相変わらず不定期ですみません。
朝から晩まで信者に祈られた女神のネタを1つ。
途中でノリがとある濃い作品になります。作者の趣味です。ご容赦ください。
「カズマ、おかえり……死ねぇ!」
「『自動回避』!帰ってきてお前が最初に遭遇かよクレア!て言うか町中で剣は抜くな!」
アクセルの街に帰還して、最初にクレアに遭遇した。まぁ、何となく予想はしてたよ。アイリスから「クレアがご迷惑をおかけします」って手紙を貰ったから…
「貴様!私が2日早めた徴税を、その早朝に回避だと!どうなっているんだ!」
「悪いな!俺の嫁は幸運の女神なんだ!」
「ふざけんな!だったら嫁の出身地に送ってやる!」
まぁ、さっきまで天界に居たんですけど…あ、お金はもう口座です。テレポートして王都で送金してきました。セレナとウィズは先に帰してね。
「あ、カズマさーん!おかえりなさい!」
「エリス?!今は駄目だ!クレアは周りが…」
ドスッ
「はぅ!」
とエリスに気を取られた時、何故かクレアがうめき声をあげて、剣が俺の頭上を超えていった。
「か…完成していたのか…あの速攻が!」「あぁ!俺たちはもう、町内会最強と戦える!」
あ、背中にバレーボール食らったんだ。でも、最近ここら辺のバレーボールの流行り方は異常な気がするな。バレーコートが勝手に作られる怪事件のせいらしいけど…
「くっ!町中で本格的過ぎるわ!周りの迷惑を考えろ!」
町中で剣を抜いた女が言うなよ。あれ?このままクレアの身体がこっちに来ると…
ガタン…ポニュ
「おっと…これはアレだよな?事故だよな?!」
そのまま抱き合うように倒れ込み、クレアの程よいサイズの胸を鷲掴みにしてしまった。これ、むしろ俺は被害者で…
「なんで…庇うんだよ…」
「はっ?えっと…うわっ?!」
俺の頬、ほんの2センチの位置に上を向いた割れたガラス瓶。俺が庇わないとクレアの顔か、肩あたりは大変な事になっていたかも知れない。
「だから私は…お前が嫌いなんだ…バーカ!」
なんか涙目になって、よく分からない文句を叫んで走り去っていった。偶然とはいえ、庇ったのにバーカはあんまりではないだろうか?
「大丈夫ですか?」
「あぁ…ありがとう、エリス。改めて…ただいま」
「おかえりなさい、カズマさん。来年からはちゃんと納税してくださいよ?カズマさんの悪戯で皆大変だったんですからね?」
「うん、善処する!」
凛々しくも可愛い声と、美人なのに可愛らしい顔。あぁ、やっぱりマジ物の女神って良い!
「えっと…その…」
何故か周りを見渡すエリス…どうしたんだろう?さっきの騒動で皆がこっちを見てるけど…
「おい見ろ!空にブロッコリーが飛んでるぞ?!」「嘘?!伝説級のモンスターじゃない!」「幸運が訪れるぞ!」
「え!確かにキャベツの一種だったはずだけど、ブロッコリーは普通に八百屋に…ん?!」
いきなり肩を掴まれ、エリスの顔が迫る。そのまま柔らかくて湿った感触が、俺の唇に押し付けられた。確かに今なら、誰も見ていないけど…
「…あ、改めて…私のところに…おかえりなさい」
「うん、ただいま」
まったく…伝説のモンスターより俺なんて、可愛い女神様だな!
「さぁ、帰りましょう?皆の待ってる家に…」
「あぁ、帰ろう」
幸せな日常に!
