いつも不定期でごめんなさい。
カズマ、ウィズ、セレナの冒険。最終日です。
俺は朝が好きだ。二度寝の幸福感も好きだし、素敵な夢を思い返すのも悪くない。でもやっぱり一番は…
「おはよう…ウィズ」
まだ覚醒しきってないウィズの頭を優しく撫でる。ウィズは眠そうな瞳でこちらを眺めると、優しく微笑んで俺の手を頬に導いた。
「おはようございます。カズマさん…えへへ」
昨夜の夢のような時間が夢でないと確認する。何て幸せな時間!サキュバスの夢では叶わない、その先の幸せまで実感できる!
「まだ夜が明けたばかりですよ?カズマさんって早起きなんですね…」
「そうだな…夕飯から、ずっと夢の中に居たからかな?」
ウィズの頬に手を置き、親指で唇を撫でる。このセクシーな唇をたっぷり楽しんだ感動を思い返しながら、ゆっくりと顔を寄せる。
「もう…夢じゃないですよ…んっ」
あぁ!このキスに応じるウィズの可愛らしさ!これだよ!これが朝に感じる最高の……
[カズマ助けて!]
…レジーナ…このタイミング?
[ごめん!でもセレナが病院で捕まったの!お願いだから助けて!]
マジかよ!随分朝まで粘ったな…
[あ、私が寝落ちしてて…]
えぇ…
「…ごめんウィズ!幸せな時間は少しだけお預けらしい!」
「あ、私にも聞こえました!この声がレジーナ様なんですね!」
え?祝福されたからかな?
「私も一緒に行きます!セレナさんを助けに!」
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訪れたのは結構な大病院。拘置所では無い。セレナはここで秘密を知ってしまったから拘束されたらしい。
「病院に秘密って…臓器売買とか人体実験とか?」
「か、カズマさんって、発想が魔王様より危険なときがありますよね…流石にそんなことをしたら、エリス様に悟られて戦闘力の凄い神様とか派遣されますよ…」
え?ゲームの悪役ってまぁまぁやるよね?やっぱ神様にはバレるんだな…
「で?侵入経路は?」
[あそこの通気口を使いました]
やっぱ、あいつ聖女向いてねぇわ。逆方向にポテンシャル高すぎるもん。
「うん、ここならイケそうか…」
取り敢えず俺が先に、索敵系スキルあるし、早朝なら意表も付けるだろう。
「あっ…カズマさん…あの…」
「どうしたウィズ?やっぱりこんな所は通りたくないか?」
「い、いえ!セレナさんの為ですし、それは全然いいのですが…胸が支えて…」
……豊かだもんね。仕方ないね。
「うん…外で待機しててくれ…」
「…はい」
なんだろう。久々に銀髪盗賊団で仕事したくなる。俺、こう言うの案外嫌いじゃないな…
[待って!その先です!]
オッケー。先に潜伏使って…
「さぁ!お前もアクシズ教になるんだ!」
「絶対にお断りです!貴方こそ、治療と偽った洗脳行為を悔い改めなさい!」
…あれ?超絶嫌な単語を聞いたぞ?
「ここの治療方法をバラされては困るからな!お前がアクシズ教になると言うまで監禁させてもらう!何故か身体検査をしようとすると、中年の油ギッシュなおっさんに触られたような不快感が発生して色々出来ないのが残念だがな!」
「それはそれは、自己評価は正しく出来るようでなによりですわ!」ペッ!
「ほう、良い態度だ」フキフキ
「おい待て!なんで床に吐いたつばをハンカチで回収してんだお前!」
あー嫌だなー。そんなのと関わるの嫌だなー。一応、確認だけするけどさ…
「ふふふ、これは後でゆっくり楽しむとして…ほら!このアクシズ教の水で身を清めてやろう!白い服など着よって!透けろ透けろ!」ピチャピチャ
「やめろ変態!なんでアクシズ教徒はこんなんばっかりなんだ!」
覗き込むと、椅子に縛られたセレナにボトルで水をかける中年のおっさん。しかも、なんか大量に水が置いてある!アルカンレティアって書いてある!
