今更ですが、メインヒロイン枠の筈のダクネスの回です。
作者はダクネスを真面目に書くのが凄く苦手です。イチャイチャさせようとしても変態性でぶち壊すネタばかり浮かびます。
ごめんな…ダクネス。
エリスの加護が街から消えた日。俺はただ、いつもの日常が戻ってくると思っていた。しかしこの世界は…そう簡単に平穏など許してくれない…
「誰か!誰かぁ!」
夜に響き渡る悲鳴と、走り抜けるような足音。縞模様の尻尾を揺らしながら、必死にギルドを目指しているのは、中級魔法使いのリーン。彼女の後ろには複数の黒い影が迫っている。
「なんなのよあいつら!誰なのよ!」
暗闇で突然「悪いが、我々と来て貰う」と声をかけられ、その異質な声と異様な雰囲気に咄嗟にリーンは駆け出した。結果として、先程までリーンがいた所にバインドのロープが飛んできた所を見るに、彼女の判断は正しかったと言えるだろう。
「はぁ…良かった。教会には明かりが…」
路地裏を抜けた彼女はほんの少しだけ安堵した。深夜でも明るいその建物。エリス教会の光が見えたのだ。あと一区画、それで教会に辿り着ける。しかし、彼女の希望は、あと一歩の所で残酷にも打ち砕かれてしまう。
「えっ…うそ…でしょ…」
路地の正面から、同じ格好をした奴らが現れる。最初から、この逃走路は読まれていた…
「いやあぁ!!」
…ぐちゅ
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「被害者は冒険者のリーン。そして、本件の最重要参考人は…」
「俺ですか…」
俺もまだ詳しくは知らないが、昨日リーンが襲われた。特に命に別状はないとの事なのだが、まだ意識不明らしい。
「リーンさんの身体にヌルヌルした液体が付着していた為、アリバイが怪しく、女性をヌルヌルまみれにするのが趣味というカズマさんが真っ先に疑われたのですが…あの…本当なんですか?その特殊な趣味…」
「あれは、めぐみんがパーティーに入る為についた嘘ですから…そもそも、なんで俺がリーンを襲う必要が?」
まぁ、別に嫌いではないけどさ…リーンも、ぬるぬるも…
「…では、私をカエルでぬるぬるにしたのは」
「あ、あれは事故です!」
「…そうですか」シュン
え?なんで落ち込むの?!
「私もカズマさんが犯人だとは思っていなかったのですが…その…アリバイに矛盾があって…」
「なるほど、つまり俺を庇う為に誰かが嘘をついたと…そりゃ、疑われても仕方ないですね…」
まぁ、それに関しては俺を想っての事だから、それくらいは許してやろう。セナさんも分かってくれているようだし…
「ちなみに、事件はいつ頃起きたんですか?」
「えっと…教会に悲鳴が聞こえた時間から逆算すると…深夜の11時から2時ですね。教会の方々は治療と追手の捜索に追われていたので、大体の時間しかわかりませんが…」
あれ?思ったより時間帯が広いぞ?!しかもその時間帯は…
「そ、それでですね?カズマさんは本当に誰と居たんですか?エリス様、あるえさん、めぐみんさんが二人っきりで居たと証言していて…」
「…すみません…全員嘘はついてないです…」
「へ?二人っきりを3人となんて不可能じゃないですか。皆さんは夢でも見ていたのですか?」
いえ…その…
「えっと…ちょっと盛り上がってしまって…全員夢の中に旅立っていったと言いますか…一人ずつ、気絶するまでしちゃったと言いますか…」
これセクハラなんじゃない?!セナさんも固まってるし…でも、そいつらの証言が嘘だと思われても困るしな…
「こ…」
「こ?」
「この性獣!私の時はヘタレた癖に!もう帰ってください!」バチンッ
「ブフッ?!」
俺は、何故か不条理に叩かれ、詰め所から追い出された。ヘタレって…なんのこと?!
