※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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少し日常入ります。

また遅い更新で申し訳ありません!

タイトルでもう相手が分かると思いますが、お付き合いください。


カズマのトラウマ♂再び

今朝の1面『デストロイヤーの残骸盗まれる。マニアの犯行か?子供たちが破片を持って帰っていた事実も判明』

 

「物好きも居たもんだよな」

 

朝から新聞を読みつつ、アクアが淹れたコーヒーを飲む。

そう、俺は大人の男。

子供(童貞)だった自分に別れを告げた俺は、朝から優雅にクリスと一緒にモーニングコーヒーと洒落混んでいた。

 

「なにこれ、苦…」

 

「アタシもこれ苦手…」

 

処女童貞卒業しても味覚は大人にはなんてならない。コーヒーなんてかっこつけて飲むもんだわ。これ飲めるダクネスはスゲーな…

 

「カズマさんのお子さま、意気地無し。お陰で私は寝不足なんですけどー?」

 

今朝は全員が寝不足気味だ。俺が夜に来ると思って全員律儀に待ってたらしい。

 

「誰も『お前の部屋に行く』なんて言ってないだろ?勝手に勘違いしやがって」

 

「そうですよアクア。カズマも直前でへたれて寝不足なのです。暖かい目で見守りましょう?」

 

俺は昨晩、部屋を出てないことになっている。だからこの言われようだ。

 

「そうそう。カズマにそんな度胸があるなら、とっくにダクネスかめぐみんが襲われててもおかしくないでしょ?」

 

「その流れだとパンツを取られたクリスが真っ先に襲われないか?」

 

「ねぇ、クリス?なんで女神の私を抜いたの?」

 

昨晩の相手なのに、自然と会話に混ざるクリス。古くからの仲間に喘ぎ声を晒してしまい、それなりに肝が座ったようだ。いや、吹っ切れただけかも知れないが…

 

「それにしたって平和って良いわよね!魔王軍だとか借金だとか言ってた頃は、こんな日常あり得なかったもの」

 

アクアが余計な事を言うが、魔王を倒した今となっては俺たちにフラグなんてない。女性関係に関してはまぁ、後々……

 

バターン!

「サトウカズマさんはおられますか!」

 

あー知ってるこの流れ。前から比べて『さん』が付いてるけど、流れは知ってる。

 

「セナさん…何度目ですかね。このやり取り」

 

「すみません。カズマさんのお宅にお邪魔する時、何か無性にやりたくなってしまって。それに!カズマさんが表彰を受ける時にまで、居留守なんて使うからですよ?」

 

検察官のセナさん。俺がアルダープの件で色々とお世話になった人だが、英雄となった今では何かと頼りにされている。

 

「コーヒーです」

 

「あ、ありがとうございます」

 

アクアが俺の飲めなかったコーヒーをセナに出した。

 

「…にがい」

 

子供だな。と、心の中で勝ち誇る。ただアクアが淹れたコーヒーがそもそも苦すぎる可能性もある訳だが

 

「で?ご用件は?」

 

「そうでした!カズマさんはデストロイヤーの破片盗難事件をご存じですか?」

 

「いえ、初耳です」

 

「今朝の新聞に書いてたよね?口に出したよね?!」

 

クリスも突っ込みのキレが良くなったな。

 

「デストロイヤー盗難に、銀髪盗賊団の関与が疑われておりまして…あんなものを盗めるのはこの国で銀髪盗賊団しか居ないと…」

 

「なるほど、確かにあの凄腕、銀髪盗賊団なら可能かも知れませんね」

 

クリスが調子に乗っていますが、この感じは違そうです。

 

「クリスさんはこの街で一番の盗賊、カズマさんはその盗賊からも盗みを働ける冒険者。是非、今回の事件解決にご協力をお願いしたいのです」

 

「アタシを越える盗賊は確かに知りませんが、捕まえるのは専門外ですよ?」

 

凄く調子に乗っている。でも、俺パンツしか盗めねぇし、クリスは神器専門だし、正直役に立つとは思えない。

 

「良いでしょう!私の知能を貸してあげます!」

 

めぐみんには頼んでいないが、多分こいつは暇なんだろうな。

 

「盗難事件の解決、治安維持も貴族の勤めだ。私も手を貸そう」

 

ダクネスも呼ばれてないが、まぁ家柄的に仕方ない。

 

「私のような聡明な女神に助けを求めて来るなんて、女神としては断れないわね!」

 

これは完全な嫌がらせだ。本人は戦力だと思っているだろうけど。

 

「お願いしますカズマさん!このパーティーをまとめられるのは貴方しかいません!」

 

セナが迷惑そうにしている。そりゃそうだよな。呼んでない奴がやる気出してるんだもん。

 

