セレナが地味にお気入りの私は、またも馬鹿な番外を書きます。
推理物ではありません。推理しても良いですけど、何も得られないのでご了承ください。
またお暇な時にでもお付き合いください。
完全犯罪。それは犯人の痕跡が一切残っていない完璧な犯罪の総称。今までは罪を犯す側だったあたしだが、今じゃ正義の探偵みたいな事をしている。スポンサーやら信者を集めるには好都合なので、案外割の良い副業だ。何よりレジーナ様が死人から話を聞いてくれるので、迷宮入りになることもない。ただ……
「で、またお前は付いてきたのかよ……」
「当たり前じゃないか。推理小説は人気ジャンルだよ?以前の情事に堕ちた美人婦人の殺人事件も、組織犯罪サスペンスとしてバカ売れだしね!」
何故かあるえが付いてくるので、子守りのほうが大変なんだが……
「あれもうオリジナルストーリーだったよな?あたしが犯人にアルゼンチンバックブリーカーしてたし……」
「………してなかったかな?」
「おい、悪いのは目か?頭か?一旦ぶち撒けてから作り直すか?」
「ごめん。今回は本当に大丈夫だから……」
その言葉が本当に大丈夫だったこと、マジで一回もないんだが?
………………………
「直接来て貰ってすまないねセレナ君。本件は内密に済ませたい事件なんだ」
「国王様の為であれば、粉骨砕身の覚悟ですわ」
アイリスから話は聞いていたが、今回の依頼は国王直々。と言ってもレジーナ様にかかれば死者の声も筒抜けで、傀儡化を使えば自供も容易。これで国王に貸しを作れるなんて、なんて好都合な仕事で……
「では早速で悪いんだが……私に夜這いをかけた人物を探ってくれないか?」
「すみません。やっばり考えさせて貰ってもよろしいでしょうか」
それは専門じゃないって言うか、どっちに転んでも地雷っぽいし……
……
「話を聞いたら関係者とは、王様も随分と無茶を振ってくれるね?」
「下手をすれば腹違いの王子が現れるかも知れない事件ですから、王族には一大事なんでしょうけど……」
結局依頼を断り切れず、あたしらはこの事件を調査することになった。今でもお行儀良く話しているのは、お目付け役という見張りが付いているからだ。
「それじゃあメアリーさん、事件当日の話をしてくれるかな?」
「承知しました。まず、事件が起きたのは3日前の深夜になります。国王が曲者だと叫んで飛び起きたのですが、月のない夜だったので見通しが悪く、不審者の発見には至れませんでした」
このメアリーってメイドは国王の側付きだ。後任に全体統括を任せて、今は国王専属になっている。妙齢だが不能って訳じゃないので、一応容疑者その1だ。
「しかし、セレナ様にお引き受け頂き安心しました。前任の方は少々不安で……」
「前任がいるなら帰りたいのですが……と言うか、その前任って一体どなたで……ひっ!!」
「おや、セレナではありませんか?!これもアクア様のお導きですかな!!」
あたしたちの部屋へ入り込んできたのは、アクシズ教のゼスタだった。咄嗟にメイスの柄を掴んだのも仕方ないし、むしろ振り抜かなかった事を褒めて欲しい。
「な、ななななななな何でこんな猥褻物が城に?!」
「悪しき心を読めるのがプリーストだと聞いた部下が、出来るだけ立場のある者を探しまして………」
「だからって犯罪組織のトップでは駄目でしょう?!」
「アクシズ教は宗教ですが?何なら私は、悪しき心にも敏感ですぞ?」
ふざけんな!こんな邪悪に悪の心なんて読めるわけねぇだろ!そこら辺の子供のが邪悪に反応するわ!!
「しかし、ここで出会ったのも運命でしょう。一緒にけしからん犯人を捕まえましょうぞ!」
「衛兵さん!目の前にけしからん犯罪者がいるんですけど?!」
何なら夜這い犯よりヤバイ奴ですけど?!
