王女サイドも被害者になーれ!って望む人が沢山いたので、王都編です。
俺たちは権利書を握りしめ王の前にいる。城壁の崩壊、貴族の別宅の破壊…俺は過去に国家予算ばりの借金を幾度と無く重ねてきた。そんな俺が今、マジの国家予算を超える金を手にしようとしているのだ。
「やはり80億エリスでは不足ですか」
「私が算出した所、他国にまで展開して売った場合。カズマさんは初年の使用料だけでも300億の利益が出ても不思議ではありません。それを買い取るのであれば、交渉が失敗したケースを加味してもせめて200億は頂きたいです」
交渉役はセナさんが
「こ、断ったら悪魔の契約を…」
と怯えながら受けてくれた。ちなみに、あの誓約を破ると半年間下着を付けられない呪いにかかる。俺の趣味で。ちなみに年更新のため、その時にもっとマシな呪いにしろと怒られた。
「くぅ!まさか検察官を味方に引き入れているとは…冒険者の癖に細かく金の計算まで…一生遊べる金なら同じではないのか!」
あの財務大臣とやらが今回の値段を決めたらしい。流石に馬鹿にし過ぎではないだろうか?ちなみに、王様は様子を見ている。
「言ったでは無いですか…お兄様は抜け目なく周到な冒険者です。そのような浅知恵が通じる相手ではありません。私が交渉します!」
「はい…申し訳ございません…おねがいします」
そして結局アイリスへ。財務大臣、お前の顔は覚えたからな…セナさんが!
「お兄様、彼のやり方はどうかと思いますが、我が国の財政は既に赤字ギリギリ…無い袖を振ることは出来ません。足りない分は、私を妻に娶っては如何でしょうか!きっと父も断れませんから!」
あーうん。予想はしてた。俺としては望むところだが…
「過去の隣国との交渉を考えますと、アイリス様の経済的な価値はだいたい20億と言ったところですので、これで半分ですね。他には?」
セナさん、ちょっと残酷すぎませんか?
「2秒で一蹴されました…私、一応王女なのに…」
あ、ちょっと可哀想。元の話がデカくて忘れがちだけど、アイリスは安くないんだよ?実はすごく高いよ?
「カズマさんは政治への介入により利益を得るような事はしません。さらに言えば、奥様がエリス様と言う段階で、影響力や求心力において、一国の王族では余り意味がありませんので、カズマさん目線では更に下がる可能性もあります」
「そ、そんな…私の…価値って…これでは…もらって…」
仕事が出来すぎるよ!うちの妹がしょんぼりしてるよ!
「おいこら!やめろ検察官!こんなに可愛いアイリス様がたった20億なわけがあるか!カズマは余裕で200億出すぞ!」
これにはクレアも黙っていない。まぁ、助けるためとかなら…手元にあったら…出すかも。
「…では、カズマさんのパーティーメンバーをご覧ください」
おっと、セナさんの声から感情が消えた……
「必要ですか?これ以上女性が?」
クレアが順番に確認する。そういえば、増えてるもんな。
「た、確かにパーティーメンバーは何故か美人揃いだが…全員がカズマの女という訳では…」
「全員です」
クレアとセナさんの顔には、もはや感情が感じられない。傍観してた王様も「うわぁ…」って顔でめっちゃこっち見てる。
「おまえは!アイリス様に愛されておきながらなんで増えてんだ?!英雄として得た金をばら撒いてんのか?!」
胸ぐらを掴まれた。王の御前でもクレアはブレない。
「金なんて使ってねぇよ。むしろ今後は養育費とかに金がいるんだよ」
「子供育てるのにそんなに必要か?!一人に何人産ませる気だ!」ブンブン
胸ぐら掴んでガクガクしないで、酔うから。あと、満更でもない顔しないで皆!俺が保たないから!……いや、保つかな?保つな…
「馬鹿か!教育機関を作るんだよ!子供に冒険者なんてやらせられるか!」
「「「「え?」」」」
あれ、ちょっとこっちサイドの皆さん?本気で驚いた顔やめて?しかも、一番驚いてんのアクアだし…
「学校に行かないで引きこもっていたカズマさんが…教育機関?あの、教育機関は体育倉庫でチョメチョメする所じゃなくてね?勉強するところで…」
「バカにしてんのか?!そんなことしてるの一部のドスケベだけだろ!」
「え…それじゃ、カズマさんはするんじゃ…」
「エリスまで?!」
王の御前だって言うのに…まぁ誘われたらしちゃうけど…
「冒険者なんて命がけだろ?でも、他の仕事をしたくても基本となる知識がないと色々苦労するんだよ…」
商品開発で色々思い知ったし…
「ふむ、サトウカズマよ…それならば話は早い。一括で80億、毎年10億ずつ。300億を分割で払おうではないか。検察官殿もそれなら問題ないだろう?」
まさかの国王がここで発言を?!
「国王様、良いのですか?当初の要求より多いですが?」
セナさんは、有利に動いた交渉でもキッチリしている。
「私のベッドも彼の商品を採用したし、ジッポと言う着火の魔道具は軍にも採用されている。そしてダイナマイトだ。彼の知識をこの国に広めるとあれば、その恩恵は計り知れまい。国の産業の発展への先行投資だ」
「しかし、その約束が遂行されるとも…」
セナさんは、俺もちゃんと疑う…優秀過ぎない?涙出るよ?