「アタシはカズマが行くなら行くけど…もうカズマが行かないとむしろ迷惑じゃない?」

 

クリスさん、言うようになりましたね。

 

「しょうがねぇなぁ!ほら、全員で行くぞ!」

 

こいつらが余計な事をしないよう、俺たちは事件解決に協力することとなった。

 

_______________________

 

まずは犯行現場を調べる。そう、ありとあらゆるドラマや映画において、犯行現場に来ない作品はない。まずは調査だ。と言うことでデストロイヤーを倒した谷間の街道に来たのだが…

 

「何もないな…あんなにデカイ残骸が…」

 

「そうなんです!無いことが信じられないんです!」

 

デストロイヤーのサイズを覚えていれば、『なにも残されていない』事がいかに異常か分かると言うものだろう。

 

「ここが私たちの戦った場所なのは間違いないと思うのだが…あんな大きなものをどうやって?」

 

ダクネスは辺りの土を観察している。ここはそもそも街道だ。多くの人が行き交う以上、馬車の後や足跡は絶えない。夜中のうちに馬車に乗せて運ばれたら、どの痕跡が運んでいたかなんて判別は難しい。

 

「懐かしいです。ここから私の爆裂神話は始まったのですね…」

 

「めぐみん。なんで城壁の上から見下ろしてるの?」

 

めぐみんはデストロイヤーに爆裂魔法を放った城壁の上にいる。俺とクリスもめぐみんが何を見ているか気になって、城壁に登っていた。

 

「ここは私の爆裂魔法が町を守った場所なのです。ほら、あそこのえぐれた部分は私とウィズの爆裂魔法でえぐれたのですよ?」

 

「あぁ、あの崖の所か……え?」

 

突然クリスが固まる。街道を見下ろして、何かに気付いたらしい。

 

「どうしたクリス?」

 

「ねぇ、カズマ…めぐみんが爆裂魔法でえぐった所よりすこし先。街道の道幅ほぼ全部、なだらかに窪んでない?」

 

「はっ?まさかそんな……『千里眼』」

 

街道を作る場合。普通は周りの土より高く作る。そうしないと雨水で街道が冠水するからだ。しかし、この街道の続く先、平原まで出た所。

 

「平原の草地より、街道が若干低い…」

 

「デストロイヤーは『あのサイズのまま移動した』って事かな…」

 

取りあえず、手にした情報を全員に共有する。

 

「あんな巨大なものをそんなに静かに運べるか?そもそも運ぶ方法さえあるか分からないのに…」

 

「しかし、街道全面が同じように窪んでいる事を考えれば、カズマさんの推理はかなり信憑性が高いです」

 

ダクネスとセナは真剣に方法を考えている。

 

「そもそもなんで壊れたデストロイヤーを回収したのかしらね?熱狂的なファンかしら?」

 

「仕方ないですね。カッコいいですから」

 

能天気なめぐみんとアクア。俺は嫌な予感に1つだけ心当たりがあった。

 

「なぁクリス…転生者の能力は加護を受けた本人しか使えないよな?」

 

「うん。それは間違いないよ?」

 

クリスと言うかエリスがそう言うならそこは大丈夫だろう。ただ、俺の本命はそこじゃない。

 

「転生者の能力が『なにか作る』だった場合。その作った物はどうなる?」

 

「作るまでが能力なら、普通に誰にでも使えるけど、デストロイヤーはこの世界の魔道具の限界を越えてるから、加護無しで直せないし、使うのは無理だと思うけど…」

 

そうじゃないと女神の特典が悪用されるからだろう。神器も念のため回収しているが、結局使うことは出来ない筈だ。ただ、悪用された前例がある…

 

「その加護を使って作った高度なモノを『体内に取り込んだ魔物』が居た場合、その魔物は加護により作られた存在にならないか?」

 

「最悪のケースだけど、それなら使えるかも知れない。その魔物は加護によって作られたものの延長になるかも…」

 

嫌な予感に拍車がかかる。過去に同じことをした奴が居た。グロウキメラのシルビア。魔術師殺しを取り込み、さらには俺を性的に取り込もうとした魔王軍幹部。アイツが同化したら、おそらくデストロイヤーを自走させて運べるだろう。

 

「セナさん!このくぼんだ街道の先にデストロイヤーがあるはずだ!早く調査を!」

 

「すぐに衛兵隊に連絡します!」

 

近くの詰所にセナが駆け込むと、騎乗した衛兵が数名来てくれた。セナと少し言葉を交わし、街道の先へ向かっていく。

 

__________________

 

「魔術師殺しの残骸は見つかってないそうです」

 

ゆんゆんに協力して貰い。紅魔の里に魔術師殺しの所在を確認した。返ってきた返答は最悪の結果だ。

 

「なぁ、クリス…普通、あんなデカイ破片運べると思うか?」

 

「観光名所にして外に置きっぱなしだったんだよね?盗んでも使える人が居ないと思って、雑に保管してたみたいだし…」

 

嫌な予感は次々と積み重なる。最悪のケースを想定しろ!準備を怠るな!いま、確実に言えること。シルビアに敗北、それ即ち俺の処女が散る!