…………………
「こちらが現場となった国王の寝室です。事件性があるとの事で、当時の状態を保存しております」
「ほほぅ、ここが情事のあった……」
「事件ですよゼスタさん……」
あたしらはメアリーさんに連れられ、事件のあった国王の寝室へ。部屋の外には騎士が居たので、現場の保存に疑いはなさそうだ。組織に馴れ合いが無いのなら、内部犯の証拠隠滅も難しくなる。
「なんか甘い匂いがするね?これは国王様の趣味なのかな?」
「安眠作用のある花の香りです。国王様の心労は底知れず、少しでも眠れるようにとの配慮です」
「過剰摂取で睡眠薬には?」
「そんな危険な成分ではありませんのでご安心を……」
そりゃ普通の人間ならそう教わるだろう。だが、この花の根っこは睡眠薬になる。それこそ安眠なんてレベルじゃなく、失神させられる程の強い薬だ。だが精製方法が複雑なのと、馬鹿を生まない為に伏せられている。
「んっ?ベッドの側に透明な液体が……」
これはまさか、睡眠薬が垂れたものじゃ……
「ふむ……ペロッ……こ、これは青酸カリ?!」
「殺人事件は起きてませんよ。それと、床に落ちてる水滴を舐めないでください」
「大丈夫さ。フリだから」
「……」ピキッ
遊んでるならもう帰れと言いたい所だが、お目付け役が居たらそうもいかない。本当ならカズマを呼んできて、この液体を鑑定スキルで見て欲しい所なんだが、それも許して貰えるかどうか……
「こ、これは!女性の秘部の匂いがします!」
「そうですか。ゼスタさんは直ぐに死んでください」
「そうだね。焼こう」
「ちょっと待って!せめて話を聞いてください!」
こいつの発する言葉はどれも不快なのに、更にセクハラまで付いてきちゃ耐えられる筈もない。これで馬鹿な言い訳でもしたら、このメイスでフルスイングしてやろう。
「実は私、ここに来る前に全使用人の下着を嗅いできまして……」
「自供ですか、なら安心して死になさい」
「違うんです!性交した痕跡を探してただけなんです!!」
「そうですか、では執行を…」
「待ってセレナさん!この遺言は役に立つかも知れないよ!限りなくキモいのは分かるけど!」
「せめて証言として扱ってくれますか?!」
本当なら今すぐにでも処してやりたいが、内部犯行でない事の確認は最重要だ。だから一応話は聞こう。殺すのは聞いてからでも遅くない筈だ。
「国王様が恐れているのは、自身も知らない世継ぎの誕生。事件当時に外部の人間が目撃されて居ない以上、怪しいのは内部の人間です。そうですね?」
「そ、それは確かにその通りですけど……」
「故に私はランドリールームに入り、全てのパンツの匂いを確認しました!精液の匂いがするパンツを確認し、その持ち主が女性であれば、犯人である可能性が高いからです!」
「シレッと男性のも確認してる?!」
「当然でしょう?ホモ◯ックスなら国王の懸念は無くなるのですから、精液の匂いがした男物のパンツも確認済みです」
「それはそれで、国王には他の憂いが出てきますけどね……」
だが、下着の確認は確かに有効だ。国王を襲う一番のメリットは、血筋を奪っての政治利用。精液の保存期間を考えるより、この場で孕むほうが話は早い。
「しかし、匂いだけで判別は難しいですね。スンスン嗅ぎ比べても個人の特定までは……スンスンスンスンスンスン」
「普通にパンツ持ってきてるし……」
「そ、それは私の?!ちょっと辞めてください!この方は本当に聖職者なのですか?!」
「この国の法ではそうなります……本当に何故か分かりませんけど……」
あたしもちょっとギリな所だけど……
「はっ?!部屋の前の廊下に、更に芳しい水滴が!あるえさん!ペロッと確認をお願いします!」
「嫌だよ!流れ的にそれも女性の体液なんでしょ?!」
「これが聖職者だなんて……」
メアリーさんは顔を真っ赤にしながら、四つん這いのゼスタの後を追って歩く。本当に心から不本意ではあるが、今はアイツが最も真犯人に近い。本当に大変不本意だが!!