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「犯人の目的は未だ不明って…衛兵と貴族は何をやってんのかね…噂と性癖から俺を特定するのは直ぐなのに…」
詰所から解放された俺は、取り敢えず事件のことが書かれた新聞に目を通す。そういえば、あの龍を倒した話が2面で、アイリスが来たことが1面だったことに関しては、そのうち抗議しよう。俺の活躍は、面倒を呼び込むからなるべく載せるなって…
「今夜から私が囮捜査をするつもりだ…こんな、花も恥らう乙女をぬるぬるにする不届きな輩は、私が必ず捕まえてやる!そして、本当は何をするつもりだったか問い詰めてやる!」ハァハァ
こんな状態のダクネスが徘徊していた場合、先に捕まるのはコイツなんじゃないだろうか?
「でも、最初にバインドしようとした痕跡があったそうじゃないか…それなら、ぬるぬるは逃亡を防ぐ為の手段と考えるべきだよ。下手をすれば、もっと恐ろしい事の為の誘拐かも知れないよ?」
たしかに、あるえの言うことは尤もだ。ぬるぬるにすれば行動はかなり制限されるし、戦いもままならない。日本には、ぬるぬるローション相撲があるくらいだからな!
「だからといって、騎士の私が逃げる訳にはいかない。筋力で劣る魔法使いのリーンを集団で襲うような奴らだ。もしそれが、戦えない一般人に向けられたら…」
ダクネスの顔付きが真剣なものに変わる。こうなってしまっては、こいつのワガママは覆せない。こういう信念を貫く所に、俺はきっと惹かれたんだろう…
「ダクネスは、背中に守る者が居る時は引かないんだもんな…」
「あぁ、愛する人々の盾であるうちは、この身は決して倒れない!」
うん。俺より勇者っぽいわ。
「そこまで言うならもう止めないよ。でも、絶対に油断はするなよ?相手は集団…ぬるぬるだけでは終わらない可能性も…」
「そ、それはそれで!むしろ望むところだ!!」ハァハァ
あ、やっぱり駄目だコイツ。なんで惹かれたのか分かんねぇわ。
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「よぉ、元気そうだな?」
「あ、カズマ…あんたが1番にお見舞いに来てくれるなんてね…」
病院からリーンが目を覚ましたと聞いて、俺はリーンの見舞いに来た。冒険者仲間として心配だったし、なにより…
「カズマにそんな気が回ると思っているのか?これ、差入れのサンドイッチだ。他にも必要なモノがあれば何でも言ってくれ。めぐみんやエリスも行こうとしていたのだが、流石に大人数では迷惑になるからな…」
ダクネスが事情を聞くためだ。ちなみに、病院のスタッフには既にセナさんが話を聞いている。
「ありがとう二人とも…まったく、うちの馬鹿共は見舞いにも来ないなんて…薄情なんだから!」
「ふふっ、そんなことは無いぞ。カズマ、見せてやれ」
「おぅ、ほら…」カチャ
俺はダクネスに促されるままにドアを開ける。そこには槍を抱いて眠るダストの姿があった。不器用は不器用なりに、仲間の為にやれることを必死にやったのだ。
「昨晩からずっと、この病室を守り続けていたそうだ。面会が許されるほんの数分前に、疲れて眠ってしまったけどな…」
「なによ…ダストの癖に…カッコいいじゃん…」
俺から見ても、今のダストはかっこいい。リーンの頬が赤く染まり、不機嫌だった目付きも柔らかいものになった。あれ?これ俺たちはお邪魔か?
「一応言っておくと、ここの警備にキースとテイラーも居たぞ。二人とも、酷いクマ作って警備してたよ…」
「そっか…えへへ…良かった…私、愛されてる…」
本当なら、ここで犯人の事を聞きたい。でも、このいい流れを壊すのはなんか違うような気が…
「さーて…ほら!ダスト起きなさいよ!」ベチッ
あれぇ!リーンさんそんな感じ?!