 

「鬼の表情で戦う準備に余念の無い小僧よ。情報が必要だろう?」

 

勝手に入ってくると言う問題点はあるが、バニルは何だかんだ面倒見が良い。

 

「助かるどんな情報だ?」

 

「奴の狙いはお前だ小僧。故に、奴は街道からこの町を狙って攻めてくる」

 

分かっていた。ただ言葉にされると恐怖が増す。しかし、これは戦うには必要な情報だ。少なくとも、紅魔の里が不意打ちされる事はない。

 

「小僧…こんな事を言うのは野暮かも知れないが」

 

「なんだよ、俺はこの町を諦めないぞ」

 

「いや、小僧の身体で奴は満足するし、殺しには来ないぞ?吾輩の見通しでは、小僧が熱い一夜でも与えてやれば、奴は危険因子にはならん」

 

「…俺はこの町を守る!」

 

聞こえない。なにも聞こえない。コノマチヲマモルンダ。エイユウダカラ。

 

「ふむ、悪感情さえ出ない程のトラウマであったか…まぁ良かろう。また必要な物があれば買いに来るが良い。吾輩も小僧が居なければ売上額が減るのでな」

 

「あぁ、手を貸してくれ!俺の貞操のために!」

 

「それは知らん」

 

悪魔!やっぱり悪魔は悪魔だ!

 

___________________

 

「君が僕に頭を下げに来るなんて…」

 

俺は王都までミツルギに協力を頼みに来ている。

 

「俺が知る限り、アイツの防御を確実に突破できるのはお前しか居ない」

 

「つまり、女神様の加護が無いと危険な強敵と言うことかな?」

 

「デストロイヤーの装甲、魔術師殺し、どちらも魔法を無効化し、物理的にも固い」

 

どちらもギリギリで勝利した。そんなの合わせて来られたら……

 

「分かった、僕も手を貸すよ。アクセルの町が無くなるのは困るからね」

 

「すまないな」

 

「魔王を倒した時も協力したじゃないか、世界を守る為に、僕ら転生者が力を合わせるのは当然さ」

 

良い奴なんだよなぁ、キャラがウザいだけで……

 

「じゃあ、僕は準備を済ませたらテレポート便でアクセルに向かうよ」

 

「あぁ、俺の屋敷の住所と、一応職場?らしき店がここだ。……あと、ここにサキュバスさんのエッチなお店があるぞ」

 

ミツルギは少しだけ面食らった後、小声で訪ねてくる。

 

「カズマ、この最後の情報は必要かい?」

 

「良いかミツルギ。この店のサキュバスは男性を殺したり、弱らせたりしない。人を傷付けたくない優しいサキュバス達なんだ…でも、彼女らだって食べないと死んでしまうだろ?そこで、こう言うサービスが出来たんだ。ここに行くのは最早人助けじゃないか?」

 

我ながらとんでもない宣伝方法である。が、俺が通えなくなった手前、こうやってお店の為に新しいお客を紹介しているのだ。お世話になったお礼と、たまに女の子を悦ばせるテクニックを教わるためにも!

 

「一応気に止めておくよ…」

 

お?実はムッツリなのかな?

 

「じゃあ、俺は他にも準備が必要なんで、頼むぜ」

 

「あぁ、なるべく急いでアクセルに向かうよ」

 

これで物理攻撃専門は確保できた。

 

____________________

 

「カズマ君は里を救ってくれた英雄だからね!勿論手を貸すよ!」

 

ゆんゆんのお父さん、族長のひろぽんさんは思ったより簡単に引き受けてくれた。

 

「良いんですか?魔術師殺しとの戦いで、皆さん結構ピンチでしたよね?」

 

「そのピンチを命懸けで助けてくれた人が頭を下げに来たんだ。行かないなんて言う紅魔族は居ないよ。それに、負けっぱなしなんて最強の一族の名前が泣くだろう?」

 

「ありがとうございます!」

 

これでやれることは全部やっただろう。正直、これを越えて来るパターンは流石に思い付かないし俺の持てる全てだと思う。

 

___________________

 

「カズマさんの読みは当たりました」

 

神妙な面持ちでセナが話し始める。ギルドにかかった緊急召集。内容は魔王軍幹部、シルビアの復活。

 

「金属で出来た蛇の下半身を持つ女が」

 

「あ、そいつ男です」

 

