アーネスを出してはどうかといった人が居た気がしたので、ウォルバク推しのサブキャラも居ないので出しますか!って言う回です。なお、私が出すので色々と酷いことになるのは予想済みだと思いますが、先に土下座しておきますね!
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ちなみに、時系列が少しだけ過去に戻ります。
人類と魔王軍の戦争は終わった…
「そんな…ウォルバク様が………あたしが…負けたから……」
しかし、あたしの戦争はもっと早く……あの紅魔の娘に敗北した時に終わっていた。残機からの蘇生が間に合わなかったあたしは、戦地にさえ立てず、そしてあたしの主は、あたしの時と同じ人物に討たれていた…
「あたしはこれからどうしたら良いんですか……ウォルバク様…どうかまた導いてください…貴女の忠臣は、ここにいます!」
あたしの叫びは虚しく響き。そして、憎いはずの人間への復讐心さえ湧くことはなかった。それも仕方がない事だろう。この時のあたしは、生きる意味さえも見失って居たのだから……
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「人を襲わない巨乳でエロイ格好の悪魔が居ると聞いて駆けつけてみれば、成程、見覚えのある胸と顔ですね…」
生きる意志が無くとも、この悪魔の身体はそう簡単には滅んではくれない。ウォルバク様が討たれたこの戦場を最期の場所に選んだあたしは、ただ佇んで滅びを待っていた。そんなあたしの元に呼んでも居ない見知った顔が現れたのは、ここ来て3日目の事だ。
「あぁ……アクシズ教の司教じゃないか…仲間までぞろぞろ連れて…熱心なものだ…」
勘のいい冒険者が通報でもしたのだろう。アクシズ教徒が徒党を組んであたしを囲んでいる。まぁ、これで無意味な時間が終わらせられるのだから、願ったり叶ったりなのかも知れないが…
「我らがアクシズ教は悪魔の存在を認めぬが教義。その命、天に返させて頂きますよ」
「主を失ったのに、忠臣だけが生きてるなんて恥でしか無いよ。やるなら、さっさとやってもらえる?」
「良い覚悟です。せめて次は、良き主の元へ人として産まれる事を祈りましょう」
「ふざけるな…あたしはまた同じ主の元へ、悪魔として仕えるんだから…」
「そうですか…どうやらその魂も救えぬようですね…では、消えるが良い、悪魔よ!」
ウォルバク様……今、そちらに向か…
「『セイクリッド…』ぶふぁっ!」ドゴッ!
あれ、なんか司教が顔面にドロップキックされて飛んでいったような…
「おいこらゼスタぁ!お前また人んちの従業員祓おうとしてんのか!次やったらアクシズ教を国家指定犯罪組織にするって前に言ったよなぁ?!」
「カズマ様?!違いますよ!彼女は私の知る悪魔で…」
「知ってるって…ゼスタ様まさかお店に?!」「うわ、さいてー…」「悪魔っ娘だけは禁忌だとあれほど教義に…」「やっぱり強姦野郎だし…」「通った証拠隠滅で悪魔祓いとか…」「糞野郎だな…」
「……お前ら、いくらなんでもゼスタ切り捨てんの早くない?」
「「「「あれはアクシズ教を名乗るエリス教徒なので、いっそ処しても構いません!アクシズ教は無関係です!!」」」」
「いやいや!私、最高責任者なんですけど?!」
「はぁ?名前だけ借りてるだけのヤツが、アクア様養ってるカズマ様に楯突いてんじゃねぇぞ!クソが!」ペッ!「前から気に食わなかったのよね…目がいやらしいし…」ペッ!
