大抵の方は気付いていると思いますが、カズマの持ってるチートアイテムについてのネタと、神様のデメリットネタです。
めぐみんが山を消し飛ばし、やっとの思いで街に戻った俺達は、緊急クエストでギルドに留まる羽目になっていた。
「近隣で大量のアンデットモンスターが発見されました。しかもこの街に向かっています!いま教会にありったけの聖水と、協力して頂けるプリーストの方の派遣をお願いしています」
「なぁ、帰っちゃだめ?教会に任せたら専門家だろ?」
「駄目よ!」「駄目ですよ!」
女神二人はこういう時は結託する。めんどい。
「エリス教会に所属のプリーストは40名くらい居ますよね?なんで派遣されたのは半分以下なんですか?」
「その、冒険者ではないので、こちらから要請が出来ないんです…」
この街にアンデットモンスターなんて早々来ない。ベルディアが来たときにもアレだけ混乱したんだ。そんなに大量の聖水があるとは思えないが…
「プリーストが思ったより少ないけど、アンデッド狩りは本分だろ?…俺を糾弾した時は熱心なのが沢山居たように見えたんだが…」
「あまり考えたくはありませんが…信仰心が無くてもステータスさえ満たせばプリーストは名乗れます。それで金銭を得ているような方も居るんでしょう…でも、信仰心が無いとアンデッドは祓えません…」
なるほど、この状況は評論家を前線に立たせるような状況か…しかも、実力が伴わなければ死ぬと…
「おいカズマ、お前ターンアンデットは出来ないのか?」
ダストの指摘に気付く、俺は冒険者なのだから覚える事は可能だ。
「そうだな。エリス、教えてくれ!」
「え?!大丈夫ですか?!」
大丈夫ってなんだよ…
「カズマさんって、魔力量が多くないですよね?私への信仰で放ったら…」
あ、なるほど。駄目そう。
「アクア、教えてくれ!」
「どういうことよ!私への信仰は少ないっていうの?!」
「うん。当たり前じゃん」
「なんですってぇー!」
こんな馬鹿な言い合いの後、一応二人共教えてくれました。ごめんなアクア。アクシズ教は無理だよ。
__________________________
ある程度人が集まって来た。ギルドではルナさんが情報を整理して、ボードに張り出している。
「城壁から確認していますが、完全に四方をアンデッドに囲まれています!何故か真っ直ぐに街に向かっていて、かなり接近しないと敵対もしないとの事です!」
「まるで何かを目指しているようだな…」
「悪意あるネクロマンサーの攻撃か?!」
「強力な魔術の可能性もあるぞ」
既に万事休すな状態。元魔王軍の可能性を加味するならセレナだが、これほどの数は扱えない。
「ルナさん!聖水が届きました!」
他の受付嬢達が聖水を運び込むが、やはり数が心許ない
「これだけ?普通に店でも売ってるだろ?」
「冒険者の命に関わる状況です。品質が保証された物しか使えないんです。当てにならなくて死んでしまう位なら、聖水が無くて逃げてもらった方が…」
なるほど、それなら確かに仕方がない。しかし、それならちゃんと検査すれば良い。
「それなら判別可能な方法があるかも知れません」
「本当ですか?!」
バニルとウィズに連絡するか…
__________________________
「へいお待ち!聖水判定装置の納品である!」
「納品書はこちらでお願いします!」
話を聞いてバニルとウィズが早速用意してくれた。金になる話だと早いな…
「小僧、貧乏店主の切った髪が欲しいなど特殊性癖の目覚めかと思ったが、こう言う事か」
「ビックリしましたよ。その…私をご所望でも構いませんのに…髪の毛だなんて…」
ここでその言い方だと、聖水をかけられるハメになりそうだぞ?
「みなさん!こちらの紙に糸がついてます!優秀な聖水なら糸が溶けますが、偽物なら溶けないそうです!これで判定してください!」
ルナさんの説明を聞いた冒険者が、1滴ずつ聖水を試している。中々にシュールな光景だが、命がかかっているので仕方ない。髪の毛1本、5ミリで300エリス。中々悪くない商売だと思う。
「教会支給品の2割が不良品ですね…古い物が混ざっていたのか、悪質なプリーストが居たのか…お店で売ってるモノは、不良品は無くても数が多くなくて…」
ルナさんが苦い顔をする。意外なことに、アクシズ教の聖水には不良品が無かったらしい。
「私の信者は…やっぱり心からの信者なのね!」
「そりゃ、マジモンの信者じゃ無かったら、奇人の集団には参加しないだろ」
俺だって嫌だもん。アルカンレティアの奴らと同一視されるの
「…ゴッドブロー」
ボコッ
「いってぇ!何すんだ!」
「少し位の個性は良いでしょ!今回は街が救われるんだから!」
まぁ、今はそう言う事にしておくか…個性に収まるとは思わないけど!