「…よぉ、無事だったか?」
「死んだかと思ったわよ。夢にエリス様が出てきたんだからね?」
「それじゃ、俺たち最近毎日死んでんぞ?」
え?そんな普段の感じでいいの?!さっきまでの良いムードは…
「えぇ、そこはもうちょっと良い感じの空気とか…」
「カズマ…あの2人は、あの距離感が心地いいんだ。私達もそうだっただろ?もう少しだけ、そっとしてやろう…」
「……そっか、そうだな」
俺達の目に映る二人の姿はいつも通り、でも、ほんの少しだけ、今日の二人の関係は特別なものに見えた。
………………………………………………
「良し行こう!私の怪我は大した事ないってから!」
「あぁ!犯人は絶対に許さねぇ!」
話を聞きに来た筈が、何故か参戦までしようとするリーンとダスト。そりゃ、気持ちはわかるけどさ…
「…セナさん、マジでリーンの怪我は大した事ないの?」
「はい。転倒時の擦り傷だけです。リーンさんは、この暖かなヌルヌルする液体を右足にかけられ、滑って倒れたのを足を切断されたと勘違いして気絶しただけですので…」
「い、言わないでよ!凄く怖かったんだから!」
ビビりまくって気絶したと言うことか…まぁ、俺はそれで死んでるから人の事は言えないけど…
「ん?右足の治療に裂傷ってあるけど…」
「これはクエストで受けた負傷だそうです。そのヌルヌルしたモノに毒がなくて良かったですね」
なるほど、しかし傷付いた女の子を狙うとは、尚の事悪質だな。ま、それはそれとして…
ポンッ
「リーン…切断はどっちかと言うと、熱いと言う感じのダメージが来てから激痛が来る。動かそうとすると痛みが早く来るので、動かす前にフリーズしてからヒールしろ。それと裂傷も馬鹿には出来ない。そこから壊死したら治療と蘇生が超痛い。あと後遺症も長引く。可能なら意思を強く持って、ちゃんと治療した方が良いぞ!」
覚えておこう。正しい対処!
「え?私は何を教えられてるの?!生々しい経験談やめてくれない!私痛いの苦手なんだから!」
「私にはむしろもっと詳細に!!」
ビビるリーンと聞きたがるダクネス。怪我の確率からしたらその反応は逆だろう…
「なぁ、話進まねぇからカズマの激痛トークは後にしようぜ?リーンは既に被害者なんだし、俺達パーティーは犯人探しに参加しても構わねぇよな?」
珍しくダストがやる気に満ちている。パーティーメンバーが傷付けられたんだ。そりゃそうだよな。
「ダクネス、構わないよな?」
「あぁ、愛する者の為に戦う男を止めるなど、そんな無粋な真似はしないさ」
「ちっ!ちげーし!愛するとか、そんなんじゃねぇし!」
ダストのやつ、素直じゃねぇな。
「そ、その…カズマも、私が酷い目にあったら、私の為に必死になってくれたりするのだろうか…」
「え?どうだろう…だってお前、喜ぶじゃん…」
「わ、私だって!乙女なんだぞ!酷い事をされれば傷付く事くらい…えっと…凄く酷いことなら…くぅ!」ビクビクッ
いや、喜んでる喜んでる!
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「うん、この姿は久々だな!」
バニルのデザインをあしらったマスクに、最低限の軽装備、もちろん相方は…
「銀髪盗賊団、復活だね!」
久々に、クリスと2人だ。
「つっても、今回は陰ながらの護衛と、見張りだけどな…」
ダクネスが鎧を着て街の中を歩く。この街ではリーンは割と有名な冒険者なので、狙いが女冒険者であることを想定した作戦だ。
「さて、今回は新メンバーのバックアップもあるし、俺の活躍に期待してくださいよ!親方!」
「え?!なにそれ知らないよ!助手なのに親方に黙って協力者雇っちゃったの?!」
まぁ、雇ったと言って良いかは微妙だが…
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「ねぇ?なんでアクアはそんな疲れた顔をしているの?ついに怠惰を私から奪って水の女神のポジをくれるの?」
「違うわよ…カズマさんが…欲しくなったって、私の唇と魔力を奪っていったの…えへへ…強引なんだから…私の魔力が欲しいなんて…ある意味身体を求めるより凄い要求よね!でも、ちょっと欲張りすぎかしら…」
「な、なんか騙されているような気もするけど…貴女が幸せなら、私は何も言わないわ…」
……………………………………………
「どこだ変態共!出てこい!出てきて私にすんごい事をするがいい!」
ねぇ、なにあれ…馬鹿?あれを馬鹿と言うの?馬と鹿のほうがまだ賢いと思うんだけど…
「ねぇ助手くん…ダクネスはさ…一晩中あれで練り歩くつもりなのかな?」
「うん。あいつならやりそうだよな…モンスター相手の囮じゃねぇのに…千里眼で見ると近くに出歩く人影さえ無いぞ…おっ?!」
3人だけダクネスの方に向かってる?!
