良く忘れてる気がするのですが、一応この作品ってラブコメなんですよ。と言うことで、ラブを試す機会とかあってもいいと思うんです。当然ろくな事にはなりません。
またお暇な時にでもお付き合いください。
人に成り代わる魔物と言うのは、実は結構な種類がいる。魔物の天敵が人類であり、人類ほど栄えた生物も居ない為、欺くにも寄生するにも人間を狙うことが多いからだ。だが、当然人を騙すだけあり、知能も高く危険な魔物が多い。
「と言うことで最終企画!本物はどっちだ?!見破れ本物パートナー!」
「「「「本当に何でも有りだな?!」」」」
だがそんな恐ろしい魔物の生態も、神々にとっては娯楽の材料。もはやあれらが本当に神様なのか、それが一番疑わしく思える。
…………適当に読める人物紹介…………
カズマ
美人に弱い主人公。エリスの立ち振る舞いは完全に記憶しているが、他の妻達は見た目以外だと具合とかうねり方とか性感帯くらいしか把握していない。つまり挿入すれば百発百中なのだが、偽物と浮気しちゃう諸刃の剣。エリスは足音や呼吸音だけでカズマが判別できる。皆知ってる。
スバル
幼女に弱い主人公。エミリアのことなら完全把握しており、何なら体臭だけでほぼ判別可能。ただ、キモいので披露したことはない。ちなみに幼女はほっぺをぷにれば判別可能。勿論キモいので披露したことはない。なお、エミリアもスバルを体臭で判別が可能だったりするが、恥ずかしいので非公開。
ターニャ
報酬に弱い主人公。部下の名前と顔は把握しているが、細かい個性までは把握していない。副官達なら多少は……と言った顔に自信は無さげだった。ちなみに副官達は動物的本能でターニャ(の恐怖)を感じ取れる。
アインズ
情に弱い主人公。こんな見た目なのに一番良い奴かも知れない。仲間のことは良く見ているつもりだが、色仕掛けが苦手で女子達の詳細は未把握。童貞なので仕方ない。アルベドはアインズの声と骨のラインで本人判別が可能。そのせいか手羽先食ってるとたまに悶える。
…………てことで続き…………
「そりゃミミズ食うよりはマシだけどさ。流石にグレートが下がり過ぎじゃね?」
「変なものを食わされるよりマシだろう?それより、この問題内容の方が私は気になる」
参加者がサンドワームを食べたこと無いと、そもそも問題が成立しない。そんな企画段階で気付くべき理由で、先ほどの企画は御蔵入りになった。と言うことで代わりに用意されたのが、この牛丼メーカー当てクイズである。
「我々の食事を兼任しているんだろうが、これが分かった所で何を測れると言うのか……贔屓にしてる店があったら、他の店には行かんと思うが……」
「そうだよな〜。牛丼なんて吉◯家だけありゃ困らないもんな〜」
「………おいスバル。そこはす◯家の間違いではないのか?」
「いやいや馬鹿を言うな2人とも……松◯こそが牛丼の元祖だろう?」
「「「………あぁん?!」」」
いやそんな所で衝突する?飯くらい平和に食べません?