「領主にして名医と呼ばれた私をこんなのだと!口の聞き方に気を付けろ!」
えぇ…あれ領主なの?嫌すぎる。ダスティネス卿、少しくらい権力振りかざして良いのでは?て言うか、変態の方には怒らないんだ…
「何が名医だ!アクシズ教が細菌からも嫌われているからってこんなに水ばっかり用意しやがって!身体中の水がアクシズ教の水になるまでここで生活して、そこにアクシズ教の教えを四六時中説くのは拷問っていうんだ!そりゃ細菌も逃げるわ!」
「治っているのだからいいではないか!」
「その結果が、アクシズ教に入信するか…心が壊れるかの二択だろうが!実質人生終わってんだよ!」
あぁ、うん。終わりかけた人が言うと違うね。さて、そろそろ…
「医院長!大変です!何者かが侵入したようです!」
「馬鹿な!それは本当か?!」
なんでバレた?!
「確かでは無いのですが…扉が勝手に開いたとの事で…」
「光の屈折魔法か…くそ!私が実は医者でもプリーストでもなく、アークウィザードだとバレては経歴詐称がバレてしまう!なんとしても探せ!」
まさかのプリーストですらないのかよ!そして、バレそうなのはウィズか…
「しかし、我々にはプリーストに光の屈折魔法を見破る手段は…」
「いや、光の屈折魔法ならやりようがある!スプリンクラーを使え!水をかければあぶりだせる!今日は休診日だ。なんとしても見つけるのだ!」
「おい、それは辞めたほうがいいぞ。多分それは私の救出に来たアークウィザードだ。お前が敵う相手じゃない。自首するんだな!」
「くっ!不法侵入者が偉そうに…まぁ良い。お前はアクシズ教になるか、私の嫁になるまでここからは出られんからな!」
「おい!後半知らねぇぞ!なんだその条件?!」
うん。もう驚かないよ?アクシズ教だもん。
……………………………………………………
「くそっ…まさかあたしがこんなヘマを…」
「だな…らしくない」
人が居なくなったのを確認して通気口から降りる。しかし、弱々しいセレナってこう…ムラっとする。
「ありがとう…来てくれるって信じてた…」
「お、おう…素直にお礼言われると、ちょっと調子狂うな…」
ちゅんちゅん丸でロープを切る。さて、あとは脱出だが…
[今度はウィズが追い詰められてる!助けに行かないと!]
「ウィズが?!」
「それ、あたしらが行ってどうにかなるのかよ?!」
ウィズは俺達とは比べられないくらい強いから…確かに不安だが、行かないわけにも…
[大丈夫!スプリンクラーの水がアルカンレティアの水だったってだけだから!二人なら勝てる!……と思う]
スプリンクラーまで?!マジでアクア水漬けの日々を送るんだな……と言うか、最後になんか不穏な言葉を言いませんでした?まぁ、行くけどさ…
「しょうがねぇな!ウィズの為だ!セレナ、もう一仕事頼むぜ!」
「おう!レジーナ様、お願いします!」
そう告げたセレナがいきなり走り出す。普通は潜伏とか使って行動するんじゃ…
[そこ直進!角で3秒待って!飛び蹴り!]
「あっ!侵入しゃ…ぶふぅ!」
なにこれ!高性能レーダーじゃん!でも、いきなりそれ?!
「なぁレジーナ…一応彼らに罪は…」
[アクシズ教は存在が罪]
…どうしよう。否定できない。
[その扉を勢い良く開いて!]
ゴンッ
「ブフッ!」
おお、クリーンヒット…
[二人でキスして!]
「「はぁ?!」」
[早く!]
「レジーナ様の言うことだ!多分意味がある!」
「よ、よし…いくぞ?」
「う…うん…いいよ」
やばい!この空気はしにくい!
「…なんだよバカップルかよ」「おいおい!患者の逢引にこっちを使うな!」「今は侵入者が居るから、さっさと西棟に戻んな!」
意味あった!この命令意味あったよ!
[今です!一番うしろのやつを階段から蹴り落として!]
