レベルを下げてもスキルは忘れない。それは確かに凄いチートですが、下げた直後はどうなるのか…
なんて思い付きでお送りします。
またお暇なときにでもお付き合いください。
この街は、多くの危機を乗り越えてきた。それは魔王軍幹部であったり、デストロイヤーの襲来だったり、魔王軍の侵攻であったり、時にはアクシズ教のばか騒ぎからも…
「ディスペルじゃ魔法陣からの魔法は防げないぞ!魔法盾は前にでろ!」
「くそっ駄目だ!既に何人か操られてやがる!これじゃ戦線の維持なんてできねぇ!陣形が崩れるぞ!」
「持ちこたえろ!クレア様にどやされ……嘘だろ…」
でも、それは結局のところ運が良かっただけに過ぎない。本物の厄災の前では、人はこんなにも無力である。そう目の前の光景が証明している。
「な、なんだよこれ…こんなの勝てっこねぇよ…」
「こ、これが世界の終わりか……」
空を覆うのは白銀の聖女が操る天界の騎士。そして、大地を覆うのは美しき厄災の生み出したゴーレムの群れ。その光景はまさしく終焉。人類の歴史は今日、終わるのかも知れない……
「聖女様がんばってー!」
「は〜い!応援ありがとね〜!」
「ウォルバクお姉さんも頑張れー!」
「うん、頑張る〜!」フリフリ
なんて臨場感を楽しめるのが、この見世物。アクセル衛兵隊の軍事演習である。
「ほら、クレアしっかり!相手は二人にそちらは大隊ですよ!それでもアイリス様直属ですか!上手く魔法部隊も使うのです!」
「うるさい!それにあれは二人ってレベルじゃないだろ!そもそも、なんで開幕直後に脱落させられてるんだお前は!」
「それはその…カズマ様とお揃いの部屋着を貰ってからの記憶が曖昧で…まさか精神魔法の前準備だったとは…」
うん、傀儡化だな。そして、それただのジャージだな…
「この馬鹿!あとで私にも売ってる店教えろ!!アイリス様、そちらは!」
「く!残念ですが応援は無理です!貴女は本当にアークウィザードなんですか?!あと、私にもお店を教えてくださいね!」
そして、衛兵チームのエース。アイリスと接近戦で渡り合っているのはまさかのウィズ。ゴリゴリの武闘派だっただけあり、接近戦でも普通に強い。もう明らかに俺よりも強い。ていうか触れたら負けのリッチー相手に、アイリスも良くやるもんだ。
「アークウィザードが後衛しか出来ないとは限りませんよ!無詠唱スキルさえ覚えていれば、近いほうが魔力の到達は早いですからね!なお!それはうちの商品です!!」
何あれすごい、地面から氷柱が生えてる!ハガ○ンみたいじゃん!