「駄目です!これでは少なすぎます!」
集計役の職員から声が上がる。どうやら参加する冒険者の数に対して聖水が足りないようだ。
「最悪の場合、投げるのは禁止、武器に塗って使う方向で…プリーストの皆さんは可能な限り、武器に祝福を付与してください!」
なんか物凄く焦ってる。
「なぁエリス、聖水の有無でそんなに違うか?」
「多少腐っても人間強度の魔物が、聖水をつけた武器なら煮込んだ大根くらいになると思ってください。投げ付けた場合、上質なら飛沫の1滴でも消滅します」
「…そんなにか」
ルナさんの機転で何とか戦闘準備を進めるが…そうか、聖水が足りない…ん?ひょっとしてアレなら代用できるのでは?
「皆、俺はこの街の人を救いたい。手を貸してくれないか?」
パーティーメンバーに向き直り、一応確認を取っておく。
「当たり前だ。何でも言ってくれ!」
ダクネスは心強く返事をする。よしよし言ったな?
「無論です!命をかけて守る理由がここにはあります!」
めぐみんも乗っかってくれた。命とまで言ったか
「私もお友達を守りたいです!」
ゆんゆんもオッケー。あとはメインの二人。
「もちろん!借金が無いんだから、今は愛すべき街よ!」
はい、アクアさん言質を取りました。
「私の愛する人々は、一人たりとも死なせたくありません!」
はい、エリスも言質ありがとう。
「よし、ルナさん、ありったけのポーション瓶を用意してくれます?」
「当てがあるんですか?!こちらにありますので、お願いします!」
「よし、アクアとエリスは皆の武器に祝福をかけてくれ!めぐみん、ゆんゆん、ダクネスは手伝え!」
俺たちは大量のポーション瓶を持って、一度屋敷に向かった。
________________________
「魔王がアクアの髪を編み込んだお守りで手を火傷してたんだよ…それなら、こう言う物で代用が効くと思わないか?」
と言うことで浴室に来ました。
「お風呂の残り湯…カズマさん、その発想は犯罪者の…」
「うるさい。人々の命がかかってるんだから、しょうがないだろ」
ゆんゆんの言う事も分かるが…取り敢えずウィズの髪を…
「じんわりと溶けてはいくが、これでは薄すぎて使えないだろう…やはり他の方法を探すしか…」
「濃度か…これとこれ、これも入れてみるか…」
脱衣場の洗濯物。アクアとエリスのパジャマを入れてみる。
「少しだけ濃くなったか?しかし…やってることが完全に変質者だな…」
ダクネスは乗り気では無いが、領民の命がかかっているので反対はしない。
「仕方ないだろ。なんでも良いから他にないか?人の命がかかってるんだぞ?」
そこにめぐみんがシャツを持ってきた。それ、見覚えがあるんですが…
「カズマのシャツを2枚持ってきました」
「俺のでどうする!」
「良いから入れますよ」
シューッ
「ウィズの髪が…ついに俺にも聖なる力が?!」
「そんな訳ありません。そのシャツはアクアの部屋とクリスの部屋にありました」
何に使ったんだろう…
「しかし、もう少し欲しいな。アンデッドが即死とまで行かないのであれば、消滅までに使用者に危険がある」
ダクネスの意見はもっともだ。となれば…
「仕方ない。ダクネス、俺のマットレスとシーツを運ぶから手伝え」
「「「え?!」」」
なんですか皆さん?いきなり目付きが変わりましたよ?
「ベッドシーツはともかく!マットレスはやめませんか?!」
「何だよめぐみん、さっきまであんなに協力的だったじゃないか」
「そのマットレス!私達の色々なモノが染みてますよね?!」
あぁ、コイツ昨日は不在で、風呂には自分のモノが入ってないからって…
「街中の人に…私の体液を所持されるのか…くぅ!」
ダクネスはもう色々と駄目だ。しかし、ここで俺達の気持ちの話はしていない。人命を前に、してはいけない。
「はい、投げ入れまーす」
ボチャッ
さようならお高いマットレス。新しいの買おう。
ジュッ!