「お前ら…流石にそれはゼスタが可哀想だからやめてやれ…」
なんなんだこの茶番…これじゃ死ねないじゃないか…でも、そろそろ限界みたいだし…別にいい…か…
「おいしっかりしろ!マジで大丈夫…あれ?この娘うちの従業員じゃない?いや、違う、違うって!!新人の子だった!本当にこんな娘いたよ!うん!でも、ゼスタは今回は許します!」
「「「「流石はカズマ様!なんと広い御心!そして、おかえりなさいゼスタ様!」」」」
「くっ!なにか納得が行きませぬ!しかし!それとは別に熱い何かもこみあげてくる!」
……うるさいなぁ
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「あれ、ここは…」
「あら、目が覚めましたか?」
「……なんで淫魔が、こんな所に?」
あたしがまた目を覚ましたのは、ふかふかのベッドと明るい部屋。そして、看病してくれていたのは同族の淫魔だった。
「ここはアクセルにある私どもサキュバスのお店です。私のことは受付とでも呼んでください。私達のオーナーより、貴方を世話するようにと指示を受け対応いたしました」
あたしの前にいるこの淫魔。どうやら人間に飼われているらしい。たまにある話だ。悪魔が契約を反故に出来ないのを利用して、自ら兵士をけしかけておきながら、命を助けるから仕えろと命令する。そう考えたら、そのオーナーとやらもいけ好かない事に変わりはなさそうだ。
「そりゃ、どうも。ところでこれは誰の食事?その主とやらが来てたのかい?」
ベッドの脇に置かれているのは、まだ暖かいシチューとパン。悪魔にこれを出す意味はあまり無い。効率が悪いし、そもそもあたし達は飢えなど感じないからな…
「いいえ、貴女にです。私が魔力を注げば回復できると教えたのですが、冷えた身体を温める位は出来るだろうと聞かなくてですね。まぁ非効率的ではありますが、味を楽しむのも悪くないですよ?」
「娯楽でこんなものを…これで悪魔を飼いならすつもりか?悪いけど、あたしは主を裏切る真似は…」
「いいえ、もし元気になって立ち去るならば止めるなと言われています。貴女をうちの従業員と勘違いして助けに行った手前、引くに引けなくて連れ帰っただけみたいなので…」
なんだ、あたしは勘違いで死に損なったのか…あれ?いまコイツ、従業員って…
「…従業員?あんた達、飼われてるんじゃないの?」
「いいえ、雇われているのです。それも人と変わらぬ待遇で。私達のオーナーは、悪魔も種族の1つとしか考えない人ですから」
そんなウォルバク様みたいなことを言う奴が人間にもいるんだ…それは少し興味がある。どうせ行く宛もない身だし、それなら一度くらい会ってみようか…
「もしあたしが残ると言ったら、どうしろって?」
「貴女とも雇用契約をかわしたいとの事です。明日の朝お見えになりますから、今夜はお休みになってください。それと、不要なら料理はお下げしますよ?」
「いや、これも有り難く頂く。前の主と、たまにこうして人の食事を食べていたからな…」
「そうですか…では、また明日…」
一人残されたあたしは、そのオーナーとやらが用意したパンを一口かじる。一人では味気ないからと、昔ウォルバク様と一緒に食べたパンも、こんな味がしたような気がする。
「ウォルバク様…貴女のような理想を掲げる者が、人間の中にも居るのかも知れません。貴女にはもう仕えることは出来ませんが、貴女の理想に、貴女の夢に、仕え続けても良いでしょうか…」
誰が聞いている訳でもない一人きりの部屋。あたしは少しだけ主の顔を思い出して、そして、ほんの少しだけ生きる気力を取り戻した。
「うん…美味しい…気がする…」ポタッ
そして、もう答えてくれない主に向けて涙を流しながら、用意されたシチューとパンを平らげたあたしは、そのまま泥のように眠ってしまった。
……………
「まさか敵である英雄に救われるとは…これも邪神様の導きでしょうか…」
翌朝、管理人室に通されたあたしの前に現れたのは、魔王を打倒した英雄だった。バニル様が肩入れする程の男だと、風の噂で聞いたことがあるが、確かに悪魔とさえ手を取り合える大物はそうは居ないだろう。
