレーばかり作っていたのも、きっとより多くの方の空腹を満たすためでしょう。ですから、こうして本気で食事を作れば、かなりの物が期待できます」
「み、ミツルギ殿……」
なんだこれNTRか?今のフォローは正直助かったが、もしミツルギがクレアを狙う気なら、クレアのドスケベセック◯ビデオ送り付けて心を折るからな!
※それは寝取った側のやることです。
「成程、では早速……おや?」
「これはまた……」
「意外と普通ですのね?」
貴族の連中がお重を広げれば、そこから出てきたのは素朴なお弁当。玉子焼きや唐揚げといった、定番のラインナップが並んでいる。
「でも、こういうシンプルなお弁当の方が、この場には相応しいですよ。ここには結婚相手を探しに来たので、こういう一面を知れるのが一番有り難いですから……あむっ」
パァン!
「「「「「「「「「………えっ?」」」」」」」」」
などと笑顔で唐揚げを食べたミツルギは、突如として全裸にされ立ち尽くしている。その顔は混乱と焦りが入り混じり、強いて言うならPKを外したエースストライカーって感じだ。
「こ、これはまさか!究極の美食でしか再現されないOHAGIKEではありませんか?!」
「あ、あの伝説の?!」
「まさかクレア様がその領域だなんて……」
「なんてことだ!妻としてどころか、シェフとしても超一流ではないですか!」
だが、その余りに突拍子のない状況も、貴族達なら聞いたことがある筈だ。そう、これは美食を追求し続けた転生者の技。美食スキルを最大まで強化した者が全力で腕を振るった時に現れる究極奥義である。その技を持つシェフが現れたとなれば、各国のスカウトが動くとか何とか。ちなみにこの技を開発した当人は、前王女を全裸にして未だに逃亡中の身であるそうだ。
「おいカズマ」
「はいカズマ」
「説明を受けたから取り乱しはしないが、なんでミツルギ殿の服が弾け飛んだんだ?」
「……料理が美味すぎたから?」
「お前も知らないでやったのか……」
そんな事言われても仕方ない。最高の料理を追求した結果、その美味さに服が弾け飛ぶようになるなんて、使ってる方も意味が分からない。だが、少なくともこれでエーリカには勝てるだろう。服が弾け飛ぶ旨さなんて、並大抵の人間には届かない領域だ。
「しかし、これは流石にやり過ぎでは?お料理で負けたことよりも、ミツルギ様のみちゅるぎ様の方がインパクトありますよ?」
「レインさん、僕の下半身を可愛く呼ぶのは辞めて貰えます?」
「では、魔剣グラムと……」
「そもそも呼ぶ必要ないですからね?!」
しかし、確かにこれはやり過ぎたと思う。エーリカの表情は驚愕といった感じで、料理に対し敗北感を感じているようには見えない。これではエーリカのリタイアどころか、ただクレアが変な才能持ちだと思われるだけの可能性も……
「そ、そんな……まさかクレアさんが……クレアさんが指に絆創膏してるなんて!これが美味しい料理の代償だとしたら、そんなの尊くて可愛過ぎるよ!」
「まさかの斜め上の注目ポイント?!いや他にも注目ポイントあったよな?!」
「あの傷も盗賊の顔面を殴った時に着いた傷ですから、可愛さの欠片もないですしね」
まさかそんなのが悔しいんだ?!エーリカの感性が分からないんだけど?!
「えっと……他の注目ポイントって言われても………みちゅるぎが可愛いとか?」
「ごふっ!」
「ミツルギ殿ーー!!」
エーリカの奴、まさかこの状況でも可愛いだけに着目を?!美味すぎる弁当に謎の脱衣、更にはイケメンの全裸と来て、それでも可愛い要素しか見ていないだなんて、どんだけ頭の中可愛いまみれなんだ!あとミツルギの可愛かったの?もしそうだとしても、傷付くから言い方には気を付けてあげて!