「めっちゃ溶けた?!いけるぞ!みんな、詰めろ詰めろ!」
「うぅ、なんでこんな変態の所業に手を…」
「お友達のため…お友達のため…」
「うぅ、エリス…すまない」
そして用意された大量の聖(性)水。俺たちはそれを持って再びギルドに向かった。
______________________
「ルナさん!これを!」
「確認します!……すごく上質じゃないですか?!」
瞬時に検査用のウィズの髪が蒸発した事で、ギルドの皆から歓声が上がる。
「流石はカズマだ!」「信じてたぜ!」「これで勝てる!」
「支払いは、この戦いが終わったら必ず!全員へ配備!殲滅戦を始めますよ!」
配備が始まり、各メンバーの配置が決められていく。俺達が装備の確認をしていると、そこにエリスとアクアが帰ってきた。
「はぁ、何とか終わったわ…今日は仕事し過ぎよ!もう帰りたい!」
アクアは結構疲れているな。
「駄目ですよ先輩!私達が一番アンデッドに強いんですから」
エリスも気丈に振る舞っているが、相当疲れが見える。しかし、俺に女神を回復する手立てはない。
「先遣隊より通達!あと10分で城壁からの射程に入ります!」
「もう猶予がありませんか…みなさん!緊急クエスト…開始です!!」
__________________________
緊急クエスト『アンデッドの襲撃を食い止めろ』
南門、アクシズ教会、騎士隊。後方にアクア
北門、エリス教会。後方にエリス
西門、冒険者一同
東門、カズマ1行
「俺たち少なくない?!」
一応、ウィズたちが助っ人で来てるけど
「仕方ないだろう…崇める女神が参戦するとなれば、教会は全員参加せざるをえない。人手を確保するにはこの方法が確実だ」
ダクネスの言うことも分かるが…うちのアンデッド専門家が実質ゼロじゃんか!
「戦力的には悪くない。吾輩と恋愛脳が戦いやすいと言う意味では、これで良かろう」
「誰が恋愛脳よ!坊やの為に、私も色々準備してきたの…その、私が戦闘力を持つことは不安かも知れないけど…」
心強い!なんでコイツは魔王軍に居たんだよ!あとチ○コも無ければ戦闘系メインヒロインじゃないか!
「なぁカズマ…シルビアが生きているのにも驚いたが、アイツが戦える状態なんて、大丈夫なのか?!」
あ、ダクネスは知らないんだな…奴は恋する乙女のカリスマに生まれ変わったんだぞ?
「シルビアが戦力になる事に、俺はもう不安はないよ。仲間だもんな!」
サムズアップ
「…えぇ!今の私は凄いわよ!」
シルビアの笑顔が眩しい。神様、なんでアイツが男なんですか?うん、心の中のエリスが知らないって言ってる。
「そうか、ならば私も信じよう!仲間だからな!」
しかし、どうやって戦うんだろう?この街に取り込める魔物なんて居ないし、何を取り込んだら戦えるんだ?
「盛り上がってるところで言い難いのですが…今日の分を撃ってしまった私はどうしたら…」
「めぐみん、俺の予想が当たったら多分北門がヤバい。情報の取りまとめと、可能なら北区の住民に避難誘導を頼む。保険として、この残り湯じゃない「せい水」を渡しておく」
「分かりました。エリス様の手前、誰も死なせる訳にはいきませんからね!」
「あぁ!頼むぜ!」
さて、俺達はこの門の防衛だ。こう言うのは勢いが大切だからな…
「行くぞ!みんな!俺に続け…」
勢いよく門から出ると、視界を埋め尽くすアンデッド。こんな映画見たことあるわ…ジャンル的にはパニックモノだわ。
「ヒェッ、撤退!」
人生で一番軽やかなバックステップ。無理だろ!見ただけで逃げ出したくなる数だぞ?!変な声出たわ!
「本当に小僧は…仕方ない」
バニルがアンデッドに指を指すと、大量のちびバニルが地面から生えて来た。
パチッ
そして指パッチンで一斉に爆破。めぐみんより高効率で同等の効果を生み出す。仲間だとなんて頼もしい!
「さて、私も負けてられないわね!」
シルビアは3mくらいあるデカい剣を軽々と持ち上げている。
「そんな怪力キャラだったのか?!」
「違うわよ!虫の身体機構を使った肉体変化よ!魔法には対応できなくても、アンデッド相手ならこれで充分でしょ!」
なるほど、虫のパワーとか仮面ラ○ダーみたいで格好いい!虫ならそこら辺に居るもんな。
「どらあぁぁ!!!」
男性部分が出すぎですシルビアさん!しかし、ぐちゃぐちゅに潰れるアンデッド達…やだ素敵!
「『ボトムレス・スワンプ!』進路を限定しますので、迎撃お願いします!」
ゆんゆんは足場を沼地にして進行を遅くしている。魔力が不足しててもこの娘はやっぱり出来る子!