「くっ!視界外からの連続攻撃は流石にキツイです…後で2着ください!」
「それを殺気と気配だけでかわせる貴女が言いますか!色は7色から選べます!」
うん、と言うか何話してんだお前ら…
「さて、観戦のお供にお弁当はいかがかな?今なら新発売のカップラーメンと焼きそばもあるぞ!本日お湯はサービスであるぞ!」
「冒険者ギルドより、キンキンに冷えたシュワシュワもありますよ!ご利用の方はギルド職員までどうぞ!」
なお、お察しの方も多いとは思うが、今回もバニルの発案だ。まぁ、そもそもなんであいつらが衛兵が競っているかと言うと、話は2日ほど遡る。
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「あぁ!一風○の麺のゆで時間はバリカタかハリガネか…こんな残酷な二択があるでしょうか!しかし、一般向けならカタの方が入りやすいかも!」
「お前、結構楽しそうだよな…」
あの家庭料理の話から2日後、俺はまたバニルのもとを訪れていた。理由は、レベルリセットポーションの購入だ。ダクネスとウィズの飯は経験値だけは沢山詰まっていたので、この度めでたくカンストとなった。戦ったほうが楽だったかもしれないが…
「ほぉ、もうそんな時期か…どうする小僧?レベリングに最適なダンジョンを紹介しても良いぞ?」
「今回はパスだ。取り敢えず、爆裂魔法1発分のマナタイトを1つ買うよ。あとはハシリタカトビとかリザードランナーを探してみる。そっちの方が最低ラインを超えるのは早そうだからさ…」
もう夏だし、先に来るのはブルータルアリゲーターかも知れないが、あの面子でダンジョンよりは安全だろう…
「カズマ様って、レベルでどうこうってタイプじゃないですよね?最低ラインってなんですか?」
「あぁ、ステータス増幅系のスキルはあくまで元の値に掛け算だからさ。元の数値が少なすぎると全然意味がないし、魔力量が低すぎるとそもそも魔法が撃てないだろ?そういう意味で、マジで駆け出しの能力しかないレベルっていうのがあるんだよ。それがまぁ最低ラインってやつだな」
ちなみに、今のレベルではギリギリスティール一発は打てるかなって魔力しかない。マジで心許ないが、各種スキルを強化した結果、消費魔力も増えてしまった。マナタイトがないと魔法が使えないとか、正直マジックアイテム使うのと変わらない。
「はぁ、冒険者って大変なのですね……ん?じゃあ、いまのカズマ様は、私にでも組み伏せられるってことですか?」
「嫌なこと言うなよ…ウォルバク以下だぞ?下手したらちょむすけにボクシングで負けるレベルだぞ?」
「へぇ……」
ん?なんか天使の目が…
「カズマ様って可愛らしいお顔をしてますよね…女に組み伏せられて喘いでいるのが似合いそうな感じの…」ジリジリ
「おい待て…お前天使だろ?不純異性交遊なんて絶対に駄目だろ?と言うか俺は上司の旦那だぞ?!」
「大丈夫です…ちょっと私の中のヘブンにお招きするだけですから…目を閉じてパンツ脱いでくれれば直ぐに終わりますから…」ハアハァ
「それ大丈夫じゃねぇよ!ていうかバニルも止めろよ!」
「いやな、あのスケベな小僧が女に乗られて悪感情を出すことなどあるのだなと、少し感心していた所である」
「酷い!天使を抱けるチャンスなんて普通ありませんのに?!そもそも男子はこういうの大好きですよね?!」
「いや、天使がどうこうじゃなくて、お前は無い。シチュエーションは好きだけど、お前はない」
普段から、酷いときのアクアみたいなキャラだし…
「うぅ…酷いです…もう私には、ラーメンしかないのですね…」シクシク…チラッ
「いや仕事しろ」
「ぎゃふん!」
やっぱり駄目だ。こいつは無い…
「しかし、こやつはまぁ驚異にはならんとしても、小僧は今や国の要人。命を狙われる可能性もある訳だ……護衛でも雇ったほうが良いのではないか?」
「護衛ねぇ…うちのパーティーはそれなりに優秀だし、あえてそんなの…」
バターン!