「親方、一応警戒して…」
「わかってる…でもさ…あれ絶対…」
「うん。俺もそんな予感してる…でも万が一ってあるだろ?」
まぁ、ないと思うけど…万が一って、万のうちの1だし…
「ちょっと君…」
「はっ!ついに来たのか?!」
うん。来たは来たんだけど…
「君ね…今何時だと思ってるのかな?」
それ、おまわりさんです。
「あ、いえ…そのこれは最近の事件のおとり捜査で…」
「何言ってるの?囮捜査?どんな馬鹿な犯人があれで引っ掛かると思ってるの?」
ですよねー。あっ、両腕を掴まれて連れて行かれてる!でも、俺たちの存在は秘密だし…
「良し…帰るか!」
「そ、そうだね…仕方ないもんね…」
あの馬鹿は、明日折檻しよう!
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「先日は警備人数を強化していた事もあり、誘拐や拉致のような凶悪犯罪は発生していません。まぁ、記録水晶による銭湯や宿の盗撮事件や、酔っぱらいのスカートめくりなどはありましたが…むしろ今までバレてなかった犯行が、表面化しただけのように見えますね」
セナさんに昨日の事件報告を聞く。その位の犯罪に関しては、前にダストがやってたような…
「いやいやこっち見んなよ!確かにどっちもやったことはあるけど…今回は俺じゃねぇよ?!」
「まぁ、そうだよな。今はリーンの為に頑張ってるもんな…」
「あ、お前もそれをいじるのかよ!」
お前もってなんだろう?
「それと、深夜の騒音被害の報告がありましたが…これは…」
「…面目ない」
「ダクネス、なにかあったのか?こんな失敗の仕方、お前らしくないぞ?」
普段から暴走気味の奴ではあるが、今回の暴走はあまりにも酷い。余裕が無いとでも言えばいいのか…そんな雰囲気を感じる。
「あ、別になんでも無いんだ…ちょっと焦ってしまっていただけで…その…また1から調査してみるよ…」
「お前が街の為に必死になるのはいつもの事だけどさ…ちょっと冷静になれよ?捕まえられるもんも捕まえられないぞ?」
「…あぁ、すまない…」
「まぁ、聞いての通りこっちは収穫なしだったよ。リーンとダストは、なんか収穫あったか?」
「べ、別に…なにも…」
あれ?リーンさん?なんか顔赤くない?!
「おいダスト、何があった?」
「いや、そのなんつうか…酔っぱらいにカップルと間違えられて…奢ってくれるって言うから一緒に飲んだら、色々聞かれてさ…」
は?
「いやいや、違うって言ったんだけどよ…その…俺も酔ってて…ついリーンの可愛いところを自慢しちゃって…」
「何お前ら、楽しんでたの?お楽しんでたの?!」
「ち、違うから!ちょっと聞き込みをしてたら、こっちが色々聞かれただけだから…」
リーンも恋する乙女の顔しやがって!雨降って地固まるってか?!こいつらやる気あんの?いや、別の意味でやる気ありそうだけどさ!
「はぁ…そっちも駄目か…でも、リーンが元気になったし取り敢えず良しとするか…」
「「面目ない…」」
「わ、私はまた怪しい組織を調べなおすから…カズマは…取り敢えず待機ということで…」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
しかし何だろう。何かが引っ掛かる。この事件の犯人は、セナさんの捜査網さえ掻い潜れると言うことになる。そんなのあり得るか?もしかしたら、俺達が犯人を避けているのかも…
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「……犯人いたわ」
スゲー身近に…
「おやおやクリスさん!そろそろ、お顔の傷跡を消そうと思いませんか?そんな貴方に、このアクシズ教の新商品をどうぞ!」
「要らないですから!ちょっと辞めて!うわ!なにこれヌルヌルするんだけど!」
「ふふふ、アクア様のポーションはサラサラ過ぎて流れてしまいます。そこで、トロみを付けて傷口にピッタリフィットの新商品!シミやそばかすのような、時間をかけて治す皮膚の治療にも最適です!」
アレだろ…あのセシリーが持ってるやつ。なんかクエストで切った傷なのに、教会に来たときは治りかけてたって言ってたし、絶対に俺達が自分から関わらない組織だもん!あいつら!