「なぁカズマ…今回私はどうしたらいい?」
アンデッドの敵対距離が短いって言ってたし、盾は無理だよな…
「ダクネスって、アンデッドの爪とか歯は通るのか?」
「いや、かすり傷もつかないと思う」
じゃあ、最低だけどこれ使うか、ダクネスの剣に残り湯をかけ、
「『フリーズ』はい、これ」
「…うん、普段なら氷の魔法剣とかカッコいい流れなのに、中身を知っているとなんとも言えないな…」
「そう言うな…当たらないお前でも使えるから」
「そうなのか?!ちょっと行ってくる!」
その武器は当たらなくて良いんだ。溶けた残り湯が飛沫として飛ぶから…
「倒してる!私が敵を倒しているぞ!どうしよう!なんだこの充実感!」
凄い凄い。でも、剣が届く範囲より、その周りが倒れている事に疑問を持とうな?
「小僧、お前の予想通りだ。アンデッドの大半が北に移動を開始した」
やっぱり…
「お前ら、ここは頼む!俺はエリスの元に行く!」
あの疲労感でこれは不味い!エリス教会だって、言うほど使えるとは思えない。
「そうですね。既にエリス様はピンチと言えます」
門から離れた俺の元に、天使がなんの演出もなく出てきた。こいつが無駄な事をしないって言うのは、本当に余裕がないって事だろう。
「わかってる!だから策を考えながら急いで…」
ガシッ
天使に肩を掴まれる。
「カズマさん、ドレインタッチは、粘膜接触なら更に効率が上がります」
「お前、それって!」
「吸ってください…私は、貴方になら…」
「…ありがとう」
俺は右手で、目を瞑った天使のあごを持ち上げ……
「ごめんな」
ズボッ
左手を喉に突っ込んだ
「…んん!」
「『ドレインタッチ』」
「あがあぁぁ!!」
粘膜からのドレインタッチ、これは凄い効率だ!魔力ポーションも顔負けの回復量!せっかくだし、限界ギリギリまで貰っておこう。
「ありがとう、天使様!」
「……どういたしまして…うぷっ」
なんか睨まれてる…キスで吸われるつもりだったのかな?でも、流石にそれは悪いし
「ごめん…今度ラーメン作りに行くから!」
「…バリカタでお願いします…あと、三杯は貰いますからね!」
天使が消えたので、俺は再び走る。見えてきたのは……
「立ってエリス様!」「頑張ってエリス様!」
前線を維持するエリス教会、疲弊したエリス。そして多くの街の人だった。
「カズマ、駄目です!信者を名乗る人達がエリスの応援を!」
駆け寄ってきためぐみんが焦っている。ここに街の人が居たらエリスが下がれないし、俺らもエリスのところへ行けない。
「これでは消耗戦です!一時的に下がる事も出来ません!」
「これくらいなら任せろ。めぐみんが居れば、人なんて簡単に散らせる!杖を構えて魔力を込めろ!撃てなくていい!」
「分かりました!信じますよ!」
めぐみんは杖を構え、両手に魔力を込める。そして俺は…
「あぁー!頭のおかしい子がアンデッドをふっ飛ばすつもりだ!威力がおかしいからここら辺まで消し飛んじゃう!」
声はただ届けば良い。必要なのは
「頭のおかしい子だ!」「爆裂娘だ!」「アイツはマジでやるぞ!」「早く逃げろ!門から離れるんだ!」
めぐみんの実績!蜘蛛の子を散らすとはこのことだな、7割は減ったぜ!
「納得いきません!私の称号は、魔王討伐の英雄って肩書で上書きされた筈ではないのですか?!」
そう簡単には行かないんだよめぐみん…俺が一番良く知ってる…
「エリス!大丈夫か?!」
「すみません、かなり消耗しています…」
後ろに下がってる怪我をしたプリーストが何名か居るな…
「あんたらは、魔力を使い果たした連中か?マジックポーションがあれば戦えるか?」
「いえ、そちらにいるのは、祓えない人達です…」
あ、語るだけの奴らか…結構いるんだ…
「おい、街の人!このなんちゃってプリーストをギルドに運んでくれ!ここだと邪魔にしかならない!」
「おい!なんちゃってとは何だ!卑怯な英雄には言われたくないぞ!」
おやー?身に覚えがある称号ですね?
「じゃあ、聖なる力で戦おうか…めぐみん、エリスを下げる。肩を貸してやれ」
先ずはエリスを後方に
「モンクのみなさーん!後ろでポーションを貰って回復してください!残った街の人達も、ギルド支給ポーションの配布を手伝って!」
「すまない!俺はお前を勘違いしていた!」「これが英雄か…助かったぜ」「俺達は守りきれなかった!あとを頼む!」
モンクの皆さんは、エリスへの気持ちには嘘が無かったらしい。なら軽蔑はしないよ。個人的には大嫌いだけど!