「ふむ。部屋の水滴の匂いは汗臭が強かったですが、廊下に出るとメス臭が増しますね……」
「辞めてください!その表現は辞めてください!」
「すみませんメアリーさん。直ぐに馬鹿の声帯を潰します」
「ごふっ!!」
だが、この変態のお陰で事件は大きく進展したと言える。何せ床の匂いを嗅いでいた変態が辿り着いたのは……
「クンクンクンクンクン……ここは、使用人達の待機部屋ですね……」
「……そのようですね」
ここまで証拠が揃ってしまっては、もはや内部犯で決まりだろう。待機部屋に無関係な奴が来たら、潜入が一発でバレてしまう。
「メアリーさん、当時の出勤者を集めてください。残念ですが、この事件は内部の犯行です」
「はい。直ぐに集めて参ります……」
まぁ、これであのヤバいのが居たら、話はそれで終わりそうなんだけどな。
……………………
「おや、またお会いしましたね」
「えぇ、出来れば会いたくなかったですけど……」
気持ち的には今直ぐに縛り上げたい所だが、まだコイツが犯人という確証はない。だが先日のことを思い返せば、コイツが犯人だとしか思えない。まぁ、証拠はまだないんだが……
「国王への不敬が確認された為、皆様には当時のアリバイをお聞きしたいです。これから一人ずつ話を聞くので、別室にいらしてください」
「分かりました……全使用人は、セレナ様の指示に従ってください」
さて、それじゃ証拠を探すとしようか……
………メアリーの証言………
「私は国王様の側付きですので、普段から近くに控えております。国王様が襲われた時も、当直だったので控え室か見回りをしていたかと思います」
国王に最も近い人間は、間違いなく側付きのこの人だろう。当日も近くに控えていたので、犯行に及ぶのも簡単だ。しかし、だからって行動するとも限らないので、確認はしなくちゃならない。
「メアリーさん、貴女は国王様の事を異性として見たりなど……」
「私にあるのは揺るぎない忠誠心です。誓って国王に邪な気持ちなどありません」
「そうですか」
とはいえ、これでボロを出すような馬鹿は王族のメイドに選ばれたりしない。だが、少なくとも何名かの話に矛盾でも出ればそれだけで儲けものって所で……
「嘘ですね。残念ですが、プリーストの私は誤魔化せませんよ?」
「わ、私は決して嘘なんて……」
おや?てっきりゼスタを締め上げるタイミングかと思ったが、メアリーの反応はあながち勘違いとも言えないようだ。これでも多くの人を見てきたプリーストなのだし、ちょっと任せてみるか。
「貴女、国王のことをスケベな目で見ていますよね?具体的にはそう、国王総受けをオカズにするくらいには!!」
「んなっ?!」
えっ、なんでそこで図星な顔してんの?そんな特殊過ぎる指摘にギクッてする普通?!
「国王様はその立場ゆえに、人に弱みを見せたりはしない。しかし、側付きメイドの貴女だけは、弱った姿を見ることがある。そんな自分しか知らない国王様の姿に、母性と性欲を煽られているのではありませんか?」
「いや、流石にそんな特殊な性癖は……」
「流石は高名なプリーストですね……そんな事までお見通しとは……」
「いや嘘でしょ?!」
えっ、どうしようこれ想定外なんだけど?まさかこっちが真犯人なのか?!
「メアリーさん、やはり貴女が国王様を襲った犯人なんじゃ……」
「そ、それは違います!性的な目を向けていても、行動に移してなどいません!」
「そうです!彼女のベッドにはおじ受けと寝取られの官能小説はありましたが、逆レ◯プものはなかったです!」
「それでかこの変態プリースト!チェックは下着だけじゃなかったのかよ?!」
とりあえずコイツを豚箱に入れろよ!別件の犯人だって確証があるだろ!
