※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつもお付き合い頂きありがとうございます。

エリスには欠陥がないと思ってる方々に送る作品です。




この慈愛の女神に災難を

エリスとの挙式から一夜明けた朝、俺は左腕にエリスを乗せ、右腕で髪を撫でていた。

 

「おはようエリス…俺の可愛い女神様」

 

愛する妻に向けて、ちょっと格好いい朝の挨拶を考えてみる。

 

「うーん。やっぱりこのタイミングなら、お嫁さんの方が良いかな…」

 

昨日は情けない姿で終わってしまったが、妻となって初めての目覚めでこんな風に口説かれては、きっとイメージも払拭されるだろう。しかし、噛んだら恥ずかしいのでちょっと練習をしている。

 

「いや、ここはやっぱり…愛するって付けたほうが…」

 

一度撫でる手を止め、少しだけ熟考に浸る。

 

「あの、私としては言葉より撫でてくれた方が…」

 

唐突にエリスからの回答。

 

「…いつからお目覚めでした?」

 

「…俺の可愛い女神様…位からです」

 

最初じゃん!

 

「あの、起きてたら何か言ってくれませんか…」

 

「だって…撫でられるのが気持ち良くて…」

 

頬を染めての上目遣い。なんだこの可愛い生き物…人間じゃないわ。いや女神なんだけど。

 

「あ、でもせっかくなら可愛いお嫁さんになりたいです」

 

「やめて!今言われたら俺が恥ずかしいだけだから!」

 

______________________

外に出てみれば清々しい朝だ。隣にエリスが居るからと言うのもあるが、今日は風も穏やかで、太陽も輝いている。

 

「昨夜は厚い雲が見えて、今日は雨かと思ったんだけどな…天気の神様からのご祝儀かな?」

 

「そうかも知れません。あの人はそれで1年ずっと晴れにして干ばつを起こした前科があるので、後で確認に行きましょう」

 

神様って加減を知らねぇのか?!なんて馬鹿な会話をしながら歩いていると、第一街人に遭遇した。

 

「あぁ、おはようございます。エリス様…ありがたや、ありがたや」

 

「おはようございます。あの…大丈夫ですよ?私への祈りはほんとちょっとだけでもちゃんと通じてますから」

 

昨晩もそうだったが、たまにこうして熱心な人に拝まれる。ちなみに、信仰がありさえすれば、祈る時間は関係なくエリスの力になるらしい。便利なもんだ。

 

「エリス様!」「エリス様だ!」「わーいエリス様!」

 

そして集まる子供たち。無垢な子供に愛されると言うのはやはり清らかな女神と言うことなんだろう。

 

「おはようございます。今日も皆で仲良しですね」

 

「おはようございます。平和な世界をありがとうエリス様」

 

教会で教わったであろう。エリスへの感謝を述べる子供たち、平和な世界に関しては、俺にも一言あってもいいんじゃないだろうか?

 

「平和な世界は、そこに居るカズマさんが作ったんですよ?お礼なら、カズマさんへ言ってあげてください」

 

「そうなの?」

 

子供がこっちに寄ってきた。うん、素直な子供は俺も好きだぞ?

 

「カズマさん…陰湿かつ卑怯な手口で魔王を倒してくれてありがとう」

 

なんて?

 

「うん、教会でどう教えてるのか、お兄さんに教えてくれるかな?」

 

俺が英雄と言われない理由がそこにある気がしてきた。

 

「魔王を卑怯な手で殺して、今度はエリス様の身体を要求した鬼畜英雄カズマさん」「色欲のカズマさん」「クズの申し子カズマさん」

 

おっと、子供にそれは流石にへこみますよ?