「居た!税金泥棒が、もう逃さ…ぶっ!」ベチョ
「ふはは!この手投げ袋で投げれば目くらましになるんですよ!おっと、冒険中の仲間にぶつけて回復もいけますよ!これ、入信したら貰えますからね!では、アデュー!」
犯人が犯罪組織の中にそもそも居ないとなれば、そりゃ何しても空振りだ。ダクネスの正義心が、そもそもから回っていたわけだ…
「ねぇカズマ!この事、早くダクネスに伝えよ!このままだと、絶対になんかやらかすと思うんだけど…」
[カズマ様ーエリス様ー!ダクネス様がやらかしてますよー!]
「「あぁ、やっぱり…」」
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ダクネス視点
ここはどこだ?…見覚えのない部屋だ…私は城壁外の使われていない炭鉱小屋を調べていた筈なのに…
「はっ!これ縛られているのか?!お、お前達は何者だ!」
目の前には屈強な男達…こ、これはまさか!遂になのか?!
「お目覚めかいララティーナ様…俺達の王女様誘拐計画に気付くとは、やはり英雄様の影に埋もれても名門貴族って事だな」
え、なんだそれ?!私が予定してたのと違うぞ!
「わ、私をどうやって拐った…ここに来るまでの記憶がない。お前たち、まさか精神系の魔法を…」
「…いや、あんたは近くのベンチで寝てたぞ?力づくで連れてくるつもりだったのに、普通に背負って運べる位に爆睡してたぞ?」
…き、消えてしまいたい!昨晩は詰所で説教されて寝不足だったからなんだ!普段はそんなミスしないんだ!
「俺たちの事を調べるのにお疲れだったようだし、最後の最後で油断したのも、まぁ仕方ねぇだろうさ!」
「…お、お前たちの痕跡を残さない手際は見事だったからな!しかし、私の捜査に勘付くとは…予想より出来るようだ!」
よし、これで…なんとなく面目を!
「ボス…こいつの声、昨晩大声で変態を探してた迷惑な女だと思うんですが…ほら、ヤバい奴居るって俺ら一度引き上げたじゃないですか?」
「や、やめろ!私の恥部をこれ以上えぐるな!私の望むタイプの辱めはこれじゃない!」
「…おい、お前は俺達が王女を拐って何すると思ってたんだ?確かに犯罪だが、変態とは違うだろ?!」
誘拐…誘拐ってそれは…
「ひ、卑猥なこと?」
「しねぇよ!勝手に俺達をロリコン認定すんな!身代金に決まってるだろ!なんだコイツ!本当に俺たちに勘付いたんだよな?!」
……怪しいやつが居るって所までは…気付いたし…
「まぁ良い、お前が居ればサトウカズマとダスティネス家から身代金が取れる。どうせ金なんて余ってるだろうし、たっぷりと頂くとするさ!」
「ふっ!私が大人しく従うと思っているのか?暴力には屈しないぞ!さぁ来い!むしろ早く来い!」ハァハァ!
来た!遂に来たぞ!これから私は暴力により屈服を!くぅ!
「なぁ、こいつ興奮してないか?」
「してない!私の鋼の意志は、お前たちの暴力には屈しないと言うだけだ!」
「意志って…これからお前は、犯されるんだぞ?」
「な、なんでそんな方法を!?暴力で従えるんじゃ…」
私はそんなの望んでいない!やめろ!のしかかるな!
「英雄に惚れ込んでるらしいからな…これからお前を犯して水晶で撮影する。お前は身代金と交換するが、俺達の事を話せば、この映像がばら撒かれる訳だ。そこら辺、女って言うのは扱いやすいからな…それに…」
あ、顎を持ち上げるな!顔が近い!
「こんな上玉が抵抗できないなら、そりゃ抱くだろ?」
「くっ!この外道が!」
嫌だ!妄想で何度も考えたけど、こんなの嫌だ!くそ!なんて硬いワイヤーで縛っているんだ!
「大好きな英雄様に、穢された事がバレたくないだろ?それなら、お前は俺達を逃がすしかねぇ。王女様に使うつもりの方法だったが…お前が先だ!」
「いやだ!やめろ!そんな穢れた身体では、もうカズマの側になんて居られない!カズマはきっと、何も悪くないのに自分を責める!」
「呪うなら、自分の無力さと、女に産まれたことを呪いな!」
悔しい!こんな悔しさ…全然気持ちよくない!
