なんか挙式がスキップされてない?そう考える方が多いと思いますが、幸せなだけの挙式なんて流しても面白くないので、ちゃんと視線を変えてお送りします。夜の回は次回です。
またお暇な時にでもお付き合いください。
カズマ様とウォルバク様の挙式が、もう目前へと迫っている。敬愛する2人の挙式は忠臣であるあたしとしても望む所であり、いずれ子々孫々へ仕える第一歩だ。つまり、あたしにとっても超重要な挙式なのだが、世間にはそれ邪魔する輩と言うのが存在する。
「街中の知り合い全員に招待状を出すとは、ウォルバク様も思い切ったことをする……」
「それだけ浮かれていたと言う事だろう。だが、それで式がメチャクチャになろうものなら、深く気に病むのがウォルバク様だ。故に、あたし達で何とかする!!」
開会前の式場に降り立つ、ウォルバクの忠実なる下僕。200話を平和に迎えた影の真実を、ここで皆様にお話しよう。
……………キャラ紹介…………
アーネス
ウォルバクの忠臣であり、更に竿姉妹でもある女形悪魔。本来の悪魔なら苦くて食べられない愛情と言う感情も、2人のなら美味しく食べられる筋金入りの狂信者。実は数少ない良識を持つ人物。
ホースト
青くて強い、見た目から分かりやすい悪魔。アーネス程では無いがこいつも狂信者。悪魔なのに面倒見が良く、こめっこを筆頭に子供の面倒を良く見ており、今じゃ顔パスで保育所に入れる。入れんなよ。
……………………………
「招待状を頂いたからには、馳せ参ずるのが我らの礼儀!」
「勿論ご祝儀は用意しました!えぇ、出せる限りの気持ちです!」
「さぁ我らがアクア様の導きに従い!邪教の挙式を大いに盛り上げて………」
「ふざけるな!帰れこの反社どもが!『カースド・ライトニング』!」
「「「あぁーー!!」」」
豪華なご馳走に釣られたアクシズ教のドブネズミが、ホーストの一撃でぶっ飛ばされる。ウォルバク様の招待状には、冒険者は誰でも参加可と記載されていた。これは恐らくギルドの仲間を指しているのだと思うが、プリーストはスキル取得の為に冒険者登録をしている。つまりこのゴミ溜めの信者でさえ、招待枠に当てはまる事になる。
「こいつ、祝儀袋に自分の裸の写真を入れてやがる。そりゃエグい悪感情を出す訳だ……そんでこっちは入信書と……」
「それでウォルバク様のウェディングドレスを拝ませられるかってんだ!次来たらオークの里に送り付けるからな!」
「「「ひぇ〜〜!」」」
なお、あたしらの仕事は受付だ。そういう名目さえ持っていれば、ここをスルーすることは許されない。どうせ来るであろう変態や迷惑な客を追い払うには、まさにピッタリの役職と言える。
「やぁアーネス、この度はおめでとうございます」
「おぅリア。アクセルハーツは随分と早いな?」
そして、まともな客から主への祝福を受け取るのも、忠臣らしい名誉ある仕事だ。ついでに主の敵を割り出せるので、個人的にも都合が良い。
「私達は下手をすると人混みを作ってしまうし、余興の準備もあるからな」
「本当に贅沢な余興だよね。アクセルハーツのライブだなんて」
「でも2人にはいつもお世話になってますし、これくらいはしないと……」
そうだよな。やっぱりこう言うのが正しい参列マナーだよな。2人の関係を祝おうってんだから、こういう言葉が自然と出るもんだよな。
「………なぁアーネス?スゲー和やかに会話してるが、こいつらの感情……」
「黙っとけホースト。こいつらは決して害にはならねぇ」
ホーストが不安を感じているのは、多分こいつらの悪感情が凄いことになってるからだ。あたしらは味で判断出来るが、敢えて言葉にするのであれば……
(ズルいズルいズルいズルい!私もカズマと結ばれたい!私もウェディングドレスで抱き締められたい!ガッツリ朝まで初夜を楽しみたい!)