 

「なんで?!俺への認識どうなってんの?!」

 

「その、子供達の認識がズレてますので、教示としてではなく、プリーストが個別に言ってるのだと思いますが…」

 

「それはそれで困るわ!」

 

この街での評価は変わらないのか…

 

「とりあえずギルドに行こう…多分あいつらはそこに居るから…」

 

「…はい」

 

エリスはかける言葉が見つからないって顔をしている。なんかごめん、気を使わせて…

_____________________

 

「皆さん、おはようございます」

 

「夢じゃなかったんだな…」「本物だな」「やっぱり可愛い」「カズマ、もげれば良いのに…」

 

昨日よりは大人しいが、女神の降臨にどよめくギルド。

 

「おい、お前ら!俺が魔王討伐で凱旋した時と、えらく扱いが違うぞ!即日クズマコールしたじゃないか!」

 

納得いかない!

 

「そりゃお前、日頃の行いだろ」

 

「自業自得だよな」

 

くそぅ!仲間たちのやらかしもそこに換算されているんだろ?流石に泣きたくなるぞ!

 

「ちょっと!なんかエリスがチヤホヤされてるのが腹立つからこっちに座りなさいよ!」

 

「おはようございますアクア先輩」

 

「おはようアクア」

 

「え?カズマさんが優しすぎるんですけど…ちょっと怖いんですけど…」

 

賢者になった俺は一味違う。寛容な心でアクアにも対応しよう。

 

「俺はいつだって、心の奥底ではお前らに感謝しているんだよ」

 

「そ、そうなの?と、取りあえずこっちに皆集まってるから…」

 

促されるままに目立たない席へ、既にダクネス、めぐみん、ゆんゆんが来ている。

 

「エリス様、本当に私達の仲間になってくれたのですね」

 

「その、エリス…うぅ、友情と信仰がせめぎ合う!しかし、こんな苦悩も…あぁっ!」

 

「正体には驚きましたけど…心強いですね!」

 

パーティーメンバー達はもう受け入れている。まぁアクアという前例もあるしな…

 

「ありがとうございます。私も頑張ってこの街に貢献しますね!」

 

「あの、それは凄くありがたいのですが…」

 

ルナさんがエリスの元に来た。

 

「エリス様に…一言だけよろしいですか…」

 

「はい、どうぞ?」

 

ルナさんはひと呼吸おいて、真っ直ぐにエリスに意見した。

 

「クリスと言う盗賊の女の子が居るのはご存知ですか」

 

あぁ、厄介な話を…

 

「はい、勿論です」

 

「では、なぜ愛し合う二人の間に割って入るような事を!クリスさんとカズマさんは本気で!」

 

ヒートアップしてきた…ここで俺がエリスの頬と髪を隠す。

 

「え?あの…えっと…」

 

「エリス、この人は信用できるし、今後の為にもこちらに引き込む。良いな?」

 

「わ、わかりました。クエストを受ける為に必要ですからね」

 

と言うことで、別室にルナさんを連れて行く。ところで、アクアにはいつ言うんだろうか…

__________________________

 

「懺悔します…私は…エリス様に不遜な態度を…」

 

めちゃくちゃ怯えてる…

 

「エリス、クリスになってやれ。流石に気の毒だ」

 

「はい、ルナさん。大丈夫?」

 

クリスの姿なら多少は落ち着いて…

 

「はいぃ!大丈夫ですクリス様!」

 

そっちにも様付いちゃったよ…

 

…………………………………

「落ち着いた?そう言う訳だから、私はちゃんとカズマと結ばれてるの。これからも友人として仲良くしてね?」

 

「はい、クリス様…」

 

様が抜けてない。

 

「ルナさん…エリスの正体がバレると、クリスの仕事に支障が出ます…女神の特命に支障を…分かりますね?」

 

「は、はい!カズマさん!クリスさんとして、エリス様として、ちゃんと仕事を斡旋します!この事は口外しません!」

 

洗脳したみたいになってる。

 

「…アタシ…ルナさんと友達になれたと思ったのにな…ぐすっ」

 

「ご、ごめんなさい!私もクリスさんは友達だと思ってますから!ちゃんとまた友達として接しますから!」

 

ペロッ

あっ、舌出した。俺のパンツスティールの時にもやったよね?忘れてないからな!