「っく!力強っ!無駄な抵抗はやめろ!どんな怪力で…ぐふっ!」メキッ
え?カズマ?!なんで居るんだ!私は何も言わずに出てきたのに…お前にこれ以上の負担をかけたくなかったのに…なんでお前は、そんな所でドロップキックをかましているんだ?!
シュタッ
「おいダクネス!無事か?!」
「か、カズマ?!あ、あぁ、手は出されていないが…」
「なら良かった…ったく流行ってんのか!クレアの次はダクネスとか!誘拐が一大ムーブメントなのかこの街は?!」
「でも、カズマはなんでここに?捜査は私がするって言ったのに…」
「…自分の女を心配するのは…仕事のそれとは別の話だろ?」
あぁ、悔しい。最弱職のカズマに心配された事も…いつも助けられっぱなしな事も…それでも…やっぱり…
「…ありがとう」
「いつもは逆の立場だろ?お互い様だ!」
カズマが来てくれただけで、他のことがどうでも良いと思えてしまうほど、本気でこの男に惚れてしまった事が、一番悔しい!
…………………………………………………
カズマ視点
どう見てもアイツよりダクネスの筋力が勝っていたが、取り敢えず倒すべきはアイツだと思って蹴ってみた。うん、流石に王女を狙うだけあって高レベルだ。一撃とはいかない。
「不意打ちとはやってくれるな!でもこの数に独りで挑むなんて英雄様とはいえ無謀じゃねぇか?街の為に死にに来たのか?」
「俺は街なんてどうでも良いんだよ。どうせ、俺の手の届く範囲しか守れないしな。でも、大切なものを傷付けられたんだ…今回ばかりは本気で戦うからな…」
「そうかよ!もうその手は何も握れなくなるけどな!やれ!」
「ボス!奴は危険です!魔法と矢避けの加護を持っています!」
「問題ない!やつ本人は真っ向勝負に弱いと聞いているからな!」
ここまでは予定通り!剣を抜いて真っ直ぐに俺に飛び掛かる悪漢達、さて、お手並み拝見と…
スパンッ
「ぐふっ!」「がはっ!」「い、いつ、斬られ…」バタンッ
3人を一瞬で斬り伏せる。うん!予想以上です!
「は?!カズマ!今お前剣を抜いたのか?!」
「さぁ、どうかな?」
ちゅんちゅん丸はまだ抜いていない。今のは完全にトリックを使った技だが…向こうがどこで気付くかが勝負の分かれ目だ。
「くそっ!英雄様はスキルと仲間と運頼りで弱いって聞いてたのに!メチャクチャ強いじゃねぇか!囲め!囲めば死角が出来るはずだ!」
「あぁ、それはまた…悪手だな!」
スパンッ!!
「「「「うぁ…」」」」ドサッ
「馬鹿な!後ろ側に居た4人を瞬殺だと!振り返りもしないでそんなこと!」
うん、そうだね。俺は振り返ってないね?
「お前は今、王国最強クラスの剣士を相手にしてんだ…残りは…8人か?まとめて来な!」
「嘘だろ!カズマが格好良すぎるぞ!お前出来るなら、普段からそれをやれ!」
ダクネスがうるせぇ…本当に出来たらやってるわ!
「くそ!全方位から一斉に行け!どんなに早くても!同時に来たら捌けないはずだ!」
全方位からの一斉攻撃。しかし、残念ながらこれも全方位ではない!
「すまない、そちらの2人だけ頼むよ…」
「いや、そっち6人って…本気ですか…」
俺の後ろで小さく会話する2人の声。作戦は成功だ。俺、殆ど何もしてないけどね!
スパンッ
「う、嘘だろ!8人が一瞬って…そんな訳があるはずがない!お前は剣を抜いても居ないだろう!」
「おう、大正解だ!俺は最初から…『光の屈折魔法』しか使ってないからな!」
「馬鹿な!だってお前は俺を蹴った時から見えて…」
あぁ、その言葉を待ってたぜ!
「あぁ!カズマが魔法でずっと隠していたのは、自分ではない!」
ちょっと?!