「うむ、そこでお互いの契約が遂行され…また教育内容の国内展開を円滑に進めるため、アイリスをサトウカズマの元へ送ろうと思う」
「国王!正気ですか?あんなハーレム野郎の元にアイリス様を!」
クレア、今度は国王の胸ぐらを?!
「国のための政略結婚まで受け入れ、それをサトウカズマに救われた。もう既にアイリスの心が誰のものかなんて、分かり切っているではないか」ガクガク
あ、慣れてらっしゃる。
「それは…そうかも知れませんが…」ブンブン
「何より、魔王討伐の英雄にやる話だったのだ。妻が私より多いくらいで今更撤回などしない。むしろ、政略と言う意味では絶対に敵対してはならない相手でもある……おい、そろそろ離してくれんか?」ガクガク
「はっ…失礼しました!」パッ
「お前は本当にアイリスの事になると…これで何度目だ?」
「今年に入って…16回目です…」
おい、まだ初春だぞ?!お前はアイリスの事になると王様にでもこんな感じなのか?!なんで処刑されないんだ?!
「では、これにて契約は成立で良いな?アイリスは住居を確保次第そちらに転居させる。レイン、クレアは引き続きアイリスの側近として働き、新たな教育制度を取り入れる為に共に動け。万全の警備の中に居るわけではない。必ずアイリスを守れ」
「「はい!命にかえても!」」
アクセルには、そんな危険はないと思うが…
「それならば、こちらに不満はありませんが…カズマさんは?」
「俺もそれで良いです。これで交渉は成立って事で…」
セナさんと俺が承認した。これで話は…
「あぁ、これは私個人の話ではあるが…」
なんだろう…正直そろそろ帰りたい。この空間は精神的に疲れる。
「…娘を頼むぞ」
「…はい」
王様が頭を下げると同時に、すべての家臣はそっぽを向いた。王が俺に頭を下げるのは認めたくない。しかし、娘を思う父を止めることは出来ない。そんなイイ話なんだろう。
「王がカズマさんに頭を…ふふふ…」カリカリカリ
この空気を読まない娘は、後ほど懲らしめておきます。
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「しかし、あの王様にはやられましたね…」
「どういう事だ?」
宿で祝宴をなんて思っていたら、めぐみんはそんな話を始めた。
「魔物避けの件ですよ。しれっと予防接種の件を交渉の中心にしてましたが、騎士とギルドを抱える王族なら、素材は幾らでも手に入ります。あちらのほうが即お金になるじゃないですか…」
「その方が、早く多くの人に行き渡るからな。そこは王族にくれてやったんだよ…エリスの望みだしな。それに、権利とか関係なく、個人的に作れて露店で売れるような商品だ。真面目に使用料払う奴のが少ないだろ?まぁ何も言わずにしれっとサインした辺り、王族は割と狡猾なのかもな」
おっとめぐみん?羨望の眼差しを俺に向けるのはまだ早いぞ?
「凄いです…カズマはそこまでちゃんと…」
「って所までバニルが…」
「…私の感動を返してくれません?」
めぐみんの軽蔑の視線が痛い。しかし、これで交渉は終わったのだし、さっそくギルドで宴会を…
『桜前線が接近しています!王都全域に第一警戒令を発令!全店舗、ギルドは店舗の経営を停止!補給物資の配給に専念してください!』
「えぇー!お酒はぁー?!」
アクアの悲痛な叫びが響く。俺たちには…どんな時でも安息がない…
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「で、桜前線てなんだよ…」
前にエリスも言ってたけど…
「カズマはそう言う常識が無いんですね…春の風物詩ではないですか…」
警戒令が出る風物詩なんて嫌すぎるだろ…
「仕方ないわね!博識な私が説明してあげるわ!」
「おぅ…頼むよ…」
アクアがドヤ顔してるので、多分転生者絡みなんだろうな…
「王都の南方、昔はそこに国があったわ。まだ小国だったベルゼルグ王国を取り込まんと、当時は何度も戦争があったの」
人間の歴史か…よく知ってたなアクア…
「そこの国はアクシズ教が国教の武力主義の軍事国家でしたから…まぁ、アクア先輩としては大事件ですよね…」
嫌すぎるわ!そんな国!
「まぁ、国力拡大に躍起になり、無計画に攻め過ぎて格下だったベルゼルグに惨敗したんですが…」
めぐみんのツッコミには、常に容赦がない。
「やめてよ!乱世を立派に戦ったんだから!」
「この世界にも戦国時代があったんだな…続けて?」
「そ、それでね?そんな戦争で散っていった人々を慰めるため、アンデッドやゴーストの発生を防ぐために、その戦地に綺麗な花が咲く木を植えたの…転生者達が、桜をね」
マジで死体が埋まってる桜かよ…まぁ、手向けだから良いのか?
「そして、何人か気付いたのよ…あ、桜って勝手に広がらなくて、戦地全域に植えるの結構面倒くさいって」
「最低だよ!なんだよ面倒って!むしろ化けて出る理由はそっちじゃないのか?!」
「そこで!品種改良したトレント、つまり木のモンスターを植えたのよ!勝手に広がるし温厚なモンスターだし、縄張りを守るから世界一美しい国境線が引かれたって訳ね!」
「ほう、まぁ別に温厚なら良いんじゃないのか?」
魔物の有効活用と言う意味では、むしろ共存さえ望める良いアイデアかも知れない。
「しかし、ここで大誤算があったんです。血の味を覚えた桜トレントは、根っこで歩行して人を襲います」
うん、めぐみんの補足がもうヤバい!
