肉親とアクアを出すので、そろそろ酷い感じでまとめるとしましょう!
無論、そこに感動も友情もございませんが、スポ根風味の酷いネタにお付き合いください。
この状況はゲームや映画で見たことがある。悪の組織のラスボスが、自分の親や家族だったと言う展開。その時の主人公は、激しく葛藤したり、時には絶望したりするものだが…
「きちゃった♪」
「いやなんでだよ?!」
いざ当事者になってみると、驚きと共に帰って欲しいと言う感情しか沸かない。自分の親の前で勇者役だと?そんなもんただの公開処刑じゃねぇか!
「おいアクア。これはアレか?俺への高度な嫌がらせか?」
「この世界でバレーボールなんてマジの新競技じゃない。だったら、ベテランのコーチが喉から手が出るほど欲しいのは当然よ!」
「だとしてもなんで母さんなんだよ!そこはプロとか連れてくれば良いだろ?!」
「馬鹿ね!そんなの拐ったらニュースになるし、快く受けてくれるとも限らないし、それに異世界の説明だって面倒でしょ?だったら内情知ってる人に頼んだほうが効率的じゃない。カズマさんてばそんなこともわからないの?馬鹿なの?」
何こいつグーで殴りたい!バレーボールを理由に天界規定を破るやつに言われたくない!
※人のことは言えません。
「それに、今回は失われし天界の神器を取り戻すという使命があるじゃない?」
落とし物のリストバンドだけどな…
「しかも、呼び出したのは英雄の血族なのよ!」
それ普通は子孫側だろ…なんで前の世代呼んでんだよ…
「という理由で、実は正規のルートで申請が通ったわ!」
「嘘だろ?!」
母さん天界公認で来ちゃったの?!
「ここに許可証と旅のしおりもあるわよ!」
母さんが俺に手渡したものは、初めての異世界召喚と書かれた冊子。安っぽくホチキスで止められたその本には、言語学習で頭がパァになるかも知れないとか、死んでも蘇生するから恨まないでとか、あと何故か持ち物欄に保険証とか諸々の注意事項が書いてある。なにこれ遠足か?天界の案内ってこんな安っぽくていいのか?!
「で、これが許可証ね…」ペラッ
『愛の女神の名において、以下の者の滞在を認める。滞在理由、婚姻の挨拶の為。滞在期間、飽きるまで良し』
「これもう勇者も血筋も関係ねぇじゃん!しかもなんだよ飽きるまでって!」
「神様って寛大よね」
「寛大が過ぎるわ!これもうただ雑ってレベルだろ!」
なんなんだよ愛の女神って!絶対に管理職に向いてねぇぞコイツ!
「あぁ…そちら女神の中ではトップの方ですから、適当でも誰も文句言えないんですよね…」
「これトップなの?!」
なんか、天使が天界をクビにならずやっていけてる理由が分かった気がするな…
「まもなく決勝戦が始まります。選手と観客の方は、中央コートにお集まりください」
「まぁ、書面上はどうあれ呼んでくれたのはアクアちゃんだから、今日のところは敵同士よ和真!」
「分かってるよ。悪いけど、絶対に負けないからな!」
「私だって、まだ自分の子に負けてあげるつもりは無いわ!」
________________
「まさか、このメンバーで来るとは思わなかったな…」
俺はてっきり、アクアのチームはアクシズ教の集まりだと思っていた。しかし、そんな俺達の前に立つのは、見覚えのある顔ばかり…
「やっほーカズマ!」「やはり来たか」「そうだと思ってたけどね」
「アクセルハーツが、遂にアクシズ教に……」
「違うぞ?!私が日本人でバレーボールを知ってるからだ!危険な神器がかかっていると聞いては、協力するしかないだろう?」
「あぁ、なるほど。そう言う誘い文句で誘われたのか…」
まぁ、間違いではないのかな?