「ちなみに、事件当時に誰かを見かけてたりしないかな?」
「と、特に誰も……見回りと待機は2人だけなので……」
まぁ、聞き込みで分かるのはこの程度だよな。下手に追及を繰り返しても、素直に話すとは限らないし。
「では、発散できていない欲求がおありでしょう?今夜は私といかがですかな?」
「お断りします」
「しゅん……」
これは素直に返してるとは思うけど……
………コガラシの証言………
「初体験はいつで……ごふぅ!!」
「すみませんコガラシさん。声帯を焼いて、今後2度と話せなくしますね?」
「えっ、この場では黙らせるとかの話ではなく?!」
2人目の聞き込みを始めた瞬間、味を占めたゼスタがセクハラを開始した。コイツが捕まるのは構わないが、あたしを巻き込むのは辞めて欲しい。
「ち、違いますよセレナ。これは高度な誘導尋問です。これで犯行時刻と答えたのなら、それで犯人が明らかになるのです!」
「そんな愚か者が犯人なら、逃がした衛兵は全員クビです!」
そもそもそんな馬鹿な質問、誰も素直に答えないだろうしな。
「とは言え貴女も容疑者の一人だ。犯行当時は何をしていたのか、聞かせてもらえるかな?」
「えっと、なんであるえさんがドヤ顔を?そこはセレナさんのセリフなのでは……」
「そこはもう気にしないでください。ツッコむと話が進まないので……」
本当はあるえも家に帰したい所ではあるが、そうもいかないのが現状だ。まぁ、少しは役に立つことを期待しよう。アホだが決して馬鹿じゃない筈だ。
「私は夜の見回り担当でしたので、その時間帯は居住エリアを見回っていました。国王様の声を聞いて、真っ先に駆け付けたのも私です」
「つまり、当直はコガラシさんとメアリーさんの2人。内部の犯行だとするのなら、2人のどちらかと言うことになるね?」
「ん?何故近衛兵の男性を加えないので?」
「常軌を逸した回答は求められてないからです」
だが、そうなると犯行時刻はメアリーの方が待機していた事になる訳だが、そこを明確にしなかったのはなんでだ?
「ちなみに、コガラシさんは国王様のことを……」
「子を孕んでも良いくらいにお慕いしております」
いやどっち?!これ素直に話してくれてるだけなのか?それとも自白してんのか?!
「ですが、私は今なお処女のままです。国王様の寵愛は、まだ頂けておりません」
「でも、それを確認する手段なんて……」
「彼女からは精液の匂いがしませんので、恐らく間違いないかと……」
「なんでしょう。この汚い警察犬は……」
「今は役立ってるからメイスは出さないであげて……」
だが、そうなると話は大きく変わってくる。ここに居る2名の女性が犯人でないのなら、やはり外部の人間の犯行か……
「では、次は衛兵への聞き込みですな!後ろが初めてかの確認をすれば、直ぐにでも容疑者が絞れると言うもの!」
「だからそんなレアケースは………」
「す、すみません。もう愛する人を受け入れた事が……」
「話が複雑になるから下がって貰えます?!男性のあなたが相手だったら、王様の憂いは無いんです!」
「いや、それはそれでメッチャ嫌なんだが………」
「国王様?!」
このふざけた空間を凍りつかせる、国家最高権力者の声。さっきまでふざけていたあるえとゼスタも、流石に静かに膝をついた。もう、事件解決まで居てくれたら良いのに……
「真相に辿り着きそうだと彼女に聞いてね。話を聞くべく馳せ参じた所だ」
「えぇっと……何故かウォルバクさん経由で送り込まれました。レジーナさんの遣いのロリーサです……」
「貴女、いつも巻き込まれ過ぎでは……」
いやまぁレジーナ様のやる事ですし、事件内容的にも適任だとは思うんですよ。ただ、そろそろソイツの胃に穴が空くと思います。
「ほぅ、レジーナさんがそういったとなれば、既に十分な証拠が出揃っていると言う訳だね?」
……そうなんですかレジーナ様?
[寝坊して前編を見逃していたので、後半だけ見ても詰まらないかなって……]
レジーナ様?それやる相手は選んでくれます?!相手は国王なんですよ?!
「ふむ、実は私も犯人の目処は付いておりますので、これが頃合いかと思っております」
「あ、あなたも推理してたんですね?!」
ただ合法的にセクハラしてただけだと思ってた!
「ならばそろそろ終焉としよう。推理ショーの始まりだ!」
恥晒すだけの時間じゃないよな?!本当に大丈夫なんだよな?!
………………………
ゼスタの推理
「さて、先ずは犯人を明確にしましょう。犯人はそう、衛兵の貴方です!」
「「そ、そんな?!」」
犯人だと宣言された衛兵は勿論。夜這い相手が男と聞いては、国王も黙っては居られないようだ。とは言えゼスタのこのドヤ顔。当てずっぽうって訳じゃないらしい。
「良く考えて頂きたい。この犯行、かなりの短時間で起きているとは思いませんか?」
「確かに、メイドさんの見回りのすき間で犯行に及んでいる訳だから、そんなに長くは掛かっていない筈だよね?」
「言われてみれば盲点でした。国王様の寝室なのですから、むしろ隙だらけの筈がありません。しかし、だからって彼が犯人だなんて……」
そう、確かに犯行は手早かっただろう。だが、だからってそれが犯人に繋がるとは思えない。と言うか、その犯人扱いされてる人も困惑しているし……
「犯人の顔を見ていないと言うことは、国王様は相手のテクニックにより昇天してしまったと言うことです。ですが、そこに居るお二人は経験のない生娘。テクニックで国王様を瞬殺するなんて、お二人に出来る筈がないのです!!」
「辞めて……それ以上辞めて……」
「国王様!お気を確かに!!」
これ大丈夫?!事件解決しても国王死ぬんじゃない?!