____________________
「…そこに正座しろ」
「…えぇ」
玄関で、ダクネスがお待ちでした。幸せな日常への帰還は、少しだけお預けらしい。
「ダクネス…せめて、おかえりくらい言ってあげてください…」
「そ、そうだそうだ!横暴だぞ!」
「おかえり、正座!」
「はい!」シュタッ
くっ!本気で怒ってるのか?!俺の脱税は何時もの事なのに…
※それはそれで駄目です。
「おいカズマ…脱税に関しては、ルールも問題であるし、その間に凶悪犯の取り締まりをしていた事から仕方ないとも思っている。しかし!これはなんだ!」
あ、黒い箱…あいつらを巻き込んだことを怒ってるのかな?
「な、なんだこの!破廉恥な下着は!」
「え?ゆんゆんのじゃん!」
あ!向こうの角からあいつら見てる!なんかペコペコしてる!
「あげるなんて適当な手紙で…ゆんゆんがカズマの為に羞恥を殺して着る様を想像したのか!なんて鬼畜だ許せない!なんで私にやらなかった!」
チラッ
「言わないでください」(口パク)
ふむ、何かの手違いでゆんゆんのエロ過ぎる下着が俺からのプレゼントだと勘違いされているようだ。そして、ゆんゆんとしてはバレたくないと…なら、正解は…
「あ、それはゆんゆんの私物です」
あっ、ゆんゆん泣きそう。
「そんな訳あるか!まだ14の少女がこんなもの買う訳が無いだろう!こんなの痴女じゃないか!」
うん。本人スゲーショック受けてる。でも、これで自然と俺のせいになるんだよ。不思議だよね?
「おいダクネス、お前は分かってないな…下着や服は年齢で着るんじゃない!身体で着るんだ!」
「かっ!身体で…ひゃうん!」
なんで悶えたんだろう?普通そうだろ。
「このエッチな下着を着たゆんゆんを想像してみろ!」
「そ、そんなの!エッチすぎる!」
「えぇ、14歳の出して良い色気ではありません!」
うん。二人共想像早いな。エリスも入ってきてるし…
「では、そのゆんゆんが…そうだな。あと3年経過して、さらなる飛躍を遂げたら…」
「「…死人が出る?!」」
あっ、向こうで本人が「なんで?!」って顔してる。
「だから…ゆんゆんにセクシー路線は今だけなんだ…理解してくれ…」
「あ、あぁ…確かに、セクシーな服が将来的に着られないなら仕方ないな…」
…それでいいんだ。あっ、ゆんゆん涙目になってる。ごめんな!
「待て!あと、あるえのこの紐はなんだ!これでは何も隠れないではないか!」
…あいつら、その箱を物入れにしてないか?
「それは普通に布紐だろ。その長さじゃ服にはならねぇぞ?」
どう考えても短い。2本あっても何も隠れない。
「言い逃れをするな!一本で腕を縛り!一本で胸を一周させて、挟ませるつもりだろう!」
やだコイツ!プロじゃん!変態のプロじゃん!あるえ見てんじゃん!
「…いいよ?」(口パク)
…マジで?!胸寄せてそんなの言っちゃうの?!いや、駄目だ今は否定しないと!
「ダクネス…それなら俺はもっと扇情的な服を作るし、肌触りにも気を使うに決まってるだろ?」
「はっ…そうか…そうだよな…すまない」
なんでこれは信じるんだよ…
「そして、最後はコレだ!めぐみん宛の、紙エプロン!」
めぐみんに関してはゴミ箱にでもしたのだろうか?
「ダクネス…それはもうゴミか、焼肉へ誘ってるとしか…」
「私だって最初はそう思ったさ!しかし、めぐみんの股下までぴったりなんだ!」
「ふーん?めぐみん小柄だもんな。で?」
なんか嫌な予感するわー。ダクネスの息が荒くなってきてるもん…
「裸にこれを着せて!得意のクリエイトウォーターで透けさせるつもりだな!」
変態の上級職かコイツ!?
「私が身代わりになるから!年端もいかない少女にそんなことをするのは…痛い!」カンッ!