「◯き家は色んな味があって飽きが来ないだろう!シーズン物も充実しているし、す◯家だけで満足出来る筈だ!」
「そんなの逃げだろ!イロモノでバリエーション増やすんじゃ無くて、牛丼で満足させなきゃ意味無いんだよ!その点、吉◯家は鉄板だぞ!」
「待て待て!牛丼はあくまでファーストフード!効率的な注文とサーブ、そしてシンプルだが飽きの来ない味わい!店員とのコミュニケーションが不要で直ぐに腹を満たせる松◯こそ、ファストフードたる牛丼屋のあるべき姿ではないか!」
なんかメチャクチャ白熱しているが、3人とも推しの牛丼が間違っているので、これ程不毛な争いもない。せめて推しの店は当てろよ。皆でな◯卯を食いながら争ってんじゃないよ。
「カズマさん、紅生姜の追加はいかがですか?」
「あぁ、ありがとうエリs……って、なんで天使がエリスの格好してんだよ……」
「「「へっ?!」」」
あまりにも自然と現れた偽エリスに、3人が口論を辞めてこちらを向く。恐らく3人から見たこのエリスは、殆ど本物に見えているのだろう。確かに良くできた変装だと思うが、騙す相手が悪過ぎる。
「さ、流石はカズマ様。こんなにも一瞬で見破るとは、やはり愛の成せる技……と言うことで最終企画!本物はどっちだ?!見破れ本物パートナー!」
「「「「本当に何でも有りだな?!」」」」
※オープニング回収
……………
「成程。つまりは自分のパートナーが偽物か本物か、信頼関係を用いて当てろと言うことか……」
再び解答席に隔離された俺達の前に、見覚えのあるドアが現れる。牛丼クイズはあくまで囮で、その間にこのセットを準備していたらしい。ヒロインが移動したことに気が付かないとは、どんだけ牛丼に夢中だったんだ俺達は……
「天使殿にお聞きしたい!」
「あっはい。どうぞターニャ様」
「………あれは本当に◯か卯の牛丼だったのか?」
「そこ引っ張られても困りますが……確かにあれはなか◯の牛丼です。ちなみにす◯家はBでした」
「くそっ!私とした事が!!」
いや、どんだけ牛丼に熱意持って挑んでんだよ。もっとヒロインの方に目を向けてあげて。
「久々の牛丼に我を失っていたようだが、仲間のことを当てろと言うなら外す道理がない。最初は私にいかせて貰うぞ?」
「おぅ!アインズはしっかり部下のこと見てるからな!サクッと正解して勢い付けてくれ!」
「ふっ、任せろ!!」
ちなみに今は人間態でジャージだから、そのノリはちょっと痛いと思う。
……………………
「「あら、アインズ様」」
「えっ、なにこれ選択式?!」
自信満々に部屋に入ったアインズは、目の前の光景に唖然とした。目の前にはアルベドが2人居て、しかも全く同じリアクションを取ったのだ。そりゃ難易度に驚愕するのも仕方がない。と言うか、2人居てどちらかを選ぶパターンとは、アインズもさぞやり難いことだろう。
「すみませんアインズ様。ただいまデミウルゴスの毛穴に糸ミミズを生けている最中でして……」
「制裁が終わり次第お茶を入れますので、少しだけお待ち頂けますか?」
「えっ、その汚いムッ◯はデミウルゴスなのか?!と言うか毛穴に糸ミミズって……うわっ!本当だ蠢いてる!」
「お見苦しい所をお見せしました。深く反省しております……」
「いや見苦しいの方向性が間違ってないか?!」
良い子には見せられない◯ックの姿に、アインズもちょっとだけデミウルゴスと距離を取る。相変わらず情け容赦のない制裁だが、それに参加できる偽物も相当やばい。これは色んな意味で、難しい問題になりそうだ。
……ミミズ移植中……
「成程。これも神々の仕業ですか……通りで精巧な偽物だと……」
「ちょっと待ちなさい!偽物は貴女の方でしょう?!」
デミウルゴスへの制裁を終えた2人のアルベドは、アインズの両隣を陣取って座った。ここまではどちらも本物っぽいが、2人が本物なんて事はないだろう。いや、神々のやることなので絶対ないとは言い切れないんだが、流石にないと思いたい。