_______________________

 

「おかえりなさい。受付さん、大丈夫ですか?」

 

「はい…ゆんゆんさんもクリスさんの件は知ってたんですか?」

 

「えぇ、大切な仲間であることに何も変わりはありません。そう割り切ることにしました。…敬語禁止なのは、まだ慣れてませんが…」

 

「ですよね…」

 

「早く慣れてくださいね?」

 

ダクネス、めぐみん、アクアはクエストボード前に行っている。変なクエストを取ってこないと良いのだが…

 

「俺が毎回止めるのも面倒だし、エリスからハッキリ言ってくれないか?クエストの選び方とかさ?」

 

「私の判断で良いのですか?」

 

「一番信用出来るよ。ゆんゆんも実はコミュニケーションが必要な依頼を避けるし…」

 

なので、総合的に判断して割の良い依頼は俺しか探せない。

 

「分かりました!女神として、皆さんを正しく導いてみせます!」

 

さてさて、何を取ってくるかな?まぁ、エリスだし大丈夫だろ……なんて考えていた事を、俺は心から後悔した。

__________________

 

「エリス、これが総合的に見てどこら辺が良いクエストなんだ?」

 

エリスが持ってきたクエストは

『ワイバーンの巣の索敵、または殲滅。報酬100万エリス』

 

「相手がワイバーンで巣までいくんだぞ?!アクセルの人間じゃどうしようもねぇよ!それに値段にも見合わない!」

 

ベテランでも受けないし、新人では死ぬ。なんでこれを選んだのか分からない。ホワイトウルフの群れと同じ?ワイバーンが?!

 

「確かにこの依頼は金銭の割には合いません。ですから半年も誰も手を付けて居ませんでした…でもカズマさん、依頼主の欄を読んで貰えますか?」

 

「えっと、『亡くした妻の形見の指輪をワイバーンに奪われました。その指輪さえ取り返してくれれば依頼は成功と認めます』へぇ…え?」

 

まさか?!

 

「あの、指輪を奪還する算段があるんですよね?」

 

「いいえ?」

 

「必勝法は?」

 

「そんなの、幸運の女神が知ってたら不思議じゃないですか?」

 

マジでか……

 

「この依頼は依頼主の心を救い、更に危険なワイバーンを狩ることで多くの人の命が救われます。何も悩むことはないと思うのですが…」

 

エリス……こいつは別方向の地雷だ!うなぎどころか天まで昇りかねない!俺の魂が!

 

「なんて献身!」「やっぱりマジもんの女神は違うぜ!」「英雄と女神はやる事が違う!」「エリス様!一生信仰します!」「ちょっとだけカズマを見直したよ!」

 

外野が言いたい放題だな…よし…

 

「エリス信者の皆!この戦いはきっと辛く険しいモノになる!皆の協力が必要だ!俺達と共に、夫婦の思い出を取り返そうぜ!」

 

…………あれ?静かになりましたね?

 

「カズマさん…あなたが一番、冒険者を分かっていますよね?」

 

ルナさんが俺の肩に手を乗せた。うん、そうだね。エリスの考えが少しだけ分かってなかっただけだよ?

 

「普通の冒険者にこれは無理な話だ。しかし、私の女神が行くと言うなら、その盾は常に前にある!」

 

ダクネス?なんで武器を持ったのかな?!

 

「えぇ、この依頼は英雄にこそ相応しい…今だけは、女神の矛となるのも悪くありません」

 

めぐみん?なんだそのやる気に満ち溢れた顔は?!

 

「奥さんの思い出…取り返してあげましょう」

 

ゆんゆん?君もかな?君もエリス派なのかな?!

 

「…私は、今回はパスしようかな…エリスが盛り上げた話に乗っかるのって、アクシズ教の皆を裏切るみたいになっちゃうし?」

 

どうしよう。アクアが反対だとそっちに付くのは絶対に嫌だな… 

 

「カズマさん…」

 

エリスが俺に耳打ちを…

 

「私、カズマさんが一緒に来てくれたら…今夜は何でもしてあげちゃいますよ?」

 

それは完全に卑怯だろ?!別にこんなの無くても尽くしてくれるタイプじゃんか!いやしかし、それを超えた奉仕が待っている可能性も…

 

「しょうがねぇなぁ!」

 

こいつ等全員死なせない為だ。俺も行く!…えっちな目的ではない!

