相変わらず不定期ですみません。一応アイリス回ですが、世界観的には未成年なので程々な感じです。
「お兄様、見ててくださーい!えい!」
静かな森の木陰、アイリスの美しい一閃が狼の身体を両断する。うん、そんな無垢な顔で見ててーって言うことではないかな…
「しかし、私の礼は本当にこれでいいのか?ふっ!」
スパッ
クレアの攻撃も、的確に狼の首を刎ねる。いや、こいつもマジで優秀だな…
「流石は私のお兄様です!個人的なお礼で、一緒に街に尽くそうなんて中々言えません!懐の深さが違います!えいっ!」スパーン
「おぅ…真っ二つ…」
ダクネスの説教から一夜明け、俺達は皆でクエストに来た。アイリスとクレアは、お手伝いと言う事で臨時パーティーを組んでいる。
「あんな形で身体を差し出されても、俺としては本意じゃないし、なんか嫌だろ?お互いにさ」
「あぁ、冷静になって…レインと二人で後悔したよ…ふっ!」スパッ
今回の討伐対象はホワイトウルフ。こう言う森林地帯での遭遇戦になる相手は俺たちのパーティーには不向きだ。なぜなら…
「ら、『ライトオブセイバー』」(極小)
「届いてないじゃないか!『アイスシャード』」(小)
ゆんゆんのライトオブセイバーは木々を伐採しない為に全然届かない。そして、あるえのアイスシャードは狼を貫通してしまい…
「ちょっと!『インフェルノ』!」
木を薙ぎ払う前にウォルバクが溶かした。うちのパーティーは火力が魔法頼りなので、「群れを焼き払う状況」には凄く強いが、「周りを巻き込めない状況」にはめっぽう弱い。
「気をつけてよ。この森林を破壊したら、報酬どころか賠償金なんだからね?『ハイドロショット』」
そして、当然火気にも注意が必要だ。あるえなんて得意魔法のインフェルノが使えず、さっきから苦戦している。
「「…気をつけます」」
この森林はアクセルの街の木材資源を支えている。この森全体で50億エリスはくだらないそうだ。普通に考えればあり得ない話だが、俺たちのパーティーの馬鹿みたいな火力なら焼き払えてしまう為、ギルドからなんども注意するように釘を刺された。
「…カズマ…撃ちたいです」
「うん、絶対に駄目。だから留守番しろって言っただろ…」
今のめぐみんの火力なら、やろうとすれば間違いなく森林の木を全部なぎ倒せる。敵の数も不明で危険だから、本当なら受けるつもりは無かったのだが…
………………………………………………
「お願いです!カズマさんのパーティーじゃないと、そもそもホワイトウルフの群れってだけでこの街のパーティーでは太刀打ちできないんです!」
「無理ですよ!うちのパーティーの火力は知ってるでしょ?!こんなの森が無くなりますから!」
「そ、そこを何とか…このままでは貴重な材木の流通が…」
いくらルナさんに泣き付かれても、うちのメンバーでは材木の方が消し炭になってしまうし…
「街の人々の営みを支える大切な資源に狼が…多くの人が困っているなんて…」チラチラッ
あぁ…エリスがもう気になっちゃってる…
「…分かったよ…知り合いのツテを当たってみるよ…」
「はい!お願いします!ギルドも全面協力しますから!」
うちの嫁は、こう言うのを捨て置けない…仕方なく剣の腕に覚えがあるやつを探した所、この二人くらいしか候補が居なくて、今に至る。
…………………………………………………………
「しかし、エリス様の支援魔法は凄まじいな。特にブレッシングを受けてからと言うもの、骨の隙間に吸い込まれるように刃が入る…よっ!」スパッ
「話しながら狼の首を狙って斬ってるクレアも十分スゲーよ…『狙撃』」(イケボ)
ドスッ
良し、眼球に入った。
「カズマの狙撃も相当だぞ…その精度、人なら簡単に殺せるではないか…はっ!」スパッ
「ここまでの精度は、エリスの加護が無いと無理だ…『狙撃』」(イケボ)
良し、喉!いやー実に安定する。安定し過ぎて…
「皆さん、疲れたら無理せず休んでくださいね?」
エリスはシートに弁当を広げているし…
「くぅー!外で飲むのも格別ね!エリス、ちょっとそのベーコン寄越しなさいよ。このお酒に凄く合うのよ!」
「あ、先輩!みんなの分も残してくださいよ!」
アクアに関してはつまみと酒を持ち込んでキャンプ気分だ。火を起こしたら今回は本気でつまみ出そう…
「なぁカズマ…私はなんで参戦しては駄目なんだ?」
ダクネスは俺の指示で後方待機だ。今は剣も持たせていない。
「ベルディアと戦ったとき、周りの岩を壊したろ?今日は剣を持つな!肉盾に徹底だ!」
「肉盾……ひゃうん!」
とまぁ、ダクネスも変わらず役立たずなので、実質アイリス達に頼りっきりだ。やはり優秀な前衛が必要なのだろうか…
「お兄様、狼が来なくなりました!」
「おー、そろそろ終わりか?『千里眼』『敵感知』」
付近の確認を行う。うん、敵は残ってないな!