「すまないアルベド。本当なら直ぐにでも正解してやりたいのだが、私の観察眼が足りないばかりに確信が持てない。少しだけ時間をくれないだろうか?」
「「勿論ですアインズ様!」」
「くっ、そこまでシンクロするものなのか……」
成り代わりの魔物は何種類か居るが、恐らくこれは淫魔の類いだ。淫魔は籠絡の為に成り代わるので、他の魔物より再現度が高い。そのかわり戦闘面の真似は出来ないのだが、この状況ならそれは不要だろう。
「そうだ!アルベドは使い魔のバイコーンが呼べたな!成り代わった偽物が一人である以上、バイコーンの偽物は用意できな……」
「「流石はアインズ様!いでよバイコーン!!」」
「いや同時にやったら意味ないだろう?!」
「ひひ〜ん……ひひん?」
「しかもお前も判らんのか?!」
偽物のアルベドが賢いのか、本物のアルベドがアホの子なのか……2人の中心に呼ばれたバイコーンは、二人居るアルベドに首を傾げた。まさか使い魔まで騙せるなんて、これは相当な強敵のようだ。
「まさか使い魔まで騙せるなんて、間違いなく只者ではないようね。アインズ様!見た目で判断が付かない以上、見えない所で判断して頂くしかありませんわ!」
「見えないところって……おい!アルベド?!」
むにゅっ
「んっ……」
痺れを切らせたアルベドAにより、アインズの右手が乳房を掴む。その大胆な行動はアルベドっぽいが、淫魔なら色仕掛けをしても不思議ではない。となると気になるのは、アルベドBの反応だが……
「なにそれズルい!私だって!」
「お、落ち着けアルベ……おぉ!」
モニュモニュ
アインズの左手を掴んだアルベドBは、その手を自らの胸に押し当てる。これで両者の柔らかさは分かるだろうが、そもそも女性を胸の柔らかさで判断するのは至難の業だ。今でもアインズが童貞である以上、揉み慣れている可能性は低い。
「……分かった。偽物のアルベドはこちらだ!」
「そんな?!まさか本当に胸の感触だけで当てたと言うの?!」
突如としてアインズが覚醒し、アルベドAから腕を振り解いた。ちなみにBの胸は揉んだままなので、アルベドBは固まったままだ。
「確かに見事な成り代わりだった。もし2人が大人しくして居たなら、私にも判断が付かなかっただろう……」
「な、ならば何故……」
「知れたことよ。アルベドは何処までも初なサキュバス故に、私に触れられると心臓が大変な事になるんだ!無論それは私も同じだが、貴様のように落ち着いていられる筈がない!この手に伝わる高鳴る鼓動が、こっちが本物である証だ!!」
「そんな馬鹿な?!サキュバスの癖に乳揉みで心臓が大変な事に?!」
「ちがっ……だってこれ……アインズさまが……と言うかバレてて……」
アインズの自信満々な宣言を聞き、驚愕する偽物と真っ赤になって俯く本物。まさか羞恥心の差で答えが出るとは、これは淫魔じゃ予想出来ない。
「アルベドって、実は結構可愛いヤツなんだな……」
「処女なのにずっと無理してアインズにアピールしてたとは、これ程健気なサキュバスも居まい……」
「まぁ、サキュバスっぽくは無いんだけどな………」
と言っても、うちのサキュバスも似たようなもんだけど……
「まさか胸の高鳴りでバレるなんて……毛穴のミミズ攻めなんてしてるから、てっきり上級者だと思ったのに……」
「おいちょっと待て?サキュバスには毛穴にミミズを詰めるプレイが存在するのか?」
「良いわ。私は負けを認めましょう。精々仲良く、ミミズを使って勤しむことね……」
「おい消えるな!ちょっとミミズに付いて説明していけ!サキュバスの世界でそれは常識なのか?!そんなの巻き込まれたく………くっ、消えてしまった……」
ちょっと気になる言葉を残し、偽のアルベドは景色に溶けていった。ミミズについては俺も知らないが、嫌な予感がするので調べるのは辞めよう。
「さて、すまなかったなアルベド。随分と時間をかけてしまって……」
「……うきゅ〜」
「えっ、なんで失神してるんだアルベド?!おいアルベドしっかりしろ!!」