「それで、カズマ様。私の処遇に付いてですが…」
「別に様付けはしなくていいよ。少なくとも、お前たちからしたら英雄でもなんでもないだろ?恨まないでくれてるだけで充分だし」
英雄というから身構えていたが、この男はあたしが思うより親しみやすいタイプのようだ。きっとウォルバク様とも仲良くできるタイプだと思う。まぁ、そんな絵空事はありえないけど…
「元が敵対関係であろうと、恩人であることに変わりはありません。それに、私がお呼びしたいのです。あなたは、悪魔とさえ手を取り合えるお方ですので…」
「わかった。それなら好きに呼んでくれて良いよ。じゃ、そっちの自己紹介をしてくれるかな?」
「はい。私は上級悪魔のアーネスと申します。残念ながら貴方の求める淫魔ではございません。救っていただいて申し訳ないのですが、お返しにはこの身体を貴方に捧げることか、この身を売ることしか出来ません。それでこと足りますでしょうか?」
「えっと…アーネスってそういうタイプの悪魔なの?」
「いいえ。補佐官兼戦闘員でしたので男性経験などありません。しかし、お渡し出来るのはこの身1つしかなく…」
「じゃあ却下だよ馬鹿!また俺に変な悪評がつくだろうが!そんなの良いから、戦えるなら店の用心棒をしてくれ。こんだけ美人なら店の空気も壊れないだろうし、最近馬鹿な客が多くて困ってるんだよ。あっ、雇用契約はこれな」
「えっと…これは…」
返せるものがないあたしに、この英雄は働いて返せと言ってきた。あたしの身体は割と魅力的だと思っていたのだが、どうもお気に召さないらしい。まぁどうせ何も宛がないのだ。別にそれでも構わない。ただ…
「これでは条件が良過ぎませんか?悪魔に貸しを作ったんです。もっとエグいこと頼んでも逆らいなど…」
「顔と名前を知った相手にそんなことはしたくない。あと、悪魔って種族ってだけで、別に罪なんてないだろ?」
[顔と名前を覚えてしまったら、戦いたくないって思ってしまうから…]
[私が元女神だからって、貴女への信頼には関係ないでしょ?]
あぁ、ウォルバク様もそんなことを言っていた。この人間には、やはりあの方の面影がある気がする。それなら、あたしも同族たちに習って、もう少しだけこの人間を信じてみよう…
「分かりました。この恩に報いるため、この条件で一生懸命働かせて頂きます!」
「おう、よろしくな!」
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それからの生活は、割と充実した忙しい日々が続いた。
「また従業員へのセクハラですか!ダストさん、いい加減にしないとリーンさんに言いつけますよ!」
「げっ!アーネス…いいじゃんか、淫魔ってエロいことに抵抗ないんだろ?」
「ほう…なら貴方の夢は今度からとてもエロいアクシズ教のプリーストに限定しましょうか?勿論、性格はそのままですが、エロいのが好きなダスト様には抵抗などありませんよね?」
「ご、ごめんなさい…相手は選びたいです…」
「そういうことですよ!やりたきゃ夢でやってください!」
迷惑な客を叱りつけたり……
「見つけたわよクソ悪魔!今日こそ神の名の元に祓ってやるわ!」
「た、たすけて!誰か!」
「ここら辺か…」パッパッ
「『セイクリッド…』くちゅん!へぷちゅん!な、なんで胡椒が空から…くしゅん!」
「ほら、早く逃げて!」
「アーネスさん!ありがとうございます!」
狂犬女神の気をそらしたり……
「『ファイアボール』!」
「キャンキャン!」
「ありがとうございます!アーネスさん!」
「さすがの新人も野良犬にくらい勝てると思ってたんだけど…まぁ、仕方ないか…」
「つ、次は勝ちますもん!」
時には野良犬を追い払うなど、あたしにできる限りの事で、カズマ様に恩を返そうと…返そうと……………
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「これじゃ何百年もかかるわ!!」バンッ!
「えっ!ちょっとどうしたのアーネス?!」ビクンッ!