的確に突っ込む。そこだけは間違えたらいけない。

 

「えーと、金属で出来た蛇の下半身を持つ、美女にしか見えない男が、デストロイヤーを分解している所を衛兵が発見、一名が斥候として接近を試みるも、周辺には従えたオークと低級魔族の群れがおり断念との報告です」

 

「駆け出しの町でオークに勝てる冒険者は限られますね…しかも、魔法を無効化するような存在がついているとなれば尚更。基本的に、オークと人間では筋力に差が有りすぎますから…」

 

受付嬢のルナはこの状況を冷静に分析しているようだ。

 

「やはり、頭のおかしい娘の一撃でなんとかするのが確実じゃないか?」

 

おっさん冒険者から、想像通りのアイデアが出る。当然、それが上手く行くなら俺はそうしてる。

 

「今回の敵は紅魔の里を半壊に追いやった魔王軍の幹部だ。魔法への対策は万全だと思う。一応、アクアのブレイクスペルが通用すればその対応も可能だと思うが」

 

「デストロイヤーの時はギリギリだったわ。でもここには皆が居る。何人かブレイクスペルを使える人達で一斉に撃ち込めば、必ず突破出来ると思う」

 

おっと、なんだこの心強い女神様は

 

「その間の物理的な障害は私が除こう」

 

どうしたダクネス、お前もクルセイダーの自覚が出たと言うのか

 

「では、プリーストの皆さんをアクアさんの元に、前衛職の皆さんをダクネスさんの元に集結させましょう」

 

「敵にオークと下級魔族がいるのであれば、向こうにとっての驚異は魔術師。こちらの魔術師を優先的に狙ってくる筈です。魔術師はなるべく分散させて配置し、あちらの対魔術攻撃の効果を下げましょう」

 

めぐみん!いや、めぐみんは元々賢いわ。

 

「カズマさんのパーティー、魔王倒してから良い感じだよね?」

 

「あぁ、やっぱり英雄は違うな!」

 

これだけのカリスマがあれば、俺達の布陣は万全だろう。あとは相手の出方次第だ。

 

「監視用ゴーレムに敵影を確認!大量のオークと下級魔族!その数ざっと見て5000以上!」

 

「「5000?!」」

 

やっぱ逃げたい。

______________

 

「久しぶりね坊や」

 

「シルビア、また会うことになるとはな」

 

お互いの後ろに軍を構え、戦地の中心で顔を合わせる。蛇のような下半身は、二色の装甲が織り混ざっている。デストロイヤーと魔術師殺しの合わせ技、予想はしていたが、こいつある意味では魔王より厄介なんじゃないか?

 

「本当は混乱に乗じて坊やだけ奪って逃げるつもりだったけど……まさか街の英雄として待ち構えているなんてね」

 

「魔王が死んだ今、俺達が争う必要なんて無いんじゃないか?」

 

「私の目的は坊やだけだけどね?オークの部下達はボーイハントに、下級魔族は魔王様の弔い合戦。だから、坊やが私のモノになるなら、私は帰ってあげても良いのよ?」

 

よし、後ろの奴等に会話が聞こえない位距離を取って良かった。これ、大半のやつが「カズマを犠牲にして後は魔法でいいんじゃね?」ってなるだろ。

 

「お前達と取引する訳には行かない!俺は英雄で、この町を守るために立ち上がったんだ!」

 

「更に良い男になったじゃない!良いわ!この大衆の前で、私のモノにしてあげる!サキュバス並みの手管はまだちゃんと使えるんだから」

 

ひぇー!ヤバい犯される!なんで少ししおらしくなるんだよ!望んでねぇよお前相手は!

 

「悪いな!サキュバス並にエロくて、天使より可愛い嫁が出来たんだ!お前に相手して貰うつもりはない!」

 

取りあえず、嘘は着いてないよな?バレたらあとでエリスに怒られそうだけど

 

「あら、是非お会いして見たいわ!女の目の前で貴方を奪うのなんて、凄く燃えるもの!サキュバスみたいなドスケベ女に奪われたのは少しムカつくけど…みてなさい!」

 

さて、踵を返して自陣に戻

 

ドドドドド

いや早い!お前ら魔物には流れってもんがないのか!

 

「お久しぶり!サトウカズマ!この前は邪魔が入ったけど、今度は楽しめそうじゃない!」

 

オークの群れの先頭、スワティーナが俺目掛けて全力疾走してきている。いや!なんで名前覚えてるんだよ俺!

 

「お断りします!もう嫁が居るんです!」

 

「大丈夫!私は2番でも全然オッケーよ!」

 

「カズマさん、跳んで!」

 

ゆんゆん!やっぱりオークから救ってくれるのはゆんゆんなんだね!