「でも、彼なら最高のテクニックを持っているのです。だって、自分にもそれは付いているのですから……」
「おろろろ!!」
「国王様ぁ!!」
物凄く嘔吐している国王を尻目に、何故かやり切った顔をするゼスタ。これでドヤ顔できる人間なんて、国中探してもコイツくらいだろう。
「ち、違います!確かに私は後ろの経験者ですが、男性が好きな訳じゃないんです!彼女が夜の女王様ってだけなんです!」
「そうか!事件解決の為にそんな恥ずかしい事を自ら……君、今日から騎士団長な!」
「駄目ですよ国王様。それに、自供だけでは事実とは……」
「事実だと信じたい!!」
「お気持ちは分かりますが……」
そりゃ寝てたらホ◯に襲われてたなんて、ショックを受けて当然だ。でも、気持ちでどうにかなるのであれば、そもそもあたしらは呼ばれてない。
「大丈夫ですよ国王様。貴方を襲った犯人は、先ず間違いなく女性です。私の推理がそう物語っています」
「よし分かった!あるえくんの推理を採用しよう!」
「それは選べるものでは無いかと………」
選ぼうと思えば選べるだろ。権力者の力って奴で……
「取り敢えず続けさせてもらうよ。まず、犯行現場には女性のものと見られる体液が確認されている。少なくとも男性から出てくる体液じゃないし、この時点で犯人は女性であることは間違いない」
「い、異議あり!男性にだって愛液の分泌が可能です!アクア様の加護があれば可能な筈です!!」
「何処から出てくるのさそんなもの?!」
ゼスタなら分泌出来そうだけどな。謎の汚物として処理されそうだけど。
「それに、あの分泌液の犯人はもう分かっているんだ。ねぇ、メアリーさん?」
「なっ!どうしてそれを私だと?!」
あるえの顔は堂々としているが、それでどうやって個人を特定したのか。カズマとかなら分からなくもないが、お前はまだ普通のアークウィザードだろ。
「簡単さ。ゼスタさん、廊下に落ちていた蜜の味を覚えているかい?」
「いえ、流石にそこまでは……今一度舐めて確認を……」
「や、辞めてください!そんなモノ、口にするモノじゃ………はっ?!」
「そう、貴方はこの液体を舐めることに嫌悪感を表していたんだ。最初から、それこそ何か分からないうちからね!」
床の汁を舐める変態が居たら、誰だって嫌悪はすると思う。だがメアリーさんのその反応が、それが事実だと語っている。
「なんだメアリー、お前だったのか!」
「喜び過ぎです国王様」
「申し訳ございません国王様……このような感情を持ってしまうなんて……」
「良いのだ……そなたの気持ちに気付かずにすまなかったなぁ!!」
「溢れ出すぎですよ国王様?!」
取り敢えず国王がそれで良いのなら、この事件はこれで解決だ。下手な事実を掘り起こすより、双方が納得する形がベストと言える。あたしは僅かな違和感を飲み込み、このアホな事件から手を引こうと……
「待ってください!あるえさんの推理にはまだ足りない部分があります!」
「まさか!どう考えても私の推理は完璧な筈だよ!」
「いや詳しく話を聞こう。引っかかりがあると安眠できない」
さほど推理なんてしてないあるえと、ゼスタが再び衝突する。もう早く帰りたいのだが、国王が興味を持ってしまった。これで下手なことを言おうものなら、処刑もあると分かっているのか。ちなみにテレポートのスクロールがあるにはあるんだが……
[こ、これは愛憎劇ですか?!それともやっぱりホモなんですか?!]