えぇ!それは流石に…
「おら!」
「「「あぁ!!」」」
えぇ、セレナ全く躊躇しねぇの…
「ほら、行くぞ?」
「……はい」
[止まって!左右の観葉植物の影に!…どうしよう。3人来る]
「あ、それは別に問題ない。俺が二人やるから『サイレンス』『スリープ』『バインド』」
サイレンスで連絡を封じ、寝かせ、縛る。最後のは…
「『神罰の一撃』!」ガッ!
セレナとレジーナ、こういう戦いだと強いな…流石は諜報員…でも、無防備な人間に武器フルスイング出来るのほんと聖女向けの人材じゃねぇわ。
「『ヒール』…大丈夫ですか?」
「どなたか存じませんが…ありがとうございます…何者かに殴られ…うっ!」
そして、自分で殴ったやつを傀儡化してる…
「よし、捕まえた侵入者はどこだ?」
「この先の分娩室に…」
ほぅ、分娩台にウィズとセレナを乗せるプレイ…有りだな…
「よし、お前は先にそこに行って…西棟に侵入者だ。って言って回れ。相手はアレだ…医院長の不正の証拠を狙ってるって言ってな!」
うわぁ、あの能力って上手く使うとやばいな…
「分かりました…医療ミス…脱税…不倫…各種証拠がある西棟の院長室を目指していると伝えます…」
「いや多すぎるだろ!やっぱりろくなやつじゃねぇな!」
「だな…流石にやり過ぎたかと思ったけど…そこまで悪人だと情も湧かないわ…」
_____________________
「あそこだな…」
敵に遭遇する事もなく辿り着いた分娩室、見張りは居ないが、室内に何人いるか分からない……なんてことは無く
[中には3人です]
ゲームのマッピングシステムが、現実から見たらどれだけチートか思い知る事になった。
[あぁ!ウィズに水掛けプレイを!]
「こらぁ!!あたしの友達に何してくれてんだ!」
あぁ!単細胞が突っ込んだ!
「『バインド』!」
「くそっ!なんでバレたんだよ?!」
いくら何でも捕縛が早い!相手に感知系のスキル持ちが居たか?!
「くそっ!盗賊か!?」
「いや…アサシンだ!」
上級職かよ!
「そっちの鎧騎士はソードマスター。医院長がアークウィザード…さて?そっちに勝ち目があると思うか?」
うわぁ…これは無理ゲーでは…でも、奥には半透明のウィズがいるし…あ、不幸中の幸いだ。分娩台に乗せられていたら、俺も突っ込んでいたかもしれない…
「むふ、お前の仲間はアンデッドだったか…スケスケにしようとしたら手まで透けてしまったぞ?」
「うぅ、セレナさん…すみません…」
くそっ!絶望的過ぎる!レジーナ、何か策はないのか?!
[殺しを望まないのであれば、私だけでは無理…カズマが対価を払えばこの状況を打開出来るとしたら…貴方は払える?]
「対価ってなんだ?俺に払えるもんなのか?!」
[貴方でないと払えない。でも、カズマの力だけでは二人は救えないと思う…]
なら決まりだ!俺はあの二人を失えばきっと後悔する!それなら、何でもくれてやる!
[わかった!皆!手を貸して!]
その直後、アクアとエリスのバフを受けたかのように身体が軽くなる。ん?皆ってなんだ?!
[カズマは元々、何も信仰していない…でも、神々に出会った貴方は、神々を一人の仲間として信じることが出来る。だからこそ、全ての神の声が聴こえる!すべての神の力を受け止められる!]
なにそれ?!俺の信仰の無さにそんな選ばれし力が!
「おい!潜伏が切れてるぜ!」
やばい!アサシンの速度はやっぱり段違い!上を取られたら両手が間に合わ……
[最初は俺だ!]
ゴッ!
「ブフッ!!」
自然と出た技は…頭突き?!
「くそ!格闘家かよ!」
俺の攻撃力では仕留め切れない。相手は後ろに飛んで距離を…
[まだまだぁ!]
ダンッ!
「てめぇ!脚を!」
アサシンの足を踏んで逃走を防いだ!そのまま身体が自然と前に!
「そうはさせるかぁ!」
ブーツの先から仕込みナイフ?!これじゃ防御は出来ないし、回避するにも脚を離したら逃げられる!アサシンやべぇ!