(ヤダヤダヤダヤダ!これ以上私より可愛い子を囲わないで!なるべく私だけを見続けて!)
(ウォルバクさんの前でカズマさんに抱かれたら……あぁ、考えただけで濡れちゃいます……)
ってクソデカい感情を抱えた爆弾にしか見えない訳だ。これを理性で抑え込むんだから、一体どんな理性してんだろう。祝儀袋もメチャクチャ厚いし、どうしてこれで狂わないんだ?
…………………
「………内蔵売って出直せ」
「そ、そこを何とか!」
「ちっ!冗談だ。通れよ……」
「いや今の絶対本気だったろ?!と言うか、悪魔のお前は嘘付かねぇよな?!どう考えても渋々だよな?!」
ゴミ虫の中にも種類がいて、このダストと言うのは害の少ないゴミ虫だ。借り物のスーツに少ない祝儀、そして所々に見える生傷からして、必死にクエストをこなして何とか体裁を整えたのだろう。日々の無駄遣いが原因とは言え、これを追い出すのはカズマ様に申し訳ない。こんなゴミクズで冴えない男も、一応友人と呼べる訳だしな。
「まさか悪魔が受け付けとは、珍しい挙式もあったものですね?」
「そうか?他教の大司教が女神の挙式に出る方が、あたしは珍しいと思うがね?」
だが、ゴミ虫なんかより問題はこっちだ。あたしら悪魔からすればゴミ虫同然だが、エリス教の大司教は大物が過ぎる。一応想定はしていたのだが、マジで来んなよ暇人か?
「くっ!身近に女神が居て感覚がバグってた!こりゃ相当な実力者だぞ!」
「あぁ、あたしら二人でも瞬殺だろうな……だが、今回ばかりはコイツは味方だ」
「味方?!大司教が悪魔に味方って、そんな馬鹿な状況あり得るのか?!」
「それは私も聞いたことがないですね?説明して貰えますか?」
「あぁ、待ってな」
あたしはゆっくりと会場へ向かい、そしてクリスを抱えて踵を返す。普通に考えたらありえない事だが、今日だけは手を組む理由がある。
「女神エリスから御嬢を預かってる。あたしじゃ聖なる力に当てられるから、あんたに子守りを任せたいとな」
「く、クリス様が笑っている?!エリス様の力を引き継ぎ、触れるだけで魔を祓える御子が、悪魔に微笑みかけているのか?!」
あたしがクリスを連れてきた事で、大司教の目が明らかに変わる。悪魔に抱かれて笑う神の子なんて、きっと今まで見たことが無いのだろう。そりゃあたしだって同感だ。カズマ様の血を継いでいなければ、先ず触れようなんて考えない。
「あたしは悪魔である前に、カズマ様とウォルバク様の忠臣だ。主の血を継いだ子を大切にしないなんて有り得ない。それに、2人を祝福してくれるっていうなら、女神エリスにだって頭を下げる。神とか悪魔だとかそんな事より、大切な人が居るんでな」
「まさかここまで真っ直ぐな信仰心を持つ悪魔が居るとは………良いでしょう。クリス様とエリス様が認めているなら、貴方は私の敵ではない」
あたしとクリスの関係を見た事で、大司教の身体から殺気が抜けていく。そもそもプリーストがエグい殺気を発する方がおかしい気もするが、今は気にしないことにしよう。
「あぁ、今はそれで十分だ。ほら、大司教の所へいこうな?」
「やー!」
「こ、拒まれ……クリス様に拒まれ……ごふっ!」
「いやメンタルクソ雑魚かよ大司教!良いから早く御嬢を受け取れ!!」
実はメチャクチャダメージあんだよ!この笑顔に浄化の力があるんだよ!!