そんな真剣に働いて2週間が経った頃、あたしはこの結論にたどり着いた。爆発したのが業務時間外で良かったとは思う。近くには受付しか居なかったのが唯一の救いだ。
「あたしは命を救われてるのに、こんな地味な恩返ししか出来てないんだよ!なんかもう給料が良すぎるし!これ何時になったら恩を返せるんだよ?!先にオーナーが寿命で死んじまうぞ!」
「あぁ〜、そう言うこと?私達の中にも助けられた者がいるけど、こうして働くのがオーナーの望みだし…と言うか、狼狽えると貴女そんな感じになるのね…」
「あんた達は稼いでるから良いだろ!あたしは貰っちゃってるんだよ!オーナーの取り分減らしてる側なんだよ!それで相手はチンピラと犬と頭の悪い女神だ!割に合わないだろ?!」
「女神の相手は危険だし割に合ってると思うけど…今の環境が不満なの?」
「ふ、不満はないけど…ただ、カズマ様はいつもあたしに感謝して、頑張っていると頭を撫でて、働き過ぎると怒って、たまにお土産とか買ってくるんだよ…こんなの…貰い過ぎているじゃないか…」
この待遇はあんまりにも良すぎて、これでは甘えているだけだ。そんなの、悪魔としてのプライドが許せない。
「なら、アーネスもオーナーにプレゼントとか渡したらどう?うちの新人ちゃんなんて、恩人のオーナーに処女をプレゼントするって陰ながら画策中なのよ?」
「そ、それは陰ながらだから秘密にしてくれよ…まぁ、あいつも命を救われた身らしいから…その気持ちも分からなくもないけど…」
でも、そういう返し方は受け取ってくれないだろう。悪評とか以前に、オーナーはそういうことにはやけに誠実だ。それに、新人のように愛らしい淫魔ならまだ良いが、本来の性別がないあたしなど、人間からしたら気持ちの悪いものである可能性だってある。
「贈り物なら、他の娘達の中に料理や編み物をする娘が居るわよ?指名とか小遣い欲しさだけど」
「最後の一言がなんか引っかかるけど…確かにお菓子なら贈り物には良いかも知れないな。あたしも、ちょっと頑張ってみようかな…」
「いいんじゃない?私も応援するわ!」
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そこからの毎日は、より充実感が増していった。営業時間には必死に仕事をして、眠る前に少しずつ料理の練習を続けたあたしは、徐々にその楽しさに夢中になっていった。
「控えめな甘さも良いですね。やっぱり、少し甘さを控えたほうが男性の好みに近いでしょうか…でも、紅茶は苦いのが人気ですし…」
「甘いのが嫌いな人はクッキーなんて買わないよ!やっぱり甘いのが正義だよ!」
「アーネスさんのは上品な甘さですし、きっとウケますよ!」
なんて、時には仲間たちと菓子を持ち寄ってその腕を競い。ある時はお客から新たなレシピを教わり、あたし達はお互いに切磋琢磨を繰り返して……
「こ、これは…もうお店に出せるわ!」
「やったね!アーネスさん!」
「はい!皆さんのお陰です!」
遂には受付の心を掴み…
「最近、淫夢サービスのついでに長居することが増えたよな」
「あぁ、ここの菓子とお茶は、もうそこらの喫茶店を超えてきてるからな!」
そして、お店の売上に貢献するまでになったあたしは、それを携えてカズマ様の元へ向かった。
「カズマ様!あの…これ食べてください!」
「差し入れか、ありがとう……これ美味いな!アーネスが作ったのか?!」
「その、カズマ様に喜んで欲しくて…あと、少しでもお店に貢献したくて…」
「アーネス…俺はなんて素晴らしい従業員に恵まれたんだ…これからも、店と皆のことを頼むよ…」ホロリッ
「はい!任せてください!」
あぁ…こんなに喜んでくれるなんて、本当に、頑張って良かった…良かった?
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「ってそうじゃないだろ!!」バンッ!
「ひゃう?!ちょっとまたなの?!」ビクッ!
良く分からない充実感で見失っていたが、クッキーでは微々たる利益にしかならない。これじゃ結局、恩返しにかかる期間が300年から250年になるくらいだ。あたしは本当になにをやっていたんだろう…
「ノセられてやってみたけど!そもそもなんなんだよこの絵面!これじゃあたしが恋する少女みたいじゃないか!あたしは恩返しがしたいんだ!カズマ様の女になりたい訳じゃないんだよ!!」バンバンッ!
