※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

魔王軍では迷惑をかける側だったセレナさん。こちらに来たら迷惑を掛けられるのがセオリーとなります。

と言うことで、セレナの日常回。またお暇な時にでもお付き合いください。


名探偵セレナの事件簿、貴婦人密室殺人事件

探偵。それは冒険者カードには載らない特殊な職業。巧妙に隠された事件を解き明かし、真実を明らかにする職業である。しかし、実際には衛兵や検察がその仕事を兼務しており、探偵と呼ばれる者は殆どいない。

 

「私がやりました……盗んだお金は、庭の犬小屋の屋根裏に……」

 

「直ぐに現場を抑えてください!セレナさん、今回もお見事な推理と交渉術でした」

 

「いえいえ、では私はこれで……」

 

だが、そんな世界で探偵としても名を挙げる者がいる。ある時は聖女、ある時は虚空の軍を操る傀儡の使い手、またある時は無敗の交渉人、更にある時はお尻でイケる告解室のメス犬。そんな数多の称号を持つ彼女を今はこう呼ぼう。名探偵セレナと……」

 

「おいあるえ、お前あとで話あるから」

 

「あっ……しまった口に出てた?!」

 

 

………程よくうざいキャラ紹介………

 

セレナ(セレスディナ)

今回の主人公。元魔王軍幹部の諜報員で、レジーナの加護により貸しを作った相手を洗脳できる。カズマと同じで我が身が最優先のクズ野郎で、良い生活が出来そうだからとカズマ側に付いた。と言うことにしているが、現在本気で妊活中。

 

あるえ

今回の主人公その2。前世は歴代魔王の一人であり、強過ぎる魔力を眼帯で封じている。という設定。実際には年齢相応の恋する少女。小説家になる夢を追うべく、セレナに密着取材をすることにした。たまに魔法で透明になり、無許可で密着していることもある。

 

セナさん

セレナに仕事を依頼している検察官。先日カズマが上着を忘れていったので、それで1人プレイに勤しんでいる。返せないくらいぐちゃぐちゃになったので、昨日こっそり新しいのを買った。

 

………てことで本編………

 

「良いか?現場は遊び場じゃないんだ。余計なことしたら摘み出すからな?」

 

「あぁ、そこは当然弁えているさ。リアルを知るのが取材だからね」

 

セナからの協力要請を受けた時、あたしは運悪くあるえといた。普段なら相手にせず出掛ける所だが、こいつが手帳を取り出した以上無視は出来ない。姿を消して付いてこられるくらいなら、目の届く範囲に居たほうが良い。

 

「それで事件の内容は?これでも私は紅魔族。多少の役には立つと思うよ?」

 

「ほぅ?なら役立って貰おうじゃねぇか。事件の全容を教えてやるよ」

 

※お暇な人は暇潰しに推理してみてください。ただし本編は悪ふざけの方です。

 

「被害者はオークル家の婦人だ。両手と両足を縄で固定され、鍵の掛かった部屋で殺されていた。鍵を持っているのは婦人と当主の2人だけで、婦人の亡くなったとされる時間に当主は家を開けていたと言う訳だ」

 

「成程。確かにそれは普通じゃないね。その殺人を可能にするには、恐らくは魔法が必要になる」

 

やはり腐っても紅魔族。あるえは僅かな説明から、あたしが呼ばれた理由を察した。魔法への理解はあたしより上だし、これなら助手に使っても良いかも知れない。

 

「じゃあ、精々役に立てよあるえ?」

 

「あぁ、私が解決しても構わないんだろう?」

 

あたし達はそんな軽口を叩きながら、セナに呼ばれた屋敷へと向かった。

 

………………………

 

「お待ちしておりましたセレナさん。犯行現場はこちらになります」

 

「ありがとうございます」

 

見知った検察官に軽く挨拶し、事件現場へと案内を受ける。何度も顔を合わせてきた事で、最近では事件現場へもスムーズに入れるようになった。これもカズマの口利きやら、日頃の宣伝の効果なのだろう。日頃から人目を気にして、イメージを大切にして良かった。と、アレを見ると嫌でも思う。