……………………
「よちよち……私はママの従順な下僕ですからね〜?怖いおじちゃんじゃないでちゅからねぇ〜?」
「敬虔な信徒って言えば聞こえは良いが、台詞だけ聞くと事案だろこれ……おっと…」
あたしからクリスを受け取った大司教は、祝儀を置いて会場に入った。最悪のシナリオは回避出来たが、やはりこの方法は代償が大きい。あたしは大司教が見えなくなった所で、地面に膝を付いてしまう。
「おい大丈夫かアーネス?!さっきまで涼しい顔をしてたが、やっぱりあのガキを抱くなんて無茶だったんじゃ……」
「気にすんなホースト……どんな種族でもカズマ様の子だ。あたしが大切にしない訳がないだろ?まぁ、残機は3機ほど持っていかれたがな……」
「抱いてるだけで?!」
流石は女神パワー垂れ流しの赤ん坊。無垢な笑顔でエグい攻撃力してやがる。笑顔が輝いて見えるとか言うが、あれはダダ漏れの聖魔法なので、決して目の錯覚ではない。
「残機3機は相当だろ。お前の残機残り幾つだ?」
「……に、2500くらい」
「……どういうことだよ。なんの悪感情食ったらそんな事になるんだよ……」
ホーストからウォルバク様の口癖が出ているが、そう突っ込みたくなるのも仕方がない。この数値はあたしでも見たことのない数値だし、たぶんこの世界に数人といない数値だ。
「か、カズマ様があたしを抱くと、女神エリスへの背徳感が凄いらしくて、一晩抱かれると数百単位で……」
「そのレベルの悪感情を出しながら悪魔を抱くって、どんな精神構造してんだよ……」
「確か、抗えない家臣を組み伏せての強制不倫生本番。女神の妻を裏切る悪魔っ子への連続中出し〜とか言ってた……」
「自分から背徳感を増やしてやがる!マジで神をも恐れねぇな?!」
それについては今更だろ。水の女神を週三くらいのペースで折檻してるし、ウォルバク様を失禁するまで抱いたりするし……
「おやおや?まさか悪魔が猥談をするとは、私も参加させて頂いて宜しいですかな?」
「「良い訳ねぇだろ死ね」」
「私にだけ当たりが強い?!いや、しかしこれはこれで……」
エリス教の大司教が現れたと言うことは、当然アクシズ教の方も現れる。カズマ様が聖人扱いされている以上、こういった催しは無視出来ないそうだ。人間の考える面子ってのが、あたしらの天敵を集めている訳だ。
「真っ当に祝う気ならあたしは止めねぇ。だが、主の挙式をぶち壊すつもりなら、全力で叩き潰させて貰うぜ?」
「私はこれでもアクシズ教を代表する者。挙式をぶち壊すなんて愚かなことを、私がするとお思いで?」
そう言ってゼスタの取り出した祝儀袋は、明らかに厚みが普通ではない。それが誠意の証なら信用出来るが、そもそもアクシズ教徒にそんな金があるのだろうか……
「……中身を検めても構わないな?」
「えぇ、勿論構いませんよ」
そう言ってゼスタが取り出した祝儀の中身は、確かに本物の金に見える。少なくとも入信書が入っている気配は無いし、材質は間違いなく現金そのもので……
『通貨アクア』(アクシズ教が発行しているエリスに良く似た宗教通貨。デザインはほぼアウトだが、エリスとは1言も書かれていないのでギリギリ検挙されない。当然だが、これで何かを買うことは出来ない)
「では、会場に入らせて頂きますね!」
「駄目に決まってんだろ反社野郎!くっ!もう会場の入口にいやがる!この国の大司教はどんなフィジカルしてんだ?!」
と言うかなんだこの巧妙な手口!こんな事に頑張るんじゃなくて、もっと真っ当に信者を募れよ!努力の方向おかしいだろ!