「さて?なんちゃってでは無い筈の皆さん?食い止めましょうか」
「貴様正気か?!」「この数をだと?!」「ひぇぇ!お母さん!」
そこはせめてお母さんじゃなくてエリスに祈れよ。
「神父様頑張ってー!」
お、俺に卑怯とか言った子供が見ている。つまり、この中に個人的に俺が嫌いな奴も居るな…
「じゃ、俺が先に…エリスの力、借りるぜ」
残り湯を5本分、ちゅんちゅん丸の刀身に
「『フリーズ』!」
使ってみたかったこの長さ。氷の日本刀!
「おお、かっこいいです!冷えているので、ひゅんひゅん丸と名付けましょう!」
めぐみん、だせぇ!しかも、アンデッドにしか効かないので、多分もう使わない。
「おらぁ!」
横薙ぎの一閃、驚きの軽さと手応えの無さ!しかし真っ二つになるアンデッド達!コレは気持ちいい!
「マジかよ…」「あれが英雄…」「教会で聞いてたのと違うぞ!」「カズマさん!がんばってー!」「素敵!」「かっこいい!」
あぁ!俺が街の人に英雄あつかいされている!なんだこの感覚!素敵!
「ターンアンデッド!ターンアンデッド!」
俺の隣で呪文だけ立派なプリースト達。ほらほら、アンデッド来てるよ?もっと俺を引き立てても良いよ?
「カズマ!プリースト側から何体か抜けました!子供達の方に!」
「アクア版『ターンアンデッド』!」
3メートル程度の魔法陣がアンデッドを浄化する。行ける!アクア版は程よい消費だ!…うん、なんかゴメンなアクア…
「おい、本当にあいつらはなんちゃってなのか?!」「あんなにお布施を払ったのに?!」「騙していたの?!」
俺は目の前の群れを気持ち良く薙ぎ払って、なんちゃっての皆さんに向き直る。
「さぁ、アンデッドが祓えない皆さん?あなた達の職業は何かな?」
「こ、これは何かの間違いだ!エリス様の力が消耗しているから!」
ほう、ついにエリス様のせいにしましたよこいつら、
「エリス様はお前らも見捨てず守っていただろ!」「最初から何も倒せてないじゃないか!」「この詐欺師共!」
住民にこれだけ言われたんだ。もう醜態は十分だろう。二度と金目的に信仰の悪用は出来ない筈だ。あ、物は投げないで?俺にも当たりそうだから
「エリスの力ねぇ…エリス版『ターンアンデッド』」
俺から広がる魔法陣は20m。抑えたつもりだけど、結構消費したな…でも、ちゃんとアンデッドは消滅したので、効果は保証付きだ。
「エリスの力って言うのは…これか?」
「く、くそぅ!冒険者のお前なんかがなんで!」
「おい、それ以上続けるなら、私も口出しする事になるぞ?」
「おっ、ダクネス思ったより早かったな」
「ダスティネス卿の娘か…くそっ!」
逃げていくなんちゃってプリースト達、ちょっぴりスカッとしたわ。二度とエリスの名前を語るんじゃないぞ。
「北門以外は殲滅した。と言っても大半がこちらに移動したようでな。こちらにもじきに援軍が来る。アンデットと一緒に…」
ありがたいと言うべきか、そっちにもっとアンデッドが行っていればと言うべきか…
「カズマさん!待たせてごめんね!エリスは無事よね?」
アクア、お前がこんなに頼もしい事があっただろうか
「カズマさん、ウィズ魔法具店の皆さんと、夢のお店の皆さんは街から離れるとの事です。なんでも、「纏めて祓う時に邪魔になる訳にはいかない」との事で」
ゆんゆんが預かった伝言は恐らくバニルだ。アイツがそう言うからには、そう言うチャンスがあるんだな…
「エリス様!」「なんだ、だらしねぇな!エリス教会!」「信仰心が足りねぇんじゃねぇか!」
冒険者組も到着した。それにしても、あいつら元気すぎないか?
「エリス様の祝福が強力でよ。俺らの武器はアンデッドを一刀両断。幸運で相手の攻撃も当たらねぇときた!それに、お前の聖水もあったしな!」
ダストも無傷で余裕そうだ。そりゃエリスも消耗するわ…
「さぁ、アンデッド共に教えてやれよ英雄!自分達が誰に喧嘩を売ったのかをな!」
機織り職人のおっさんに背中を押された。
「私がちょっとだけ時間を稼いであげるわ!キメてやりなさいよ!」
アクアが俺に親指を立てている。そんなキャラじゃないだろ俺…
「スベっても、俺らは手を貸してやるぜ?」
キース、そこ心配するならやらせんな!