「人質がいる以上、軍で攻めれば娘の身が危ないからと、彼が考えた方法だよ。本当に、冒険者とは恐ろしいな…」
あれ!そっちも勝手に出てきちゃうの?!格好良く魔法を解きたかったのに…
「お、お父様?!クレア殿?!じゃあ、さっきから戦っていたのは…」
「あぁ、この2人だ。お前らは俺が直情型の人間だと勘違いして、伏兵の可能性を全く考慮してなかった。まぁ、伏兵を隠した総大将が、一番前に出るなんて思わないよな。ついでに言うと、矢避けの加護なんて持ってねぇよ!」
「馬鹿な!じゃあ、仲間の持ってきた情報は…」
「お前が言ってただろ?運が良いから当たらねぇだけの事を、勝手にスキルだと勘違いした連中が広めたんだよ!」
ちなみに、格好いいスキルだけでなく夜の20連撃とか、下半身の自動ハイネスヒールとか、マジでやめて欲しい特殊スキルも広まっている。責任者マジで出てこい!
「くそっ!お前は英雄じゃねぇのかよ!こんな手段…ありかよ!」
「調べたんだろ?俺の名前はサトウカズマ、魔王討伐の英雄になった後も…クズでカスと呼ばれ続けた男だぁ!!」
もう一回ドロップキック!
「ごふぅ!!」ガシャーン
よし勝ち!
「まったく…娘の為とは言え、こんな老体をこき使うとはね…だが、私としても来て良かったよ…賊が、覚悟は良いだろうな」
怖っ!何この人まだ戦士だよ!その杖とか飾りだろ!
「イグニス殿、コイツの狙いはそもそもアイリス様です…この者の身柄、こちらに引き渡して欲しいのですが?」ニッコリ
あ、クレアはいつも通り怖い!笑顔が怖い!
「ははは…では、半分ずつと言うのはどうかね?」
「あぁ、そうしましょうか!私は左半身を貰います」
せめて人数で割ってあげて!もう、悪漢どもの事は怖い2人に任せよう!
「さて…おいダクネス!お前の今回のやらかしは目に余るぞ!」
「す、すまない…本当に反省している…」
まぁ、俺としてはそこまで怒るつもりはなかった。今回の件、俺への負担軽減と、友達のリーンを本気で心配しての事だ。しかし…
「ララティーナ!私から見ても迂闊な振る舞いであった事は間違いない!今回の件に関しては、追って罰を与える!それまでの間は自宅謹慎だ!」
「…はい。申し訳ありません」
「当然!その間の冒険は全面的に禁止!鎧も没収し、ドレスで過ごしてもらうからな!私はもうお前をあまやかしたりしないぞ!」
「……うぅ…ひゃい…」
親父さん達を本気で心配させた事に関してはお仕置きが必要だ。まぁ、それはこの親子に任せると言うことで!今日はおしまい!
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「や、辞めろぉ!こんなヒラヒラを私に着せるな!父上のエスコートなら、スーツでも良いではないか!」
隣の部屋から聞こえるダクネスの悲鳴。ここに呼ばれた理由は、この服を着せられた時に察した。
「カズマ様、お嬢様の準備が整いましてございます」
「あの…大丈夫ですか?当家のお嬢様は、噛み付いたりしませんか?」
「ははは、何を今更!散々噛まれているのでは?」
笑い事じゃねぇよ…
「これは、確かにアイツが望むタイプの羞恥とは違うけどさ…いいのか?こんな罰のオマケで…」
「仕方ありますまい、貴方の功績は偉大過ぎる。お嬢様はそれに喜びはすれど、劣等感を感じないお人ではないですから…」
「はぁ、全く面倒な女ですね!」
「ええ、しかし、それでも真っすぐで愛おしい方です」
はぁ…そうだな。それはきっと、俺が一番詳しい…
「うん!行ってくるよ。アイツが本気で暴走する前にさ…」
………………………………………………
「お父様!もう私も20ですよ!こんなヒラヒラが多いドレスでパーティーなど!」
「ははは!いくつになっても、父とは娘が可愛いのだよ!それに、今日はお前が主役なんだ。背筋を伸ばしなさい」
「ズルいです…私が悪かったとは言え、それを利用してこんなパーティーなど…」
「ははは、そう腐るな。おっと残念、話は終わりだ。ララティーナ…愛する私の娘…今だけは素直に私の隣を歩いてくれ…そうしたら…彼の元へ行ってくれて良い…」
「え?お父様…それはどういう…」
『皆様お待たせしました!それでは、新婦の入場です!』
………………………………………………………
扉が開き、そこに居るのはダクネスとイグニスさん。いきなり白いタキシードなんて渡されれば、察しの悪い奴でも流石に気付くというものだ。流石のダクネスも、覚悟を決めて真っ直ぐにこちらに向かって歩いている。
「カズマくん。娘を、ララティーナを頼む。じゃじゃ馬で無鉄砲だが、心根は優しい子なんだ…」
「はい。大切にします。俺にも、ララティーナが必要なんで…」
ピクッ
「ふふ、親友の結婚式で神父役なんて、中々無い体験ですね。ほら、ララティーナ様、こちらへ…」
ピクピクッ
ダクネスは不安げに震えている…ように見えてララティーナ呼びに震えているが、結婚式で緊張なんて良くある事だ。エリスの進行で誓いの言葉やら賛美歌やら色々とやったが、こいつはまだ顔をあげることも出来ない。「ちかいまひゅ…」になってのは、まぁその内イジってやろう!