 

「『ボトムレス・スワンプ』!」

 

俺の数歩後ろが沼地に変わり、オークの脚を絡めとる。

 

「私の後ろには街があります!今日は向かってくるなら容赦しません!」

 

「ゆんゆん格好いいよ!俺が英雄として本を書くときは『超絶美少女上級魔術師』って書くよ!」

 

「やめてください!」

 

ゆんゆんを讃えつつ、俺は全速力で前衛部隊の後ろに回る。多分、シルヴィアが軍団に戻るのもそろそろだ。

 

「状況は?!」

 

「斥候からの情報ですと、魔法と前衛のチームプレーでオークの群れの侵攻は抑えています!ただ、このオーク達、普通よりタフらしく、全然倒れないそうで!しかも数が多すぎます!」

 

オークとグロウキメラ。これは考えようによっては、究極の品種改良が可能な組み合わせだ。どんな種族でも子供が産める生物は、どんな生物の遺伝子も受け入れる事が可能と言える。方法は考えたくないので、思考を放棄する!

 

「前線を維持しろ!雪崩れ込まれたらこの町は終わる!あぁ、しかしなんて力強い攻撃なんだ!」

 

先頭のダクネスは更に強化されたオークの攻撃に悶絶していた。

 

……………

 

「駆け出しの街がねぇ……坊やよね?この連携と布陣、弱い者の使い方を良く分かってる。やっぱり、私のモノにしたいわ!さぁ私が出るわ!続きなさい!」

 

……………

 

「シルビアが前線に移動開始です!」

 

「思ったより早かったな…アクア、準備は良いか?」

 

「当然!見てなさい!本気の女神の力を!」

 

周りにプリーストを連れ、前線のすぐ後ろに移動するアクア。なんだよ、普段からそれなら俺も接し方考えるぞ!

 

「前を開けなさい!行くわよシルビア!」

 

羽衣の出現、そして空から降りてくる花の杖。あれ、どこから来てるんだろう…

 

「悪いわね!あんたにカズマさんは渡せないの!」

 

一息置き、周りのプリーストに合図を送る。

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル!』」

 

空に広がる巨大な魔方陣。そこから放たれる眩い光。その巨大さはシルビアに回避を許さない。

 

「坊やの側で幸せそうに生きてるあんたに!私が負けるかぁ!!」

 

シルビアの正面にも巨大な魔方陣。その魔方陣を盾に、アクアの放つ光を切り裂いて進む。

 

「お互いに魔法を破壊する魔法。ただ、こちらは生憎二段構えなのよ!」

 

「アクア下がれ!押されてる!」

 

シルビアは着実に前進している。あと10秒もあればシルビアの手がアクアに届く。

 

「嫌よ!こんな奴に!カズマさんを渡すもんですか!」

 

「坊やは愛されてるわね!でも、それなら先ずはあんたは殺すわ!!」

 

アクアまであと5m、俺は全力でシルビアに向かう。でも、莫大な魔力の戦いに何が出来る?考えろ!騙し討ちでも良い。逃走でも良い。アクアを助ける1手を!

 

「大切な先輩を殺されては困ります」

 

空から一筋の光がアクアの隣に舞い降りた。あぁ、そうだ。俺の女神は一人じゃないんだ!

 

「「エリス!」」

 

『セイクリッド・ブレイクスペル!』

 

アクアと同等か、それより少しだけ強大に見える光。2つの光の直撃を受け、シルビアが押し返される。

 

「まったく、遅いのよ。エリス」

 

「すみません。アクア先輩なら一人でも余裕かと思いまして」

 

「言うじゃない!」

 

女神2人に緊張は見えない。昔からの信頼がそこにはきっと有るんだろう。

 

「まさか!女神エリス?!なんであんたが!!」

 

シルビアの構えた魔方陣に亀裂が走る。

 

「女神だって!大切な人の為に頑張るんです!」

 

「まさか、あんたが坊やの?!」

 

魔方陣が割れ、シルビアが後ろに吹っ飛ばされる。

 

「くそっ!せめてあんただけでも!」

 

シルビアは吹っ飛ばされながら、咄嗟に尻尾をエリスの腰に巻き付けた。

 

「あんたが居れば、坊やも街の連中も、私には手が出せない!」

 

「しまった!」

 

エリスを捕まえ、後ろに飛び退くシルビア。俺も咄嗟にエリスの手をつかみ、シルビアの前に引きずり出される。

 

「あぁ、本気なのね坊や…それがあんたの愛する女って訳」

 

「あぁ、そうだよ!世界一の嫁だ!」

 

「こんな状況で言うじゃない!坊やの戦闘能力でこの状況を切り抜けられると思ってるのかしら?」

 

