※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

夏といえば素麺、そして素麺と言えば流し、そんな空気で思い付いた1話です。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この白き絹糸に納涼を

夏の暑さを乗り切ろうとした時、諸君らは何を考えるだろう。科学文明があればエアコンが使えて、魔法文明があれば冷気魔法って手段もある。だが日本人ならば、もっと風情のある方法が望ましい。

 

「と言うことで、第1回流し素麺会を開催します!」

 

「「「「おぉー!」」」」

 

そんな理由で集まれちゃうのが、いつものカルテットな仲間たちである。

 

…………ネタを消化する用のキャラ紹介…………

 

サトウカズマ

誰もが知る英雄であり主人公。夏の暑さに負けないようにと、健康的な納涼を求めた。しかし、この世界は流し素麺も一筋縄にはいかない。

 

ナツキスバル

死に戻り系主人公。最近仕事が一段落したので、休暇ついでに遊びに来た。エミリアを労うのも目的の1つ。素麺に謎のアレンジを加えるチャレンジャーだが、今回はそんな遊びを挟む余裕などない。

 

ターニャ・デグレチャフ

最近また忙しい幼女系主人公。過酷な戦場にばかり居るので、こうしてこの世界に羽休めに来るのが楽しみになっている。今回は来るんじゃなかったと後悔している。

 

鈴木悟

骨系ダークヒーロー主人公。ダークヒーローの癖にノリツッコミも出来る常識人。実は一番人間が出来ている気がするが、カルマ低い設定を思い出すとまた残酷な魔王になる。なお、振る舞わされる側になると弱いので、今回はしっかり辛い目にあう。なお、飯を食うために本日は人間の姿でお送りします。

 

……………ってことで本編…………

 

「流し素麺機って……なんでこんなものがこの世界に?」

 

ウィズの店の返品処理を手伝っていたら、何処かで聞いた名前が目に入った。素麺はこの世界でも作られているのだが、流し素麺は聞いたことが無い。何より装置の見た目がピッチングマシーンのようだったので、余計に目を引いたのだと思う。

 

「あぁ、それは転生者が作った数十人が一緒に楽しめるアイテムだそうだ。だが、水流やコース生成も魔力で行う為、常人では起動することさえ出来なくてな。故に倉庫で埃を被って、魔道具の墓場まで流れてきた訳だ」

 

「バニルさん?確かに私達はアンデッドですが、ここは墓場では無いんですが……あの、なんでカズマさんまでそんな悲しそうな顔を?!」

 

普段なら訳あり商品を警戒するところだが、流し素麺機なら懸念はないだろう。何せ起動不可って欠陥が明らかなのだから、それより先を心配する必要がない。と言うことで、その時の俺は即決だった。

 

…………

 

「で、出来たのがこの長いコースか……日本のバラエティが好きそうな魔道具だな……」

 

「涼を感じるには見た目も大事だ。だから、こういう遊び心も悪くないだろう」

 

「あぁ、少し派手な方が盛り上がるしな。アクアの犠牲に感謝しよう……」

 

「うぅ……魔力を凄く持っていかれたわ……」

 

スバルとターニャ、アインズの反応からも分かる通り、起動した魔道具はアスレチックのようなコースを生成した。それは素麺を流すというより、水を用いたジェットコースターのコースに見える。これを魔力で生成するとなれば、人では厳しいのも仕方がない。エンターテイメントに拘った結果、予算がかかるのは世の常である。

 

「素麺とは、小麦で出来た細麺を茹でたもの。それを良く冷やし、出汁と醤油を合わせた汁に浸して食すのが、日本の夏の定番なのさ」

 

「いや、なんで呼んでねぇのにエキドナが居るんだよ……」

 

「ふっ、無理にでも出てくればレギュラーっぽくなるだろう?そうすれば、君達はボクを雑に扱えない訳だよ!」

 

どうやら強欲の魔女様はお暇なようで、割り箸をカチカチしながらドヤ顔をしている。以前少しばかり酷いことをしたので、素麺くらいは奢ってやろう。

 

「そして、流し素麺ならば上流の方が獲得チャンスが多く。開始直後のカーブに陣取ることで、減速した麺を確実にすくい取れると言うわけだ……さぁ、早く麺を流してくれたまえ!」

 

「あっ!ズルいぞエキドナ!一番上流は初体験のエミリアたんだろ?!」

 

「そんな事で喧嘩するなよ。沢山あるから、仲良く食えって……」

パァン!