 

「またお前か!ここは遊び場じゃないんだ!邪魔になるから早く出ていけ!!」

 

「今回は本当にセレナさんの助手だよ!いつも疑うばっかりで、たまには私を信じようとは思わないのかい?!」

 

「そんな数撃ちゃ当たる理論が通じるか!前科が増えるだけ信用はなくなるんだ!逮捕されないだけ有り難く思いな!」

 

あいつ、今までどんだけ検察に迷惑かけてんだよ。あたしの助手を自称するとか、何ならあたしが一番の被害者だろ。

 

「以前はどうかは知りませんが、今回の同席は私の希望です。事件に魔法が使われている可能性もあるので、彼女の知識が役に立つかと……」

 

「セレナさんがそう言うなら……しかし、この屋敷にはお抱えの魔法使いが居て、魔法を使えば警報が鳴るらしいのですが……」

 

「……『ヒール』」

 

『ビービー!魔法を検出!魔法を検出!護衛は主人の警護にあたれ!繰り返す!魔法を……』

 

成程。魔法への対策も出来ているとなれば、この事件は下手すりゃ迷宮入りだ。検察は自分の無能を魔法のせいにして逃れたりするが、これは解けなきゃ検察の無能が証明される。ついでに魔法が使えないなら、あるえも役立つとは思えない。

 

「じゃあ、あるえさんには帰って貰っても……」

 

「ここまで来てそれはあんまりじゃないかい?!」

 

だってお前がいると変な目で見られるんだもん。あたし事件解決よりイメージアップが目的だし、お前が居たらマイナスだもん。

 

……………………

 

「うん、これは魔力放出で警報が鳴るから、魔法で無効は出来そうにないね!」

 

「そっか。じゃあお帰りは入って来たドアから……」

 

「いや待って!本当に真面目に調査するから!」

 

帰らせようとしたあるえの口から「魔法の警報は、高度な理解があれば無効化も可能なんだ。まぁ、素人には分からないだろうけど?」なんて言葉が出たものだから、あたしはあるえを現場に入れた。そして警報機を見て15秒後にこの発言では、そりゃあたしだってウンザリもする。

 

「あたしには良く分からないんだが、この魔法陣は無効化が出来ない仕様で良いのか?例えばそう、作ったヤツなら何とか出来るとか……」

 

「そうだね。危機の内側は分解しなきゃ見えないけど、製作者なら無効化する仕掛けを施しているかも知れない。そうなると、お抱えの魔法使いが怪しい事になるね」

 

「だが、その魔法使いは王都魔法協会の会議に出席していて不在だった。しかも宿泊先は仲間と同室で、抜け出せば当然誰かに悟られる」

 

「それはまた、狙ったかのようなアリバイだね……」

 

魔法による逃走および犯行は、お抱えの魔法使いにしか不可能だった。しかし、その魔法使いは不在の上アリバイもある。そうなりゃ犯人はこの家の人間になるわけだが、部屋はその時密室だった。

 

「どうやら何かを見逃しているようだ。現場は保存されているんだろう?なら、その現場を見て確かめよう。人が殺められた事実があるのに、不可能なんてありえない」

 

ちょっとカッコいい感じにキメているが、あるえの手帳に「犯人は第一発見者」とか書いてあるのが凄く気になる。まぁ、真面目に調査する気はあるみたいだし、今日は助手として使ってやるか。

 

……………………

 

「ご足労頂きありがとうございます。こちらが今回の被害者である、オークル家の御婦人です」

 

「これは、悲しき運命に見舞われましたね……」

 

被害者の元を訪れたあたしは、セナの説明を聞いて直ぐに遺体の前で祈った。事件解決が目的だろうと、あたしの本職はあくまで聖女だ。こういう時にイメージアップを図っておけば、検察は疑う気さえ起きない。

 

「では布を外します。あるえさんは人の死になれていないと思うので、無理そうなら席を外してください」

 

「分かった」

 

遺体を覆っていた布を剥がすと、そこにあるのは人間の死体。しかも腹を深々と刺され、表情は苦痛と苦悶に歪んでいる。何度も修羅場を潜ったとは言え、あるえのような少女には刺激が強いはずだ。