「何を馬鹿なこと大声で…これは、カズマが私に焼肉をごちそうするメッセージです。そんなプレイの何処が楽しいのですか?」
「そんな約束はしてないけどな…」
助かったし、それくらい良いけどさ…
「カズマ、おかえりなさい。アクアは居ませんが、皆待ってますよ」
「…一応聞くわ。アクアは?」
「まだ拘置所です」
あ、うん。俺の教えた方法ね。金ないのに脱税したんだアイツ…
「ただまー!」
「あれ?早いですね?」
「うん、何故か白スーツが身元引受人になってくれたの。あと、カズマさんにこれをって…」
あいつが?何だろう?でかい箱だな…
「あ、中に手紙が…」
『これで貸し借りは無しだ!クレア』
ふむ、不器用なやつだな…中身は…
「カニだ!!」
「「「えぇ?!」」」
________________________
「おかしい…」
食事と風呂を済ませ、ベッドでこの数時間のことを思い返す。こんなご都合主義が続くことがあるのだろうか?
「最初は都合良く飛んできたバレーボールだ。そして、全く刺さらなかったが、クレアを助けたと錯覚させた割れたガラス瓶。見たら幸運が訪れるレアモンスターと、エリスからのキス…は別に運ではないか…蟹は時期外れとは思えないくらい美味しかったし、風呂では甲羅酒に酔ったウォルバクとダクネスに抱き着かれて、立派な物に挟まれちゃう事態に…」
なんだコレ。高い幸運値とかのレベルではない。そろそろドッキリの看板をもったアクアが来てもいい頃だ。
「た、たまには幸運な日があっても良いと思いますよ?」
もし、これが仕掛け無しの事象であるなら、隣で寝てるこの女神が原因だと思う。
「あっ!ブレッシングか!ブレッシングしたのか?!」
「し、してません。それは約束します!」
「…それは?」
何この女神可愛い。嘘がつけないタイプ!
「えっと…徴税直前に沢山祈られた私の加護が漏れてしまってまして…」
「加護って漏れるの?!」
「はい。恥ずかしながら…ちょっと私のコントロール出来る量より多過ぎたと言いますか…いま、ゴッドブロー1発で上位悪魔の残機30くらい削れそうなくらい溜まってまして…」
「それはヤバい!」
あの可愛いパンチで?!
「カズマさんが200回死んでも蘇生できます!」
「そんなに死にたくはない!」
しかし、理由は分かった…それならまぁ、少し得した気持ちで居てもいいかな…
「えっと…なので…奇跡的に…排卵日前に当たっちゃったりして…」
なるほどなるほど…
ガバッ
「…止まらないからな?」
「はい…止めちゃ嫌です…あっ…」
この後、メチャクチャ〇〇した。残念ながら、排卵してないモノには当たらなかった。
______________________
早朝、閉め忘れたカーテンからの日差しで目が覚める。エリスは俺の胸に顔を埋めて、朝日から逃げているようだ。
「おはよう、もう起きるか?」
「もうちょっと…ここに居たいです…」
やはり朝は良い。腕の中で甘えるエリスの頭を撫で、幸せを実感できるのだから……
「あっ…まだ余韻が…んんっ」
エリスの身震いが俺の胸に伝わる。3日ぶりの再会に、昨夜はついつい盛り上がってしまった。
「昨夜は大胆だったもんな…」
「…だって…寂しかったんですもん…」
可愛い。うちの嫁超可愛い。
「どう?まだ信仰心は溜まってる?」
「少しだけ落ち着きました。カズマさんの蘇生なら198回に減ってます」
人命2回だから重いと思うべきなのか…200回から2回としか減ってないと思うべきなのか…
「生活に支障が無いんだったら、クエストでも行くか?幸運で簡単にクリア出来るかも知れないし!」
「えっと…私のコントロール出来ない程なので…それが良い方向に向かうかは分かりませんが…」
「大丈夫さ!俺の嫁は幸運の女神なんだからな!」
________________________
「来るんじゃなかった…」
伝説の竜、エンシェントドラゴン。なんか、近所で確認されたらしい。
「エンシェントドラゴンなら、過去にアイリス様とミツルギさんが討伐しているのですが…今回はその上位種、アークエンシェントドラゴンがこの街に向かっています。我々としても、カズマさんに頼る他無いんです!」
へぇ、その二人が倒せましたって情報。なんの参考にもならないからね?