「だ、駄目ですカズマ様!今は一度体勢を立て直すべきです!」
「いや体勢を立て直すってなに?!戦闘してるんじゃないんだぞ?」
エーリカの感性には驚いたが、とは言えこれは戦闘じゃない。にも関わらず体勢を立て直すなんて、レインは何を言っているのだろう。こんな正解の見えない状況で引いたとしても、限られた時間の無駄にしか………
「よく周りを見てください。この全裸パーティ会場の中では、もはや競う事さえ困難です……」
「「「「美味すぎる!」」」」
パァン!
「そうだな。取り敢えずこの事態は収集しようか……」
確かに全裸集団の中で可愛さ競うとか、変な宗教みたいだし……
…………………………
「さて、それじゃどうしてキッチンに呼び出されたのか、説明してくれるよな?」
どこぞの◯ーマみたいな状況を片付けた俺達は、何故かエーリカから呼び出しを受けることとなる。そして呼び出されたその場所と言うのが、この無駄に豪華なキッチンと言うわけだ。
「お互いに隠し事は出来ないみたいだからね。私の正体に気付いたのは流石だけど、私もそっちの狙いはお見通しだよ。そこまでして私に可愛さで勝ちたいっていうなら、真っ向から受けてあげるよ!」
「ほぅ、まさか我々の工作がバレていたとは、やはりエーリカには隠し通せないようだな」
成程。エーリカは自分に可愛さで勝ちたくてこんな事をしていると思っているようだ。そりゃ作戦の1つとしてはそれも狙ったが、まさかこう来るとは予想外。だってそもそもの話……
「いや、バレるも何も隠してないぞ」
「「……………えっ?」」
俺はエーリカを連れ帰る為にここへ来たので、そもそも目的など隠していない。エーリカがお見合いパーティに出た事がスキャンダルにならない様に気を使っただけで、むしろあれだけ露骨に妨害して、ここまで気付かなかった方が驚きである。
「どうしてクレアまで驚いているのですか?あんなカッチカチのバナナを提供し、コース料理にラーメンまで加えて、むしろシンフォニア家の名が無ければ、間違いなく追い出されている所です。露骨過ぎて周りが触れなかったって、少し考えれば分かりそうですけど……」
「あっ……いやその……それは……」
おい嘘だろ。脱落上等でやってると思ったのに、コイツ上手く隠してたつもりだったの?流石にポンコツが過ぎない?
「そ、そうやってポンコツを演じて可愛いを演出するなんて……クレアさんも相当なやり手みたいだね……」
「いえ、クレアは純度100%の天然ポンコツです。それと、恐らくですがエーリカさんもそれなりにポンコツかと思います」
「ぐふっ!」
「おい待てレイン。お前は私を庇う側だろ?」
いや無理だろ。これを庇うのは流石に無理だろ。ここまで察しの悪いアホが墓穴まで掘って、一体どうやって庇えば良いんだよ。
「というかカズマ様、そもそもエーリカさんは何と戦っているので?」
「自分の限界とかじゃないかな……今更突っ込むだけ無駄だと思うぞ……」
少なくとも常人には分からない何かだ。処刑の危険を犯してまでこんなのに参加するなんて、常人だったらまずしないし……
「だが、むしろこれで解りやすくなった。正面から競って敗北すれば、エーリカの目的は失敗に終わる。その時には素直にリタイアして貰うぞ!」
「可愛さで敗北したら退く……私の魂にしたがって、その約束は必ず守るよ!」