「危険な神器だから、賞金全部使ってでも高度な封印をしなきゃイケナイなんて言われたらね?」
「うんうん、アクアさんがこんな女神らしい事するんだもん!できる限りのお手伝いくらいするよ!」
あぁなるほど、やっぱり賞金は総取りするつもりなんだな…
「いや、でも別に今回の神器は……」
「サトウカズマ!今日こそは堂々と決着をつけようじゃないか!」
うん、コイツは居るよな。ていうか、本当に人の話聞かねぇのな…
「なんだよカブラギトウヤ。いつも俺は堂々と戦ってるだろ?」
「ミツルギだよ!ミツルギキョウヤ!いつもなんでそうギリギリ間違えるんだ君は!それに、堂々とした勝負なんてしたことないだろ?!」
そんなことはない。俺は堂々と勝負をして、そしてわからないようにイカサマをするだけだ。あと、そもそも運の勝負でミツルギはクソ弱いだけだ。
「しかし、バレーボールならイカサマなんて出来ないだろうからね!今回は勝たせてもらうよ!」
「それは俺たちの勝敗じゃねぇだろ…」
でも、ミツルギはステータスだけなら化け物だからな。一応警戒が必要か…
「そうです!そうですとも!この勝負はエリス教とアクシズ教の戦い!私達の勝敗ではありません!」
「うん、それも違うね?」
そして予想通りのセシリー。こいつは球技が出来るのかもわからないが、変なところで高性能だ。警戒をするに越したことはないか…
「さぁ、見せてあげるわ和真。私が手塩にかけたチームの強さをね…」
うん、でもやっぱり母親が一番やりにくい!
___________
「さぁ!ついに決勝戦です!実はバレーのルールも良く知らないままここまで実況を務めましたが、思ったよりなんとかなりますね!」
「いや本当に凄いな汝…普通そんなの口に出せんぞ?」
緊張感のない二人の声が響く中、俺たちはコートに入った。やるべきことはわかっているし、決して無策で挑むわけではない。それは全員分かっているのに、それでも俺たちは落ち着かない。そう、その理由は……
「アクア様!ナイスサーブ、お願いします!」
「女神様のサーブなら、そのままセットも狙えますよ!」
「えぇ、ありがとう」
尋常ではない。アクアからのプレッシャーである。
「アクアの身体、なんかおかしくないか……」
「水を纏ってるね。多分、今回は女神としての活動とみなされてるから、女神の力に制限が無いんだと思うよ」
普段の駄目な姿とは一変し、神々しさを全面に出すアクア。本来のポテンシャルがまさかこんな時に発揮されるなんて……
タッタッタッ……スパァン!!
「ふっ!」
「ここです!…え?!」グッ!
ドサッ
アクアのサーブを正面で受け止めたウィズは、そのまま尻餅をついてしまう。そして、そのボールは何処かに跳ねることもせずウィズの腕から転がり落ちた。そして、何故かボールは濡れている。
「さ、サービスエース!これが本来の女神の力なのでしょうか!それよりも、ボールにジワジワ押し込まれるってあり得るんですか?!」
「ふむ、何かしら魔法が使われているような気もするが、詠唱も無ければ魔法陣もルーンもない。となれば、ルール上の違反はない事になる。いやはや、あの女神も小狡いな…」
アイツ、女神の力ならルールブック的にNGじゃないからってこの技を多用したな…そりゃサーブだけで勝てるわ!
「カズマのお母さんが警戒してたけど、この試合もこれで終わりじゃない?」
「油断するなエーリカ。実の親が言うんだ。おそらくカズマは対策してくる」
あぁ、悪いがこれなら対策できる。ちゃんとルールの範疇でな!
「あの…ボールがなにかに押さえつけられてるような感じがして、これでは返しようが…」
「そんなことだろうと思ったよ。ウィズ、次はレシーブに魔力を込めてみてくれ」
「え?そんな方法で良いんですか?私じゃ冷気くらいしか出ませんが…」
「あぁ、多分それで良い」
アクアの司る物が水なら、この小細工もどうせ水が関係している。なら、水を水で無くせば良い。
「さぁ!このまま連続得点よ!」
「あぁ!やってみろよ!」
スパァン!!