 

「ごふっ!!」

 

スバルとエキドナの微笑ましいやり取りの最中、何故かエキドナがエビのように後ろに跳ねた。その腹部には白い塊がめり込んでいて、原因が何かは明らかだ。

 

「ば、馬鹿な……ボクの知る素麺は……こんな速度では流れて来ない……」

 

「安心しろ。それは皆が感じた感想だ……」

 

「くっ……まさかボクを……出落ちキャラに……がくっ」

 

「エキドナー!!」

 

「いや自分でがくって言ってんじゃん。実はノリ良いよな強欲の魔女……」

 

「それよりも問題はこっちの方だろう……なんだこの流し素麺機は……」

 

スバルとエキドナの寸劇はさておき、確かにこの魔道具は何処かおかしい。明らかにコースアウトするような勢いで素麺を発射するなんて、流し素麺機にあるまじき威力だ。

 

「カズマさん!この機械、裏側に流し素麺奉行って書いてあるよ!!」

 

「そんな……まさか危険だからと紅魔の里から売りに出されたあの魔道具が?!」

 

あるえからまさかの出処が判明したわけだが、紅魔族関係だと尚のことヤバい。あの里を作ったのがあの転生者で、現代の職人がひょいざぶろーさんなのだから、良い方に転ぶ理由など皆無だ。

 

「我を知る者が居るとは……どうやら黙っている必要はないようだな……」

 

「えっ?何この魔道具喋るの?!」

 

ただでさえ厄介な魔道具なのに、そんな個性は要らないんですけど?!

 

「我は清く楽しく流し素麺をするべく生み出された存在!我が前で不敬な行いをすれば、容赦なく制裁を下すのが我よ!さぁ、正しく流し素麺を味わうが良い!」

 

「くっ!まさか流し素麺さえ大人しく食えないなんて!」

 

「何処までも馬鹿な世界だなここは!」

 

「また私の世界への風評被害が?!」

 

「いや、これが増えたところで誤差だと思うぞ?」

 

異世界メンバーには好き放題言われているが、確かにこれは厄介が過ぎる。流し素麺なマナーだなんて、どこへ行ったら習えるんだ?

 

「どうやら真の女神の教養を見せる時みたいね……天使、手伝いなさい」

 

「はい!アクア様!」

 

「えっ?お前ら2人が何とか出来るの?」

 

唖然とする俺たちの前に、アクアと天使が歩みを進める。その手には調味料や食材があり、何故かカセットコンロまで準備されている。どうしよう。すでに嫌な予感しかしない。

 

「先ず、このガレオン船さえ沈める大昆布を1切れ水へ……そして、お湯を沸かしながら山の中で見付けた天然の鰹節を削るわ」

 

「産地と背景が色々とおかしいが……アクアは美食家として素麺に向き合うと言うわけか……」

 

「奉行って言うくらいだから、その手は有効な気がするな……」

 

「なんか美味◯んぼみたいなノリだけどな……」

 

正直馬鹿みたいな光景に見えるが、精霊の冬将軍に土下座が通じるのがこの世界。流し素麺を仕切るゴーレムに、グルメ漫画のノリが通じる可能性だってある。

 

「そしてその汁を魔法で冷やして、ネギと練りわさびを加えて頂けば…[パァン!]…ぎゃふん!」

 

「アクア様?!くっ!やはりワサビが伊豆産では無かったから……」

 

「いや、普通に麺が伸びるからだが……」

 

「なら最初からツッコんで貰えます?!」

 

何という正論。そりゃ突然クッキングを始めようものなら、茹でた素麺は伸びてしまう。それに、万が一語るタイプが許されるなら、エキドナが出落ちになる事も無かった。にしてもその伊豆への信頼感は何なんだ?神様はどんだけ伊豆が好きなんだ。