「そして、歩けるようになったトレントはある程度の数まで増えると、この国を襲います。この国を恨んだ兵士の血を吸ったが為にその意志を引き継いでいるとかなんとか…」
「全然慰められてねぇじゃん!」
なんの為の桜だよ!
「馬鹿ね。殺された相手に花とか送られて許せるの?死ぬほどの恨みよ?そりゃ殺すくらいしないと気がすまないわよ?」
おいこら女神がそれ言うなよ…
「あたしが言うのもなんだけど…お前ら、カズマ殺してなかったか?」
「「「「ギクッ!」」」」
セレナの容赦ないツッコミ。そう言えばそうだね。俺は身体を差し出されてるし、もう怒ってないよ?
「王都の南部にある荒れ地はトレントが全ての栄養を吸い尽くした為だ…人が触れれば即座にミイラにされてしまい、土に還ると言われている」
ダクネスの言葉を聞いて決定した。駄目だ。俺とは相性が悪すぎる!
「よし!テレポートで帰ろう!ベテランが沢山戦ってくれるんだし…」グイッ
「カズマさん…死者を出さずに…納めることは可能ですか?」
エリスさん?可愛い上目遣いされても無理なものは無理だよ。
「流石に戦争のプロじゃない…エリスの気持ちは分かるけど、なにも良い手が…」
『今年はトレントの群れが多いです!魔王を倒した影響により、群れを増やして個の弱さを補うつもりのようです!その数8000!』
その、魔王を倒した影響って言うのやめない?俺のせいみたいじゃん…
「なぁ、エリス…例年は?」
「3000くらいです。この数は…負け無かったとしても、何百人と死にますね。恐らく総力戦です」
うわー魔王が倒れて油断したところに総力戦かよ…賢いなぁ…木の癖に…
『アイリス王女が参戦の意思を表明しました。皆様、参戦の取り消しは少しだけ待ってください!本当に、人手が足りないんです!』
いや、ギルドの放送がヤバさを伝えてくるなぁ…余計減るだろ…それ
「…行かないんですか?」
「確かにカズマの参戦は、多くの人を奮い立たせるだろう…しかし、トレントに食われたら…蘇生が可能かどうか…」
めぐみんとダクネスも嫌な事を言う。勝つ方法が浮かべば俺だってそうしている。浮かんでないから困っているのだ。
「紅魔族に助けは?」
「この時期は入学式や入園式、入社式で忙しいですからね。暇なのは来ていると思いますが…」
めぐみんの回答は、まるで町内会のイベントを断る奥様のような理由だった。
「え?そんな普通の理由で?人命が関わってるのに?!」
「そもそも、木を植え始めたのは王家です。それを他種族や他の街に強制なんて出来ません。基本的にはお金を払って戦士を雇っているのです」
いや、かなり無理ゲーでは?それでどれだけ人が集まるんだ?
「そう言えば、今年は王族が雇っている傭兵も少ないな…魔王討伐で弱体化したからって、油断したのか?」
ダクネスの見立てでは例年より2割減くらいらしい。
「いやだ!そんな馬鹿みたいな数に勝てるか!俺は降りる!」「そうだ!いくら高額報酬でも死んだらどうしょうもないだろ!」「でも、王様が…」「王族や貴族に恩なんて感じてねぇよ!俺は降りるからな!」
隣の部屋から口論が聞こえた。このままだと、一般参加の冒険者はまだまだ減るだろう…そして、恐らく先頭に立たされるのは…
『アイリス様が最前線に参加します!この街のため、王族のため、もう一度奮い立つ方は居ませんか?!』
だよなぁ…そういう子だよなぁ…良い子だもんなぁ…
「セレナの力でどうにかならないか?あの乱戦方式なら数も関係ないだろ?」
「悪いカズマ…今回あたしは力にはなれない。トレントは木だ。人型でも、生物でもない相手は傀儡化出来ないからどうしようもない。それに、人の死体を傀儡化してもトレントには勝てないだろうし…」
くそぅ!セレナの力は有利な戦闘以外では駄目か…そりゃそうだよな…そんな都合がいい能力なら、街なんて瞬殺だ。
「あるえ、ゆんゆん、魔法は有効な相手か?」
「水分を含んだ木のモンスターだからね…魔法も効きが悪いんだ。時間をかけないと燃えないし、部分的に切り落としてもすぐには死んだりしないし…」
「私のライトオブセイバーでも、かなり魔力を込めないと大木は切れません。石化などの状態異常も、相当な魔力を込めないと樹皮だけで止まったりします…人より固く、生命力に溢れてますから…」
あるえとゆんゆんの見立てがマジなら、最後の希望は…全員がめぐみんに視線を送る。
「我が爆裂魔法なら範囲内の殲滅は可能です…ただ、連発できないので防衛戦では…」
「だよな…1箇所に集める方法があれば…全部は無理でも数は減らせるのに…」
ガチャガチャ
「おいダクネス?お前、なんで甲冑なんていじってるんだ?」
「奴らの根は触れただけで相手の水分を抜き取るからな…顔を隠さないと眼球と口はどうしようもないだろう?」
コイツ、参戦する気なのか?!