「そうだったの?恋する乙女の顔をしているから、私はてっきりそうなんだと……」
「あたしは本来の性別がない上位悪魔だぞ?!恩と忠義以上のモノなんてないんだよ!カズマ様に憧れはすれど性欲なんて感じないんだよ!」
「あっ…そう言えばそうだったわね。アーネスも悪感情を食べるんだっけ?」
「ああ、性とか恋愛に関する悪感情が主食だよ」
貧乳コンプレックスとか、挿入直前に出ちゃったとかが最高のご馳走だな。
「えっ……あのクッキー、まさか新人ちゃんへの当て付けとかじゃないわよね?」
「仲間にそんなことしないよ…ここの客は基本的に本物に相手にされないって悪感情があるから、食事には困ってないからな」
「え…じゃあ、ここは貴女にとっても天職じゃない?!」
あっ、そう言われたら確かに……
「ここまで来ると、あたしはもうどうやって恩を返せばいいのか分からなくなって来た…」
「あっ、それも恩にカウントされるの…あなた本当に律儀なのね…」
しかし、これは本格的に不味い!あたしはカズマ様に何を返せばいいんだ?!平和な世界ではあたしはそんな役に立つ存在ではないし、悪魔特有の契約には誠実な点と、忠誠心くらいしか渡せるものなんて…
「おーい!アーネスいるか?」
「か、カズマ様?!はい!こちらにおります!」
な、なんでカズマ様がこちらに?!まさかあたしがミスなんて…
「お、受付さんも一緒か。悪いんだけど、俺ちょっと戦力外になるからさ…当面はサキュバスの救出とかアーネスに頼むことになると思うんだけど…」
「承知いたしました。情報はアーネスに渡すようにします」
「は、はい!私も承りました!」
良かった…失敗は時に取り返しがつかないことをあたしは知っている。今度こそ完璧にお仕えして、カズマ様の為に最高の忠臣にならないと…
「負担を増やしてごめんなアーネス…もし危ないと思ったら逃げても良いからな?」
「そんな心配は不要です!常に最高の成果をお約束しますので!」
「いや、それでアーネスが怪我をしたら元も子もないだろ?」
「か、カズマ様ぁ…」
あぁ、やはりこの方は理想の主です。ウォルバク様に並ぶほどの御方で…
「へー…」
うっ…受付さんが、凄く見てる…
…………………
「ほら、やっぱり女として見てるじゃないですか…」フキフキ
「うぅ…他にも確認方法あったでしょう……」ビクビクッ
カズマ様が立ち去ったあと、受付はあたしのパンツに手を入れた。本来ならば無性のあたしではあるが、ここ数日は女性器を成形していたため、その…ちょっと色々と溢れてしまっていて、動かぬ証拠を抑えられてしまった……
「なんでそんな頑なに恩義なんて言い張るんですか?オーナーに愛されたいなら、素直に女として愛されたいと言えば良いのに…」
そんなことは分かっている。カズマ様は心からの好意ならば悪いようにはしない。それに、彼には無性である事は伝えていないし、常に意識して女の身体で側にいた。その…あちらから望んでくれれば、恩を言い訳に応えるつもりで…
「それでも、あたしからは望めないな…あたしは自らの無力で以前の主を死なせてしまったから…あの方を差し置いて、あたしだけが幸せになるなんて許される筈がない…」
「アーネス…」
新しい生活にどんなに馴染んだとしても、やはりあたしはウォルバク様を忘れることは出来なかった。幸福な日々を過ごしていても、ウォルバク様との思い出が脳裏に焼き付いて離れないのだ。あたしの忠誠心は、やっぱりどこかでウォルバク様も求めてしまっているのだろう。
「ねぇ、その主は人の幸せを妬むような人だったの?」
「そ、そんなことは無い!あの方はそんな器が小さい人じゃ、あたしの幸福を祈ってくれる人で……」
「なら、すべき事は分かっているじゃない…悪いけど、私も新人ちゃんも、オーナーに求められたら拒まないわよ?サキュバスを直に抱いた人から、身体で奪い返せるかしら?」
「た、焚き付け方がエグすぎるぞ…でも、そうだな…あたし、自分に素直になることにするよ!」
「えぇ!恋に立場も種族も関係ないわ!だって、私達は種族の前に女ですもの!」
その言葉が、何故かあたしにはしっくりと来てしまった。性別がないと意地を張っていた時より、女として生きると決めた時の方が心が軽い。なら、もうあたしは…
「悪いな!なら、あたしは誰よりも先手を打たせて貰うぞ!」
「え?ちょっと、まさか今行くの?!」
受付さんが狼狽えているけどもう関係ない!あたしはもう、自分に嘘は吐かないと決めた。だから、この溢れる気持ちを伝えにいく!