 

「アクアさんでも駄目と来たら、どうやら私達の出番みたいだね?」

 

「出来たら私は遠慮したいよ……」

 

「なんで2人ともバレーボールユニフォーム?!」

 

アクアが何も出来ず脱落した直後、何故かバレーボールユニフォームに着替えたあるえとゆんゆんが前にでる。もはや素麺とは全く関係ない気がするが、何となくやろうとしてる事は分かった。

 

「どんなに速い弾道であっても、勢いを殺せばそれは素麺。私のレシーブで見事受け止め、しっかり食べてあげようじゃないか!」

 

「へぇ、それは悪くない考えだわ。アインズ様の素麺は、私の素肌で受け止めてみせる!!」

 

「なら私はもう離れて良いよね?!」

 

何故かあるえとアルベドが意気投合し、ゆんゆんを押しのけてアルベドが前に。たしかにアルベドの防御力なら、あの素麺だって耐えられる気がする。あるえは防御力こそ無いものの、柔らかな包容力があるので期待しておこう。

 

「ふざけるな!!それが素麺の楽しみ方か?!」

 

「私はアインズ様の為、素麺女体盛りを再現するのよ!!」

 

バァン!

 

まるで豪速球を受けたかのような、乾いた音が辺りに響く。思い切り打ち出された素麺の一撃は、アルベドの身体を1mほど後ろへ下げた。しかし、それでも歴戦の猛者は倒れず、アルベドの谷間には、一束の素麺が乗っかっていた。

 

「ふっ……素麺奉行なんて、私の愛の前には大した脅威では……」

 

パパパァン!

 

「ごふっ!!そんな……トリプルバーストなんて……」

バタッ

 

「アルベドー!!」

 

余りにも残酷かつ無慈悲な連打で、アルベドの素麺は地面へと落ちた。食べ物を無駄にするのもどうかと思うが、それ以上に素麺の威力が化け物じみている。このスペックは何と言うか、暗殺用なのではと疑いたくなるレベルだ。

 

「アルベドさんの犠牲は無駄にはしないよ……さぁ!今度は私が相手をしようか!!」

 

「だから素麺で遊ぶんじゃない!!」

 

パァン!!

再び打ち出された危険な白球は、真っ直ぐにあるえの胸へと向かう。普段なら谷間で受け取れそうだが、今回のこれはそんな次元ではない。アルベドが吹っ飛ぶ豪速球なんて、まともに受けたら間違いなく大怪我だ。ちなみに遊ぶなっていう奴が素麺を発射しているわけだが、そこは誰もツッコまないらしい。

 

「ふっ……かかったようだね!素麺奉行!!」

 

「なっ?!風魔法による減速だと?!」

 

あたかもバレーボールの技術で受けるかのように見せつつ、その本命は得意の魔法。自然とフェードアウトしたゆんゆんの右手から、激しい強風が素麺を襲う。

 

「十分減速されていれば、私でも十分に受け止められる!!そのまま頼むよゆんゆん!」

 

「任せて!!」

 

「くっ!まさか2人がかりだと?!」

 

何だこの激しいバトル展開。素麺マシンと紅魔族のガチバトルなんて、納涼目的に発生していいものじゃない。今回の原因は俺だから黙っているが、いつもなら直ぐに帰らせる所だ。

 

「膝は柔らかく……弾道は真っ直ぐ……そして正面で………って熱っ?!!」

 

「馬鹿め!!受け止めて食すつもりと分かっていながら、素直に締めた麺を発射するものか!それは茹でたて熱々の素麺だ!!」

 

「くっ!騙し討ちとは……君にはプライドが無いのかな!!」

 

「貴様らの家には鏡はないのか?!」

 

「あるけどあいつら見ないんだろうな……」

 

それはもう素麺マシンが正論過ぎるので、あるえとゆんゆんには素直に引き下がって貰おう。納涼の為の素麺だと言うのに、バトル展開なんて誰も望んでいない。

 