レジーナ様が喜んでいるので、立ち去る訳にもいかなくなった。
「おかしいと思いませんか?もしメアリーさんが犯人であるなら、コガラシさんが見回りから戻った時、メアリーさんは不在だった筈です。もしメアリーさんがものすんごいエロテクの持ち主でも無ければ、この犯行は不可能です!そう、あんなに大人しそうな顔して、ものすんごいエロテクニシャンでなければ!」
「変な称号を付けないで貰えます?!」
[ま、まさかテクニシャン処女ビッチ?!テクニシャン処女ビッチが実在するのですか?!]
ゼスタとレジーナ様のテンションはさておき、確かに犯行がバレてないのは違和感がある。飲ませるのが目的の男は2分で出してくるが、無意識の男をイカせるとなれば、少なくとも10分は欲しい所だ。※カズマ調べ
「頼む!エロテクニシャンだと言ってくれメアリー!私をホモにしないでくれ!!」
「そ、そんなことをいわれても……」
必死の剣幕の国王に圧され、メアリーも言葉を失ってしまう。だが、もし犯人がメアリーであるなら、ここは即答できる筈だ。実際に何をしたのか知らないが、犯人なら時間も知ってて当然だ。
「勿論、国王様が早漏というケースも有り得るのですが……」
「わ、私が早漏なわけ無いだろう!私は国王だぞ!」
「そこに国王か否かは関係ないかと……」
男子ってのは何故かそこに拘るが、今くらいそんなの忘れて欲しい。第一何処から早漏だよ。1時間ぶっ続けるのが普通じゃないよな?
※カズマ調べ
「分かりますかあるえさん?この犯行、メアリーさんだけでは難しい。もし犯行を可能とするなら、犯人が2人必要なのです!そうですよねコガラシさん!」
「なっ!」
「ふふっ、その反応は間違いなさそうですね?」
「ま、まさか2人がかりだなんて……起きてるときにお願いしたかった……」
「本音が漏れてますよ国王様。王妃様がキレるのでお控えください」
だが、それならそれでおかしな話だ。この2人が共犯だとするなら、アリバイ工作が余りにも雑過ぎる。口裏合わせて待機してたと言えば、犯人は外部と確定していた筈だ。
「す、全て私の単独犯です。メアリー先輩は、関係ありません……」
「………へっ?!」
「なん……だと……」
「国王様はガッカリしないでください。貴方はあくまで被害者なんですからね?」
だが、これはまた予想外の展開だ。3人プレイならまだ分かるが、ヤッてないのに罪を被る意味は何なのか……
「えぇっと……話が二転三転してるようなので、私が調べても良いでしょうか……」
「ほぅ、サキュバスがこの難事件に?頭まで精液でいっぱいでしょうに、推理なんて事が出来るのですか?」
「貴方にだけは言われたくないのですが……ここにいる全員に欲情してるプリーストには……」
「あ、悪魔め!なんて適当なことを?!」
いやそれは間違いなく図星だろ。何なら悪魔って嘘はつかないし……
「悪魔は嘘をつけないのだろう?それに、君はカズマの関係者だ。嘘偽りなく、わかったことは全て話してくれて良い」
「ありがとうございます。では、先ずこのベッドのシミなのですが、これはコガラシさんのもので間違いないかと……」
「えぇ、それは素直に認め……」
「国王様の物をお口で舐りながら、たまらず1人で初めたものの、思ったより早く射精されて驚いたような香りがします」
「ちょっ!そこまで認めなきゃ駄目なんですか?!」
流石は淫魔と言うべきなのか、それともカズマの影響なのか……鼻を効かせたロリーサを前に、エッチな隠し事はできないようだ。何気に国王も沈んでいるが、今は触れないでおこうと思う。
「そして、廊下に垂れている方のこれですが………」
「認めます!それは間違いなく私のものです!認めますからその先は……」
「主の寝取られ展開に興奮して、5連戦した濃厚な香りがします。しかも、この方は恐らく1人遊びの常習犯です」
「あぁぁぁぁぁ!だから嫌だったのにぃい!!!」
成程。真実のほうがより恥ずかしいから、メアリーは罪を被った訳だ。拗らせたヤバい変態とバレるより、秘めた愛を抱えるメイドの方が断然マシだもんな。
「ちょっと待ってくれたまえ。予想外に速かったと言ったが、それは具体的には……」
「えっとその……ご子息に手と唇が触れるのとほぼ同時に……」
「やっぱり聞かなかった事にさせてくれぇ!!」
流石にそれは、早撃ちが過ぎる。
「ち、違うんだコガラシ!これはそう、溜まりすぎていた故の早撃ちでな?2回目には立派に役目を果たすんだウチの王子は!!」
「すみません……何とか契りたくて舐ってみたのですが、王子は二度と起ち上がらず……」
「王子ぃぃ!!」
これ、本物の王子はキレて良いだろ。何に盛り上がってるんだよコイツらは……
[ナニが盛り上がら無かった事では?]