なお、ずっとアインズに胸を鷲掴みにされていたアルベドは、その興奮により意識を失った。耳年増なだけの処女サキュバスには、実技はちょっと早かったらしい。
………………
「さて、それじゃ俺も続くとするか!」
アインズとアルベドのイチャラブを見て、やる気を出したスバルが前に出る。別にイチャラブできる保証もないし、偽物がサキュバスだと言う確約もない。でも、スバルのやる気を削ぐのも野暮なのでそれは言わないでおくことにした。
「やぁ、お待たせエミリアたん!」
「あっ、スバル!良かったぁ!」
スバルが部屋の扉を開けると、そこに居たのはエミリア1人。どうやら先ほどのパターンと異なり、この1人を本物か見抜くらしい。別にそれは予想していたし、これと言って疑問もない。だが、この部屋に書かれたあの文字だけは、流石にちょっと予想してなかった。
『セックスしないと出られない部屋』
「………マジかよ」
パタン
思考の止まったスバルの後ろで、今入ってきたドアが閉まる。何処となく故意に見えなくもなかったが、スバルはそんなことしないと信じよう。
「えぇっと、エミリアたん?あの壁の文字に説明って……」
「い、一応天使さんが教えてくれたんだけど……私にはまだ難しくて……」
と言いつつ目を背ける辺り、天使は余計な知識を吹き込んだと見える。だが、そんな設定で偽物が演じている可能性もあるので、まだこの段階では何も言えない。
「咄嗟にドアを押さえなかったのは、偽物だからと考えるべきか……」
「天使に2人の関係が良くなるとか言われて、素直に信じてる可能性もあるぞ……」
「ただ何より気になるのは……」
「「「これ、偽物だったら何処かで止めるんだよな?」」」
この馬鹿みたいな部屋が舞台となった以上、スバルは2つの選択を迫られる。このエミリアが本物であるかどうかと、このエミリアを抱くか否かだ。何なら正解を当てる前に、童貞の卒業も可能である。
「ねぇスバル、取り敢えずこのベッドに一緒に座らない?そんな所に立っていても、ただ疲れるだけだと思うし……」
「そ、そうだねエミリアたん!この後どうするか話し合いたいし、座った方が落ち着くよね!」
「うん、スバルの隣は……凄く落ち着くよ……」
「くっ……これはマジでEMT……」
スバルが狼狽えながらベッドに座ると、エミリアはその横に寄り添って座る。そのまま腕を絡める仕草に、スバルの理性は崩壊寸前だ。物静かな彼女が頑張って甘えてくるシチュエーションなんて、据え膳以外の何物でもない。
「ねぇスバル……最近はしてくれてないけど、一回したら飽きちゃった?やっぱり私が相手じゃ駄目?」
「そんな訳ないって!あの時の気持ちは本物だし、した事に後悔もしてない!ただムードを作れないって言うか、俺も経験不足と言いますか……」
もはや企画などそっちのけで、エミリアとスバルのラブコメが始まる。このエミリアが本物だなんて確証は無いが、スバルは疑いなど一切持たずにエミリアに接している。これも惚れた弱みと言うべきか、エミリアを試すなんて真似を、スバルに出来るはずもない。
「今は違うの?私達しかここには居ないし、私はスバルとだったら……良いよ……」
「エミリア!」
「あっ……」
スバルはエミリアをベッドに押し倒し、そのまま上へと覆い被さる。突然押し倒されたエミリアの顔には、驚きと共に期待も見える。これはもう男子として行くしかないだろう。女の子にそんな顔をさせて何もしないだなんて、そんなの恥をかかせてしまう。
「来て……私の身体……好きにして良いから……」
エミリアは小さな声でそう呟くと、ブラウスのボタンに手をかける。そしてブラウスの隙間から白い肌が露出すると、スバルが突然口を開いた。
「チェーンジ!ちょっとこの強欲な魔女はチェンジでお願いします!エミリアたんにチェンジでお願いします!」
「ど、どういうこと?!」
突然エキドナ扱いされたエミリア(仮)は、スバルに不満の声を挙げる。確かに色仕掛けはエキドナの常套手段ではあるが、エミリアだってしないとは限らない。2人の関係が進んでいるなら、エミリアの行動だとしても違和感はないが……