「よし…森林内に残敵なし、クエスト完了だ」
最初はマイナスにならなければ良いと思っていたが、アイリス達の参戦で今回は完全に黒字だ。死体が消し炭にならないから素材報酬にも期待できる。
「お疲れ様でした。これで街の資材がちゃんと回りますね」
「うん、助かったよ…ありがとうなアイリス」ナデナデ
「えへへ」
誇らしげなアイリスの頭を優しく撫でる。立派な勇者に育って、お兄ちゃんとして俺も鼻が高い。にしても、アイリスの周りは凄惨な状況だ…単独で50は狩った為、足元は血の池になっている…
「私達の参加はお礼ですので、報酬はお兄様が受け取ってくださいね。私は、アクセルで冒険者登録をしてませんから」
「あぁ、カズマにはこれでも返せない程に恩があるからな…私の分も持っていってくれ」
クレアの件はまだ分かるが、アイリスが部下のお礼とするには貰いすぎだ。流石にこれは良心が痛む。
「クレアのは有り難くもらうけどさ。流石にアイリスの分は多過ぎるし、代わりに何かお願いとかあったら気兼ねなく言ってくれ」
じゃないと、なんか申し訳ない…
「そうですか…何でも良いですか?」
「…俺に出来ることならな?」
アイリスの討伐数を考えれば、相応なお礼をしなければならないが、王族相手に俺にできる事なんて…
「それでは…お兄様と、ふたりきりのデートがしたいです…」
おや、うちの妹は随分と可愛らしい要求をするじゃないか。
「へぇ、それはそれは…モテモテだな…カズマ」
怖っ!クレアの笑顔に殺意が見える!お前デレたんじゃないの?そもそもこの場合、俺に罪はないだろ?!
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「あ、お兄様。どうですか?これ、私のお気に入りなんですよ」
翌日、待ち合わせ場所には白いフリルの付いたワンピース姿のアイリスが立っていた。髪の葡萄みたいな飾りも実に可愛らしい。俺の妹がこんなに可愛いのは仕方ない!
「アイリスは何を着ても可愛いなぁ。そのワンピースもよく似合ってるぞ」ナデナデ
「えへへ。最近はお兄様が沢山撫でてくれるので、毎日が幸せです」
「俺で良いなら何時でも撫でてやるからなー」
しかし、側近2人の姿が見えない。あいつらが、と言うかクレアが、俺とアイリスをふたりきりにするとは思えないのだが…
「なぁ、あの二人は?」
「付いてきたら、1週間口を聞かないって言って出てきました。クレアは泣いてたので、帰ったら埋め合わせをします」
その姿が目に浮かぶよ。アイツ、いつまでアイリスにべた惚れしてんだろう。主人離れ出来るのかな?
「さて、デートだぞアイリス。どこ行きたい?」
「実は、最初に行く場所はもう決めているんです」
_____________________
「で、なにこれ?」
アイリスがどうしても行きたいと言うのでやってきたのは、この街で一番大きな舞台。そこに大きく掲げられた作品のタイトルは…
「勇者カズマの冒険譚!実は今日が初回公演なんです!」
へぇ……なにそれ知らねぇ!勝手に舞台にされてんの俺?!