レジーナ様も辞めてください!その発言は女神的に良いんですか?!もはや全員アウトな気もしますけど!口止めに殺される気しかしませんけど!!
「真実は明るみに出たけれど、時に真実のほうが残酷なこともあるんだね……」
「すみません……嘘が付けない悪魔ですみません……」
「嘘偽りなくと伝えたのは私だ……責任は私と王子にある……」
「王子様が酷い巻き込み事故に……」
にしても、どうすんだこの空気。お通夜の方がまだマシだ。これでシレッと帰ろうものなら、ヤバ目のアサシンとか差し向けられそうだぞ。
「仕方ない。今回の事件は世に出せそうにないし、適当に中身をでっち上げるしかないかな……」
「おっと、そう言えば君は作家だったね?あるえ君、君には別の仕事を頼もうじゃないか……」
「………へっ?」
…………………………………
「国王を襲ったドッペルゲンガーは、なんとサキュバスとの混血だった。そいつは家臣に成り代わり国王を襲ったが、国王と家臣の絆は強く、見破られた偽物は名探偵セレナに討伐されましたとさ。まぁ、悪くない結末なんじゃねぇか?」
あの時の国王の妙案により、この事件はあるえの話が史実となった。誰もが傷を負う真実より、優しい嘘の方が救われるってものだ。
「でも、まさか私の本が史実扱いされているなんてね。自分で言うのもアレだけど、間違いなく普通じゃない内容だよ?」
「それ以上が身の回りに沢山いるからな。それに、詰まんねぇ事実なんて求めてねぇんだよ。世間が求めるのは娯楽と夢だ」
あの状況から生きて帰って来られたのは、あるえの功績も中々に大きい。身内の王族まで騙すとなれば、カバーストーリーを合わせなきゃならない。あの場でそれを書き上げたのは、素直に尊敬出来ると思う。
「口止め料を兼ねた膨大な報酬。あたしらの名声も上がって、まさに誰もが望むハッピーエンドって奴だ」
「それこそフィクションの強みだからね。ほら、噂をすれば……」
「「「セレナねぇちゃん!!」」」
「は〜い。今日はどうしたんですか?」
権力者に貸しを作って、更にたんまりと報酬も得る。それらも勿論有り難い話だが、それ以上に子供たちが懐いてくれる。笑われそうだから絶対に言わないが、なんならこれが一番嬉しい。
「あの話本当なんでしょ!」
「国王様が言ってたって!」
「悪いドッペルゲンガーを倒したんだよね!」
「えぇまぁ、これも平和な世を実現するためですから……」
この曇のない目を裏切ってしまうのは、ほんの少しだけ罪悪感もある。だが、それで子供らが正しくある事を学ぶのなら、私はこの嘘を続けるつもりだ。
「それじゃあセレナねぇちゃん!萌えキュンビーム見せて!」
「………はい?」
えっと、こちらのクソガ、お子さんは今なんて?
「サキュバスの洗脳を無効化して、更に愛の力で闇を祓う。セレナ姉ちゃんの隠されし必殺技なんでしょ?」
「王様も認めたって言ってたし!」
「僕達も生で見てみたいな!!」
事件の流れは確認したが、その先の話はノーチェックだった。何なら肉弾戦よりまだ平和だし?子供が真似しても大丈夫だと考えたら、あるえの気遣いが伺えなくもない。だが……
「あるえさん……もっと他にあっただろうが!!」
「ごふっ!!」
「「「すげぇ!!アルゼンチンバックブリーカーだ!!!」」」
これくらいの制裁を加えておかないと、次は何するか分かったもんじゃない。あたしは自分の腰まで軋むのを感じながら、あるえのフィクションをノンフィクションにした。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
また不定期ではございますが、またお暇な時にでもお付き合いください。