「残念だったなエキドナ!エミリアたんはまだ性教育が途中で、胸をどうするなんてレベルじゃないんだよ!もし色仕掛けをするにしても、雌しべがある下を脱ぐね!」
「くっ!君が喜ぶシチュエーションを模索したのに、まさか彼女の無知でバレるなんて!」
スバルから驚愕の真実を聞き、エキドナは観念して変装を解いた。これも天使の持ち出した神々のアイテムだと思うが、貸し出す相手は選んで欲しい。もし抱いてる最中に元に戻ったら、スバルの性癖が破壊されてしまう。
「でも残念だったね。君の推理は見事だったが、君はもうボクの掌の上だ。さぁ、存分に愛し合おうじゃないか……」
「ど、どういう事だよ……」
「この部屋の特性を見ただろう?確かに問題には正解したけど、それは部屋を出る条件じゃない。つまり、君はボクと2人きりでこの部屋に入った瞬間、君はボクを抱くしかなくなっている。さぁ、ボクも処女だし優しく頼むよ?出来れば最初はキスからが良いかな……」
「そ、そんなの有りかよ!」
ベッドに横たわるエキドナの表情が、獲物を狩る獣へと変わる。俺達も最初に疑問を持ったが、やはりこの部屋は入ったら詰みだ。恐らくエキドナもそれを分かっていて、エミリアに扮して居たのだろう。本人のまま待ち構えていたら、間違いなく回れ右される。
「良いじゃないかスバル。これについて君は何も悪くないんだ。何なら君は、脅された被害者と言っても良い。それで彼女を抱く練習が出来るのだから、流されない方が損じゃないかな?」
「誘惑しつつ絡みつくな!くそっ!なまじ美人だから質が悪い!」
露骨なエキドナの誘惑を受けても、スバルはエキドナを攻撃はしない。それは女の子に手を挙げたくないと言う紳士的理由と、好意そのものに悪い気はしていないからだ。とは言え覆い被さってる状態で抱き着かれたら、平和的に離脱は不可能である。
「ねぇ抱いてよスバル。それを弱みに契約は迫るけど、ちゃんと愛情を持って接すると誓うよ?」
「その契約が怖くて嫌なんだよ!と言うか顔を寄せてくんな!吐息が顎にかかってるんだよ!」
「なら唇で塞げば良いよ……ボクは一向に構わないから……」
「畜生!マジで男のツボを心得てやがる!」
エキドナの色仕掛けは大胆さを増し、スバルの理性を激しく削る。思春期男子の本能にかかれば、地雷女でも可愛きゃ抱ける。それを理解して迫っているので、マジでエキドナはたちが悪い。
「本当はスバルだってその気なんだろう?ほら、無理せず欲望に流されてしまいなよ。彼女だって君を責めたりは……ひゃっ?!」
「……あっ」
「「「あっ」」」
遂にスバルも落ちるかと思った矢先、2人の間に気不味い空気が流れる。いや何となく理由は分かるのだが、それには触れるべきではない。エキドナの太ももがスバルのご子息に触れた気もするが、それだって気のせいかも知れない。
「エキドナ……ちょっとどいてくれる?」
「あっ……はい……」
2人の空気はたちまち重くなり、エキドナさえ空気を読み始めた。恐らく強欲の知識として知っているのだろう。暴発した思春期男子のことは、そっとしておいてあげるべきだと……
…………………
「もう嫌な予感しかしないんだが、どうせ拒否権はないのだろうな……」
アインズとスバルのやり取りを見せられ、ターニャのテンションはだだ下がりだ。それでも扉の前に立つのは、この空間に出口が無いからだろう。しょんぼりしたスバルも地面から生えてきたので、マジで生殺与奪を握られている。
「すみませんターニャ様。2番部屋にエキドナ様が取り残されていますので、3番部屋に行くついでに解放して貰えませんか?」
「つまり魔女でも出られないってことか……私の部屋は大丈夫だろうな……」
ターニャは自分の扉に隙間を開け、罠がないことを確認した。スバルのパターンなら初手で詰むし、上官が居たら詰めるのも難しい。だが、この保険をかけたターニャの行動が、結果的に神々の仕込みを上回る事になる。
「……グランツ中尉!向こうの手違いで部屋番号が変わったそうだ。貴殿は2番の部屋へ移動してくれ!」