アクアのサーブは、さっきより威力も打点も違うのに同じコースに飛んでくる。この中で女神の力を感じ取れないのはダクネスとウィズ。ダクネスはゴリ押しでレシーブ出来そうだから、狙うべき相手はウィズしかいないって訳だ。やっぱりなんかしてるだろ!
「はい!」スパァン!
「上がった!同じ技かと思いましたが、今度はあっけなくレシーブ成功です!」
「うそ?!」
「なるほど…固形になればそれは水ではないからか…」
やっぱり、アクアの小細工には司っている水が要る。それなら、ここはウィズに打たせたいが……
[なら、ブロックを先に飛ばせましょう。セレナ!]
「アクア様!そのイカサマ、この場で懺悔させて差し上げます!」
「べ、別にイカサマじゃないもん!セシリー!キサラギ!」
「アクア様には打たせません!」
「ミツルギです女神様!」
明確にイカサマだと指摘されたアクアは、焦って二人をセレナに付かせる。流石はレジーナ、あいつの思考回路を把握している。
「と、見せかけて!ウィズ!」
「あ、しまった!」「くそっ!またカズマに!」
ブロックが誘導されてしまえば、アクアを守るものはない。さぁ、化けの皮を剥いでやる!
「そこです!」
スパァン!
魔力を込めたウィズのスパイクが、真っ直ぐにアクアに向かっていく。そして、信者の前で逃げるわけにもいかないアクアは、もうレシーブをする他はない!
「でも、こんな正面なら……ふぇ?!」パキンッ!
「は、張り付いた!ウィズさんのスパイクがアクアさんの腕に張り付きました!コレはホールディングの反則ですが、どうなっているんでしょうこれは!」
「あぁ、水が付着した腕にボールが張り付いたのだろう…しかし、なかなかエグいことをするな…」
レシーブしたアクアの腕に、ピッタリと張り付いたボール。超低温に冷やされた氷は、アクアの身体にまとった水さえ凍りつかせた。ここで剥がれれば理想的だが、やはりウィズの冷気は半端ではないらしい。そのままボールが固定されている。
「うわっ…これ完全に皮膚に張り付いてる…」
「力尽くで剥がしたら血が出るよね…」ツンツン
「痛い痛い!エーリカつつかないで!ちょっとカズマさん!これ反則でしょ!氷張ってるんだけど!」
「いやいや、誰も魔法なんて使ってないだろ?まぁ、ウィズが冷気を出した可能性はあるけど、少なくとも水が無きゃ張り付くはずがないよな?まさかボールに水を染み込ませるなんて反則をした奴が居るのかなぁ?!」
「それは…その…」
「そうだ!なにか不正が無かったか鑑定眼で確認しよう!そのボールに付着してるものが何か分かれば、誰が不正したか一発だしな?」
「えっ?!…それは…それはぁ!」
…………………………
「ボールへの聖水の塗布を確認し、アクア様の全身にも同じものを確認しました。明確な工作行為によりチームアクシズに失点。チームピュアホワイトが1点加算の2対1で試合を再開し、アクア様にはイエローカードを発行します。以降は反則が発見され次第警告と失点です」
「うぅ…なんでセナがいるの!あんた女神でも容赦なさすぎよ!」
「えぇ、カズマさんが居れば秘書の私がいるのは当然です。そして、権力には屈しないのが私の信条なので!」
鑑定眼による判定により、アクアの反則が明らかになった。水を自在に操る女神が水塗ってましたなんてなれば、まぁこれはしょうが無いだろう。
「なお今回は、先に明確な違反がアクア様にあったので警告のみとしますが、ウィズさんの冷気も悪質だと判断すれば失点とします」
「そんな反則しないさ。相手がボールを濡らしたりしなきゃな…」
しかし、これで水を使った反則はもう出来ないだろう。最後に軽く脅しておけばより確実だ。
「それじゃ再開しよう……かっ!」
ベリッ!