「ほら、ララティーナ様…前を向いてください。カズマさん、誓いの口吻を…」
何だろう。嫁の進行で新しい嫁を娶る状況。ちょっと興奮する!今度2人一緒に抱こう…
「ほら、ララティーナ…」
「うぅ、かじゅま…」
真っ赤じゃん!何こいつ!ベールの向こうでずっと真っ赤になって耐えてたの?!
「こういう辱めも…悪くないと思ってしまう自分がいて…もうどうしていいのか分からない…」
あ、いつものだったわ。
「いつも通りで良いよ…いつものダクネスが、俺は大好きなんだからな…」
「カズマ…うん、私もそのままのカズマを愛している」
ゆっくりとお互いの顔を寄せていく。ダクネスの身長が俺より高いのがちょっとだけ不満ではあるが、それもこいつの魅力だろう。
「んっ…しちゃったんだな…カズマと」
「うん、結婚ってつけてくれない?!」
唇を指でなぞり、キスの余韻を確認するダクネス。何こいつエッロ!取り敢えず後で控室で抱こう!
「おめでとうララティーナ!」「カズマ、身が持つのかよ!」「可愛いぞララティーナ!」「お幸せにララティーナ!」
「うぅ、やっぱり違う!こう言う辱めは私の望むところではない!」
「俺が愛したのはダスティネス・フォード・ララティーナなんだから、別に良いだろ?」
「…うぅ、ズルイぞカズマ…その、いつか釣り合うように頑張るから…これからもダクネスとして側に置いてくれ…」
「バカ、俺達は一緒に英雄になったんだろ?変な劣等感持ってんな!」
「……うん……うん!」
まぁ、別にダクネスでもララティーナでも構わないさ。お前が幸せなら、俺は別にどっちでも良い…
『以上を持ちまして、ダスティネス・フォード・ララティーナ様、サトウカズマ様改め、ダスティネス・フォード・カズマ様の挙式を閉会いたします』
………おい、最後の最後でやってくれたな!
「ははは!これでダスティネス家は安泰だ!よろしくねカズマくん!私は隠居して孫を甘やかす老後を過ごすよ!」
「おい待て!これは反則だろ!おい司会!てめぇダスティネス家のまわしもんだな!」
「正気ですかお父様!カズマが当主など品位を疑われますよ!」
「お前は少しくらい俺の事をフォローしろ!」
なんでお前が真っ先に認めないんだ!
「あのカズマさん!ダスティネス・フォード・エリスって長くないですか?!信者の皆が面倒に思いませんか?」
「違うから!大切なのはそこじゃないから!」
この後、俺の苗字をサトウに戻す書類を提出したところ。ダクネスはバツ2になってしまった。なんか可哀想だし、何とかなるかと役所に相談したところ。何故か初婚と言う事になり、俺が初めて自らの権力を振りかざした事となるのだが…これは俺と職員さんだけの秘密だ。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
実は10話くらいから温めていたのに、ギャグにしかならなくて、そして諦めました!ダクネスのファンの皆様、マジでごめんなさい!