「しょうがねぇな。この素麺マシンは危険みたいだし、やっぱり家の中で素麺食おうぜ?随分と高性能な魔道具みたいだし、半日もすれば魔力も切れるだろ……」

 

「そうだな。アルベドがやられるような相手なんだし、素直に流し素麺は諦め………」

 

ゴッ

「「…………嘘だろ?」」

 

俺とスバルが玄関に向かって歩き出したところ、何故か見えない壁に頭をぶつけた。スバルだけならギャグと思うが、俺達2人が完璧な同時だと、そんなの疑う余地もない。

 

「我は流し素麺を楽しく美味しく食べる為の魔道具。猛暑日を再現した空間を生み出し、真冬でも流し素麺を美味しく食べさせる事も可能なのだ!」

 

「素麺の為に監禁機能を?!しかも何だこの馬鹿みたいな強度?!」

 

「しかも空間の温度が上がっている!これでは猛暑日だぞ!」

 

「これもう実質兵器の部類だろ?!」

 

便利な商品が兵器になるのは、この世界じゃもはやお決まりの展開だ。だが、だからって素麺でやる事じゃない。納涼くらい楽しませろ。

 

「仕方ありません。アインズ様をご無事に返す為、私共も本気でかかりましょう」

 

「マカセロ」

 

「くっ、流石に今回は頼むぞ皆!」

 

人間体のアインズが熱にやられそうな姿を見て、直ぐに戦闘モードに変わる階層守護者達。素麺を食べるには苦労する相手でも、戦って倒すなら勝機はある。何せ相手は素麺を飛ばすだけ。どんなに高威力な攻撃だろうと、素麺であれば防ぎようはある。

 

「コキュートスは最前線!私とシャルティアが後ろからカバーします!所詮は麺類を打ち出すだけの機械!タンクとアタッカーが分散すれば、それ程の脅威では……」

 

ザシュッ

「…………えっ、何ですかこれ?」

 

物凄く格好良く戦場を支配していると思われたデミウルゴスが、頬の出血に一瞬固まる。目にも留まらぬ斬撃など、素麺マシンが出来ていい技じゃない。それが可能なマシンだとすれば、それはもはや殺人マシーンだ。

 

「くっ……まさかこれは……聖属性の針……」

 

「シャルティア?!まさか属性も自在だと言うのですか?!纏う魔力にも神々しさが見える!!」

 

それについてはアクアの魔力を込めたからですが、言うと怒られそうなので黙っています。

 

「チガウ…コレ……ユデテナイ…メン……」

バタッ

 

「こ、コキュートスがトゲアリトゲナシトゲトゲに?!」

 

「そんな物に……聖属性の付与を……」

バタッ

 

「シャルティアのゴスドレスが世紀末のヒャッハー鎧みたいに?!」

 

「カズマとスバルは少し黙りなさい!この状況を打破しないとならなっ……ごふっ……」

 

「「デミウルゴスだけ普通にやられた?!」」

 

「それ、凄く傷付くので本当に辞めてください……ガクッ」

 

まさか階層守護者でも打倒できないなんて、どんだけ強いんだこのパーティー用家電。あんまり家の庭で頼りたくなかったが、ここはこっちもチートを出すべきか……

 

「すまんウォルバク!相手が思ったよりチートだった!お前の手を貸してくれ!」

 

「仕方ないわね。システムに頼り切りのひよっこ達に、本当の魔法を見せてあげるわ!」

 

そう言ってウォルバクが一歩前に出た瞬間、周りの空気が明らかに冷え込む。アインズ組は確かに強いが、それでもゲームシステム故のバランスというものがある。そんなものガン無視して不条理で殴るのが、世界を管理する神の力だ。

 

「どんなに激しい攻撃だろうと、所詮は食品を撃ち出すだけ……なら、一瞬で蒸発させてあげる!『インフェルノ』!」

 

「なっ、何だこの計り知れない熱量は?!」

 

「これが女神の使う魔法……もはや炎ってより光の壁だぞ?!」

 

強引に魔力で底上げされた魔法は、炎を光の壁まで昇華する。打ち出された麺は跡形も残らず、ただ蒸発する音を残して消失した。その熱は余りにも強大で、最初に空間ごと冷やしてなければ、全員熱中症でやられていただろう。いや待て?ここがこんだけ暑いって事は……