「あぁぁーー!!!」
「「「「「ひっ!」」」」」
あっ、思ったより痛そうだった!なんかごめん!
________
「さて、このまま連続得点と行きましょう!」
スパァン!
試合再開はセレナの強力なサーブから。理想的にはこれで流れを持っていきたいが…
「くっ!これはバレー部のエースレベルだぞ?!」パァン!
やはり決勝戦となればとそうもいかない。リアは見事にそれをレシーブし、ボールは真っ直ぐにエーリカに向かって落ちていく。
「リアも経験者かよ!薙刀部だろお前!」
「テレビ業界というのは闇が深くてな。必死に練習させておいて、最後にローションの詰まったボールをレシーブすることもあるんだ!」
え、なにそれ?マジで何があったんだ?!
「あぁ…違うんだマネージャー…上達しすぎて衝撃を殺してしまったんだ…私は持ってないんじゃないだ!」
あぁ、これはきっと触れたら駄目なやつだ。新人アイドルって大変なんだな…
「リアばっかり見ないで!私から目を離さないで!」
「安心しろ!エーリカもちゃんと警戒してるよ!」
母を除けば、ここで一番警戒すべきはのはエーリカかも知れない。元気のないファンがいれば、踊っている最中でもそれに気付き、握手会でフォローするのがエーリカだ。間違いなく視界は広い。
「なら…私だけ見ててよっ!」パスッ!
いや、ソレは競技的に無理だろ!
「さぁ、行くぞカズマ!」
俺の真上をぶち抜くため、ミツルギが真っ直ぐ俺に向かって助走をしている。確かに明確なパワーの差があるのはここだろうが、力尽くで来るやつなんていくらでもコントロール出来る。
「ダクネス!」
「させるかぁ!へぶぅ!」バチンッ!
「ダクネスさんが割り込んで打ち上げました!流石は最強の盾、クルセイダーの為せる技です!そしてやっぱり顔面です!」
「うわぁ、女の子の顔面にスパイクとか最低だなミツルギ…これで良く勇者とか名乗れるわ…このDV野郎…」
「ち、違うんだ!今のはそっちから……」
うん、狼狽えてる、狼狽えてる。やっぱり扱いやすい。じゃ、ここらで揺さぶりをかけるとしますか!
「うん…和真ならこのタイミングでやりそうよね…」
「クリス!」
「セシリーちゃん!」
パァン!ズダン!
「「は?!」」
止められた?!
「ブロックした?!あの超高速攻撃を、セシリーさんが叩き落としました!」
そんな、まさかセシリーが?いや、あんな『なんか触った?!』って顔してる奴が狙ってやれるはずがない!ってことは……
「剣と魔法のファンタジー。そんな夢がある世界でバレーボールなんてしたら、和真ならきっとこれをやりたがると思ってたのよね……」
くそっ!やっぱり母さんかよ!
「それで、どうやってタイミングまで…」
「表情で分かるけど?」
「そんな理由?!」
母親ってスゲーなおい!
「やっぱり、16年一緒だった人は違うね…」
「あぁ、カズマが追い込まれる側って見たことないぞ…」
駄目だ!やっぱり滅茶苦茶やりにくいぞこれ!
「さぁ和真…これからじっくり教えてあげるわ。真面目に積み重ねたモノは、そんな小細工になんて負けないってことをね!」
………………………
「ツーアタック来るわよ!」
「くっそ!」
パァン!
「やった!カズマさんを止めたわ!」
「お見事ですアクア様!」
母さんが指示するようになってからと言うもの。俺の小細工の成功率は半分以下に下がった。そして…
「ふっ!!」
ダァン!!