 

「………雌オーク?」

 

「馬鹿!お前何言ってんだ?!そりゃオークル家はメスオークみたいな女性しか産まれないとか言われて居るが……だとしても先に気にすることあるだろ?!遺体を前に緊張感ゼロか?!」

 

「セレナさんもボロクソ言ってますよ?」

 

「旦那が割と良く死ぬ家庭に居るから、何となく死体も見慣れたなぁって……」

 

「くっ!それについては納得しかない……」

 

「いえ、だとしてもその発言は駄目ですけどね?」

 

確かに見た目はオークのようだが、それでもオークル家は有力貴族だ。カズマとエリスの威光があったとしても、こっちが不敬なら裁かれても文句は言えない。やっぱりこいつは置いてくるべきだった。こんなアホが助手なんてやってたら、イメージアップどころか逮捕されかねない。

 

「良いのです。妻がオークに似ているのは事実ですから、そんな目くじらを立てないでください。あっ、私は被害者の夫のトロルです。よろしくお願いします」

 

「せ、セレナです。申し訳ないトロル卿。寛大な御心に感謝します。あっ、こいつはあるえです。上級魔法を扱う紅魔族のアークウィザードです」

 

「わが名は……ってそりゃないよセレナさん?!」

 

だって名乗らせると長いし、話進まないし。

 

「ご覧の通り、妻はロープで拘束されて刺されたようです。恐らくは脅迫の為に身動き出来ないようにしたのでしょう。発見時には血が滴っていた事から、賊の犯行は昨晩から今朝の間に行われたと検察官は推測しております」

 

あたし達は遺体を前に、屋敷の主人から話を聞く。現場の状況は多少変化しているので、聞き取りも重要なヒントになる。そして、容疑者の発言を精査する意味もある。特にこのトロル卿は没落直前の貴族が婿入してきた特殊な事情だ。財産目当ての殺人もあり得る。

 

「そして、妻の死を確認したのが執事長の……」

 

「セバスチャンだね?」

 

「あるえさんは黙って」

 

それなのに、この馬鹿は余計なことばかり言いやがる。メモにはセバスチャンと書いてるし、お前もう取材じゃなくて遊びに来てんだろ。

 

「私が第一発見者であり、当家の執事長のセバスチェンです」

 

「惜しい!」

 

「惜しいとかないですからね?!」

 

なんで悪ふざけにニアピンしてんの?!いい加減話に集中させろ!こっちは事件の調査に来てんだよ!

 

「私が異変に気付いたのは、本日の早朝の事でした。朝食の時間になっても姿がお見えにならないので、ご夫婦の寝室をノックしたのです。その時何かを叩くような音が聞こえ、声をかけても返事が無かった為、皆を呼んでドアを破り部屋に押し入りました。すると、ドアの前に拘束され、血を流している奥様が居て……」

 

「成程。突入の直前に争うような物音がして、更に血液も固まっていない。なら、前日から不在だったトロル卿の犯行は不可能。そして、鍵を持たない使用人の皆さんにも、密室の奥様を殺す方法はないと……」

 

これは見事な密室殺人だ。使用人には庭師やメイド、更にはコックや大工も揃っているが、この密室を作り出せる人間は見当たらない。兎にも角にも密室トリックを暴き、犯行が可能であることを証明する必要がありそうだ。

 

「この部屋は夫婦の寝室で、鍵を持つのは私と妻だけです。入口はこのドア1つで、その前に妻は倒れていました」

 

ドアも壁も厚みがあるこの部屋は、恐らくちょっとした物音は外に出ないようにしているのだろう。夫婦の寝室と言うことなので、そこら辺の配慮は理解できる。理解はできるが……

 

「あの……なんか拷問器具みたいな物が……」

 

「お恥ずかしながら、妻は性欲が旺盛なもので、こういった道具が少々置いてあり……」

 

「いや、この数は少々じゃないよね……」

 