「はぁ、しょうがねぇな!みんな、守るぞ!俺達の街を!…俺達の女神を!」
「「「おおぉぉ!」」」
セーフ?セーフだよね?!
「そんな不安そうな顔をするな…締まらない奴だな…」
ダクネスには呆れられましたが、これが俺の限界なんです!
_________________________
冒険者が前線を押し返している。絶好調過ぎて、俺の英雄感が霞んでしまう。ほら、なぎ払いで10体とかやめろ!
「エリス、俺には武器があるから…『ドレインタッチ』」
「すみません、カズマさん…本当なら、私が人々を守らなきゃいけないのに…」
天使から預かったありったけの魔力を送り込む。俺が受け止められる限界値だから、全然足りないとは思うけど…
「私のも使ってください。どうせ爆裂魔法には足りませんから」
「めぐみんさんも…ありがとうございます」
これで何とか普通に活動できるレベルになったが、城壁周りにみっちり詰まっているアンデッドを相手にするには足りないよな。
「おいカズマ、俺の魔力は使えないのか?」
「ダスト?良いのか?」
「信仰心だけじゃ足りねぇんだろ?使ってくれ!」
ダスト…お前…
「まぁ、正直もう疲れたし…帰り際にそれくらいしとこうかなって」
いや、お前…
「俺も魔法は使えねぇし、倒れない程度にやってくれ!」「俺のも良いぞ!」「黒魔道士の魔力も平気か?」
代わる代わるエリスに魔力を渡しに来る冒険者。これが信頼!俺の時には絶対しないじゃんお前ら!
「皆さん…ありがとうございます!」
エリスが少し前に出る。
「もう大丈夫か?全然魔力が足りないだろ?」
「いいえ、魔力と一緒に信仰を頂きました。それに、上質な聖水がこの街に私の力を満たしています。これなら、まとめていけます!」
なんでエリスの魔力で満ちているのか…その上質な聖水はなんなのか…追求されたら俺が終わる!
「みんな!配られた聖水をアンデッドの方に投げつけろ!一本も残すな!エリスがぶちかます!」
「おう!」「出し惜しみは無しだな!」「頼むぜエリス様!」
よし、証拠は消えた!
エリスの身体が光に包まれ、足元に現れる魔法陣。それはどんどん大きくなり…ついにはこの街を包む程に巨大になった。
「カズマさん手を…あなたの愛と信頼が、私には何よりの力です!」
「あぁ、俺は誰よりも、エリスを信じてる!見せてやれよ!女神の力を!」
手を強く握り返すと、空に、城壁に、大量の魔法陣が並ぶ。いや、凄いな本気の信仰を得た女神って…
「いきます!『セイクリッド・ターンアンデッド』!」
眩い光が魔法陣から溢れる。それは、街を昼のように照らし、あとに残ったのはいつもの平和な街の景色だった。
「…アンデッド、完全に殲滅を確認!敵感知にも反応なし!私達の勝利です!!」
ルナさんのアナウンスが流れ、俺達の戦いは終わった。
「勝ったぞー!」「一生信仰しますエリス様!」「カズマ、やっぱりお前は英雄だ!」「信じてたぜ英雄!」
「報酬は冒険者カードを確認して明日お渡しします。皆さん、今日はゆっくり休んでください」
と言うことなので、俺達も今日は帰ろう。
「ほら、エリス帰ろうぜ?」
「あ、えっと…少しだけ待って貰えると…」
エリスはペタリと座り込んでいる。魔力切れだろう。無茶しやがって…仕方ない。
「あの、重くないですか?」
「軽いよ?めぐみんで慣れてるしな」
俺がエリスを背負って帰路に付く。女神モードだとちゃんと柔らかな感触があるな…
「ねぇ、カズマさん…」
あ、俺を卑怯扱いしてたガキだ。
「ごめんなさい!カズマさんは本物の英雄だった!あとね…平和な世界を、ありがとう!」
「気にすんな。俺は惚れた女を守っただけさ」
「…もう、カズマさんったら…」
エリスが照れてる。かわいい
「ねぇ、カズマさんはエリス様を愛してるの?」
「おう、坊やも好きな女の子が出来たら、その子の為に強くなれるぜ?」
あれ?今の俺…完全に英雄じゃない?!勇者じゃない?!