[無駄だ小物が!]
ゴキッ
足首を殴って折った!いやスゲー神様だよ!大当たりだよ!
「くっ!ちくしょう!なんだその格闘技は!」
「[ミャンマーラウェイだ!]」
あ、知らない…俺の身体使って堂々と宣言されたけど、マジで知らねぇ…
※打撃の立ち技が基本何でも使える格闘技。なんでも使えすぎて大半の総合格闘技には出られない。実践だと多分強いが、その強さを競技で知る事はない。不遇。
[…シュン]
ごめん…本当にごめん!
「知らねぇよ!くそっ!」
そして当然。アサシンも知らない。
[知らんと言ったな?貴様は許さん!]
あ、なんか俺だけ許して貰ってすみません…それにしても、脚が折られても捨て身でナイフを振るなんて…相手はやはりプロで…
ゴキッ
「ごふっ!」
今度は肘を殴って折った?!
「[ミャンマーラウェイは超攻撃的な武術!さらなる攻撃で相手の攻撃を潰す!肘も膝も、頭でさえも全てが武器!両手の刃物しか選択肢のないお前では話になどならん!]」ガシッ
「おい!両腕を掴むな!待て待て待て!!」
ガンッ!!
「がふっ…」
顔面に頭突きがクリーンヒットした。額に鼻と顎の骨が折れる感触がしたぞ…
「ほう…中々やるらしい。しかし、武術家がソードマスターに勝てると思うなよ!」
今度はソードマスターが突っ込んでくる!馬鹿め!この神様は超強いから…
[あ、ごめんな!対剣術は専門外だ!俺なら剣ごと殴り倒せるが、カズマの身体じゃ多分持たん!]
嘘だろ?!もう!
[よし!私が!]
おぉ!今度はなんの神様だ?!
シュパッ!
先程のアサシンのダガーを投げた!ちゃんと刃が向こうを向いて飛んでいく!
「そんな小細工は通じんわ!」
まぁ、普通に回避されますわそりゃ!
スパッ
「おおい!あたしに刺さるところだったぞ!」
やっべ!セレナの近くの地面に刺さった!ごめんねセレナ!
[うん!小柄投げの神様の私はここまでだ!]
※小柄。日本刀の中に隠れてるちっちゃい刀。時代劇で度々投げる。本来投げるもんじゃない。イメージでそんな武器と勘違いされている。不遇。
「あぁもう!『スティール』!」
よし!今回はちゃんと剣を奪えた!神々のお陰で運も上がってるようだ。
「なに?!貴様!武闘家ではないのか?!」
「あぁ!冒険者だよ!」
その剣を後ろに放り投げる。さて、武器が無ければ、こっちにはラウェイの神様が!
[ふむ、あの鎧を俺が殴ると…カズマの腕が折れるな…]
…駄目じゃん!
「お前がどんな武闘家でも!この鉄壁の鎧は撃ち抜けまい!」
[よし!今度は私が行こう!]
パンッ!
「うぉ!…あれ?うるさいだけかよ!」
突っ込んでくる相手の兜に掌で一撃加える。あの…なんの神様か存じませんが…これ効いてますか?!
[私は楽器、ハンドパンの神!この鎧で最高の音色を奏でてやろう!]
ハズレだよ!音楽の神様はこの場には駄目だろう!て言うかハンドパンって何さ!
※ハンドパン。凸凹した中華鍋見たいな鉄板を手で叩く楽器。奏者が少ない。熟練しないと大きな音を出すのが大変な為、他の楽器と併用し辛く、始めるにもハードルが高い。不遇。
[やれやれ、やはり知名度が問題か……ふっ!]
パパパァン!
「あ…頭が…」ドサッ
え?クリーンヒットして良い音はしたけど…音だけで脳震盪?!
[甲冑の中で大ボリュームで私の演奏が聴けるなんて…お前は幸せ者だな!]
…ごめんなさい。本当にごめんなさい!神様だったよ!マジで凄い神様だったよ!
[カズマ!危ない!]
「『ハイドロプリズン』!」
ガッ!
「ぐふっ!」
水の上級魔法で壁に叩きつけられる。やばい、なんだこの大量の水!室内じゃ回避不可能だろ!