魂とかそういうの良いから、さっきの騒ぎで流れてくれないかな。エーリカに可愛いってワードが関わると、絶対に簡単には終わらないじゃん。料理が上手なら可愛いなんて、そんな簡単に終わらないだろ。
「じゃあ始めようか、プリティクッキングデスマッチを!!」
「プリティクッキングデスマッチだと?!」
毎度の事ながらクレアは良いリアクションをするが、流石にそろそろ冷静になってくれないだろうか。3日目の夜には告白タイムが来てしまうので、これ以上茶番で時間を無駄にして欲しくない。せめて真っ当な勝負なら良いのだが、こんなふざけた競技では、完全に時間の無駄である。
「いや、流石にそろそろ真面目に話を……」
「分かりました。公式な競技で競うと言うなら、私が審判を務めます」
「…………えっ?」
俺より先にエーリカとクレアの間に割って入ったのは、とても真面目な顔をしたレイン。プリティクッキングデスマッチを公式競技だと言ってたような気がするが、流石にそんな馬鹿な事が……
「ルールは当然、国家公認ルールで対応します。妨害や反則行為があった場合、即座に反則負けになるので……」
「いやごめん!出来たらルールの最初からお願い!この世界のことまだ全然知らなかったわ俺!これについてはルール説明からお願いします!!」
……………………………
「では、レフェリーのカズマ様。号令を……」
「えぇっと……調理、開始!」
プリティクッキングデスマッチとは、料理対決に可愛いを盛り込んだ競技である。料理の出来る女の子がモテると言う価値観の元、料理対決中に可愛い写真を撮影、その可愛いポイントを加点しての料理対決を実施する。早い話、料理上手だけどブサイクが来た時には除外するってのが目的なんだと思う。ちなみに制服は水着エプロン、ここまでやって嫁に貰われない女など、正に社会的にデスしちゃうのである。
「ではカズマ様。私は採点用の写真を撮って来ますので、後は料理完成までクレアの似合わない水着エプロン姿でもお楽しみください」
「本当に後で覚えておけよ?!カズマもあまり見るんじゃない!」
いやこれについては案外悪くないと思っている。クレアの性格は少し乱暴だが、その見た目は間違いなく美女。何より今日は乱暴さも形も潜め、今はある意味理想のツンデレキャラ。しかし……
「今日はいつも支えてくれるプロデューサーの為に、頑張って美味しいの作るからね!」
「やっぱりエーリカって可愛いよな……」
「お前は本当に何しに来たんだ?!少しはこっちの味方をしろ!」
そりゃエーリカを連れ戻す為に来た訳だが、だからって可愛いか否かに嘘は付けない。真っ当なジャッジを下さなければ、エーリカも納得はしないだろうし。
「ほらクレア!もっとカズマ様に媚びてください!この写真で加点されるんですよ!」
「無茶言うな!余韻がまだ残っているのに、料理しながらポーズまで取れるか!」
「甘えるんじゃありません!エーリカさんは死角からの不意打ちでも、しっかりカメラ目線&可愛いポーズですよ!」
「なんだそれ?!アイツは刺客に命でも狙われてるのか?!」
「と、ここで不意打ち!」
「なんの♪」
ニコッパシャ
何アレ凄っ!完全に死角だったのに笑顔とポーズまで取ってる!これがトップアイドルの力なのか?!