「でも、カズマさんの周りって女の人いっぱい居るよね?他の人はただの仲間なの?」
……·いや、それ聞くの?
「違うのよ。私が正妻のアクア、街に広めなさい」
おいこら!
「私が本妻のめぐみんです。間違えてはいけませんよ?」
お前もか?!
「…えっと…ありがとう、卑怯じゃないけど性欲魔人のカズマさん…」
ダッ!
凄い勢いで走りさったな!
「待って坊や!俺の話を聞いてぇ!」
俺のイメージは、まだまだ回復出来そうにない。
________________________
「またこの街を救ったわね!」
「私は撃ってないので不完全燃焼ですが…」
帰宅して脱衣所にエリスを運ぶ。アクアとめぐみんは気楽なもんだ。
「しかし、なんでこんな異常事態に?魔王軍はもう居ないはずだろう?」
「それなんだよな…理由が分からないとまた発生する可能性もあるぞ?」
ダクネスと俺は懸念を持っているが、どうしてもその理由が掴めない。
「ダクネス、ひょっとしてアンデッドを呼び寄せるアイテムとか使ってないわよね?」
アクアさん?貴方も犯人候補ですよ?
「な?!持っては居るが、今は使ってないぞ!」
「いや持ってんのかよ!」
嫌だわコイツ!
「昼間のワイバーン戦で付けていたが、爆発で汚れたので取り替えたんだ…」
「ちなみに、どんなアイテムなんだ?」
「ヘアピンだ。流し込む魔力の量に合わせてアンデッドからヘイトを稼ぐ距離が変わる。私の魔力ならせいぜい30mと言うので、普段から使っても問題ないんだ!」
思考が巡る。ワイバーン戦、原液を顔にぶっかけ…俺が触れて…増幅して…街に来てから外した…
「なぁ、これって…まさか」
「カズマさん…時に沈黙は金です…幸いにも、被害者は出てませんから…」
遂にエリスが悪いこと言い始めた…分かるけど…
「カズマさんのせいで、うちの後輩が不良に…」
「先輩?!天界規定違反を強要したの忘れてませんからね?」
「そ、そんな事もあったかも…」
駄目じゃん女神達…
「ところで、今日くらい…皆で入っても良いですよね?」
脱衣所で、エリスからそんな魅力的な提案が出た
「そうですね。今更なにも問題ありません」
「カズマの背中くらい流してやろう」
めぐみんとダクネスが乗り気?それなら、俺は遠慮しないよ?
「私はカズマさんとでもいいんですが…あの、でも…今はまずいと…」
ゆんゆんは少しだけ懸念があるらしい。女の子の日だったりするのだろうか?
「私は良いわよ?もう全部見られちゃったし」
アクアが許可したので反対は無し!
「じゃあ、お願いしまーす!」
俺もノリノリで服を脱いで浴室に…しまったぁ!マットレスと服がぁ!
「ねぇ、カズマさん?これはなぁに?」
自分の服を摘むアクアの冷たい笑顔…
「私のもありますね。あら、これは……」
エリスは水底から自分の服と一緒に何かを摘む。
「カズマさん…なんでここに皆さんが持ってた聖水の瓶が沈んでいるのでしょう?」
エリスの顔が真っ赤に!もう何となく予想がついてしまったらしい…
「まさか、これの中身って…」
「この街を守るためやむを得ず…」
エリスが薄い壁案件の時の顔だ。
「…説明して貰えますよね?」
めぐみん、ダクネス、ゆんゆんにちょっとフォローを!と振り返ってみるが、全員が咄嗟に目を逸らす。
「カズマが…人命がかかっているからと…私達も人命を天秤にかけられては、逆らうことも出来ず…」
「領民の命を天秤にかけられては…私は…」
めぐみん?!ダクネス?!
「だから、今は不味いって…」
ゆんゆん、もっとはっきり言って欲しかった!しかし、これ以上の言い訳は出来ない。腹を括ろう…
「エリスの…お風呂の残り湯を…聖水として使いました…濃さが足りなかったので…エリスとアクアの服を浸しました…」
「あああぁぁぁぁ!!」
エリスが頭を抱えて暴走を
「この変態には、天罰が必要かしらね?」
アクアは普通に全裸でブチギレてる!
「待ってくれ二人共!…これが無ければ、何人死んだと思う!」
「「うぅ!」」
女神にはコレが効く!良し!乗り切れる!
「脅迫方法が魔王より悪質ね!人の命を天秤にかけるなんて!」
「しかし事実です…最後の状況でコレがなかったら…」
「俺だって!お前らの身体は余すところなく俺の物としたい!しかし、人命がかかってたんだ!」
どうだ?これなら責められまい?俺の勝ちだ!