「話は聞かせて貰ったぞ!」
「ちょっとクレア!万が一他のお客が居たらどうするのですか!すみません。騒がしくて…」
「いえ、大丈夫ですよ。他のお客様は、今日はまだ誰も来てないので…」ションボリ
クレアが騒がしいのも迷惑だが、他の客が万が一とか言っちゃうレインもどうだろう…ウィズが露骨に凹んでいるんだが…
「なんだ。最近は衛兵隊にまでチョロインと噂される王女の腰巾着共ではないか、またカレーとホットケーキか?」
「おい!誰だそれ言ってたやつ!私はチョロくないからな!あと、このカレーは天使様への献上品だ!お前には関係ないだろ!」
「私のはパンケーキです!オシャレ感が違うので一緒にしないでください!あと、クレアはアイリス様もチョロいと評しておりますが、本人は自覚がなくて可哀想なので黙ってなさい!」
「……え?」
あぁ、あいつらは料理修行に来たのか…
「分かった分かった。なら外で天使とシルビアを交えてパーティーに興じるが良い。吾輩たちは中で仕事の話を…」
「悪いがこちらにも大切な話があってな!おいカズマ、お前の護衛は私達が受けてやろう!」
「は?なんで?お前らはアイリスの護衛じゃん」
「カズマ様は国の要人であり、アイリス様の未来の旦那様。つまり私達の護衛対象とも言える立場なのです。それに、カズマ様のパーティーは戦闘のプロではありますが、誰かを守るには適しませんよね?私共なら、四六時中一緒にいて守って差し上げますよ?」
うん、確かにレインの言うことには一理ある。あいつらは攻撃力過多だから、下手をすればあいつらに巻き込まれて殺される危険がある。それに、最近はアイリスを甘やかしてないので、そちらにお邪魔するのも悪くは…
「駄目です!カズマさんは私達が守ります!」むぎゅっ
あぁ!包まれて守られたい!この柔らかさ…しかしどうしたウィズ。なんか積極的だな。
「あっズル…じゃなくて!あなた達は護衛の専門では無いだろう!そこは素直に私達に任せるべきだ!」
「いいえ、譲れません!確かに衛兵隊は専門家かも知れませんが、カズマさんの敵は常に魔王軍の幹部クラスなんです!魔王軍幹部を倒したこともない人に務まるんですか?!そもそも、四六時中って何するつもりですか!」
元幹部ならここに3人もいるけど…クレアとレインじゃ確かに敵わないだろう…しかし、四六時中はたしかに困る。溜まる。
「良いだろう!ならば、私の鍛えた軍隊の優秀さを見せてやる!明後日の軍事演習の日を楽しみにしているが良い!おいカズマ!お前は強制参加だからな!」
「望むところです!演習には冒険者参加の競技もありましたね!カズマさんと四六時中一緒にいる権利は渡しません!」
あれ?なんか趣旨が変わってない?
「カズマ様。クレアはともかく、私は身の回りのお世話もして差し上げられますから、ご安心くださいね?」
え?なにそのエロい表情?レイン何してくれんの?!
「それなら!私だって何でもしてあげます!」
なんでも?!今何でもっていったよね?!
「ふむ、これは良い見世物になるやも知れん…ならばこの勝負、吾輩の方で預かるとしよう!やるなら、思いっきりやるが良い!」
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なんて事があり、今に至る。
「それで冒険者vs衛兵の競技で、元幹部を同時に3人相手にしてる訳だ。観客見てたら引くに引けないし、むしろ俺達より条件辛くないか?」
ちなみに、他に冒険者で参加したやつは0。普段なら衛兵に一発ぶちかましたい血の気の多い冒険者が来るのだが、このメンバーを見て衛兵に同情したらしい…分かる。
「まあ、それがカズマさんのパーティーなのですから、護衛の力を競うと言うならこれが正解ではないですか?」
「そ、そうかな…」
これ攻撃力しか解んないし、普段はこいつら、こんな活躍してくれないし…
「ところで、さっきからエリスは何してんの?」