「ほらクレア笑って!水着エプロンで媚びて笑って!」
「お前絶対に楽しんでるだろ?!」
変なルールと昨晩の余韻で、クレアの手元は全然おぼつかない。エーリカは料理も下手では無いし、このままいけば勝つのはエーリカだ。それでは色々と困るのだが、クレアに逆転の手はあるだろうか………
「やっぱり、私の事は見てくれないんだ……」
「んっ?エーリカ今なんか言ったか?」
「何でもないよ♪」
それに比べてエーリカの方は、全く非の打ち所がない。咄嗟のチェキ撮影にも即座に反応しているし、料理の手際もとても良く、まさに理想的な可愛いお嫁さんと言えるだろう。真っ向勝負になった事で、むしろクレアの恥が増えただけな気がするが、殴られそうなので今は言わないでおこう。
………………………
「エーリカさんの作ったのは肉じゃが、そしてクレアの作ったのはカレー。この戦いの決着は、カズマ様のジャッジに委ねられます」
2人の料理が俺の前に並べられ、いよいよこれから審議となる。だが、今は味より気になるのが……
「料理の情報が入ってこないんで、この写真一旦退けて良い?」
「それも採点基準なので駄目です」
この馬鹿みたいに並んだ2人の写真だ。嫁選びの為には必要なのかも知れないが、こんなメイド喫茶の太客みたいなテーブルでは、料理の方に集中出来ない。
「なら先に写真だけ判定するよ。エーリカに100点、クレアに30点を加点する。理由はブロマイドとしての商品価値だ」
「あら、それでよろしいのですか?伝統としては、「このクレアの泣きそうな顔が堪らん!」とか「直ぐにでも抱きたいエロい身体だな!」とかセクハラ採点するのが通例なのですが……」
「公式競技でそんなことさせんの?!貴族連中ってそんなのばっかか?!」
「ルールを考えたのがそんな連中なので……」
そりゃ暇な時なら楽しみたいが、この勝負はエーリカの今後がかかっている。どうせ駄目なら説得も必要だし、こんな所で無駄な時間は使いたくない。そして、他の参加者が集まるなんて事になれば、多分クレアが血の雨を降らせる。
「それじゃあ、先にエーリカの肉じゃがから……」
「うん、食べて食べて!」
エーリカの作った料理には、基本的にはハズレがない。時折ドジっ娘が可愛いからと塩と砂糖を間違えるが、糖分と塩分をどちらも含む肉じゃがでは、解り難いからとそういうボケをすることも無い。だから、この料理を食べたら直ぐにでも行動しなければならない。エーリカが40点以上の料理を作ったら、最悪さらっていく必要も出てくるし………
「って酸っぱ!エーリカの肉じゃが酸っぱ!!何これお酢か?!」
「えっ?そんな酸っぱいなんてある?!」
エーリカまで驚いているが、これは尋常ではないレベルの酸味がある。というか、最早お酢で味付けしなきゃこうはならない次元で酸っぱいので、嫌がらせかと思ったくらいだ。
「やはりエーリカ様のアレは故意ではなく、無意識でやっていたと言うことなのですね……醤油の代わりに黒酢、お酒の代わりに穀物酢、更にみりんの代わりに米酢を使って、砂糖の代わりにクエン酸を使っていたのは……」
「そこまで見てたんなら止めてくれない?!と言うかこの会場、お酢のレパートリーだけ豊富過ぎない?!」
調味料1つのミスなら分かるが、まさかオールミスで全部酸っぱい。そこまで完ぺきに間違える事など、普通に考えたらあるはずが無いのだが……これも多分エリスの力が関わっているのだろう。これ程ネタとして美味しい展開など、普通に考えたら起きるはずがない。
「エーリカさんはカメラ目線を作る時以外、常にカズマ様を見ておりました。野菜を剥くのも切るのも横目で、恐らく調味料も色だけで判別していたのだと……」
「成程、それで色合いだけはしっかり一致しているのか……」
「そこまで見てたら突っ込んでくれよ……口の中がメッチャ酸っぱいんだけど……」
しかし、だとしてもこれはチャンスだ。流石にこれに点数はあげられないので、クレアのカレーが70点超えなら、結果としてクレアの勝ち。エーリカを連れ帰る理由は出来る。だが……
「……こんなミスをするなんて、エーリカらしく無いんじゃないか?」
「そ、それは……その……えっと……」