「りょ、了解であります!」
「えっ?ちょっとターニャ様?!」
ターニャは部屋にいるグランツさんを呼び付けると、そのまま2番部屋のドアを閉じた。つまり今あの部屋にいるのは、エキドナとグランツさんの2人である。
「えっ、まさか俺がこんな美女と?!」
「君は誰だい?!ボクはナツキスバルと契約する為にここに来ているだけで、それ以外の男に興味は無くてだね?!」
壁の文字を読んだグランツさんは、飢えた野良犬のようにエキドナに迫った。普段知的なエキドナでも、言葉の通じないバカに知的さなど意味がない。ベッドから飛び退いたエキドナは、枕を盾にグランツさんと距離を取ろうとしている。
「よし分かった契約しよう。魂でも命でも、君の望むものを持って行ってくれて良い!」
「いや思い切りが良過ぎるだろう?!ボクが言うことじゃ無いかも知れないが、契約内容はちゃんと確認すべきであって……」
「こんな美人を抱けて下僕になれるなら、もう命なんて惜しくない!どうせ明日をも知れない戦場暮らしなんだ!こんな美人と添い遂げられるなら、それだけで命をかける価値はある!!」
「なんだコイツ頭おかしい!はやくドアを開けてくれないか?!ボクはナツキスバルとサトウカズマ以外に興味はないんだ!」
「そんな事言わず!!」
この頭のおかしい2人のコントは、ターニャが本物だと宣言するまで続いた。このやり取りを聞いて本物だと宣言したターニャの顔は、何とも言えない悲しさをまとっていたと言う。
「これが偽物だったら良かったんだがな……」
そうだな。それについては俺も同意見だよ。
……………………
「で、最後の最後にこのパターンかよ……」
波乱に満ちた企画もこれで最後。なんて油断したら本気を出すのが、この世界の神々である。
「何よ!私の事は分からないっていうの!!」
「お前の行動が理解出来てたら、俺の異世界ライフはもっと平和だったよ!というか、なんでここでアクアなんだよ!」
エリスなら余裕だと高を括っていたのだが、出てきたのは2人のアクア。動きも癖も再現しているので、これはドッペルゲンガーか何かだろう。となれば相手の記憶まで読み込む強敵なので、そう簡単には当てられそうにない。
「よし、取り敢えずアクアAはこっち。アクアBは後ろ向いてろ」
「何その雑な分け方!最近ちょっと冷たいっていうか、私の扱いが雑だと思うの!ちゃんと私が女神だって事を再認識して……」
「ほらA、こっち来い」
「だからその雑な感じが……はっ?!」
スポッ
クドクドと不満を垂れ流すアクアに向かって、俺は両手で輪っかを作った。するとアクアはその輪に顔を入れ、ドヤ顔で俺の方を見つめている。これはスヌートチャレンジと言う犬の芸なのだが、何故か宴会芸の女神にも有効である。
「よしよし、じゃあアクアBもこっちにおいで」
「………んっ」
スポッ
なんかBの方が素直で大人しい気がするが、だからって偽物って程の違和感もない。やはり最後の問題だけあり、かなり作り込まれているようだ。
「うん、駄目だこれ分かんねぇわ」
「ちょっと?!流石に諦めるのが早すぎるわよ!私とどれだけ一緒に居たと思ってるの!何なら顔見て一発で当てるところでしょ!」
「お前がいつも変顔ばっかりしてるから覚えてねぇんだよ。アクアAもBを見習って、少しは落ち着きを持ったらどうだ?」
「なによそれ!」
俺がベッドに横たわると、アクアAは直ぐに抗議を始めて、アクアBは大人しく俺を膝枕している。このリアクションはどちらもアクアそのものであり、むしろBの自然な膝枕の方が再現が難しくも思える。なら、もう少し踏み込んで試すしかない。
「あっ……ちょっと……カズマさん……何して……んっ……」
俺はアクアの膝枕でうつ伏せになり、前髪を使ってアクアをくすぐる。興奮に流されやすいアクアであれば、喘ぐ濡れるは間違いない。そのリアクションまで再現出来たら、このアクアBは間違いなく本物で……
「………分かった。この場に偽物のアクアは居ない!」