「カズマさん…私の戦闘能力ではシルビアには勝てません!せめてカズマさんだけでも逃げてください!」

 

エリスは思い切り胴体を締め上げられた時に結構なダメージを負ったらしく、ここでクリスになっても逃げられそうにない。

 

「ほら坊や?愛する女がそう言ってるけど?」

 

「悪いな。俺はエリスと一緒なら絶対に負けない!かかってきなシルビア!」

 

俺は左手でエリスと手を繋ぎ、右手で剣を抜いた。

 

「あぁ、見せつけてくれるわね!仲良く二人で死にたいようね!」

 

「行くぞシルビア!!……『テレポート』」

 

「「は?」」

 

世にも珍しい魔王軍と被る女神。シルビアから50mの位置に移動した。取りあえず、アクアにエリスを託す。

 

「ふふふ、やはり坊やは面白いわ!でも、ここの住民を見捨てられない以上!坊やに勝ち目なんてないのよ!」

 

真っ直ぐに突っ込んでくるシルビア。これで良い。想定外はエリスが何とかしてくれた。後は俺の活躍の場だ。

 

「あぁ!俺に勝ち目なんてない!でもなぁ!」

 

シルビアの左側に跳躍。当然、俺の動きに着いてくるシルビア。そう、それで良い!

 

「俺達なら、話は変わるだろ?」

 

「食らえ!」

 

ズバッ

「ぐぅ!この装甲を斬った?あんた何者!?」

 

「ミツルギキョウヤ。サトウカズマの仲間だ!」

 

接近してきたのが見えたから、あえて視界から外してみたが分かってるなコイツ。やっぱ出来る奴なんだな。

 

「タイミングバッチリだな」

 

「女神様が人質になった時は冷や冷やしたよ」

 

「魔剣の勇者まで仲間に居るとはね!あんたたち!所詮は剣士一人!数で叩き潰しな!」

 

集結する下級魔族。中には弓を装備する奴等も居る。あくまで剣士のミツルギは、数と射程の前では確かに部が悪い。

 

「屈め!ミツルギ!」

 

『ライトオブセイバー!』

 

ミツルギの背中を押し、前に倒れ込む。俺達の頭上を掠め、下級魔族を蹴散らす光の剣。俺の仕事はコイツらが完璧に仕事をこなす場所を作ること。

 

「なぜだ!なぜこんなところにお前らが!」

 

良いぞシルビア。お前のそういう分かってる所は評価するぞ。

 

「里の英雄が俺らに頭を下げに来た」

バーン(謎のキメポーズ)

 

「私達が逃した魔物が、他の町に牙を剥いた」

バーン(謎のキメポーズ)

 

「探せば理由はいくらでもあるが」

バーン(謎のキメポーズ)

 

「今日の我らの心は1つ!」

バーン(謎のキメポーズ)

 

セーノ

「「「「我ら紅魔族!戦友(とも)の為に魔を討とう!!」」」」

 

せーのって聞こえたよね?気のせい?さてはこれ練習してたな。

 

「魔族は私たちに任せて、カズマ君はシルビアを!本当にヤバかったら合図したまえ!」

 

「ありがとうございます!行くぞミツルギ!」

 

この流れ、あとは俺らがシルビアを何とかするだけ!俺がミツルギの前を行き、シルビアの攻撃を引き受ける。

 

「サトウカズマ!!」

 

シルビアの尻尾から繰り出される打撃に俺の自動回避が発動する。

 

「そんな幸運!何度も続くと思ってるのかしら!」

 

2発、3発と連続発動。4発目は自力で回避。シルビアの攻撃は俺には届かない。

 

「なんで?どれだけ強くなったというの?!」

 

「俺は変わらず最弱の冒険者だよ!」

 

そう、ただ運が良いだけで攻撃を回避し続けている。ただの幸運。でも、その幸運を司る女神が俺の後ろに居る!

 

「今なら届く!」

 

ミツルギが飛び出す。狙うのはシルビアの人間体部分。

 

「させるかぁ!」

 

シルビアもミツルギを迎撃する為に構える。俺の攻撃力ではシルビアにダメージを与えられない。シルビアもそれを分かっているから、俺から目を離した。そこに勝機がある!