「バカやめろ!お前に勝ち目はないだろ!」
「私の家系は王の懐刀だ。父も部下を連れて向かっている。アイリス様が出て、私だけ逃げる訳には行かない」
これは…ダクネスじゃ間違いなく死ぬ!しかも楽しみながら死にかねない!考えろ!なんとか戦う方法を…あれ?甲冑って人の形してるよな?全身くまなく包むんだし…そして、このカバンに入れたままの除草剤だ。荒れ地に使うならなにも問題はない。雨が降る前に浄化するか、直接打ち込んでしまえば良い…
「…おい、セレナ。お前の傀儡は人型なら良いのか?」
「あぁ、人か人型か、一応生物なら動かせる」
なら、第一段階はクリア
「ウォルバクは…寝てる?!」
「ふぁ…作戦は決まったの?私は何をすればいい?どうせ戦うんでしょ?」
「あぁ、温存しててくれ…ちょっと無茶する」
「分かってるわ…じゃあ決まったら起こして」スース−
こいつなりの準備か…ちょむすけを大切にして良かった。その時の信頼とかが、今に繋がっているんだな…
「ウィズも頼めるか?」
「はい!この街が滅んだら、お客様が減ってしまいますからね!それに、街の人は戦闘に携わらない人間です!」
ウィズの客だけなら、テレポートで逃がせるくらいしか居ないと思うけど…やる気なので良し!
「浮かんだんですね…勝つ方法が」
「あぁ…相変わらずの賭けだ!完璧にこなしても上手くいくかはわからない!それでも、やる価値はあると思う!」
「カズマさん…私はお友達を、アイリス様を守りたいです!」
「英雄が逃げるなんて、私の本が打ち切りになってしまうじゃないか。英雄譚には、常に勝利が必要さ!」
まったく、本当にこういう時の紅魔族って頼もしいわ。
「賭けなら負けません。私が側に居ますから!」
「早く終わらせて、宴会よ!」
女神二人もやる気だ。アクアはちょっと違うけど…
「よし!この街の住人と、アイリスを守るぞ。その為に、俺たちは最前線に出る!無茶な作戦だが、死傷者を出さない方法はこれしかない!」
「なら、私は功績に飛びつくような貴族や傭兵と共に後方だな。死者を出さないとなれば、そう言う連中が前線にいては邪魔になる」
「あぁ、ダクネスは打ち漏らしを傭兵と貴族の軍隊を使って止めてくれ…完全な殲滅は無理だと思う。打ち漏らし相手なら、そう言う連中でも死者は出にくい筈だ」
「分かった。今回は騎士として働こう。最後の砦は私が担う」
しかし、その後衛も少な過ぎれば容易に破られる。だから、兵士は集めないと…
__________________
『全冒険者、及び全兵士に通達!救世の英雄、サトウカズマ様の参戦が表明されました!勝てます!この戦いは勝てます!』
感極まったギルドのお姉さんが凄いこと言ってますが、俺だけが来てもただの肥料です。ごめんね?でも、少し位は参加する人が増えるんじゃないかな?
「よぉ、アイリス。来たぞ?」
城壁より、はるか先の最前線。恐らく、聖剣の全力で街に被害が出ない想定の場所だろう。逆に言えば、ここになら爆裂魔法を撃ち込んでも街には届かないことになる。
「お兄様…街のために戦うなんて、お兄様はやはりご立派です!」
「馬鹿、アイリスの為だよ。別にこの街に愛着なんてないし」
「あっ…えへへ…うれしいです!お兄様!」
おっと、頬を赤らめて抱きついてきた。可愛い奴め。
「私からも感謝する。アイリス様が出れば士気が高まるのは間違いないが、当然アイリス様は危険に飛び込むことになるからな…」
クレアはアイリスに関わると真面目に感謝するな。普段からそうであって欲しい。でも、青筋浮いてるよ?
「私も来ましたよ下っ端!めぐみん盗賊団の頭領は、部下を見捨てたりしないのです!」
「めぐみんさんも…ありがとうございます!」
「で?俺の参戦で兵士の数は?」
これで減ってたら無く。
「2割増って所ですね…あれ?アクア様は?」
レインは手元にある通信用の水晶で状況を確認している。
「行くところがあるから先に行けと言っていたぞ?」
マジでアクアはどこに行ったのだろう。アクシズ教の仲間でも募りに行ったのだろうか?
『聞こえますか王都の皆さん。私は水の女神にしてアクシズ教の御神体、アクアです。今だけはこの都の全ての人々に加護を与えましょう…私も皆さんと共に戦います』
おおぅ…マジかよ生声で…ギルドに行ったのか…
「やべーよ!アクシズ教の御神体だってよ!」「あぁ、俺は降りるぜ!」「戦争にアクシズ教とかマジで勘弁だぜ!」
「アクア様!私に力を!」「勝てるぞ!ありがとうアクア様!」
「アクア様って…人望かたよりすぎじゃ…全体の数としては1割減…変人3割増しですよ…」
あの馬鹿…余計なことを…
「エリス、頼む!アイツの尻拭いはお前しか出来ない!」
「うぅ…こう言うのはあまり得意では無いのですが、犠牲者を減らす為ですからね。あ、マイクは必要ありません。心から伝えましょう。この街の全ての人に…」
…本当に得意じゃないのだろうか?
『王都の皆様、女神エリスです。私の声が聞こえたら、共に立ち上がってください。一人では勝てない強敵に、人は団結と知恵を持って打ち勝つ事が出来ます。一人でも多くの力を、この街は必要としているのです。皆さんのため、私も戦地に立ちましょう…』
強制的に天啓を食らったような感覚だ。勇者とかっていつもこれが聞こえんのかな?