「アクア。詳しく説明して?」
「えっと…アークは改良種で数百年に1体現れるエンシェントドラゴンを統べる龍の王よ。何より厄介なのは魔法攻撃が殆ど効かなくて、爆裂魔法さえほぼダメージにならないその特殊な鱗…そして、量より魔力密度で餌を選ぶから、人間が好物!まぁ、人類の天敵ね!」
エリス、とんでもない当たりクジ引き当てちゃったよ…ん?
「ちょっと、アクアこっち来て…改良種?いま、改良って言った?」
少しだけ皆から距離を置いてアクアを問い詰める。
「いってない」(輝く笑顔)
「ウソつけ白状しろ。今度はなんの案件だ?言わないとお前の予備ブーツの中身を全部飲むからな?」
時間もないので、アクアのコレクションを盾に脅す。目が泳ぎまくってるじゃねぇか…
「えっとね…古代の魔王を倒す為に送り込んだ転生者が…「俺が頑張るより、勝手に成長して魔王を食う生物作ったほうが楽じゃん!」って言って作ったの…でもほら、魔王を余裕で食べられる生物ってすごく強いじゃない?だから、数百年かけて地中で大地の魔力を吸って育って…魔王を余裕で食える!ってなったら出てくるの…」
「…人が食われているのは?」
「多分、歴代魔王って人型が多かったから…」
ふざけんなバカ!
「はい、もう大丈夫です。続けましょう。ルナさん、他に情報は?」
「えっと…前回の確認は600年前ですので…アクア様以上の情報はあまり……」
うわぁ、そりゃ情報もないわ…あれ?
「なあ、それどうやって倒すんだ?少しでも情報が残っているんだから誰か倒したんだろ?」
と言うか、倒せてなかったら人が滅ぶ。
「一応、討伐手順はあるんです。最強の生物であるがゆえ、寝ている時は逃げも隠れも、ちょっとした事では一週間は起きもしないので、寝ている間に巨大なギロチンや爆薬を使って…」
この世界は、最強生物でも油断してはいけない。ナメたことをするとこんな結末を迎える。
「なぁ、そいつはいつ寝るんだ?」
「お、お腹が膨れたら…ですね…」
「犠牲前提じゃねぇか!」
バカにしてんのか?!
「人は魔法で強くなったつもりだけど、生物としての力で争ったら決して強くはない…残酷だけど…それが現実なのよ…」
「おい、アクア…そのキャリーバッグはなんだ?」
「皆で逃げれば、空腹に耐え兼ねてモンスターでも食べるから…お腹が膨れた頃に殺しに戻れば良いのよ!」
本来なら文句の1つも言いたいところではあるが、それが一番確実な気がしてきた…
「しかし…既にドラゴンスレイヤーの方が派遣されていまして…もう近くまで来ていると…」
…これまたアイリスがピンチになるやつじゃん!
「ルナさんごめん、作戦タイム!!」
「あっはい!」
ちょっと女神3人集めますよ…
「なぁエリス。行けるか?アイリスのあれで…」
「あの剣は魔法を差し引くと特殊効果は無いので…アイリス様の剣技頼りですね…」
「無茶だな…アクア、ミツルギの魔剣は?」
「あれは切断の加護がついた業物だけど…シンプルにドラゴンのポテンシャルが高過ぎて…勝率2割くらいかしら…」
「ミツルギでも駄目なのか?!ウォルバク、秘策は?」
「魔力装甲のは物理攻撃なら破壊可能よ。まぁ、メチャクチャ速く飛べるし大砲の弾をブレスで迎撃するし…攻撃力が化け物だから、肉弾戦でもエンシェントドラゴンより強いのよね…何か兵器とかあれば良いのだけど…」
なにそれ無理ゲー…駄目じゃん転生者!魔王は全然倒せないくせに、人類の危機はポンポン作るじゃん!アクアも送る前に精査しろよ!