「俺に無許可でこんなのありかよ…いや、王都では当たり前のようにミツルギが主人公になってたし…多分なんでも有りなんだな…」
「最後にフィクションと付ければ、実在したっぽいお話として権利が発生しませんので、お兄様の名前は色々使われていますよ?」
「…マジかよ」
まぁ、映画とか舞台ってデートの定番っちゃ定番だし、ある意味では気になるからいっか…
「しかし、王都では大人気で、王族の権力を持ってしてもチケットが入手できませんでした…クレアとレインまで送り込んだのに…」
俺の冒険にどれだけ尾ヒレ付いてんの!そんなに人気になる要素あったか?!
「まぁいいか、見れば分かるし…すみません、チケットを…」
「すみません!ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスです!見せてもらって良いですか?」
「お、王女様!なぜここに?!」
いやいや!そこで権力使うの?!
「えっと…あの、本当はこの作品は14歳未満は…」
「そこは検閲としておいてください!」
「は、はい!」
え?なにそれエッチなの?!しかし…権力による無賃鑑賞はどうかと思うし…
「あの…これ、二人分のチケット代です…」
「か、カズマ様?!本物のカズマ様じゃないですか!いやいや、お代は結構ですので、是非これにサインをください!」
「あ、はぁ…良いですけど…」
なんだろう。凄く内容が気になってきた!
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「まぁ、フィクションだからさ…多少の誇張とかはしょうがないとしても…これは悪意あるだろ…」
入口で貰ったパンフレットを開くと、配役の紹介があるのだが…これ、めぐみん役の乳デカ過ぎじゃ…と言うか皆漏れなくスタイルいいな…
「年齢制限付きの作品ですから…役者の方はどうしても大人になるんですよ。まぁ、めぐみんさんに関しては、アイデンティティがなくなってますからね…」
「おいアイリス。本人の前でそれを言うなよ…一応気にしてるから…」
「あ…すみません…」
そう言えば、ウォルバクの加護って効果あったのかな。ゆんゆんとあるえのブラは、このまえ買いに付き合ったけど…
「あ?そろそろですよ!」
「うわ…マジかよ満席じゃん…」
この街で人気な扱いなんて受けたことが無いのに、なんでこの作品はこんなに人気なんだろう…
『これは、麗しく聡明な女神に導かれた一人の勇者の物語である!』
いや、ナレーション!聡明ってお前…プロローグからもう嘘じゃん!
…………………………………………………
「お兄様、面白かったですね!」
アイリスは最初から最後まで目をキラキラさせ、ずっと真剣に見入っていた。いやまぁ…面白かったよ。うん…
「お兄様の冒険譚!ちゃんと作品として見ると、話に聞くより格好良かったです!」
「あ、うん。そうだろ?俺も第三者目線で見たからちょっと驚いたわ…」
とても満足そうだから、あえて野暮なことは言わないが、あまりに誇張がヤバかった!尾ひれとかの次元では無い。魚に羽と爪が生えたようなレベルだった!
「あのデュラハンの必殺技をダクネスさんが受け止め、お兄様がデュラハンを両断するシーンは凄かったですね!なんで私には教えてくれなかったのですか?」
「あぁ…うん。もっと色々したんだけど…ちょっと格好いいところだけ抜き出されちゃったかなー?」
いやまぁ、誰もベルディアに剣なんて当ててないんだけど…
「あと、私としては魔王軍幹部との許されない恋の話が気になったのですが…お兄様はシルビアと言う幹部と肉体関係は…」
「持ってません!あれは本当に嘘です!ていうか、俺が一方的に惚れられただけです!」
そして、濡れ場も凄く多かった。と言うか、出てきた美女はほぼ全員抱いてた。クレアとレインは、多分わざとチケットを取らなかったのだろう。ジェーム○・ボンドと言うか、特命係長○野仁と言うか…俺のイメージどうなってんの?