「えっ?ちょっと何言ってるのカズマさん?!私が本物何だから、そっちの私は偽物でしょ?!」
「カズマさん!」
激しく取り乱すアクアAと、明らかに喜びを隠せないアクアB。対局的な反応ではあるが、これはBが仕掛け人側ならなんの違和感もない事になる。
「お見事です!時の女神が連れてきた未来のアクア様と、今のアクア様を見事に本物だと見抜きました!文句なし!これは文句なしの信頼の証です!」
「私信じてた!何回やっても、カズマさんは私を間違えたりしないって!」
「そ、そうなの?!ま、まぁ悪い気はしないわね……」
「まさか本物が二人居るパターンを見抜くとは、本当の信頼と言うのを見せてもらった気がするな」
「あぁ、押し倒してから気付いたスバルとは大違いだ」
「アインズも乳揉んでただろ?!でも、正直カズマには敵わねぇな」
「お前ら……」
クライマックスの画を撮るためか、次々と集まる賑やかな仲間たち。クソな企画の連発だったが、こうして皆に会えるのであれば、案外こういうのも悪くはない。
「ではアクア様のアンチの皆様!今年はアクア様の完勝でしたので、また来年の挑戦をお待ちしております!」
「「「「「「それはもうそっちで勝手にやれ!!」」」」」」
まぁ、だからってこんな企画がしたいかと問われると、そんな事は一切ないのだが……
………………………
「えへへ……カズマさんに求められるなんて久しぶりかも……2人の私に興奮したの?」
「そりゃこんな機会は中々ないだろ?それに、こうするのが運命みたいだしな……」
実はあのアクアに判別など付かず、判別できたのは自分の精液の匂いがしたからだった。2人から会場にあった酒の匂いがして、何故かBだけ精液の匂いがしたら、それはもう未来か並行世界のアクアしかいない。時間を司る女神が観客に居たので、この後アクアAが連れて行かれてBになるのだ。やたらとしおらしく大人しかったのも、事後のアクアなら納得が行く。
「あっ!どうして今日はそんな強引に……あっ……だめ……はぁん!!」
「よし、後は溢れないように頑張れアクア。この後また収録だぞ?」
『アクア様、アクア様。番組の収録にご協力を頂きたいので、至急ホールまでお願いします。繰り返します……』
「なんなのよもう!カズマさんも知ってたなら終わってからにしてよ!カズマさんの鬼畜!」
もはや完全に見計らったタイミングで、館内に響くアクアへのアナウンス。何も知らないアクアはそそくさを下着を履き、呼び出しに応じて走っていった。これでアクアBから俺の匂いがするので、次の俺も正解出来るだろう。アクアは拗ねると長くなるから、こうやって未然に対策しないとな。
「ところでカズマさん……カズマさんは私の何処が好きで、何処を見て本物って分かったの?」
「んっ?そりゃお前…………何処だろ?」
「…………えっ?」
「ごめんちょっと待って!多分探せば出てくるから!多分腰辺りまで出かかってるから!」
「それ全然出てないって事じゃない!私これでもヒロインなんですけど!何なら一番のヒロインなんですけど?!カズマさんは私が好きなんじゃないの?!」
そう言われると凄く困るが、確かにアクアの好きな所が浮かばない。嫌いな所ならメチャクチャ出るのに、具体的に好きな部分って何処だろう。
「………愛してるよ」
「困り顔で言われても嬉しくないんですけど?!どうしてそんな意地悪するのよ!」
「いや本当にふざけてないんだって!ただちょっと具体的に何処か出ないだけだから、来年までに考えておくから!」
「なんでよぉ!」
皆さん、新年明けましておめでとうございます。今年の俺の抱負は、アクアの好きな所を3つ言えるようになることにしました。多分来月には2つに減りますが、どうか今年もよろしくお願いします。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
今年はラブコメ多めに頑張りたいなと思っていますが、ふざけなきゃ死ぬので程々で勘弁してください。一応今年も創作は続けますので、またお暇な時にでもお付き合いください。