「エリス様!凄いです!人が殺到しています!このペースなら例年の倍、いや3倍です!受付が処理しきれません!」
凄いな…マジの女神って…
「きっと、共に戦える人の強さを思い出してくれたのです」
「…本当に、これと比べたら、私って無価値ですよね…」
アイリスが凹んでる…
「あ、子供と老人まで参加しようとしてます!」
「それは流石に止めてくださいよ?!」
さて、後衛に人は集まったな…
「レイン様!城内の甲冑、全て用意しました!」
「カズマ様、何に使うか分かりませんが、これで足りますか?」
飾り用の軽い甲冑。これならセレナの傀儡化で簡単に動かせるだろう。
「セレナ、どうだ?」
「あぁ、いける!これなら間違いなく!」
「空の酒樽と大量の武器も用意しました!」
「助かる!これに武器を浸してくれ。絶対に都の中でこぼすなよ?街の作物が全部枯れるから…」
16万エリスの除草剤。死を恐れない軍団と、植物即死武器。街への被害を考えると、前線でしか使えないし、そもそも接近がハイリスクで人には渡せない。あの単純動作する傀儡では、倒せるのは多くて数十体だろう。しかし、ダクネスの言ってた特性がマジなら、それだけで十分だ。
「この除草剤がもっとあればな…」
「本当ですか?!やっぱり最高の商品ですよね!」
おっと、ウィズに要らん期待を…
「いや、今だけだから!普段は使えないから絶対に仕入れるなよ?!」
「そんなぁ…」
危ない。俺のせいでバニルが泣くところだった。
「専属の騎士団!レジーナ様!これは聖女っぽくないですか?!」
[えぇ、聖女と騎士は別に関係ないでしょう?]
面倒だなレジーナ…
「おいアクア、この無骨なのを何となく神聖な感じに出来ないか?」
「じゃあ、これに白い布で聖騎士っぽくしたら…どう?」
アクアのセンスって凄い。凄い神聖に見える!
[…これなら、本気出しちゃおっかな!]
「やったぞ!レジーナ様がやる気になった!これなら勝てるぞ!」
本当に、なんと言うか…ね?
___________________
「集まった兵士の皆さん!この戦いは今までより困難な物となります!しかし、私達は負ける訳にはいかないのです!この国を、王都を、守る剣は我々なのですから!」
前線には王族直属の精鋭のみ。分厚い群れに無謀な接近戦なんてしたら被害者0なんて無理だ。ちなみに、これは攻撃前に偉い人が良くやるやつ。アイリスがやっているが…
「こらお前ら、そっちを見るな!たしかにエリス様を生で見る機会は無いだろうが、いまはアイリス様をちゃんと見ろ!」
可哀想…なんか可哀想。
「だって、俺たち全員に支援魔法をくれたしな…」「エリス様の為なら死ねるよな!」「やっぱり普段はカズエリなんですか?」「いや、流石にエリス様が実権を持つだろ?女神だぞ?」
なんだろう。この締まらない感じ…あ、普段はエリカズです。頭上がらないです。公認で不倫してるんで。
「うぅ、エリス様から一言お願いします。もう敵が来てますから手短に…」
「えっと…皆さん、この街を共に守ってほしい。確かに、それは私の願いです。でも、それと同時に貴方達には死んで欲しくありません。身の危険があれば退くのも勇気です。生きてさえいれば、私が必ず治します」
「「「エリス!エリス!!」」」「「エリス様バンザーイ!」」「勝てるぞこの戦!」
凹んでいる…アイリスが明確に凹んでいる。俺の前だからって言うのもあるんだろうけど…
「あ、アイリス様…ほら、最後にパスしたからですよ…パスしなかったらアイリスコールされましたから!」
「ついでにアイリス様バンザーイ!」
「おい!誰だついでにとか言ったやつ!ぶっ殺すぞ!!」
クレアが兵士の中に殴り込んだ。もうグダグタだよ!
「ちょっと!来てます!花以外が不気味過ぎる木のモンスターが来てます!」
焦るエリス。確かにもう目視範囲に来てる!て言うか速い!木のくせに速いぞアイツ!あ、散ってる桜はキレイですね。
「『セイクリッド・エクスプロード』!」
アイリスの一撃。数にして50は吹き飛んだだろうか?やはり究極のチートは違う。しかし、なんて見事な桜吹雪だろうか…
「あ、アイリス様バンザーイ!」「流石は王女様だぜ!」
「お、お前ら都合良すぎるだろ!」
今だけはクレアに賛成だわ。
「王女として当然です!」チラ
「あぁ、頼もしいよ…アイリス」ナデナデ
そんな目で見られては、褒めるしかない。
「くっ!人目がなければ叩き斬ってやるのに…」
おいクレア、剣を握るな。
「流石は英雄だ。アイリス様の頭を撫でている。普通、王族にそんな態度取れねぇよ…」「いや、クレア様が今にも斬りかかりそうだから、なんか違うような気もするぞ…」
仕方ない。クレアはいつもこんな感じなのだ。さて、こちらも攻撃に参加しよう。
「ほら、セレナ…出番だ!」
「えぇ…期待にはお応えします!」
綺麗なセレナさんお久しぶり。今日はどれくらい持つかな?