「ふふふ…私は幼い頃、アクシズ教の洗礼で濡れ濡れスケスケに目覚めた。そして、水魔法だけを追求しここまで来たのだ!私の水魔法は誰にも負けない!」
性癖でここまで来たら、もうある意味尊敬するわ!局所的にベルディア戦のアクアみたいだもん!
[ごめん!カズマの魔力じゃ…魔法には…この場の神様ではどうしようもない…]
くそっ!ここまで来て!
「おい!二人共早く起きろ!こう言うのを始末する為に雇っているんだからな!金の分働け!」
「くそっ!楽には死なせねぇからな!」
「あぁ…まだクラクラする…」
頑丈すぎない?!
[まぁ、カズマの身体で出来る範疇だし…]
はい、すみません!俺が弱すぎましたね!
[でも大丈夫…もう切り札が動き出したから…]
あぁ、伝わってくるよ。この圧力と冷気…本当、人間側で良かったよな…
「今、貴方達は…都合の悪い人間を殺すために雇われたと言いましたね?つまり、何も罪のない一般人であろうと…都合が悪ければ殺すと言う事ですか?」
ハンス戦以来の、冷気を纏うウィズ。足元の聖水も、凍ってしまえばウィズを濡らすことはない。
「あぁ、俺たちは掃除屋だ。邪魔なゴミを処理するのになんの抵抗もないね!」
あぁ、火に油を…
「そうですか…なら…私も容赦はしません!」
「必要ねぇよ!死体女…がふっ!」
折れてない方の脚で飛んだアサシンの腹部に、氷の柱がぶち当たる。肋骨が砕ける鈍い音が室内に響いたが、死んでは居ないようだ。
「おいおい!なんだそのデケェ氷!今詠唱したか?!」
やはり、上級職から見てもウィズの魔法は異質らしい。夫婦喧嘩は絶対にしない!
「くそっ!聖水で弱っていたはずではないのか!」
「残念、あたしの魔力で回復させた!お前らがカズマに気を取られてる間に、縄は切らせて貰ったぜ!」
「さっきのダガーでか?!縄抜けって…お前どこがアークプリーストなんだ!」
そうだね医院長。俺もそれはなんか違うと思う!でも今はよくやった!
[私の刃物を投げた理由がここに?!]
小柄の神様、ちょっと黙って?
「このフルプレートメイルに、そんな氷玉なぞ!あれ!身体が動かん!!」
「『フリーズ』で鎧の可動部を凍らせました。そして、私が氷しか使えないと思ったら大間違いです!闇色の雷撃よ、我が敵を撃ち貫け!『カースド・ライトニング』!」
「ぎゃぁー!」
水濡れの状態で雷魔法を受け、鎧の内側から焦げた匂いがする。一瞬だけ痙攣のように鎧が震え、そのままソードマスターは動かなくなった。
[なんて強さ…カズマに神々の力を貸してもあの程度だったのに…]
「おいレジーナやめろ。俺も人並みに傷つく!」
しかし、マジで強い!これが元魔王軍幹部、氷の魔女。何もさせて貰えず上級職二人が無力化されるなんて…
「くそ!またこの水で!『ハイドロプリズン』」
「『カースド・クリスタルプリズン』!」
医院長の放った水は、もうウィズには届かない。俺もセレナへの嫌がらせでやったが、水があればフリーズの氷は厚く張れる。あの水がウィズと相性が悪いのはその通りだが、魔法使いとしては、あの医院長はウィズとの相性が最悪だ。
「くそ!私の水が負けると言うのか!」
「水は凍れば氷です。残念ながら、あなたの支配できる水はもうありません!」
ウィズの右足が水浸しの廊下を踏む。そこから連鎖的に水が凍り、医院長の両足は動かない。ちなみに、俺の足も凍って動かない…
「まだだ!まだ、水なら…かはっ…」
あれ?医院長の口元に霜が!