ベッドより数倍広いスペースに、大量に置かれた大人向けの器具。そこには拘束具だけに留まらず、三角の木馬や鞭にろうそく、更にロープやらテープも大量にあるので、婦人の拘束はこれらを使って行ったのだろう。貴族には変態が多いと聞くが、ここまでエグい寝室は初めてかも知れない。

 

「大きな窓があるようですが、そちらは開かないのですか?」

 

「この窓は強固なハメ殺しになっております。妻をハメ殺してやろうと思った時、激しく対面立位でぶつかった事が有りましたが、窓のほうが強固だったくらいです」

 

「いや、なんでちょっと上手いこと言おうとしてんですか?貴方奥様殺されてるんですよね?!」

 

「す、すみません……お通夜ムードに耐えきれなくて……」

 

「本当のお通夜なんですよ?!」

 

そりゃ婦人が死んだ遺産は残されたトロル卿のものになる訳だし、オークとの激しい夜からも解放された訳だ。素直に利害だけで話をするなら、死んでくれたほうが都合が良いのは間違いない。でも、だからってそれを表に出すなよ。あたしの気遣いを無駄にする気か?

 

「ひょっとして、この武器もこの部屋にあったものなのかな?そうなると、犯人は丸腰でも犯行が可能になるんだけど?」

 

「まさしく。そのナイフはロープを切断する用の物で、直ぐ手に取れように至る所にあります。プレイ中に解けなくなることもあり、穴があったら入りたいと何度も思うことがあったので用意しました。まぁ、いつも妻の穴に入っていたんですけどね」

 

「すみません!そろそろ真面目にお願いします!」

 

婦人の両手は前で縛られているにもかかわらず、凶器は正面から心臓を一突き。両手がナイフを握っているから、抵抗虚しく刺殺されたか、刺された後に引き抜こうとしたんだろう。あとはまぁ、2箇所同時に刺そうとして、もう片方を受け止めると同時に刺殺ってバターンも無くはないが、そんなことを考えるのはあたしかカズマくらいだろう。あとは自殺って線もあるが、自殺で心臓を一突きなんて方法は取らないな。

 

「遺体はうつ伏せで頭は窓側ってことは、犯人は窓側に居たって事かな?それとも、血がつかないように後ろから心臓を狙ったとか?」

 

「だとしたら首を狙うだろうな。拘束方法が簀巻きだと、ミミズみたいには動けるわけだし」

 

「そうですね。妻の中はミミズ千匹だったので、この状態でも搾り取ってきたと思います」

 

「殺されそうな相手から搾り取ってたら、それはもうオークと言うかサキュバスでは?」

 

「人間ですから!貴方達いい加減にしないと摘み出しますよ!」

 

「「すみません」」

 

しかし、これは本当に難関な事件だ。殺人が可能な人間がマジで居ない。いや、セバスチェンなら発見と同時に可能なんだが、流石にそれは目撃者が居るだろうし……

 

「ナイフの持ち手の底の部分が潰れてる?セレナさん、これは何かのヒントにならないかな?」

 

「持ち手の底が潰れるなんて、ナイフを使う上で珍しくないでしょう?刺してから蹴りを入れて深く抉るとか、鈍器で釘を打つように骨を断ち切るとか、ナイフと何かを組み合わせるとか、よく見かける手法ですよ」

 

「…………よく見かけますかね?」

 

「私が言うのもなんだけど、セレナさんも大概普通じゃないよね……」

 

「しーっ!きっと聖女として地獄を見てきたんです。そこは触れないであげてください……」

 

うん、あたしもちょっとやらかしてたみたいだが、あるえにだけは言われたくねぇな!

 

「いや待ってください?たしかに他のナイフには、そんな底をぶつけた痕跡はありません。と言うことは、これは犯行に使われた痕跡である可能性があります!」

 

あたし達のやり取りに軽く受け流し、凶器のナイフと他の物を比較するセナ。確かにその1本だけに打痕があるなら、その打痕がトリックに使われた可能性もある。むしろ、その打痕が決定打になる可能性も……

 

「どうやら、今回はセレナさんの出番は無いみたいだ。私にはもう、この事件の真相が見えたからね!!」

 

「「「「「「なんだって?!」」」」」」

 

…………あるえの推理………

 

「先ず最初にこの事件の核心に触れよう。この事件、アリバイを作ったのは被害者本人だ!」

 

「そ、そんな!奥様が自らアリバイを?!」

 

確かに被害者がアリバイを作れば、誰が犯人でも犯行は可能だろう。だが、死ぬと分かっていて協力するなんて、そんな馬鹿なことあるだろうか?