 

「なんでよぉ!カズマさんが行くなら私も行く!」

 

結局うちのパーティーメンバー全員が参加となりました。

______________________

 

御者まで付けられて、途中で逃げることも出来ず…気が付いたらワイバーンの巣がある山に居ます。

 

「いや無理だろ…多すぎるだろ?!」

 

3m前後のワイバーンがざっと見て30頭、飛べない子供の個体が地上にワラワラと、かなり広域に分布している。

 

「魔王が倒れたことで弱体化した結果、ワイバーンが社会性を築くようになったって話を聞いたことがありますが…こんな事になるなんて…」

 

「待ってゆんゆん!何それ!これは俺のせいなのか?!」

 

「結果として、分布地が限定されるようになり被害が減ったのだから、カズマの行いは正しかったんだ。胸を張って良い」

 

ダクネスの顔は真顔だし、今回は本当にそうらしい。

 

「そう思わないとやってられないよな…」

 

しかし、俺には1つだけ策が無くもない。いや策とかの次元じゃないが…

 

「今回だが、めぐみんの爆裂で、ワイバーンを纏めてふっ飛ばそうと思う」

 

「さ、流石に広域過ぎます!カズマの信頼には答えたいですが…私にも限界が…」

 

「めぐみんだけの限界ならそうかも知れない、でも、俺達の限界はそこじゃない!」

 

親指を立てて、めぐみんに笑いかける。

 

「カズマ…わかりました!カズマの力、お借りします!」

 

めぐみんの目に光が灯る。あぁ、お前は最強の魔法使いだからな!

________________________

 

「それで結局これですか…カズマはパイプ役じゃないですか…」

 

灯った光は下火になりました。

 

「うるさい。これしか浮かんでないんだよ」

 

ドレインタッチで限界までエリスとアクアの魔力をめぐみんに込めている。さっきゆんゆんにやったが、めぐみんの過剰補給可能な量はとてつもなく大きい。

 

「潜在魔力量は多いと思っていましたが、私達の魔力をこんなに大量に受け止められるなんて……めぐみんさんは紅魔でも異質なレベルですよ…」

 

よく言ったエリス。コイツにそれは効く。

 

「と、当然ですよ。紅魔の歴史を塗り替える伝説!それこそが私です!」

 

「あとはエリスとアクアの支援魔法をありったけかける。可能なら…」

 

小瓶の液体を杖にかけてみる。これだけだと光らないか…

 

「俺の力を込めてやる」

 

俺が杖を一緒に握ったら光りだした。発動条件に俺が入ってるのか…

 

「これが、カズマの力?杖が魔力を増幅しています!」

 

「それ、エリスの力よね?さっきの瓶はなに?」

 

「せい水です」

 

言えねぇ…流石に中身は言えねぇよ…

 

「カズマさんの扱える私の力、もはや最高位の司教を超えています。聖水を触媒にしても、これほどの力は見たことがありません。やっぱり、その……愛の力でしょうか」

 

はい。愛の力と言うのは否定しませんが、バレたら殴られると思います。

 

「何が愛よ!アクシズ教に入ったらもっと凄いの使えるんだから!」

 

それは嫌です。等と言っていたらめぐみんが親指を立てた。

 

「十分です!行けます!」

 

「よし!ゆんゆん、そっちの魔力は?!」

 

「馴染んでます!こっちも行けそうです!」

 

魔力の過剰補給は今後の戦略に使えそうだ。なんか副作用があったら困るので、ちゃんと調べる必要はあるけど…

 

「ダクネス、アクア、頼む!」

 

「『フォルスファイア』!」

 

「『デコイ』」

 

遙か遠方に見える影がこちらに向かってくる。正直二人のこのスキルには良い思い出が無かったが、こういう時は頼もしい。

 

「ワイバーンは獲物を狩るときに急降下します!首を下げたら一斉に来ますよ!」

 

こういう時、真面目なゆんゆんの知識はありがたい。最前線のダクネスにありったけの支援魔法をかけ、タイミングを図る。

 