「ははは!人の多い会場に入ればこっちのもの!美味な食事とドレスを着た美女を、心ゆくまで堪能させ……ごふっ!」
「おっと危ない。アクシズ教徒を女児の2メートル以内に入れたら逮捕ですから、咄嗟に距離を開けて良かったです」
そんな暴走する馬鹿を止めてくれたのは、本来天敵となるもう1人の大司教。2つの宗教が不仲のお陰で、何故かあたしらが救われている。
「え、エリス教の大司教?!何故あなたがここに!異教徒の挙式に参列など、組織の長として自覚が足りないのでは?!」
「何コイツ人格3つくらいあんの?」
「いや、むしろ欠けてんだろ。恥とか人として大切なもんが……」
だが、正直これは有難い。あの変態の侵入を許せば、どう考えても式場はメチャクチャになる。入口に最強の門番が居れば、流石にゼスタでも諦めるしかないはずだ。
「これはエリス様が牧師役を務める挙式。女神アクアに誓って大人しく出来るなら通しても良いですが、誓えないのなら排除するのみです」
なんか女神エリスが主役みたいな扱いになってねぇか?
「出来ない約束をアクア様に誓えと?アクシズ教を舐めないで頂きたい!それに、そちらは片手しか使えぬ状況、むしろ有利なのはこちらです!」
お前らが嫌われるのってそういうところだぞ。子供抱いてる相手に言うことかそれ?
「さぁ、今こそ長年の雪辱を果たす時!何なら、カズマ様の赤ん坊をくんかくんかするまたとないチャン……」
メキッ
目に居た変態が飛び掛かった直後、変態は逆方向に向かって飛んでいった。うめき声の1つも聞こえなかったのは、恐らく声を発するより早くぶっ飛ばされたからだ。以前カズマ様のやってたゲーム、スマ◯ラのダメージ500くらいの飛び方をしたので、声を出す暇さえ無かったのだろう。
「って待て待て!今のは日常パートで使っていい力じゃ無かったろ!魔王も即死する破壊力だったぞ?!」
「ふむ、これはどうやらクリス様の強化魔法のようです。右手が砕けた感覚が有りましたが、痛みが発生する前に修復されています……なんと素晴らしい力なのでしょう……」
「何処で覚醒してんだ御嬢?!くっそ!ホームビデオを回し損ねたじゃねぇか!」
「回しても撮れたのは事故映像だろ。ってか、あの変態原型留めてるか?」
「「はっ?!」」
ホーストの何気ない言葉を聞いて、あたしと大司教は我に返った。変態の排除は重要だが、御嬢に前科など持たせられない。と言うかこの場で殺人事件とか、下手すると式が中止になる。
「い、一応スコップは持っていますが、この辺りは石畳ですからね……」
「あぁ、埋めたとしても違和感が残るな……つっても燃やせば煙が上がるし……ホースト、丸呑みいけるか?」
「いけねぇよ?!こんなの食ったら残機減るだろ!と言うか、お前ら意気投合すんなよ!するにしたって内容考えろ!!」
「好き嫌いはよろしくないですよ?」
「そうだぞホースト。御嬢の前で情けないとは思わないのか?」
「えっ、なにこれ狂信者って怖っ!俺様いま、子供の前で人食わせようとしてる奴に怒られてんのか?!」
まぁ、流石に食う時は背中を向けるが、だとしてもこのボロ雑巾をどうするか。こんな状態で生きてるとは思えないが、一応生存確認はするか……
「……生きてるか?」
「か、可及的速やかに人工呼吸が必要ですが、何とか一命は取り留めました……」
「うわっ、マジで生きてた!ゴキ◯リかよ……」
「流石にこれは私も傷付くのですが?!」
まぁ、御嬢に前科は付かなかったし、コイツはセレナの所に預けてこよう。流石に大司教がやられたとなれば、いくらアクシズ教徒でも馬鹿なことは考えない筈だ。明らかに遠巻きに見ていた奴らが、こそこそと解散して……
「貰ったぁ!」
パァン!