「女殺しの英雄と言うのは王都でも話題でしたし…」
「その話詳しく!俺の知らんところで俺はどんな扱いをうけているんだ!魔王を倒す前なんて、バリバリ童貞だったぞ?!」
「私に言われましても…お兄様のパーティーが美女しか居ないことが変に湾曲して広まった為だと思いますが…」
「その情報の出処…王家で探ってくれねぇかな…」
それもう嫌がらせだよね?
「でも、お兄様のアレは確かに凄いですし…その凶悪なモノで魔王軍の女幹部を手籠めにしたと言うのは…あながち嘘では…」
「手籠めになんてしてないから!俺は欲望のままに女の子を抱くほどの度胸も残酷さもないから!」
「そ、そうですよね。お兄様は優しく蕩けさせて支配するタイプですもんね…」
やめて!それで英雄になったと思われるのは心外すぎる!
「アイリス…俺は無実だ。ちゃんと戦って幹部を倒してるからな?」
「え?そうなのですか?…もう邪神ではなくなりましたが、元幹部のウォルバクさんとは関係を持ってますよね?」
…なんでそんな事把握してるの?
「…なんの事かな?」
「え?媚薬事件の時に……」
「うんアイリス!お土産コーナーでも見て行こうか!お兄ちゃんがなんでも買ってあげるからね!」
少し雑だが話を逸らす。くそぅ!天使の次はアイリスか!俺のプライバシーどうなってんだ!
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「むぅ…お兄様の嘘つき。何でも買ってくれるって言ったではないですか…商品を見るのも駄目なんて酷いです!」ポカポカ
「ごめんって…でもあれは流石に…」
クレアに殺されるよ…
「えっ?なんでお兄様の方が泣きそうな顔を?!」
お姫様抱っこしていたアイリスをおろす。とりあえず商店街の入口まで逃げてきたが、流石に今回のお姫様抱っこには、クレアも文句は言ってこないだろう。
「いや、本当に…俺のイメージどうなってんだよ…」
お土産コーナーは2つ、良い子へのお土産用にちゅんちゅん丸のキーホルダーや木刀、俺のぬいぐるみ(過剰な美化)をしたものが並んだ一般コーナーと…
「せめて何かで仕切れよ…いや、あの作品が成人向けだから、あそこに本来未成年は居ねぇのか…」
そして、もう一つのコーナーには、俺の手をイメージした振動する大人の玩具「ゴッドブロー」とか、「ちん○ん丸(ディ○ドー)」とか、一晩に3回戦出来ちゃうスタミナポーション「女幹部全滅薬」とか売っていた。そりゃ逃げたくもなるだろ。ちなみに、シルビアが女だと思われていた場合、4回戦必要になるけどそこは言わないでおこう。ちなみに、媚薬入りローションの名前が「ハンス」だったのには、悪いけど笑ってしまった。
「お兄様も、私が子供だからって見せてくれなかったのですか?」
アイリスの少しだけ寂しそうな顔。違うんだよ…アイリスは子供だけどちゃんとレディだから…そこはひた隠しにするつもりは無いんだよ。でもさ…
「これに関しては…子供とかじゃなくて…俺のイメージのために許してくれ…そして、可能なら商品の製作元と原作者を捕まえてくれ…もう王族の権力とか使っても良いから…」
「お、お兄様が権力を?!わ、分かりました…王族でも探ります!」
「あぁ、頼む…」
犯人を捕まえたら口には出せない方法で虐めてやるからな!
「あら、カズマさん。この前はありがとね。この新しいフライヤー使いやすいわ!コロッケ、サービスするから食べてってよ!」
惣菜屋のおばちゃん。あの、空気とか読んでくれませんかね…隣に美女が…それはいつも居るか…
「それはありがたいんですが…今日は…」
「デートなのです!」
うん。アイリスが代わりに答えてる。可愛い。
「そりゃ丁度良い!うちの新作、まだ姫様は食べてないだろう?カズマさん、奢ってあげなよ!」「カズマさん!うちの期間限定メニューも食ってけよ!」「カズマさん考案のメニュー、売れ行き良いんだよ」
この光景を見せられては、俺も認めるしかない。俺、やっぱり勇者ってキャラじゃねぇわ!でも、竿役は違うよね?!