「え?観客席に結界を張っているんですよ?ほら、アイリスさんの神器は凄いですからね!ちゃんと補強しないと!」
この観戦用の結界はあれを止められるのかよ…冷静に考えたらこっちもチートだろ…
「と言うか…これの準備期間中、レベル1の俺の側に居たの結局ダクネスとエリスだけなんだけど?ねぇ、これ何を決める戦いだっけ?」
「あはは…まぁ、めぐみんさんが爆裂散歩を我慢できるはずもなく、ゆんゆんさんは連れて行かれましたし、アクア先輩は元から自由ですし…後の皆さんはこれの準備と特訓に大忙しでしたからね…」
「あるえなんて広告と事前インタビュー記事を作って街中に貼って周っていたぞ。しかも煽るような内容だからクレア殿が鬼の形相になっていたし…」
それで俺が蔑ろって、なんか違くない?別にいいんだけどさ…要人の筈なのに、普通に何もなかったし…
「と言うか、別にこれは煽ろうとしたわけじゃないだろ…あいつら天然だし…」
問題の広告には、クレア側から『英雄達の胸を借りるつもりで挑ませて頂く』と書いてあるのだが、ウィズとウォルバクの反応が「「こんな重くて邪魔なものを借りたいの(ですか)?」」なんて書いてあり、クレアの「嫌味かこらぁ!」との良く分からない怒りを買っている。そして、これを見たアイリスも「……私も出ます。本気でいきます」と言って参戦した。あいつら、じつは全員馬鹿なのかも知れない。
「これが天然でなかったら、私はあの二人を浄化してたかも知れません…」
エリスさん、それマジトーンで言わないで…
「しかし、こちらは反則級の能力持ちが3人で、あちらはアイリス様1人……流石にこれでは勝ち目など無いのではないか?」
「順当にいけばそうだが、アイリスは俺とダストが鍛えたからな…油断してると足すくわれるぞ?」
今の所、アイリスはとても素直に戦っている。だが、俺達が教えた汚…実践向けの剣術を使えば状況を打破できるかも知れない。ちなみにこちらの競技、本当は衛兵の陣地の旗を奪う競技である。仲の悪い衛兵と冒険者の喧嘩の場になってしまってはいるが、一応冒険者の勝利条件はあるのだ。ちなみに、衛兵は制限時間まで旗を守れば勝ちなのだが、多分もうウォルバクのゴーレムに3分も耐えられないだろう。
「認めるしかありませんね!やはり実力ではウィズさんが上です!しかし、私にはお兄様から授かった剣技があります!その力、今こそお見せします!」
「良いでしょう!正面からお受けします!」
「ほぅ、カズマも陰で剣技を磨いていたのか…これは将来領主になる準備と…」
「それはない」
「くっ!即断!」ビクッ!
「もう、カズマさんがそんな重い立場に就くわけないでしょう…」
さて、ここでアイリスがウィズを倒せないと勝利は無いが、アイリスは何を使うのか…
「カズマ流剣術、天地返し!」
技名を叫びながら、ウィズの懐へ飛び込むアイリス。やはりシンプルな動きの速さはソードマスターのアイリスの方が勝る。しかし、それに合わせて両手に魔力を溜め込んでいるあたり、ウィズも一筋縄では行かない。
「下段技?!小柄なお二人だからこそ出来る、下段の視覚外からの技ですか!」
おい辞めろ。俺は地味に身長を気にしている。あと、下段が視覚外なのはある意味ウィズの自爆だ。でかいし!
「下が見えないのは妬ましいですが……残念!これは…全体技です!」
全力で飛び込み、下からすくい上げるように振り上げる。とみせかけ、剣の向きを横にして、ゴルフスイングの要領で思い切り土と石を発射する技だ。普通に剣で攻撃するよりガードが難しく、目潰しにもなるので一石二鳥。さらにそこから追撃も出来ると言う。実用的だが騎士道精神に唾を吐く技である。
ガコンッ!
「嘘?!まさか岩盤ごと?!」
ごめん。それなんか違う。て言うかそれ、俺には出来ねぇわ…
「岩盤ごと相手を跳ね上げ、そこに粉砕した岩盤を叩きつけると言うのか?!カズマめ…ここまで腕を上げていたとはな…」
うん、クレアも辞めて?それ誤解だから、俺のただの目潰し技だから!
「せぇーい!」
パァン!