「嘘だろ?!この状況でまだ行く奴が?!」
ほんの一瞬の気を緩みを突き、走り出したのはセシリーとか言うプリースト。ペラペラの祝儀を受付に叩き付け、そのまま会場へと全力で走り出す。確かに今ならガードは居ないが、まさかこれを見て進むと言うのか?!
「ご安心ください!私は話の解るプリーストです!ちゃんとお祝いに来ただけですから!」
「背中にタッパー背負って言う事じゃねぇ!」
完全に油断したあたしの脚では、残念ながらセシリーは捕らえられない。あと数秒でアイツは会場に入り、それはもう好き放題して会場を荒らし回るのだろう。ウォルバク様は怒らないだろうが、陰で死ぬほど落ち込むことだろう。そんな悲しい思いをさせるなんて、あたしは忠臣失格だ。
「あたしに……もっと力があれば……」
「あぅ!」
そんなあたしの願いを感じ取ったのか、それともただの気紛れか……御嬢が何かを叫ぶと同時に、何故か身体が軽くなる。ついでに残機も減っている気がするが、今はそんなの些末な問題だ。
「止まれぇ!!」
「くっ!止まってたまるかぁ!!」
………………………
「ってな事が重なった結果がアレでして……」
「何で式場前で破壊が起きるんだと疑問だったが、成程そう言う話だったか……」
セシリーを取り押さえる事には成功したが、気が付けば辺りには破壊の跡が広がっていた。そんな事になりゃ衛兵が来るのは当然で、事情を聞かれるのも仕方ない。参列客として来たクレアには、仕事をさせてしまって正直申し訳ないと思っている。で、本件には更にもう1人被害者がおり……
「だから私は無罪って言ったじゃない!真相が解ったんだから拘束を解いてよ!私も参列客なんだから!」
「す、すみません!なんか最終決戦で見たお顔だったので、また攻めてきたのかと思いまして……」
「なんで単独で攻めるのよ?!私ってそんな馬鹿に思われてんの?!」
「休戦中とは言え敵国に単独で来ちゃう位なので、あまり賢い方では……」
「それは……そうかも……」
ウォルバク様に呼ばれて来た魔王の娘が、あらぬ疑いをかけられ拘束されていた。丸腰の時にアイリス王女と鉢合わせては、流石の魔王の娘も成す術がない。アイリスとクレアに連行されて、ちょっと涙目になっている。
「まさか本当に来るなんて、魔王の娘は義理堅いな……」
「そりゃ停戦調停をした相手の挙式だもの。魔族の暮らしやすい世界の為にも、政治と統治に手は抜けないでしょ?」
そう言って受付で名前を書く魔王の娘は、実に穏やかな顔をしている。親の仇を憎むだけでなく、仲間の恩人として敬意も払う。その高潔な精神は、まさに魔王の器だと思う。
「それに、王都でもお目にかかれない沢山のケーキがバイキング方式で出てくるんでしょ?!そんなの来るしか無いじゃない!」
「いや食い物に釣られて来てんじゃねぇか。道理で護衛が居ない訳だ……」
まぁ、甘やかされて育ったせいで、まだまだガキの部分が抜けてないんだが……
「それで主役の2人は何処かしら?友好的なところを見せないと緊張を招くし、先に挨拶しておきたいわ」
「それは構わないんですが、実はまだ来ていないんですよね……」
「大丈夫なのか?開式まであと5分もないが……」
「まぁ、普段から時間にだらしない二人なんで、多分大丈夫だと思うんだが……」
「いやそれは大丈夫じゃないのよ。停戦国の来賓きてんのよ?流石に立場を弁えるべきだわ」
お前にだけは言われたくない。そんな言葉を必死に飲み込み、あたしは魔法陣に手を置いた。契約者との魔力の繋がりは、僅かだが相手の状態が解る。これで近くに感じられれば、何も問題はないのだが……
「……寝てる」
「「「「「…………はっ?」」」」」