「これがレジーナ様の力です!さぁ!神の力を思い知りなさい!」
セレナの武器は旗竿になった。正しくは槍にレジーナ教の旗を付けたものだが、基本的には本人が戦わないのでこれで良いらしい。
「おお!空から騎士たちが!」「なんて神々しいんだ!」「あれが天使だと言うのか?!」
空っぽの鎧をレジーナの傀儡化で操る。死体でも可、骨でも可、と来て、別に中身がなくても良いらしい。とても軽いので、吊り上げることで浮かせることも出来る。
「進みなさい!レジーナ様の威光を示すのです!」
一応、有効範囲があるのでセレナは付いていく。ちょっと面倒くさい仕様だ。そして、やたら旗を振っているのは広告です。
「ねぇ、あれどうやって動かしてるの?50は居るわよね?個別に動かすとか可能なの?私の人形劇でも10が限界よ?」
10も普通にすげーよ。どうやってんの?
「いや、俺も知らない…今回のはマジで凄いよな…」
今回の鎧は全てが独自に動き、複雑な動きも出来る。レジーナは本当にどうやって動かしているのだろうか?
『天啓』
あっ、レジーナに限定して無かっ…
[ちょっと天使!それは私の獲物ですよ!]
[知りません!私はPS5の抽選が当たらなくてムシャクシャしてるんです!ここでデモ○ズしてやります!]
[お前ら真面目にやれ!後ろに人命がかかってるんだぞ!]
[武神様は空振りし過ぎです!衝撃波は出ませんからね?!]
[武器って苦手なんだよ…]
[愛の女神様は、まさかのゲーセンコントローラですか?!]
[ふふ、封印の女神様なんてマウスで弓兵ですよ?おっと、カウンターです!]
[15キル…20キル…あぁ!矢が無いです!取りに戻ります!]
……エンジョイしてる!
「レジーナなにしてた?」
「…本人達に聞いてくれ」
「達?」
なんだろう。あれならアクアもヒーローになれそう。
「レジーナさんの力がこれほど強大だなんて…でも、敵が重くて押し返せないので、徐々に押し込まれてますよ?」
エリスは不安そうに見ているが、別にこれで勝とうとは思ってない。むしろ、予想の10倍は活躍している。
「あぁ、それでいい。先頭が遅れてなるべく固まれば…セレナ!アイリス!」
「全機!姿勢を低く!」
全く乱れず全機がしゃがむ。ここまでの練度は近衛兵でもそうそう居ない。しかし、セレナがかっこいいのは癪だな…
「いきます!『セイクリッド・エクスプロード』!」
こういう大火力が生きてくる。そして、死体にはヤバい除草剤が含まれているので、アイツラは仲間の死体を進軍時に左右に退ける必要がある。それにより進軍は遅れ、内側にどんどん密集する。
「おい下っ端!50くらいしか減ってませんよ!」
「そ、そんなこと言われても!私のコレは前にしか打てないんですよ!先頭のが盾になってはキツイです!」
「あぁカズマ!私も早く撃ちたいです!」
「ちゃんと準備しとけよ?お前が代わらず切り札だからな!」
めぐみんはまだだ、エリスとアクアの魔力を溜め込んであるので、最高のタイミングで、最高の一発を撃ってもらう必要がある。
「その根と大地を焼き切れ!『インフェルノ』!」
「『ライトオブセイバー』」
左右に逸れた奴らはあるえとゆんゆん、アークウィザードのみなさんが処理する。しかし、明らかに狙いがここだ。やはり王族が恨まれているのか…逆恨みなのに…
「カズマ様、後ろの準備が出来ました!」
後方に広がるボトムレススワンプで作られた広範囲の沼。トレントが水を吸いながら歩くなら、2つの意味で足止めになるはずだ。
「あぁ、助かる!レインは指揮も魔法も優秀で助かるよ」
「あの二人を従えているカズマ様に言われるとは、光栄ですね」
王族直属から見ても、ゆんゆんとあるえは優秀らしい。まぁ自慢の嫁達ですから!原稿用紙を取り上げて、会話の必要な仕事を補佐にやらせればだけど!
「セレナ!こっちはオッケーだ!」
「最後尾が追いついた!傀儡を下げるから準備してくれ!」
戦いが熱くなったら、普通に口調が戻っている…徹底しろよ聖女様…
「クレア、合図を!」
「任せろ!」
クレアは軍用のラッパで全軍に合図を送る。そしてアクアの…
「任せて!『フォルスファイア』!」
これで全ての準備は出来た。俺とめぐみんは先に後方に
「行くんですね!」
「あぁ!『テレポート』」
下がった先には仮組みのやぐらが1つ。そこに待つのは…
「無詠唱は流石に出来ないけど…破壊力ならまだ譲らないわよ?」
「いいでしょう師匠!エリスとアクアの魔力で限界までチャージされた私は、もはや負ける気がしません!」
「戦えない住民の方が沢山の魔力をくれました!その気持ちに応えるために、私も負けません!」
「「「いざ、最強の座をかけて!」」」
ウォルバク、めぐみん、ウィズ。厄災とは正しくこれだろう。ちょっとだけトレントに同情する…
「「「黒より黒く闇より暗き漆黒に…」」」
前衛が次々とテレポートで街へ戻る。打ち漏らしを片付ける為の準備だが、それは不要な保険だと俺は考えている。だって、俺はこれ以上の驚異なんて知らない。
「よし!レインの作った沼でトレントが固まってる!抜けてくる前に頼むぜ!」
詠唱を続けながら力強く頷く3人。これが効かない相手?存在しないだろそんなやつ!