「なんか無いのか!そいつを倒す方法とか!すごい兵器とか!」
出来ればレールガン(仮)クラス!
「この街の兵器なんて大弓(バリスタ)しかありませんが…」
「よし!それだ!それを見に行こう!」
______________________
「すごいです!カッコいいです!紅魔族的にはこれを採用したいです!」
「おおっ、強そう!だけど…これどうやって引くの?」
城壁の上にあったのは、幅5mはある大弓。
「魔力を注げば勝手に引かれます。最大射程はなんと!100キロの矢が1キロ飛ぶんですよ!」
「すごいじゃん!もうこれで良いんじゃないの?!」
「それが…引くのに上級魔法2発分の魔力を消費すると判明して、矢は作られてないんです…そもそも、ここに矢を運ぶのも困難で…標準装置も付いてなくて…」
駄目じゃん!考えたやつ馬鹿じゃん!
「カズマ。いつかきっと撃ちましょう…矢を作って…」
「めぐみん…もうやばいドラゴンが来てるんだ。多分、上から見たら目立つから…普通に壊されて終わると思うな…」
でも、コレは何かに使えそうだと…
ドォーン
「ねぇカズマさん…私、すごく嫌な音が聞こえたような気がするんですけど…」
「うん、俺もそんな気がする…『千里眼』」
巨大な龍と戦う剣士二人…うん…知ってる…二人とも知ってる!
「おい!1キロ先でもうアイリスとミツルギがドラゴンっぽいものと戦ってんぞ?!」
「ふむ…吾輩の見立てでは…あと10分であそこで戦っている二人は食われるな…」
「…お前がここに居るって事は…何か秘策があるのか?」
城壁の上にバニルが来るなんて、普通に考えれば有り得ない。
「吾輩でもあの化け物に勝つ方法は見えん…しかし、あの二人の死は不味い。あの龍を不意打ちでも殺せるのは、戦士の中でも僅かであるからな…」
「…テレポートで連れ戻せって事だな?」
「あぁ、しかし猫神が行くのは駄目だ。あの龍は魔力で餌を探すからな。お前は即食われる」
「え?私のこと猫神って?!」
でも…10分であそこに行くのは…
「いやもう…これしかねぇじゃん…」
なんか、色々と覚悟した。
…………………………………
「『ブレッシング』!『ブレッシング』!これ、本当にやるの?」
「『ブレッシング』!『ブレッシング』!まぁ、窃盗と逃走ならカズマさんは得意ですから…」
「仕方ないだろ…他の手があるなら俺が知りたいよ…」
大弓に氷の矢を付ける。そこにベルトをかけて、腰を固定…なんだろう。風の谷のナウ○カみたいになってる。
「いい?カズマ…この氷は発射の衝撃で多分粉々になるわ。その先はウィンドブレスで微調整して!風魔法で着地したら、即座にテレポートで逃げるのよ?」
「あぁ、あの二人が一緒に戦って勝てない相手に挑むのは俺も御免だよ…それに、アイリスとエリスの力があれば、きっと仲間が集まるからな!」
左手で氷を掴み、右手で発射用のロープを掴む。微調整なんて要らない。俺には幸運の女神がついているから!
「カズマさん…いってらっしゃい!」
「あぁ、すぐに戻るよ…『狙撃』!」(イケボ)
バシュッ
そして、直後にこの作戦の立案を後悔する。
「あああぁぁー!速い!!寒い!!」
根本的なミスに気付いた!これ、速すぎてコントロール無理!もう身体が変な向きになってる!