「きゃぁ!」
アイリスの放った岩盤の散弾は、咄嗟に氷の盾を張ったウィズを盾ごと吹き飛ばした。本来ならこの程度でウィズがやられることなんて無いのだが、どうやら今回は運もアイリスに味方したらしい。
「む、胸元が破れて…これじゃ戦えません…降参します…」
「やりました!なんかお兄様っぽい勝ち方に不満はありますが、取り敢えず1勝です!」
「うん、それを俺っぽい勝ち方って言うのやめて?」
今までも、そんな勝ち方してないし!
「しかし、これでほぼ衛兵側の勝ちは決まったのではないか?旗を取りたくとも、二人は大群を押し留めながら精鋭二人の相手をしなければならないのだろう?」
「……おいダクネス。おんなじ言葉で訂正してやる。これでほぼ、セレナとウォルバクの勝ちは決まったんだよ」
理想を言えば、アイリスがウィズを倒す時、どちらか片方を同時に攻撃する必要があった。そして、ウィズを倒した直後に旗のほうに戻るべきでは無かった。残念だが、相手の能力をもっと考えるべきだったのだ…
「訓練に付き合ってたら勝てそうにありませんね。少し本気でいきます。『聖女の導き』!」
※傀儡化です
「そうね…本当ならウィズに決めてほしかったけど…『魅了』!」
「あぁ、レジーナ様…」「ウォルバク様…」「セレナ様…」
うわぁ、やっぱり……しかもほぼ全員にかかったなこれ…
「おい貴様ら!衛兵隊としての誇りはないのか!なぜ聖女に従う!」
「クレア様にボコボコにされた後、レジーナ教会でセレナ様に癒やされるのはもはや我らの日課。クレア様が支持率で勝てるはずがありません!」
「う、うるさい!女にボコボコにやられるお前らが軟弱なのだ!」
「そ、それは…セレナ様〜…」
あ、数少ないクレア支持派が…
「クレアは馬鹿なのですか?!このタイミングで支持率下げてどうするのです!しかし、魔術部隊もなんであんな簡単に魅了に…」
「女性のアイリス様には分からないかも知れませんが、あの魔力量による魅了はもはや洗脳です!私も、抗う意思を保つだけでギリギリで…」
「なるほど。圧倒的な魔力量による精神攻撃というわけですか…屈しないだけでも、貴方は立派ですね…」
「アイリス様…ありがたきお言葉…」
しかし、これではアイリス達は戦えないだろう。部下の衛兵に攻撃するなんて…
「駄目ですアイリス様!これだけボコボコに殴っても洗脳は解けません!」
「こ…殺して…ごふぅ!」
「え?ちょっとクレア?!」
いや、クレアはあれだわ。なんかちょっと違うわ。
「さて、レベル1カズマと四六時中一緒の権利を諦めるなら、全員の洗脳を解いてあげるけど?」
「くぅ!洗脳が強まる!こ、これが人知を超えた魔力か!」
「あれ?そんなに魔力込めたかしら?あっ、靴に小石が…」
「ぬぁぁ!だめだ!もう正気を保てない!」
なんか魔導部隊の奴ら、さっきから胸ばっかり見てない?屈んだ谷間みて苦しんでない?アイリスも軽く引いてない?
「……ウォルバクさん。ちょっとだけジャンプして貰っていいですか?」
「え?……こう?」たゆん
「おぉ!ウォルバク様〜!」
「やっぱりですかこの助平衛兵!」ガン!
「ぶふぅ!」ズザー
あいつら…まぁ気持ちはわかるけども…
「クレア、残念ですがここまでです。衛兵の護衛能力はあくまで組織力あっての話…これでは力不足とスケベさが露見しただけです。お兄様の護衛は辞退とします」
「アイリス様…わかりました。私も剣を収めます…」
あれ?なんか嫌な予感がする…
「ウォルバク様、此度は良い経験をさせて頂きました」スッ
「こちらこそ、真っ向勝負じゃわからなかったわよ」スッ
ガシッ!……ガバッ!
あ、やっぱりやりやがった。アイリスがウォルバクを取り押さえてる!