「「「『エクスプロージョン』!!」」」
強大な魔力の奔流。展開された巨大な3組の魔法陣は、数千の敵を完璧に捉えた。そして、その中心から眩い光と轟音を轟かせ…
「ヤバい!全員捕まれ!『テレポート』!」
その衝撃でこのやぐらまで崩れ始めた。やっぱり射程以上の威力になるんだな。余剰に貯めた魔力で撃つと…
…………………………………
「『千里眼』」
街の城壁の上から確認する。見えたのは平原。なにも動くものがない。ただの焼けた平原と巨大なクレーターだった。
「お前ら…120点だ!」
親指を立てて、座り込んだ三人に向ける。それに3人も笑顔で応えてくれた。俺たちは、勝ったのだ!
『き、奇跡です!殲滅を確認!死傷者は無し!我々の…完全勝利です!』
ギルドでも確認が取れたようだ。これは俺の名声が良い意味で広まるかも知れない。
「それで、一位は誰だったの?」
「今回は条件も厳しかった中で全員が完璧に結果を出したからな…流石に甲乙付け難い」
と言うか、閃光がヤバくて完璧には確認できなかった。
「と、言うことでドローです!次の勝負に持ち越しで!」
「ふふ、次ですか…今度はどんな冒険があるんでしょうね!」
「カズマさんと一緒なんですから、きっと楽しい冒険になりますよ」
「そうね。私も疲れたし…今日は休みたいわ」
今日はこれで、本当にめでたしめでたし…
「あ!やっべ、あの除草剤消し飛んだよな?誰か持ってきてたりしないよな?!」
「これかしら?ヤバいって聞いてたから持ってきたわ」
アクア!今回はよくやった!それが行方不明で後からなにか合ったほうが困る!
「ナイスだアクア!それはちゃんと処理しないと困るからな!」
「でしょ?私もそれを気にしていたのよ!ピュリフィケーションで浄化して、ちゃんと無力化したわ!」
「…お前、今なんて言った?」
この女神が真っ当な活躍をしている?!
「そして、この瓶はリサイクルね!やっぱりこういう細かい所に気が付くのが女神なのよ!自然環境も大切にしないとね!たくさん伐採したし!」
「今日はなんてできる女神なんだ!俺…お前を選んでほんとに良かった…」
ちょっと涙出てきた…
「そ、それでね?頑張った私としては、ちょっと良いお店でお祝いとかしたいなぁーって…」
「あぁ!大金も入ったんだ!俺の奢りでパーっと祝おうぜ!」
「やったー!カズマさん大好き!」
………………………………………
その後はもう街をあげてのお祭り騒ぎだ。例年なら死者を弔い、その後で少しだけ勝利を祝っていた。しかし、今年はその必要はない。ただこの勝利を祝えば良い。今年だけは、涙なんて必要ないのだ。
「この世界の英雄と!偉大なる女神様に!」
「「「かんぱーい!」」」
もう何度目か分からない程に乾杯している。今までこの街は立派に戦ってきたんだ。こんな年があっても良いのだろう。
「ついでに王族にも!」
あ、また居た。なんで王族にだけオマケ扱いするんだろう?!
「今のは誰だこのやろう!前回と同じ声だったぞ!不敬罪で吊るしてやるからな!」
クレアは酔っていてもブレない。
「ありがとうカズマさん。無茶なお願いを聞いてくれて…」
「良いんだよ。俺は笑ってるエリスの方が好きだからな」
今回の参戦だって、元を正せばただの惚れた弱みだ。こう言って頬を赤らめているエリスを見ていれば、俺はそれだけで満足できてしまう。まったく、なんてチョロい俺…
「あの、お兄様…」
この楽しいムードの中、何故か暗い表情のアイリスが俺の元へ。
「あの…アクア様が、街中で今日はカズマさんの奢りだと触れ回っているらしく…私にも何故か焼きそばとりんご飴を…」
…なんて?
「あぁ!カズマ様ご馳走様です!なんて偉大な英雄なんだ、あなたは!」
「今日という日をこれ程幸福に感じたのは初めてです!」
行き交う人が、不穏なワードを…
「あ、はい…どういたしまして…」
これはアレだ。この馬鹿騒ぎの支払いが下手すると全部俺に…
「アクアー!余計なことを触れ回りやがって!せめて店一軒くらいにしとけ!」
「お、お兄様!アクア様はあっちです!」
アイリスとエリスを連れて走り出す。なんで最後にやらかすんだアイツは!
「おお!英雄と女神と王女の凱旋だぞ!」
「こんな奇跡の瞬間見たことないわ!」
「あ、どうも…」
あぁ!やりにくい!これはこれで凄くやりにくい!アクアを殴れない!
「あ、カズマさーん!」
「おいこらアクア!おま…」
隣に王様居るじゃん…
「サトウカズマ。此度の戦、実に見事であった」
「あっはい。ありがとう…ございます」
なんで街に居るんだよ!暗殺とか警戒しとけよ!いや、それは人の事いえないんだけど…
「そして、この祭を自費で開催した慈愛に感服した。今日という日は多くの戦士の命日であったのだ。この祭で死者を慰め、残された者達に彼らの死は今日の為であったことを教えるとは…何という器の大きさよ…」
知らないよ!俺はそんな設定知らないよ?!なんか人が集まってきたんですが?!