 

「成程。例えば緊縛プレイだと言って婦人を拘束し、時間差で刃物が刺さるように仕向ければ、トロル卿のアリバイは崩れる事になりますね?」

 

「そんな馬鹿な!妻はナイフを握っていたんですよ?!手の届く範囲に刃物があって、どうやって心臓を刺せると言うんですか?!」

 

確かにナイフは握られていたし、視界を奪う物もなかった。大掛かりな仕掛けを使えれば分かるが、手足の拘束だけで心臓を狙うのは少々無理があると思う。

 

「あぁ、確かに普通の人間であれば、刃物を避けて横に倒れるだろう。でも、彼女はそれをしなかった。どうしてそんな事になったのか、トロル卿は知っている筈だよね?」

 

「そ、それは……」

 

あるえの自信満々の問い掛けに、明らかに言葉を詰まらせるトロル卿。まさか本当にそんな手があるのなら、状況からしてトロル卿が犯人と言う事になるが……

 

「いや、まったく思い付かないんですが、私なら可能な手段なのですか?特殊なロープの結び方をするとか?」

 

これ、多分トロル卿は犯人じゃねぇな。完全に意表を突かれたって顔をしているし、何ならクソ真面目に殺す方法を思案していた。もし本当にトロル卿が犯人なら、今更殺す方法に悩むことはない。

 

「ふっ、なら私から説明してあげよう。トロル卿、貴方は出掛け際にこう言ったんです。「このナイフの上で体幹トレーニングを続けなさい。もし私が帰ってくるまで頑張れたら、ものすんごいセックスをしてあげよう……」ってね!」

 

「「「「………えっ?」」」」

 

ものすんごいドヤ顔で推理を披露したあるえだったが、その余りにも酷い内容に、聞いていた関係者の時間が止まった。いや、確かにその方法で朝まで頑張りそうな馬鹿に心当たりはあるんたが、そんな真性が何人も居てたまるか。

 

「何を言うかと思えば、そんな馬鹿な言い分が通る筈がないだろう!」

 

でしょうね。それ通る奴は相当ヤバい人物ですからね。

 

「体幹トレーニングはさせられたとして、どうやってナイフを突き立てるのですか!心臓にナイフを突き立てて置くなんて、土台か何かが無きゃ不可能ですよ!」

 

「いやそっち?!まぁ、確かに心臓の位置に手があったら体幹トレーニングは難しいけども!だからって1晩中体幹トレーニングなんて……」

 

「充実した性交の為なら、妻は筋繊維が全部切れるまで体幹トレーニングを続けるでしょうから……」

 

畜生!被害者も真性かよ!せめて登場人物は常人であれ!真面目に推理させてくれ!

 

「しかし、あるえさんの推理では犯行は不可能です。今度は私の推理を披露しましょう」

 

…………セナの推理………

 

「もし私の推理が正しいとするなら、殺人を仕組んだのはトロル卿。そして、実行したのが執事長となります」

 

「ま、まさか私が奥様のことを?!」

 

セナの言葉を聞いた執事長が、今日一番の混乱を見せる。一族に忠義を誓った使用人には、その告発はあまりにも残酷だ。しかし、私もその推理には同意する。発見時に血が滴っていたとするのなら、発見時刻がそのまま犯行時刻だと考えた方が辻褄は合う。

 

「先ずトロル卿は奥様の身体を拘束し、ドアの前に寝そべらせました。恐らくは薬品か性技を用いて、婦人の意識を飛ばしていたのでしょう。寝そべった腕、または胸の間にナイフを挟めば、刃物の固定に道具はいりません」

 