「え?!ちょっと王女様?!」
「クレア!ウォルバク様は捕まえました!直ぐにセレナ様を捕縛するのです!勝負は負けても四六時中いっしょのチケットは譲れません!」
「え?それありなんですか!と言うか王女として良いのですか?!」
「良いんです!お兄様が言ってました!ルールブックに駄目って表記のないことは全部セーフっていってました!私は降参を宣言してないからルール上は良いんです!」
じーー
あぁ…皆の視線が痛い…すみません。俺が教えました!
「王女様……残念ですが、旗ならもう取りましたよ?」
「「「「「え?!」」」」」
どうしてあんな後ろに居たセレナの手元に旗が?!
「ふふふ、残念だったわね王女様…これも駄目って書いてなかったはずよね?猫で旗を取っちゃ駄目ってね!」
「なー!」ドヤァ
「そ、そんな?!ちょむすけちゃんを使うだなんて…」ガクッ
「貴女も頑張ったと思うけど…カズマのクズさを見てる私達は、それくらい織り込み済みなのよ…」
なにこれ、これで終わり?て言うか、なんか皆こっち見てない?俺が悪いの?え、これ俺が悪いのか?!
________________
こうして、俺を争奪する戦いに終止符は打たれた。あのチートに挑んだ衛兵隊は、その勇気を人々に称えられ、あの3人は共に街を守る英雄の一員として、人々の心に刻み込まれたそうだ。ちなみに……
「アイリス王女があんなに悪い子に…」
「やっぱり根底はクズなのよ…このクズ…」
「ねぇねぇ…やっぱり魔王にもそう言う感じの手段を使ったのかな?」
「しーっ、聞こえたら法的にはセーフなエグい嫌がらせをされるわよ!」
俺の悪評が再び盛り上がることになってしまった。ちくしょう!今回は何1つ俺に落ち度は無いはずなのに!
「なー?」
「いや、お前は悪くないぞ?悪いのはこの世界だ!」
「なー!」
ちなみに、例のチケットは元幹部3人とちょむすけに渡され、最初はちょむすけの日となった。これでは護衛というよりペットを抱いての散歩に違いが、この街は平和だからそれは別に……
「おっと!カズマ様ではありませんか!アクシズ教会の前で会うなんてもうこれは入信せよとのアクア様のお導きで…ぎゃ~!猫が!猫が火を吐きましたぁ!!」メラメラ
……うん、ちゃんと護衛だわコイツ。セシリー焦げたわ。
「こら猫!人に牙どころか炎を向けるとは!すぐにでもアクシズ教に入信してその性根を…ぶふぅ!」パァン!
猫パンチ右ストレート。やっぱり俺の知ってる猫パンチとは違う。何ていうかキレが違う。
「な!なななな!!」シュシュシュッ
何この子、めっちゃシャドーボクシングしてる。頼もしい。
「お、覚えてなさい!いつか絶対、カズマ様を手に入れますからね!!」
「ごめん。それは本当に無理…」
去っていくセシリーを見送りながら、俺はこの町の光景をもう一度眺める。最初から護衛なんて必要なかったこの街で、俺の為に必死になってくれる仲間たち……今回の悪評は、愛された代償として受け止めておこう。
「さて、そろそろ24時間だぞ?最後に美味しい魚料理でも食べにいくか?」
「なーなー!」
さて、そろそろちょむすけの時間も終わりだ。次は一体誰が…
「おやカズマ様?何か落としましたよ?」
「おぉ、これは親切にありがとうございま…すぅ…」
突然刈り取られた意識の向こうで、ちょむすけが何かと戦っている。くそっ…平和な街だなんて、フラグを立てるんじゃ…なかった…
どさっ…
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
珍しく次回に引っ張る終わり方をしてますが…まぁ普段のスタンスはそのままですので、ご安心してください。
不定期更新ですが、またお暇なときにでもお付き合いください。