 

「くっ!もはやこれまで………んっ?」

 

「きゅぅ……」

 

「あっ、やっぱり熱中症起こしてる!!」

 

「ホースト!氷枕を用意しろ!あたしがウォルバク様を運ぶ!!」

 

「ったく!だから派手な魔法は控えてくれって言ってるんですよ!!」

 

物凄い勝ちパターンに見えただろうが、それでやらかすのがうちのパーティー。ウォルバクの魔力と魔法はチート級だが、そのフィジカルは産まれたての子猫より弱い。適温から7℃くらい外れると、直ぐにバテてこのざまである。

 

「なぁカズマ。ひょっとしてウォルバク女史も、アクアと同様にポンコツ女神なのか?」

 

「アクアよりはマシなんだが……ポンコツについては否定できない……」

 

凄い部分も多々あるのに、どうしてこの世界ってこんなバランスしてんのかね……

 

「熱中症か……良く冷えた素麺とは言うのは、環境が暑けれは暑いだけ美味なものだ。さぁ、仕切り直しといこうではないか!!」

 

その言葉と共に放たれた麺は、縦横無尽にコースを駆ける。その光景は楽しげではあるが、それを楽しむ余裕などない。意識を刈り取りそうな酷暑の中、素麺なしだとマジで死にかねない。

 

「どんなに発射速度が速くても、結局はコースを流れるだけ……そんなに素麺を食べさせたいなら、僕が最初に頂くよ!」

 

「流石は鈴…アインズ!相手が流し素麺である以上、最終的にはコースに戻る!」

 

「つまり程よく距離を取れば、飛んできてぶつかることはないって事だな!何処ぞの強欲より賢いぞアインズ!」

 

「なんか馬鹿にされてないそれ?!」

 

別に馬鹿にするつもりは無いのだが、恐らく誰一人上手くいくとは思ってない。そんな素直な奴が相手なら、俺達も苦労する必要はない。

 

「良いだろう!ならば真正面から素麺対決だ!!」

 

「あぁ、掛かってこい素麺奉行!!」

 

素麺マシンから数メートル先の竹のコースへ、アインズの箸が静かに沈む。真っ向勝負と言いつつ送りバントみたいな構えだが、素麺としてはあれが正しい。と言うかこの勝負って負けようがあるのだろうか?コースが絞られてて待ってるだけなら、別に負ける要素はないと思う。

 

「来たっ!速いけどコースが絞れていれば……」

 

「ふっ、甘いわ!!」

ギシッ

 

「なっ!コースの竹が下にしなっただと?!」

 

まるでフォークボールでも投げられたかのように、竹のコースが突然落ちる。それはアインズの箸を軽く振り切り、素麺はコースの先へと流れていった。

 

「残念だったな!自在なのは素麺だけにあらず!この魔法で構築したコースもまた、自在に動かせるという訳よ!!」

 

「それもう食わせる気ないだろ?!お前本当に素麺奉行か?!」

 

アインズは繰り返し竹を追うが、自在にしなる竹は捉えきれない。時には素麺が宙を舞い、時には竹のコースを急加速し、また突然の減速で読みを外す。そんなアクティブ過ぎる素麺コースに、もはや人の数など無意味だった。

 

「くそっ!皆で参加しても駄目かよ!」

 

「どんだけ高難易度な流し素麺だ……」

 

「そろそろ体力的にキツくなってきたかも…」

 

スバルとエミリアに連携してみるが、それでも素麺は捉えきれない。エミリアの魔法もスバルの奇策も、強引な力業で回避されてしまう。俺の放ったデスブリンガーでさえ、確保出来たのは麺2本だけだ。そろそろ本格的に何とかしないと、ウォルバクの冷房も何時まで保つか分からない。

 

「いや、既に勝負は決しているよ!!」

 

「ま、まさか3人の影で?!」

 

「行けぇ!」

 

「頼んだぞチグリス!!」

 

「だからユリウスだと言ってるだろ?!」

 