「見ててくださいウォルバク様!忠臣アーネス!貴女の分まで幸せになりますから!」
「はっ?!ちょっと待って!それは不味いわよ!先手とか以前にそれは!」
「もう止めても無駄だ!あたしは一人の女として、愛する人に気持ちを伝えるんだよ!だから、止めたきゃ力尽くでかかってきな!」
焦る受付を置き去りにして、カズマ様の事を追いかける。駄目なら駄目で納得しよう。でも、もう無性にはきっと戻れない。あたしは、女としてカズマ様を愛したい!
………
「カズマ様!」
「え?アーネス、どうしたんだ?」
「あなたに大切な話があって…」
あぁ、振り返ってくれるだけでこんなにも心が満たされる。伝えよう、あたしの気持ちをもう、立ち止まる理由なんてないのだから!
「私、実は貴方の事が!…」
………と、ここまで言いかけてあたしの声が途切れる。決して怖気付いた訳ではない。人も悪魔も脳の構造は基本的に同じなので、限界量を超えた情報を受け取ると一瞬固まる事があるのだ。例えばそこに、死んだはずの以前の主が居た時なんか……
「えっと…どうぞ続けて?」
「え…ウォルバク様?本物?!」
そんな筈はないと理論的な思考と、見れば見るほどに本人だと告げるあたしの脳と記憶。カズマ様には女神の妻が居ると聞いていたような気がしていたが、それがまさか邪神だなんて、ウォルバク様だなんて聞いてない!
「えっと…二人は知り合いなのか?」
「私の、仕えていた主です…」
「わ、私の家臣だったのよ…」
カズマ様の質問への答えは、まさしく本物である事の証明。ならば、今あたしのとるべき選択肢は…
「ウォルバク様!!今一度、私と契約をしてください!貴女の忠臣は、この身が尽きるまで忠臣です!」
「え、良いの?と言うかカズマへの大切な話は…」
「いいのです!私は忠臣アーネス!その忠義は決して揺るぎません!貴方以外への忠誠はありえません!」
もう、なかった事にしよう。だってそうだろ?ここでカズマ様に告白すれば完全に間女だ。どちらにも嫌われたら本当に生きていけないから!
「そ、そう?それなら、今一度契約を……」
よし!このままウォルバク様と契約をすれば、あたしは元通りの忠臣アーネス!カズマ様も主の旦那だから、今後とも良好な関係を……
「あぁ!待ってくださいウォルバク様!アーネスに悪気はないのです!アーネスを許してあげてください!」
「「「え?!」」」
あ、受付が今頃…と言うか、まさか契約だと気付いてない?!
「あの、アーネスは寝取るつもりなんて全く無くて!ウォルバク様がカズマ様の奥様だって知らなかったんです!それで、ちょっと魔が差したって言うか、女の子になっちゃったって言うかですね!それでカズマ様に迫っただけで!」
「まだ迫ってなかったんですが?!」
あっ、しまった…
「……ねぇアーネス、そう言えば貴女。恋愛とか性の悪感情が主食なんですっけ?」
「は…はい…そ、それはそうなのですが…」
「主の男を寝取って食べる悪感情はさぞ美味しいのかしらね?」
あっ…これはもう…
「アーネスなんてもう知らない!カズマ、帰ろ!」
「え…えっと…」
「ち、違うんです!それは勘違いで!本当にそんなの狙ってないんです!ちょっと!ウォルバク様ぁ!!」
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それから一週間、ウォルバク様は一言も口を聞いてくれなかった。そして、問題のカズマ様との関係だが…
「ごめん…俺は幸せな恋愛生活を送りたい…」
「そんなぁ!!」
残念ながら、一歩進もうとして数千歩下がってしまった……
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
残念ですがヒロインは増えません!でも、ちょっとゆいゆいさんポジで掻き回す役どころにするつもりです!
また不定期ではございますが、お暇なときにでもお付き合いください。