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「なぁ、アイリス…そこは頑張らなくて良かったんだぞ?」
「でも、皆様のご厚意ですし…ケプッ」
宿屋の部屋を借り、アイリスをベッドに寝かせる。皆さんのご厚意により振る舞われた料理の数々を可能な限り胃袋に詰め込んだアイリスは、吐き気をこらえてプルプルしている。
「それにしても、アイリスって本当に愛されてるよな…」
「私は王族という身分があるからですよ。お兄様こそ、英雄というより、人柄が愛されているではありませんか…」
隣の芝は青く見えると言うが、今のアイリスは尊敬は勿論、人柄も愛されるようになったと思うが…
「お、お兄様は…私の身分と人柄…どっちを愛してくれていますか?」
「えっと…別に王族じゃなくても良いし…人柄は…生意気だった頃もそれはそれで可愛かったもんな…あれ?俺、アイリスってだけで愛せそうだな…」
「お、お兄様は、やっぱりそうやって魔王軍幹部の女性を口説き落として…」
照れているアイリスは実に可愛いが、その説は流石に勘弁して欲しい。
「してないって…もし俺がそんな奴なら、アイリスはこれから俺に…」
と言いかけて辞めた。それはきっとアイリスなら望む所で、俺から提案してしまえば、誰も止める人なんて居ないから…
「お兄様に…何ですか?」
「いや…まだ未成年だし、この先は…うぉ?!」
グイッ
突然手を引かれ、俺の身体がベッドに引き倒される。ソードマスターの筋力値に、冒険者の俺が適うわけがない。
「知ってますか?結婚が出来ないだけで…合意があれば…良いんですよ…」
隣で俺の腕を抱き、甘えた視線を俺に向ける。やっぱり、アイリスって可愛い…
「そ、それは…そう言う趣味の権力者に都合よく作られた法律で…」
「成人の14才だって…誰かの都合です。お兄様は、私とじゃ嫌ですか?」
嫌なハズがない。こんなに可愛くて美人で、俺を真っ直ぐに慕ってくれるんだ。誰にも渡したくなんてない。でも、アイリスは王女だから…
「嫌な訳無いだろ。アイリスの事は大好きだし、こんな俺でいいなら側に居たいさ。ただ、王族関係者になるってさ…皆との関係とか、今まで通りとはいかないと思うから…」
「…お兄様は、何か勘違いをしてませんか?」
「へ?」
俺としては凄く重い話題のつもりだったのに、アイリスの反応はアッサリしている。
「えっとですね…お兄様の行動を王族が制限するなんてあり得ません。私の兄様もお父様も、お兄様との敵対をなにより恐れているんですよ?」
え?なにそれ知らない!どういうこと?!
「いやいや!魔王を倒したとは言え…俺にそんな価値あるか?!」
「…はぁ」
あれ?アイリス呆れてる?!
「世界的に信者が多いエリス教の御神体と、世界的に恐れられるアクシズ教の御神体を同時に手に入れ…各国の精鋭魔術師でも勝ち目が無いとされた邪神を女神に戻して従え、王族にも完全に隷属する事が無かった紅魔族が個人の為に全勢力を動かし、未知の治療術で不治の病を治すプリーストを従え、王の懐刀を手中に収めた英雄って誰だと思いますか?」
「……俺です」
あれ、そう考えると俺やばすぎ?!
「こんな人が謀反を起こしたらどうなりますか?」
「…国が滅びかねません」
「確実に滅びますよ…少なくとも、国の存続が危ぶまれる事態にはなるでしょうね…」
「俺さ、暗殺とか…されないよね?」
「一部の勢力では暗殺を企てた者も居たんですが…死んでも蘇生するとの話まで広まっているので…」
「その詳細情報は何処からだよ…」
女関係はギルドの報告にも書かれてないし、蘇生なんて本来なら夢物語だよな?
「えっと…ここに…はいっどうぞ」
『救世の旅路、英雄カズマの物語45巻…著、あるえ』
「あいつか!どうりで色々知られてる訳だわ!なにこれ45巻!もうそこまで出てんの?!」
うわっ!もう王都で桜前線止めてる!