魔力の繋がりを辿ってみれば、実に落ち着いた魔力の波長。あの波乱の家で落ち着けるとしたら、それはもう睡眠かトイレしかない。
「今から来ても間に合わないぞ!と言うか、司会のルナさんが進行席に向かってる!」
「不味い!このまま主役不在ってなれば、最悪式が中止になる!繊細なウォルバク様はイメージ払拭の為、その手で魔王城を消し飛ばして、挙式の不在を世界平和の為とか言って美談にするかも知れねぇ!」
「辞めてよ!アイツマジでやりそうだもん!そうなったら全面戦争だからね?!」
「それは繊細な方の行動とは思えませんが、確かに全面戦争は困ります!では、ここは私が!」
主が自ら招いた危機に、アイリスがルナの元へと駆け出した。そして、司会のルナさんに耳打ちをしてプログラムを1つ追加した。
「え〜、新郎新婦の入場の前に、アイリス様より余興の提案がありました」
「流石はアイリス様!これなら自然に時間を稼げて、場の空気も変な感じには……」
「では、クレアさんのカレーの妖精さんです。お願いします!」
「…………へっ?」
※酔っ払いと子供達にはバカ受けだったが、やっぱり変な空気にはなった。
「くっ、ころ……」
「ぷふっ!何だ女騎士!お前そんな面白いヤツだったんだな!」
「えぇ続きまして次期魔王のご挨拶と、スベらないお話を頂きます」
「えっ?おい待てなんだその地獄の振り?!あの王女カズマに毒され過ぎだろ?!」
※お察しの通りメチャクチャ滑った。
…………………
「ごめんねアーネス!急いで準備してくるから!」
予定から1時間近く遅れる事となり、遂にウォルバク様が会場に入った。中座で使うアクセルハーツを温存した為、魔王の娘とクレアは大怪我をする事になってしまったが、特大の悪感情が食えたので良しとしよう。
「やりきったなアーネス」
「あぁ、下手な戦争より消耗した気がするが、不思議と晴れやかな気分だ」
あたしはカズマ様の用意したドレスを着て、2人が結ばれるのを最前列の席で眺めている。流石に会場の中でやらかす馬鹿は居ないと思うが、最後まであたしは2人の盾だ。仕事は最後までキッチリこなして、全部終わったらゆっくりしよう。
「では、最後は花嫁のブーケトスです。ウォルバクさん、ここですよここ!」
何故か司会まで参加しているが、どうやらこれで仕事は終わりだ。後はウォルバク様のブーケトスを見届けたら、このまま部屋に直帰し……
「それ!」
ぽすっ
「…………はっ?」
なんて気が緩んでいたあたしの手元に、綺麗に収まった可愛らしいブーケ。ウォルバク様の盾になるつもりで側に居たんだが、力が弱くて全然飛ばなかったらしい。あたしには性別も戸籍もないので、こんなの貰っても正直困る。まぁ、誰かに渡すにも困るんだが……
「アーネスさんって悪魔ですから、それは勿論無効ですよね?」
「えっ?なんかお前ら目がヤバいぞ?!特にセナ、ルナ、魔王の娘!」
「私だって幸せになりたいんです!」
「もうあまり余裕が無いんです!」
「私も次期魔王に相応しいイケメンを手にするの!だからそれを寄越しなさい!」
「頑張り方が間違ってる!まず女を磨くとかだな?!」
「「「「問答無用!!」」」」
あたしは疲労困憊のまま、何故か夜まで追い回される事になった。常々カズマ様が言っていたが、この世界はやっぱりおかしい。本当に申し訳ないとは思うが、カズマ様のフォローは月1程度にさせて欲しい。
あたしの
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
挙式成立の為に犠牲になる忠臣……可愛いですね。
ラブな部分は次回になりますので、ほどほどに期待してお待ちください。
また不定期ですが、お暇な時にでもお付き合いください。