「それをあえて口にせず、女神を墓地に遣わせた心遣い…私はまだまだ、君を過小評価していたようだ」
「アクア…お前…」
「だって…こんな時に泣いてたら、死んだ人も浮かばれないじゃない!…それに、目の前で泣かれるとお酒が不味くなるし…」
あ、主な理由は後半だな…
「我等は王族だ。自分より国を重んじるが故に、その生涯は自らを犠牲とし国のために尽くせと教えてきた」
おい、なにを語ってんだあんた!人を集めんな!
「犠牲がない勝利など、絵空事だとおもっていたのだ。しかし、君はそれをやってのけた」
なんだよこの空気!おいレイン!何だその金ピカの…聖杯じゃねぇか!酒を注いでいいのかそれ?!あ、空にこの映像写してるの?!これを都中が見てんの?!
「皆よ盃を持て!今このとき、この国で最も偉大なのは王ではない!」
みんなが見てる!それより先は駄目だって!取り消せなくなっちゃうから!
「乾杯しよう…英雄に!」
王様が聖杯を掲げると、街中がそれに湧いた。
「「「「うぉーー!」」」」「「「カズマ!カズマ!」」」
王様ってすごい。手を上げてない国民なんて居ないんじゃないだろうか?しかし……俺の金ぇー!!!
「…うう、王様…支払いは例のお金からお願いします…」
「確かにこれは持ち歩ける額では済まないだろう。例の一時金から出しておこう」
あぁ、そんな辛い…
「じゃあ!祝いの花鳥風月!」
「「「おぉー!」」」
こんな幸福そうな人々を見せられては、もう止める事なんて出来ない。俺の表情を見た王様も「あれ?なんか違う?」って顔したもん…でも、無理でしょ?もう止められないでしょ?!
「あ、あの…私、いくらでもクエスト行きますから!」
「お、お兄様…私の貯金を…」
内情を知っているエリスとアイリスは慌てている。
「二人に罪はないから!」
あぁ!もう俺も飲んで忘れてやる!
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数日後、俺はアクセルの自室で、静かに手紙を読んでいる。
「最初は、アクアを泣かせてやる!とか思ったけど…」
俺の手元には、王様から送られた馬鹿でかい勲章とお祭り騒ぎで殆ど無くなった特許料の支払い証明。そして、
『死んでいった仲間の犠牲を、無駄にしないでくれてありがとう』『久しぶりに、家族が笑顔で食事をしました』『天国のあいつらも、きっと笑ってると思います』
残された人達からの手紙だった。
「少しは俺も、勇者になれたかな…」
失った金のことはもう良い。救った命を誇ろう。俺が目指したのは金持ちじゃない。勇者だったじゃないか…
「あの…昨日と言ってることが…こんなもん1エリスにもならないって…」
エリスは呆れ気味だが、それも仕方ない。
「ははは、なんのことかな?」
昨日の朝、セナさんが領収書を持って屋敷に来たとき、アクアは危険を察知してセシリーの元へ避難した。俺としても、流石に信者の前で女神を剥くほど鬼ではないし、冷静さを欠いては嫌がらせの効率が良くないと翌日に執行を伸ばしたのだが…
「まぁ、確かにあの時は…こんな1エリスにもならない紙くず!…とか、どうせ何も出ない穴なんだからガバガバに開いたままになっても大丈夫だろ!…とか思ってたけどさ…」
「先輩を泣かせるにしても特殊すぎますよ?!」
「いや、流石に痛いのは可哀想だなって…」
「それも相当可哀想ですからね?!先輩も女の子ですからね?!」
しかし、アクアへの罰はセナさんの活躍により防がれた。不審に思ったセナさんは俺への請求を調べ上げ、多数の架空請求と割増請求を発見。後はもう示談と言う名の口止め料請求である。ちなみに、多数の貴族や例の財務大臣も関わっていたらしい。アイリスと一緒に王都の高級店で祝杯やってる所に踏み込んだセナさんは、その貴族と大臣を一網打尽にした。俺からしたら、セナさんが一番の英雄だ。
「それで、いくら残ったんですか?」
「示談金で40億。財務大臣と貴族の裁判はこれからだけどな?流石にこの大金を持ってんの怖いから、ダスティネス卿に理由話して預けてある。学校に関しては、ダスティネス卿も協力してくれるってさ。皆には秘密だぞ?俺ももう少しだけ凹んでる振りをしとくから」
「分かりました。お金があると好きに使おうとする人が居ますからね…」
ついでに、アクアはきっちり反省させる。
「今度は、普通の桜を見に行きましょうね?」
「あぁ、この仲間達で平和にな…」
お金を受け取りにいったら、謎の戦争に巻き込まれたり、馬鹿な女神のせいで大金を失ったりと、魔王を倒しても俺の平穏は訪れない。全くの平和が高望みだと言うのなら、手頃な事件で済ませて欲しいものだ。
「カズマさん!ウォルバクさんとめぐみんさんが近場で爆裂魔法の練習をしたいとギルドに申請を!無理です!本当に無理ですから止めてください!」
屋敷に飛び込んできたルナさんは、慌てた様子で俺を呼んでいる。
「まったく…しょうがねぇな!」
そうそう、俺にはこれくらいの事件が丁度いいのだ。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
爆裂魔法3人撃ちと、アイリス加入をさせたい回でした。
増え過ぎると作者が混乱するので、ミスがあったら指摘してください。