「各国の諜報部門がお兄様を調査しようとしたのに、観測魔法は強力な結界に邪魔をされ、人の寄り付かない場所に作った筈の調査部隊の潜伏キャンプが爆裂魔法で吹き飛ばされるなか「なんかもう、これ買っていけば良くない?」って買ってみたらとんでもない詳細情報が載ってまして…」
…すみません。諜報部隊の方々すみません!ポンポン撃つ馬鹿が本当にすみません!近隣の人が寄り付かない所はヤバイんです!今後も、あるえの本を買ってやってください!
「……一応聞くけど、エッチなのは?」
「え、無いですよ?あるえさんがそれを書くのは流石に不味いと思いますし…」
うん。取り敢えず、口に出せない方法で苛める相手があるえじゃなくて良かったです。
「さて…王族からの干渉の心配は、もう無いですよね?」
「あ、あぁ…そうなるよな…」
あれ?と言う事は…
「…なら、我慢する理由は無くなりましたよね?」
ついに俺の上にのしかかってきた!どうしよう!断る理由無くなったけど、心の準備がまだなんです!
「お兄様…お慕い申し上げております…」
あっ…アイリスの唇が目の前に…どうせするなら、優しく抱き寄せて…
「お、お兄様?!それは……うぅっ!」
あれ?なんか抱き寄せたらアイリスの顔が青く……
「んんっ!!」バタンッ
俺の腕を振りほどき、アイリスがトイレに駆け込む。あっそう言えば…吐きそうになってたんだっけ…
…………………………………
「ごめんな。結局、あんまりデートっぽく無かったよな…」
夕焼けのなか、アイリスを屋敷に届ける為に腕を組んで歩く。まだ本調子では無いようだ。本当なら夕食も一緒の予定だったが、食欲がないのでは仕方ない。
「粗相をしたのは私です…謝るのは私の方ですよ…」
どうやら思い切りリバースしてしまったらしく、宿屋で歯を磨き、何度もうがいを繰り返していた。俺にぶちまけ無かったあたり、どこぞの駄女神とは女子力が違う。いや、ぶちまける奴がおかしいだけな気もするが…
「俺は、アイリスが一緒だったから楽しかったぞ」
「うぅ、優しくしないでください。捧げられなかった事が余計に辛くなりますから…」
そんなに泣きそうな顔をしないでくれ…とどめを刺したのは俺だし、心が痛む
「しょうがねぇな…アイリス」
もう1度腰に手を回し、ゆっくりと顔を寄せる。
「えっ?!あの!今はちょっと唇は…」
だろうね。だから…
チュッ
「えっ…おでこ、ですか?」
「予約だよ。焦らなくても俺は逃げないけど、アイリスが不安にならないようにな?今日は、これで勘弁してくれ」
「お兄様…はい!今日はこれで許してあげます!」
腕に抱きつき、再び俺に笑顔を向けてくれるアイリス。やっぱり、笑ってる方が可愛い。
「ちなみに、その予約は…どこまでですか?」
「アイリスの全部かな…」
「お、お兄様ってば…もう」
少しだけ赤面しているが、表情は満面の笑みだな。なんとなく言ってみたけど、どこまでくれるんだろ…
「ではお兄様!私はすぐにその道のプロを手配し、色々と教えて貰わねばなりませんので、お先に失礼しますね!」
「いや、待って!本当に良いから!そこまでしなくて良いから!」
それ、絶対にクレアにバレて殺される流れだから!
「お兄様の理想になりますからー!!」
「足速!もう完全復活じゃん…」
うちの妹は、女として見てもらえた事で色々と周りが見えなくなっているらしい。俺の声は、もう届かない。
「うん…逃げる準備するか!」
その翌日、殺意に燃えたダクネスとクレアに本気で追い回される事になるのだが、それはまた別のお話。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
アイリスのエッチなのは考えてなかったのですが、書いてみたら可愛いかったので今後は分かりません。
またお暇な時にでもお付き合いお願いします。