そんな俺の不安を囮に、最優の騎士が箸を振るう。3人を突破した素麺の束は、素直にコースを流れていた。そこに最速最短で割り込まれれば、どんな魔道具でも対応は出来ない。ちなみに俺は気付いてなかったので、このセリフは完全に乗っかりである。

 

「これまでだ素麺奉行!この素麺は僕が貰った!!」

 

ちゅるっ

 

「………ば、馬鹿な……蕎麦……だと……」

 

バタッ

 

「「「ユリウスー!!!」」」

 

満面のドヤ顔で素麺を啜ったユリウスだったが、それは素麺ではなく蕎麦だった。だから何だと思うだろうが、あんな素麺マシーンに裏をかかれたら、誇り高いユリウスは耐えられない。と言うか食う前に気付きそうなものだが、日本人じゃないので大目に見て欲しい。

 

「自在な変化に高度なフェイント……まさかここまでの難敵だとはな……」

 

「納涼の為にこんなに汗をかくなんて……これがニホンの流し素麺……」

 

「勘違いしないでエミリアたん!カズマの世界だけだからコレ!」

 

「俺の世界でも特殊なパターンだよ!!」

 

しかしこの素麺マシーン、何故か攻撃してこなくなったな。さっきまで物凄い猛攻だったのに、一体何が起きているのか……

 

「すみませんカズマ。麺つゆのおかわりはありますか?」

 

「どうしたんだめぐみん?まさか猛攻を受けて落としたとか……へっ?!」

 

俺の側に駆け寄ってきためぐみんの手には、素麺の詰まったお椀がある。あの猛攻を掻い潜ったなんて、普通に考えたらあるはずがない。いくら食い意地が張っていても、どんだけフィジカルが強めだとしても、めぐみんのステータスはアークウィザードだ。

 

「ま、まさか下流の方は低難度なんじゃ……ってやっぱり自在に暴れるぞコレ?!」

 

「なら何でめぐみんはそんなに……」

 

「私も普通に食べられるのだが……」

 

「私もそんな妨害は受けてませんが……」

 

おっと、これはひょっとして子供には優しい装置なのか?めぐみんとターニャとアイリスなんて、まさに子供って感じの3人だ。殺意が無ければ攻撃はしないし、小さな子には素麺を食わせる。この素麺を巡るやり取りさえ、安全と分かれば娯楽の1つだ。

 

「お前、本来は人畜無害なアイテムだったりする?」

 

「当然だろう?流し素麺を正しく楽しむ為の魔道具の私が、人に害を成す必要などない。主の命に従い、攻撃するのは迷惑客へ対処する時と、自己防衛に限られている。何なら流す難易度だって、高いと言われたら下げるつもりだ」

 

「そういうのは真っ先に説明してもらえません?!」

 

だが、それが判れば恐れることは無い。アインズやスバルはニンマリと笑い、再び箸をコースへと向ける。これがアミューズメントだと確定していれば、男子でこれを嫌う者は居ないだろう。

 

「おい素麺奉行。そこの2人は迎撃されたのに、私には優しいのはどういう事ですか?」

 

「知れたことよ。悪ふざけする大人と、無害なお子様の扱いが違うだけだ」

 

「へぇ…大人と……お子様ですかぁ……」

 

あっ、やばいこれ地雷踏んだ気が!

 

「そこの2人と私は、同年齢の同学年ですが?」

 

「何を馬鹿な。あの山岳とこの大平原が同学年?紅魔族は発育が良いんだ。幼女ちゃんは無駄な背伸びのんてしないで……」

 

「………『エクスプロージョン』」

 

「ちょっ!皆伏せろー!!」

カッ!

 

眩く光る閃光の中、俺は吹き飛んでいく素麺マシーンと、瓦礫とかしていく自宅を見た。まさか流し素麺して爆発オチなんて、変態魔導具よりうちの嫁の方がヤバかったようだ。

 




最後でお付き合い頂きありがとうございます。

最近更新頻度が落ちてますが、まだリタイアする気は無いのでご安心を!

また不定期ではございますが、お暇な時にでもお付き合いください。
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