「そいっ!」
やったこともないスカイダイビングの真似をして、何とか前を向こうとするが、完全に後ろ向きになってしまう。そして気付いた。この弾道…はるか上を超える!
「くそ!魔法で減速するか?!でも、俺の魔力って多くないし…あ!『ワイヤートラップ』!」
※少しだけ解説が入ります。ノリが濃い目のジャ○プ作品になります。作者の趣味です。ごめんなさい。
地面にワイヤートラップを射出すると、もう一方を射出するため手にワイヤーが残る。カズマは、このワイヤーを掴むことで、減速と下方向への方向転換が可能だと考えたのだ。
「よし!これで龍に向かったタイミングでワイヤーを…」
しかし、ここでカズマの運命の歯車が狂い始める。手にワイヤーが絡まったのだ。
「あれ?!これヤバいじゃん!地面に激突するじゃん!」
本来なら、スキルで出したワイヤーが絡むことはない。幸運であるカズマに、こんな事態は起こり得ない。しかし、制御できない幸運が、暴走した女神の加護が、この事態を引き起こした。
「うん、取り敢えず斬るか…エリス、ごめんな。使うね」
だが、こんな時でもサトウカズマは冷静だった。もう一人の女神のせいで、これくらいの不運など慣れたもの。冷静にちゅんちゅん丸を腰から抜くと、刀の柄を鞘にぶつけた。そこにはエリスのポーション(秘)が仕込んであるのだ。
「よし!集中しろ…ミスれば終わる!」
そして、カズマは意識を集中し、ちゅんちゅん丸を構えた。
………………………………………………
その龍は焦っていた。目の前にいる2人の人間が5分経っても自分の前に立ち続けることに、そして、はるか後方より飛んでくる飛来物に…
「『エクステリオン』!」
しかし、目視での確認はしなかった。この2人の人間は、目を離せば自分を殺せる可能性がある。魔力で感知しても、飛来物は驚異とは思えず、風の音から弾道を予想すれば、明らかに自分の上を超えていくからである。
バサッ!
そこで、この龍は考えた。後退し、飛来する何かの下をくぐり抜け、飛来物とこの二人を視界に捉える。そして、全力のブレス攻撃により、まとめて吹き飛ばしてしまえばいいと!本来なら飛来物など驚異ではないが、油断は無かった。かつての仲間が油断で討たれた事を、この龍は知っていたのだ!
「駄目です!なんて膨大な魔力…こんなの…防ぎようが…」
目の前の少女が崩れ落ちる様を見て、龍は確信した。多少の消耗はあるが、この方法ならば確実に殺せる。死体が残るかは分からないが、人ならあの街に行けばいい。そう勝利を確信し、ブレスを構えて留まったその場所こそ、サトウカズマがワイヤーで弾道を変えた先であった!
「あれは?!…君は本当に…ヒーローだよ…カズマ」
ミツルギの目に映ったのは龍の頭上から現れた人影、白く輝く短い刀を持つ、同郷の友人の姿。龍もその膨大な魔力に気付いた。しかし、その時既に、刃は振り下ろされていた!
「『エリスの加護』!あれっ?!」
背中合わせで接近した龍と英雄の目が合う。龍は放ちかけていたブレスを咄嗟にカズマに向けた!これこそが最大の過ち!大きく開いた口の中には、自慢の鱗は生えていない!今このとき!狂った筈の歯車が、違う形で噛み合った瞬間であった!
スパンッ!