 

『クリエイトアース!』

 

マタナイトを使い、シルビアを囲むように土の壁を作る。

 

「目眩ましのつもり?」

 

「充分だ!カズマ!」

 

ミツルギは俺の土壁を足場にシルビアの上を取る。そこには太陽、目眩ましの本命はこっち。

 

「中々悪くないじゃない!でも、私は目も特別製なのよ!」

 

空中からの強襲を受け止めるシルビア。グロウキメラってズルい。ミツルギは迎撃を受け、土壁の外に吹き飛ばされた。

 

「さぁ!もうこれで終わりかしら?この装甲があれば、坊やを抱えて逃げる位出来……坊や…それは!」

 

「俺が魔王をどうやって倒したか、知らない訳無いよな?」

 

マタナイトを使っての爆裂魔法。すでに俺の手には詠唱を済ませた魔力が渦を巻いている。

 

「そう、最後の悪足掻きね。冒険者の坊やがそんなもの使えたのは驚きだけど、使えば倒れて持ち帰り易くなるわ」

 

驚きはしたが、余裕は変わらない。俺の爆裂魔法は覚えただけの借り物だ。魔術師殺しの装甲は壊せないだろう。

 

「これが俺の最後の一撃だ!『エクスプロージョン』!」

 

「来なさい!私のこの装甲を貫けるなら!って…あんたまさか!」

 

狙いが下に逸れる。シルビアの周りには土の壁。その壁は発射台だ。この戦い唯一の問題は、強すぎるめぐみんの爆裂魔法をどうやってシルビアに当てるか。これだけの人が戦っていては巻き込む。谷間の街道で地上に打てば瓦礫で街に被害が出る。だったら答えは上しかない。

 

「爆風で地面ごと?!」

 

俺の狙いは何とかハマった。上空に打ち上げられるシルビア。さぁ、最後はお前の出番だ。

 

「めぐみーん!いっけぇ!!」

 

城壁の上、戦場全体が見渡せる場所で待機させているめぐみんに合図を送る。と言っても、さっきの爆発が既に合図だろう。めぐみんなら絶対に気付く。

 

「待っていた甲斐がありました!本家の爆裂魔法をご覧にいれましょう!さぁ、刮目せよ!これが魔王城を落とした究極の破壊!『エクスプロージョン!』」

 

爆心地はシルビアの目の前、チリも残さないこの一撃。俺達の勝利はここで

 

ドサッ

「グフッ!」

 

決まったハズなのに、何故か人間体だけになったシルビアが落ちてきた。

 

「悪魔を取り込んで無かったら死んでたわ。残機と言う悪魔の特性は便利ね」

 

あ、駄目だ。万策尽きた。シルビアはぼろぼろだが、それはこちらも同じこと。魔力が無ければレベル差で蹂躙されてしまう。

 

「もう、この世で結ばれるのは無理みたい…だから、あの世で一緒になりましょう?」

 

「お断りだ!なんでお前最後まで悲劇のヒロインっぽい感じなんだよ!紅魔の皆さん!こっちですよ!」

 

が、すでにシルビアは目の前だ。

 

「くそ!カズマさんが近すぎる!魔法が撃てない!」

 

ちくしょー!蘇生は可能か?これで蘇生が可能なら!

 

「ちゃんと、坊やの魂まで食べてあげるわ…」

 

「やめて!それもうゲームオーバーじゃんか!」

 

「人の旦那に…何してるんですか!!『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 

「キャー!」

 

不意討ちでのエリスのビーム。直撃したシルビアから、何か黒いモヤモヤとしたモノが抜けていく。多分悪魔的な何かなんだろう。

 

「体に…ヒビ?」

 

黒いモヤが抜けたシルビアの体が崩れていく。

 

「そう、悪魔の部分が祓われたら、私の死は覆らないみたいね…」

 

シルビアは弱々しく俺に近付き、目の前で倒れた。

 

「ねぇ坊や…最期くらい、私の手を握ってくれるかしら…」

 

「あぁ」

 

もう危険は無い。だから、俺はシルビアの最期の言葉に耳を傾けた。総大将が倒れた事で、魔物達も攻撃の手を止めている。

 

「伝えて、私の部下たちに…あんた達は自分の人生を生きろって…」

 

「分かった」

 

俺の周りではシルビアの声が届き、武器を捨てる魔族が少なくない。多分、魔王よりシルビアを慕っていた奴等なんだろう。

 

「あなたは、もう少し女心を勉強しなさい。女神をサキュバスなんて言ったら怒られるわよ?」

 

「こんな話、出会ったときにもしたよな…」

 

「そうね…あの時、私が女だったら坊やと一緒に居られたのかしら…」

 

「お前が魔王軍じゃなかったら、仲間になれたかもな」

 

しんみりとした空気、なんだろう。これ凄く勇者っぽい。ちなみに、俺は感動とかより、凄く安堵している。バレないように必死だけど。

 

「ねぇ、坊や。私の命、あの女神にくれてやるのは悔しいわ。貴方がトドメを刺してくれる?」

 

「分かったよ。どうしたら良い?」

 

「もうほとんどただの人よ。心臓にダガーを差せば終わり」

 

俺は言われるがままにチュンチュン丸を取り出した。

 