「今回のお風呂のお湯に関しては…分かりました。状況的に仕方なかったと諦めましょう。ただ…普段使っている聖水が何かを教えてくれますか?」
ヤバイ!そっちに来たか…
「まさか私達の身体から…」
おっとアクアさん…珍しく名推理ですね。でも絶対言わねぇからな!
「あれは聖水とポーションのオリジナルブレンドのアイテムで!決してこんないかがわしい製法ではなくて!」
大丈夫だ。あのポーションも使い切った!現存しなければこれ以上の追求は不可能!
「あ、カズマから預かってたの…ありますね」
「めぐみん!投げろって言ったよね?!」
「めぐみんさん…こちらへ」
エリスの目がマジだ。
「…はい」
いや大丈夫だ。見たところで、この液体の判別が出来る訳がない。
「少し粘りがありますね…透明で、ちょっとだけ甘いような香りと…」
「そ、それは飲めるやつだから!流石に体液だと飲むわけにもいかないだろ?!」
「そうなんですか?」
エリスが疑うように瓶を見ているが、何かを決心したように俺の方に向き直った。
「では、飲んでください」
「そうね。それではっきりするわね!」
アクアとエリスが同じ意見。チャンスだ!少しだけ抵抗はあるが、これで生き残れる!
「余裕だよ」
「では、あーん…」
エリスの手から!?エリスの手からこれを飲まされるなんて!
ゴクッ
「ほら、飲めたろ?」
「どうです先輩?私にはポーションのような効果しか感じないのですが…」
「そうね…これだけ躊躇なく飲まれたら、流石に違うわよね」
良し良し、これで俺の命は繋がった…
「いいカズマ!今回は女神の温情で見逃すけど、次は無いからね!」
「馬鹿!人の命がかかってないとこんな事しないわ!」
よし、軽やかに無罪を勝ち取った。
「では、カズマさんはマットレスをどかして…あれ?カズマさんの服もありますね?」
「ねぇエリス、こっちのカズマさんの服から、さっきの聖水の香りがするわ。こぼしたのかしら?」
「え?あれ、これは……」
エリスの顔が少しずつ赤くなる。あ、これ終わったわ…
「『ゴッドブロー』!」
感情のままに放たれた一撃。俺は罪悪感から回避も出来ず、そのまま顔面にクリーンヒットして石の床に頭を強打した。
「あぁ!カズマさん死なないでぇ!」
犯人、貴方ですよ…なんて心のなかでツッコミを入れ、俺は意識を手放した。
_________________________
番外編。
女神ポーション職人カズマ
(閲覧注意)
女神ポーション職人の朝は早い。
「朝というか、まだ夜中です。まぁ俺が無理させてるので、エリスが起きないのも無理ありません」
それは?
「新しいシーツと着替えのショーツです。エリスが目覚めたとき、不快感が無いように夜中のうちにシーツを替え、替えのショーツを用意します」
優しいんですね?
「愛する女性の為ですから…」
彼は女神の身体をタオルで拭き、汚れたショーツとシーツを持って、脱衣所に向かう。
「ここで洗い物をまとめます。共同生活なので、当番制ですが、こんな汚れ方をしたシーツやショーツを晒すのは可哀想ですからね。先に軽く汚れを落とします」
彼はそう言うと、女神の体液で汚れたシーツとショーツを、瓶の上で絞った。
「愛する人の為に流した女神の涙は、死者の蘇生を可能にすると聞いたことがありますが、まさかこの液体にも強力なバフが宿るとは思いませんでした。しかし、私の稼業も命がけです。使えるものは何でも使いたいですからね」
彼はその瓶に「原液」と記載した。
あとは洗濯ですか?
「いえいえ、まだですよ」
彼はそう言うと、人肌に沸かしたお湯をシーツとショーツ、タオルにかけ始めた。
「これで、完全に他の洗濯物に紛れさせる事が出来ます。ただ、このドリップも無駄にはしません」
彼はまたシーツとショーツ、タオルを絞り、その絞り汁を瓶に保管した。
「これで、また少しだけ生き残る可能性が増えました。ありがたい話です」
彼は、カバンの中にそっと瓶をしまうと、愛する女神の待つベッドに帰って行った。……通報したほうが良いだろうか?
製作、天界調査部
※本件は精神安定の観点から女神エリス、および関係者には極秘とする。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
酷いネタを放り込んですみません。髪の毛で魔王の手が焼けるんだし、エリスがカズマに向けた液体なら効果あるだろ。って言うクソみたいなネタです。
引き続き不定期更新ですが、またお付き合いお願いいたします。