______________________
俺はまだ生きていた。さっきは龍の顔が近過ぎて気を失ってしまったが、なんかワイヤーごと上顎を切り落として助かったらしい…
「なぁ、なにこれ?」
俺の乗った馬車に向かって、街の人々が手を振っている。目の前にはクレアとレイン。恐らく、アイリスの近くに居たのだろう。
「伝令がお前の活躍を伝えたのだ。お前は間違いなくアイリス様の命の恩人であり、この国をもう1度救った…その…カッコ良かったと…私も思う…」
おい白スーツ。なんで目を逸らして言うんだよ。本当にそう思っているなら、そこは素直に褒めろよ。
「えぇ、このツンデレさんもデレっぱなしな位の大活躍でしたからね」
「レイン?!私はデレてなどいない!そもそも誰がツンデレだ!」
「ぷふっ、徴税後に女の子の顔して帰ってきたのは…誰でしたっけ?」
そんな顔、見たことないけど…
「レインだって!龍の死体の上に落ちて無傷のカズマを抱きしめて「死なないでカズマ様!」ってさっきまで泣いてただろ!」
「あ、あれは!英雄を死なせたら王族補佐の名に傷が付くからで!」
こいつら、仲いいな…
「で?なんでギルド前に止めるんだよ?」
もう帰って寝たいのに…
「え?カズマ様の勲章授与式ですが?」
なんだろう。すごくモヤっとする。俺、大弓で発射されて、ちゅんちゅん丸でワイヤー切っただけなんだけど…
……………………
「サトウカズマ様。此度の活躍、正に英雄に相応しいものでした。ここに貴方を表彰し、勲章と、龍殺し〔ドラゴンスレイヤー〕の称号を与えます!おめでとうございます。お兄様!」
到着と同時に表彰台に乗せられた。なにこれ…ドラゴンが出る度に呼ばれたりしないよな…
「ねぇねぇ!国家指定の危険モンスターを倒したんだから、今回は街中巻き込んでお祝いしても良いわよね?高級シュワシュワ呑んでも良いわよね!」
一応確認を取るあたり、アクアは前回の失敗から学んではいるようだ。
「本来なら、無駄遣いすんなって言いたいけど…今回ばかりは賞金を使い切っても良いよ。流石にあんな偶然で得た金を独占するのは、ちょっと気が引けるから…」
それに、この街の人口を考えれば、精々1億とか2億だろう。国家指定の賞金なら余裕だろうし、脱税で悪くなったイメージの払拭には安いもんだ。
「やったぁ!みんな!今夜は飲むわよ!」
ハイテンションなアクアがギルドの放送機を手に取り、今日は宴会だと、俺の奢りだと街に触れ回った。まぁこれくらいの甲斐性はあっても良いだろう。
「あの…お兄様。勲章の副賞の500万エリスならお渡しできるのですが…あのドラゴンは、存在も不確かでしたし、個人で倒せる者など誰も想定して居なくて、賞金はかけていないのですが……」
……なんだって?
「だ、大丈夫です!私も出しますから!元々討伐隊編成用に預かったお金があるので!編成前に遭遇してしまって、使ってませんから!」
「ん?!アイリス…討伐隊編成ってことはさ…」
バタンッ!
「カズマくん!龍は!伝説の龍は?!我ら紅魔族!最大戦力を連れてきたよ!」
ひろぽんさん…あれ?!この流れってまさか…
「アクア様!アクシズ教の戦える者!総出で加勢に参りました!」
ゼスタ来た!
「エリス様!エリス教徒の僧兵、国中から馳せ参じましたよ!」
「ダスティネス家の私兵です!」「シンフォニア家の!」「隣町の衛兵隊だ!上司を殴って来たぞ!」「ギルドから派遣されて!」「暇だったので!」「ハンターです!ハチミツください」
次々と現れる戦う意思を持つ人々。あの…もう龍はいなくてですね?!
「あっこれもうオチが見える!アクア!あいつ何処行った!中止して!人が増え続けてるから!不味いことになるから!」
俺の抵抗虚しく街の宴は始まった。そして翌朝、俺の手元に残ったのは5億エリスの請求書と、付ける予定の無いドラゴンスレイヤーの勲章だけだった。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
偶然に偶然が重なって龍を倒す時、カズマの目線では細かいところを把握できるはずが無いので、J○JOの二部の最後の最後のあれをパクりました。反省しています。
次はアイリス、と一緒に付き人の二人です!