「ゆんゆんさん!2頭だけ先行しています!」

 

エリスが先に飛び出したワイバーンをゆんゆんに知らせる。

 

「わかりました!『ライトオブセイバー』!あれ?!」

 

普段のモーションで放ったライトオブセイバーは、標的の後ろに居るワイバーンまでまとめて撃ち落とした。女神の支援魔法ってスゲーな…

 

「地上からも来てる!ダクネスの前!」

 

「良く気付いたアクア!」

 

幼体2頭、取り敢えず1頭に向かって

 

「『狙撃』」

 

流石にこの武器でワイバーンは仕留められないだろうけど、せめて時間稼ぎに!

 

「ぎゃあぁ!」

 

眼球に直撃して即死した…どんな確率を引き当てるのか…

 

「私、たまにエリスが本当に憎らしい時があるの…運だけで生きていけるヤツって正直腹立たない?」

 

「気持ちは理解するが、今はそれに救われているから飲み込んどけ」

 

「なんかごめんなさい!」

 

エリスが美人で良い子じゃなかったら、俺も多分嫌いだったと思う。

 

「そんなことを言ってる場合か!来てるぞ!」

 

残る1頭を身体で受け止めながら、ダクネスが警告する。噛じられてるのになんでそんなにクールなんだお前は。

 

「『ライトオブセイバー』カズマさん!めぐみんの所へ!」

 

ゆんゆんの支援でダクネスが脱出。陣形は整った。後は俺が!

 

「掴んだ!行けめぐみん!」

 

俺がめぐみんの杖を一緒に掴む。淡い光を放った杖からは、普段より膨大な魔力を感じる。いや、素人の俺にわかるレベルってヤバくないか?!

 

「刮目せよ!女神の力さえ我が物にしたこの一撃!そして知るが良い!これこそが最強にして最大!比類なき究極の力!」

 

めぐみんって、この即興の台詞を加えてもタイミングピッタリだから凄いと思うわ。職人だわ。まぁそもそもこの台詞要らないけど。

 

「『エクスプロージョン』!」

 

今までに見たことがない程の無数の魔法陣。そこにはエリスとアクアが使う魔法陣も並び、魔力の流れがハッキリと目に見えた。

 

「カズマ、不味いです!!ここも消し飛びそうです!」

 

「マジかよ!どんな破壊力だ!射程の計算ミスか?!」

 

「違います!私の最大射程以上の爆発範囲です!山が、山が消し飛びます!!」

 

えぇーそんなことあるの…欠陥魔法じゃん…魔法陣の中心が白い光を放ってるし、コロナタイトもビックリだよ。

 

「よし!テレポートで逃げよう!ダクネス!早く来い!」

 

「だめだ!ここに送ってくれた御者が麓にいるだろう!」

 

あぁ、そう言えば……

 

「だから!私は引けない!」

 

「カズマさん!何とかしてください!御者の方も、死なせるわけにはいかないです!」

 

エリスの言うことも分かるけど…もうこれに賭けるしかないか!

 

「全員伏せろ!ダクネス!」

 

瓶の蓋を開けてダクネスにかける。これは原液だ、多分相当強化される筈!

 

ビシャッ

あっ顔に…

 

「ぶはっ!こんな時になんだこれ!流石に私も怒るぞ!」

 

「良いから!俺を信じて防御姿勢だ!」

 

ダクネスの体に触れると、やはり光が発生する。

 

「エリス!アクア!ありったけの支援魔法を俺たちにかけろ!かけたら耳を塞いで伏せろ!」

 

こんな賭けになるなら来なきゃ良かった!

 

「カズマさん、もし賭けに出たのなら、私が付いています!」

 

「エリス…そうだな!勝って帰るぞ!」

 

先頭のダクネスの背中に手を触れる。ふっ飛ばされても死ぬ。ダクネスが耐えきれなくても死ぬ。それでも、今はこれしかない!