「『フリーズガスト』極寒の冷気をそんなに吸い込んでは…当面は魔法の詠唱など不可能でしょう…次に目が覚めた時、貴方がいるのは牢屋の中です!」
「く…そ…」
「氷の中で反省しなさい!『カースド・クリスタルプリズン』!」
ウィズの追撃で、医院長の身体が氷結する。まさに完全制圧…本当に良かった。ウィズが人間側の味方で…
「よし!ここからは衛兵の仕事だな!」
こうして、この病院の騒動は終わりを迎えた。
______________________
「あいつら、もう牢屋から出ることは無いだろうな…」
「すごい数の余罪でしたもんね…」
この世界は、権力を手にすると実に話が早い。潜入の話も調査で通った。スタッフも脅されて協力していたらしい。俺たちの暴力も、支配からの解放に必要だったと許してくれた。※金も握らせた。
「入院患者も全員治したし!あたしの教会の宣伝も出来た!これでこの街の医療問題は解決だな!」
大病院が営業不能になったのに、即時治療が出来るセレナのお陰で影響はあまり無い。後の問題は…
[あとは…神への対価を払ってもらう]
「あぁ、覚悟は出来てる…腕でも脚でも…持っていけ…」
多分、神様の力ってそんなもんだろう。決して安くは無いはずだ…でも、あの状況で助かったのだから…
[え?何言ってんの?怖!カズマ怖!]
「うわぁ…カズマの発想やば…引く…」
「カズマさん…やっぱり発想が魔王様より…」
え?何この空気?!
[カズマ、あなたは鶴の恩返しで鶴焼きとか振る舞われたいの?]
「え?要らないです…」
[うん、私達も要らないよ。ヤンデレなの?腕とか送られても困るよ?]
なら先に言っといてよ!俺の覚悟空回りじゃん!
[じゃあ、何を求めるか…だよね?]
あれ?!これはこれで嫌な予感がする!!
______________________
「こ、殺せ!もう殺せよ!」
[良い!凄く良いカズマ!セレナ!次はそっち!]
裸Yシャツを男に着せて喜ぶんじゃないよ!なんなの?!これが神様の要求なの?!男神多かったよね?!
「ごめんなカズマ。レジーナ様の意志だから…あ、私これが好きかも…」
おい、何楽しんでんの!今度は白スーツ?!
[ウィズとセレナを楽しみたければ、カズマに衣装を送りつければ良い。でも、カズマに着せるには何かしらの貸しが必要だった。そう!私達女神連合はこのチャンスを待っていた!]
「ふざけんなよ!おい、これバニーだぞ!男が着るもんじゃねぇよ!うわ、サイズぴったりだし!用意してたのかよ!」
[いま隣で、懺悔しながら織物の女神様が作ってくれている。まだまだある]
マジかよ!『天啓』!
[あぁ、お許しください!カズマくんポテンシャルを侮っていた事をお許しください!まだまだぁ!]
謝るならマシな理由で俺に謝れ!欲望に忠実すぎるだろ!
「あの…これ何時まで続くんですか…カズマさんの目が死に始めてますが…」
「ウィズ…俺を心配するなら、そのエプロンはなんだ?」
なんか、汚れ仕事する時にウィズやバニルが付けてるやつだよね?
「…夫婦経営とか…憧れてて…」
うん。まぁ、でもエプロンだし…
「分かったよ…それくらいなら…」
「いいんですか?…これで裸エプロン…」
なんで?!
「おい、ウィズ!それは待てって!」
「あぁ、セレナが味方に…」
「それは、服の上に着せて服の方を減らしていく方が良いと思う!」
「変態かよ!」
「…カズマの恥ずかしがる顔…好きだから」
「そんな理由で赤面してもドキドキしねぇよ?!」
あぁ、これが逆の立場なら!!
[今度からも気軽に頼って良い。なんなら、最高位の女神達も呼ぶ!]
「二度と頼らない!今度から知り合いにしか頼らない!!」
結局、この責め苦は夜中まで続いた。神々の力は安くない。今回の件でそう学んだ俺は、二度と神々には頼らないと心に誓った。
「あ、次これも…」
「男にヒモ水着を着せんなー!」
そして、俺は心に嫌な傷を残した。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
不遇な神様ネタをやりたかった。あと、恐妻であり良妻のウィズを愛でたかった。
次回は徴税問題。アクセルの街編です。