エーリカの暴走理由を知らなければ、きっと解決とは言えない。普段の暴走具合で見逃していたが、どうやら本件の原因は俺にあるようだ。それなら、ここでその問題を根本から解決した方が良い。別にクレアのカレーが敵感知に反応しているからとか関係なく、生煮えのジャガイモから毒検知されてるとかも関係なく、ただプロデューサーとしてそうすべきだと感じている。
「私も女として、こんな状態のエーリカに勝っても仕方がない。今回は引き分けと言う事にして、いずれまた万全の時に挑ませて貰う。そっちの方が、お互いにも後腐れは無いだろう?」
「クレアさん……」
いや残念だけどクレアの負けだよ。状況的に言いたくないけど、お前の料理も0点なんだよ。だからそのドヤ顔を辞めろ。
「そうだよね……こんな無茶な可愛いアピールしても駄目だよね……カズマはアクセルハーツのプロデューサーだから私を見て欲しいなんて身勝手だったよね……」
「「………………えっ?!」」
「おい待て変な勘繰りは辞めろ。全く身に覚えがないから!」
俺を見るクレアとレインの表情は、「こいつまさか担当アイドルにまで?!」とでも言いたげだ。しかし、エーリカだけは本当にそんな関係ではないので、本件についてはマジで身に覚えがない。
「そんなの嘘だよ!この前だってリアと2人でレッスンルームから出てきたじゃん!2人とも沢山汗をかいて、あんなの秘密の特訓しかあり得ないよ!」
「あっ、いやそれはその……」
どうしよう身に覚えのあるケース出てきちゃった。そりゃ納得なんか出来ないよな。俺が特別レッスンなんて、傍から見たら間違いなく特別扱いにしか見えないだろうし……
「最近はシエロとも2人で居るのに、どうして私は誘ってくれないの!2人はドンドン綺麗になるし、それなのにどうして私だけ置いていくの!」
「いや、決して仲間外れとかじゃ……」
「嫌だよ……私も一緒に居させてよ……アクセルハーツは、私に残された唯一の居場所なの……また私を一人にしないでよ……」
俺の胸に縋り付くエーリカの顔には、普段の笑顔など微塵もなかった。無知だと思って配慮が欠けた事で、まさかこんな傷付き方をするなんて思わなかった。こんな変化にも気付けないなんて、プロデューサーとして失態だな。
「不安にさせてごめんな。でも、俺達はエーリカと離れるつもりなんてない。リアとシエロも、予選落ちしなきゃここに迎えに来てたんだぞ。だから、そんな心配はしなくて良いんだ」
「…………本当に?」
「あぁ、本当だよ」
エーリカの目尻から涙を拭い、そのまま頭を軽く撫でる。曇った表情が晴れていくので、これで憂いは解けたのだろう。後はこのイベントからエーリカを連れ帰り、リアとシエロに言い訳を考えてもらえば、本件は一件落着である。
「……所でこの企画って、何をどうしたら帰れるんだ?確か途中でリタイアとかあったよな?」
「それでしたら、朝チュンしたら途中でカップルが成立したと見なされますよ?」
へぇ、そうなんだ朝チュンなんだ。確かに朝には使用人が回ってくるから、そこで事後だったらカップルだよな。そりゃ確かにその通りだけども………
「…………他に方法は無いのか?」
「最終日に告白してキスすればカップル成立になりますが、エーリカさんは注目の的。間違いなく多くの方から告白があるでしょうから、そこで関係が拗れたりすると……」
なにそれ面倒くさい!今後もアクセルハーツを続けていくつもりなんだから、領地持ちの貴族と拗れたら凄く面倒くさいぞ!でもだからって朝チュンとか、流石にそれはエーリカだって……
「わ、私はカズマとなら良いよ……今回の件は私の勘違いだったみたいだし、貴族とは揉めたくないよね……」
俺のシャツを摘むエーリカの顔に、俺の鼓動が大きくなる。これも無知ゆえと思っていたが、エーリカの頬は真っ赤に染まっていて、この先の事を理解しているようだった。
「良いんだなエーリカ……」
「……うん」
ごめんエリス。ずいぶんと前にアクセルハーツ全員は流石に……なんて言ったけど、アレはどうやらフラグだったみたいです。本当に、節操のない旦那ですみません!でも、ここで辞めるほど理性はありません!
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
次回はしっかりエーリカ回です。狩りが面白くて遅くなりましたが、ちゃんと書き上げるので見捨てないでください。
またお暇な時にでもお付き合いください。