「た、たしかにこの位置関係なら、心臓の前に刃物が来る!後は誰かがこのドアを勢い良く開ければ、刃物に刺された奥さんが押しやられて……」

 

「この状況が……完成する……わ、私は奥様になんてことを!!」

 

膝から崩れ落ちたセバスチェンの肩に、セナさんが優しく手を置いた。そして、鋭い眼光でトロル卿を見つめ、淡々とした口調で語り掛ける。

 

「もし私の推理が当たっているなら、この犯行は貴方にしか出来ません。トロル卿、調査にご協力頂けますね?」

 

「ふっ、何を馬鹿なことを。その推理は実行不可能なのだから、私が容疑者になるいわれはない!!」

 

「そ、そんな?!」

 

確かに確たる証拠はないが、だとしても決して不可能でもない。大抵はここから取り調べ室に行き、嘘発見器で確信を得る。だが、明確に容疑を否定されたら、その同行は拒むことも出来る。

 

「まず!妻は媚薬の飲み過ぎで薬品の類は効かない!それこそ致死量の2倍の毒薬も、ちょっとした腹痛で済まされる位だ。また、私の性技で妻はイカない!故にいつも肉バイブ扱いなのだよ!」

 

いやまだ出てくるのか異常設定!ここまで来るとよく殺せたな!見た目がオークとか言われてるけど、実際中身もオークだろコイツ!

 

「な、なんかすみません!知人の男性から聞いた話だと、それくらいは大抵出来るのかと……」

 

「何なら一晩どころか1日動けないってのも可能なものと……」

 

「おい辞めろ!私が余計に惨めになる!と言うかそんなの出来てたまるか!そいつ絶対インキュバスだろ!」

 

それについては追及してやるな。あれはカズマが化物なだけで、たぶん一般人には無理なんだ。まぁ、あたしもカズマしか知らないんだけどさ。

 

「あっ、それと今のやり取りから、事件の全容が分かりましたのでお話します」

 

…………セレナの推理…………

 

「先ず、婦人がドアに押し出されて亡くなったのは間違いないでしょう。直前に物音を聞いていて、しかも誰も部屋の中には居なかった訳ですから、そこは揺るがない事実だと思います」

 

「では、一体誰がナイフを仕掛けたというのですか?ドアに押し出された時に心臓の前にナイフがあるなんて、いくらなんでも都合が良過ぎる!」

 

妻が亡くなってるのに都合が良いって言い方は、トロル卿が遺産目当てで結婚した事の表れだろう。だが、今回の殺人がトロル卿の犯行だとしたら、こんなに露骨な反応はしないだろう。皮肉にも婦人への殺意を隠さないことが、こいつの無罪を主張することになった。

 

「まず、婦人の拘束を誰が行ったか……これがこの謎を解く鍵になります」

 

「そ、そんなの……普通に考えれば殺人犯としか……」

 

「そうですね。確かにそれはありがちなパターンでしょう。でも、それなら何故後ろ手で縛らなかったのか?そして、この強靭なフィジカルを持つ夫人を縛れる者がいるのか?更に使用人が気付いて居ないことから、音もなく縛るなんて可能なのか?と言う疑問が生まれます」

 

「そ、それは確かにその通りだが……」

 

この事件で真っ先に違和感を覚えたのが、婦人の拘束が後ろ手で無いことだった。そこに疑問を覚えてしまえば、実は容易にこの答えに辿り着く。

 

「その答えは至極簡単なことです。縛ったのが婦人当人であるなら、全ての辻褄が合うのですから……」

 

「ま、まさかそんな?!」

 

「「「「「「「あぁ、成程」」」」」」」

 

「私以外全員が納得?!」

 

セナだけはあたしの推理に疑問を感じているようだが、真性の変態は自分を縛ることがある。うちの家族はやってる現場を見ることがあるので、特に違和感を感じたりしない。

 

「婦人は性欲旺盛ではありますが、誇り高く不貞を許さない方です。故にトロル卿が不在の夜を乗り切る為、ちょっと激しめの一人遊びに興じていたものと思われます」

 