 

「頼むぞダクネス!お前の騎士道に、俺達の命を預ける!」

 

「カズマ…任せろ!私はクルセイダー。愛するものと信じるものがどちらも後ろに居る状況で、私は絶対に倒れない!」

 

ダクネスの咆哮が響き、重ねるように爆裂魔法が炸裂した。

_________________________

 

「マジかよ……」

 

激しい衝撃が収まり目を開けると、俺たちがいた山はまるで何も無かったかのような平原になっていた。いや、ダクネスの後ろだけ、Vの字に山だった時の名残が残っている。

 

「信じてたよ。お前をさ」

 

「まったくそんなこと、倒れたままで言うことか?」

 

はい。俺もダクネスもズタボロです。あともう少し爆心地に近かったら死んでたと思います。

 

「カズマ様!大丈夫ですか?!さっきの光は一体!」

 

御者のおっちゃんが駆け寄ってくる。良かった無事だった…

 

「激しい戦いの結果です。あっちのクルセイダーに着替えを届けて貰えますか?」

 

「直ぐにお持ちします!怪我人は?」

 

「ダクネスをヒールしたから怪我人はカズマさんだけよ。ほら、治してあげる」

 

ナイスだアクア!女神の魔力量ってすごいな。

 

「まぁどうあれ、我々の大勝利です!」

 

「「「おぉー!」」」

 

めぐみん達が勝ちどきを上げていますが、ここで疑問が1つ。

 

「エリス。指輪は?」

 

「……山と一緒に消し飛びましたね」

 

「「「「あ!」」」」

 

こんな死ぬ思いまでして、こんなオチあります?

______________________

 

「申し訳ございませんでした!」

 

アクセルの外れの一軒家、俺とアクアとエリスは指輪を消し飛ばしてしまった事を依頼主に謝りに来ている。残りの3人は先に帰宅している。汚れたもんな…

 

「いいえ、あなた達はワイバーンを討伐してくれました。これは報酬です」

 

「奥様の思い出の品を奪い返せなかった私達に、これを受け取る資格はありません」

 

エリスは丁寧に謝罪し、差し出された報酬を男性に押し戻した。

 

「良いのです。妻ならここに居ますから…」

 

「はい、アクア様のお陰で」

 

は?

 

「あー!アルダープの件で蘇生した人よ!」

 

いや、そんな偶然ある?

 

「あの時はアクア様に救って頂き、憎きワイバーンをエリス様に討伐して頂けるなんて…このような奇跡はありません。本当ならギルドの依頼を取り消そうかと思ったのですが、あのワイバーンの存在を知って貰うために、そのままにして居たのです」

 

へー。話がうまく行き過ぎじゃない?

 

「知ってるカズマさん?今までだったら、山の賠償とか色々あったわよ」

 

「だろうな…あの山って買い手が付かなかったのに、これなら農地に出来るって高く売れたそうだし…」

 

俺の高い幸運は、なんのためにあったのだろう。

 

「不運な女神が居たからかなぁ…」

 

「ちょっと!確かに運は低いけど、私が側にいるだけで幸運でしょ!」

 

うわぁ、イラッとする。

 

「報酬は頂けました。では、帰りましょうカズマさん」

 

「そうだな。1日で1人20万だって考えれば悪くないし…ギルドに報告に行くか…」

 

時間は夕暮れ。今日は完了報告をしてギルドで夕飯だろう。

 

「でも、エリスがクエストを選ぶときは俺も行くからな?」

 

「え?私なんかやりましたっけ?」

 

「死ぬところだっただろ!もうこんな無茶はゴメンだ!」

 

俺の仲間は何処かに地雷要素がないと駄目なのだろうか…取り敢えず今日は早く帰って休もう。

 

『緊急クエスト発令!緊急クエスト発令!全冒険者!全教会関係者の皆様は、大至急冒険者ギルドにお越しください!特にカズマさんのパーティーは早く帰ってきてください!』

 

どうやら俺の安息は遠退いたらしい。エリスって幸運の女神なんですよね?!

 




今回も最後までお付き合い頂きありがとうございます。

次回も続けて日常回です。

またお暇な時にお付き合いお願いいたします。
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