「そこの女神、あんたなんて大嫌いだけど、坊やを絶対に幸せにしなさい。じゃないと、必ず化けて出るから」

 

「魔物に身をおとした人の頼みを聞くのは、本来の女神の行いには反しますが…その願いは聞き入れましょう」

 

「これで思い残す事は無いわ。終わらせてサトウカズマ」

 

「あぁ。じゃあな、シルビア」

 

ザクッ

こうして俺のトラウマとの戦いは幕を閉じた。

 

_____________________

 

「死者0、街への目立った被害無し!今回はまさしく大勝利ですよ!」

 

ギルドの酒場での祝勝会。ルナの報告にギルド、衛兵、紅魔の皆さん。一斉に歓声が上がる。あの後、シルビアの言葉が魔物を撤退させた。いまは全員の無事を確認しての祝勝会と言うわけだ。

 

「今回の功労者、カズマさんより一言お願いします」

 

ルナに話をふられ、俺は皆の前に出る。

 

「俺だけじゃきっとこの街は守れなかった。皆が居てくれたお陰だ。本当にありがとう!」

 

「守ったのはカズマの貞操だろー!」

 

ダストが的確なヤジを飛ばしてくる。え?まさか……

 

「シルビアの目的がカズマさんなのは、斥候部隊の千里眼と読唇術でバレてましたが、皆さん何だかんだでカズマさんを売らないって戦ってくれたんですよ?」

 

ルナに説明されてメチャクチャ恥ずかしい反面、皆の気持ちが本当に嬉しい。

 

「まぁ、カズマが紅魔の皆を連れてこなかったら何人も死んだだろうし」

 

「そうそう、結局みんな。カズマを信頼してるんだよ」

 

やめろよ。俺だって嬉しくて泣くときは泣くぞ。

 

「ただですね?それより気になった事が……」

 

ルナが持ってきたのは、報告書だろうか

 

「エリス様の降臨と、そのエリス様が、カズマさんを旦那とお呼びしていた疑惑なのですが…」

 

俺の新たな戦いが始まった。

 

「あれは…多分コスプレ少女です…エリス様がこんな所にねぇ?」

 

「いいえ、本物だったわ!それっぽい会話も聞いたもの!」

 

アクアが参戦してきた。お前か?広めたのお前なのか!

 

「ねぇカズマさん、私の後輩に手を出したの?エリスと寝たの?!ねぇ答えてよ~!!」

 

「おいカズマ!エリス様を犯したと言うのか!女神様だぞ!お前なにしたか解ってるのか?!」

 

ダクネスも参戦。いや、アクアの発言を元にして乗っかるな。

 

「カズマ、バチ当たり過ぎない?脅したの?女神様を脅して手玉にとったの?」

 

おいクリス。ふざけんなよ?面白がってるだろ?!

 

「あの、エリス様が降臨したのは確からしいのですが、激戦のなか斥候もその言葉までは確認できておらず、そもそもカズマさんとエリス様に個人的な関係があるのですか?」

 

「ええっとですね?自分にも良く分かりません!魔王を倒したら死後女神と結ばれるとかじゃないですかね?まぁでもアクアが言ってる事ですから!」

 

これしか言い訳が思い付きませんでした。

 

「そう言えば、この国の王女も、魔王を倒した勇者に嫁に行くとかあるよな?」

 

あ、ダストお前、ナイスフォロー!でも厄介事がひとつ増えたな…

 

「そう、だったら私がその古くさい風習を止めるようにエリスに文句言ってやるわ!」

 

アクアはやる気です。こんなときばっかり。

 

「私は王女の方を止めなければ…」

 

ダクネス、それに関しては応援する。アイリスは犯罪だよな。

 

「じゃあ、今の妻は私がなります」

 

俺の隣に座るロリッ娘。ほらー、めぐみんってば大胆なんだから

 

「あ、アタシも!ちゃんと幸せにしてよね?」

 

反対側にクリス。もう悪乗りが過ぎる。

 

「カズマさんにはもうお相手が居るようですし、エリス様の降臨だけ報告しましょう。エリス教と揉めたくありませんし」

 

「そうですね!それでお願いします!」

 

いやー良かった。完全に墓穴掘ったとばかり…

 

「サトウカズマは居るかー!」

 

「なんだよ!何回目だよこのパターン!」

 

「サトウカズマ、お前はエリス様をドスケベサキュバス扱いし、更には降臨時に、俺の嫁と本人に宣言したと言う報告があがっている!」

 

あ、ヤバい。これマジでヤバいやつ。

 

「宗教裁判に出廷願おうか…」

 

「…はい」

 

俺の戦いは始まったばかりだ




毎度お付き合いありがとうございます。

シルビアが好きなのでやりました。
後悔はしてないです。

また少しエッチなの挟むと思います。
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