「一人遊びで身体を縛るんですか?!と言うか、縛るってハードル高くないんですか?!」

 

「そんなに高くないんじゃないかな?」

 

「あるえさんまでそんな?!」

 

まぁ、カズマはそう言うプレイ好きだよな。簡単に脱出できる縛り方して、逃げたら止めちゃうとかいう奴。

 

「しかし、当の婦人は性豪である事を必死に隠し、性的な物は鍵付きの防音寝室に隠しています。では、もし信用してる家臣にそれがバレそうになったら、婦人はどうするでしょう?」

 

「そ、それなら必死に隠そうと……はっ?!まさか奥様は自らドアの前に?!」

 

「そう、盛り上がり過ぎて朝を迎えてしまった婦人は、ノックの音を聞いて咄嗟にドアの前に身体を置き、皆さんの侵入を防ごうとしました。防音室の外に音が漏れた理由は、ドアそのものが発した音だからです。そして、何とか縄を切ろうと膝にナイフを挟み、必死に手の縄を切ろうとした所で………」

 

「ドアを力尽くで破られ、膝に挟んでいたナイフが心臓に刺さってしまったと……くっ!流石は名探偵、完璧な推理だ!」

 

「これが完璧だと言われるのは、流石に常軌を逸してる気が……」

 

セナがそう思うのも仕方がないが、世の中には小説より奇怪な事が沢山ある。そりゃあたしだって馬鹿げているとは思っているが、状況からしてこれしかない。

 

「見事な名探偵っぷりですねセレナさん。貴方のお陰で私の無実が証明され、心置きなく遺産を受け取れる。ありがとうございます」

 

「だ、旦那様!奥様の前でなんてことを?!」

 

「いえ、トロル卿は婦人に毒を盛った過去があるので、財産を受け取れるかどうかは裁判次第です」

 

「なん……だと……」

 

「さっき自分で暴露してましたからね。致死量の2倍とか腹痛とか、それは毒を盛った人間しか気付かない話です。致命傷にならなくとも、殺人未遂を見逃して貰えるとでも?」

 

「ち、畜生!!」

 

……………………

 

こうして事件は解決し、遺産狙いのトロル卿は逮捕された。残念ながら私の推理は、真実には届かなかったようだ。帰路につくセレナさんの横顔が、私には出来る女のそれに見えた。

 

「ごめん。あんまり役に立たなかったよね……」

 

「いや、あるえは十分に役にたった。お前の活躍が無ければ、婦人は蘇生を望まなかったからな」

 

「えっ………蘇生?!」

 

よく見れば屋敷の使用人と、何故か殺された婦人も手を振っている。セレナさんもアイテムを使えばリザレクションを使えるとは聞いていたが、なぜ私がそこに関係するのだろう。

 

「愛する夫に裏切られたと知って、婦人はこのまま死ぬって聞かなかった。でも、お前が婦人の変態性を掘り下げ始めたのを見て、泣きながらレジーナ様に泣き付いてきた訳だ。『これ以上私の事を辱めないで!お金なら払うから、私に弁明する機会を頂戴!!』ってな?」

 

「えっ?じゃあ、まさかあの推理は……」

 

「死んだ婦人を辱めて金を払わせる為の推理だ。実際は裏切り者のトロル卿を殺人犯にすべく、自分で拘束して手に持ったナイフの上に倒れての自殺。悲しきヒロインとして復讐を遂げて死のうとしたんだ。そもそもドアにブツケてぶっ飛ばすなんてしたら、擦り傷だらけで血も飛び散るだろ?」

 

「そ、それじゃ真実は……」

 

「誰かが傷付く真実より、優しい嘘が必要な時もあるんだよ……」

 

そう語るセレナさんはとても満足気で、きっと真実を解き明かすより、婦人が前向きに生きていく事が喜ばしいのだろう。手元でお札を数えているのは、今だけは見なかった事にする。

 

 

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

セレナのネタは名前で分かるようにしようと思い、こんなシリーズ化を始めました。初回なのでちょっと真面目ですが、次からもっとクソ事件にします。

また不定期ではございますが、お暇な時にでもお付き合いください。
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