「くそっ!味わい損ねた!」
ミツルギとシエロのパワーと、リアとアクアの器用さを活かした幅の広いプレーにより、俺たちはジワジワと点差を開かれている。と言うかダクネス、味わい損ねたって表現は違うだろ…
「でも、本当にこのままじゃ負けそうだよ?街がアクシズ教に染まっちゃうかも知れないけどいいの?」
「いや……もう諦めて、ちょっと小旅行にでも行こうかなって…」
「それはどうなのさ?!」
だって、母さんに不正がバレたら人前でも滅茶苦茶怒られそうだし?こんな衆目の中で怒られるとか恥ずかしすぎですし?
「あの、カズマ様?お忘れかもしれませんが、この大会のスポンサーはカズマ様の会社です。それゆえ、1位になるとこれが貰えたりするのですが…よろしいので?」
コレと言いながら天使が取り出したのは、俺のサインが書かれたサキュバス店の回数券サンプル。あぁ、そう言えばVIPに渡すように何セットか作ったな。え?これ貰えんの?!
「……なぁ?今の母さんはこの世界の字が読めるんだよな?これを親に見られたらどうなると思う?」
「自分の息子が何でもヤれる系風俗経営してて、しかも従業員の悪魔と爛れた関係を持っているなんて知れたら、不正を知られたなんてどうでも良くなるほど叱られると思いますし、なんなら勘当もありますよ?」
「……ですよね」
あ、これ本当に不味いやつだ。どうしよう、本当に勝たなきゃ駄目なやつだ!
「みんなごめん。ちょっとクズなことするわ…」
「カズマが自分でクズだと言うなんて…本当に何をする気なんだ…」
うん、そこまで酷いやつだと思われてるのは普通に凹む……
_____________
「ハーフタイムを終え、1セット目を先制したチームアクシズがコートに戻ります!後半は更に点差が開いてましたし、このまま行けば優勝間違いなしですね!」
「いや、あの小僧が自分の親だからと手心を加えるとも思えん。ここらで一発逆転を狙うやも知れんぞ」
あの二人は、まだ違和感に気付いてないらしい。悪いが、俺はもう本気で勝ちにいかせてもらっている!
「さぁ、ここから逆転するぞ!」
「「「「「おー!!」」」」」
「チームピュアホワイトもコートに戻ります。まだその心は折れてないようです。一体どんな策を巡らせるのか!」
策を巡らせるって言うのはあれだろ?どうせルール内での話なんだろ?悪いけど、今この段階でルールなんてねぇよ!!
「じゃあ、今度は私のサーブからだな…」
「ルール上順番が回るのは仕方ありませんが、最初のサーブはダクネスさんからです!さっきから一度も入ってませんでしたが、最初に持ってきた理由は何でしょうか?」
「ふむ、相手のローテーションに合わせたのか、それとも……」
「トスして……打つ!」ズパァン!
クイッ…ダァン!
「「「「「「はぁ?!」」」」」」
ダクネスのサーブは、さっきまで特大のホームランを描いていた。しかし、今のサーブは何処からどう見てもプロの一撃。威力そのままにコートに突き刺さり、バウンドして観客席にまで飛んでいった。うん、流石に露骨すぎる。
「サービスエース!何があったのか分かりませんが、格段にコントロールが良くなっています!コレはステータスだけなら最強のプレーヤーかも知れません!」
「そ、そんなのおかしいから!なんでダクネスがそんな上手いのよ!絶対にイカサマよ!」
「わ、私だって頑張ったんだ…カズマの為に…」
「それでどうにかなるレベルじゃないでしょ?!」
そうだよ?それだけでどうにかなるなら、最初からコイツには困らされてねぇよ!でも、今は……
「おいアクア、仲間のために頑張る人間にそんなことを言うなんて、人としてどうかと思うぞ?」
「カズマさんがそれ言うの?!これ余計に怪しいじゃない!」
え?俺へのイメージそんな感じ?
「ピー!なんの根拠もなく相手プレイヤーに暴言を吐くなら、次は警告で失点です!」
はい、ナイスタイミングだ審判。いや…セレナ、レジーナかな?
[ふふ、正解です]
そう、アクアの反則で鑑定眼や魔法検出の道具が使われる様になってから、俺たちはバレない程度のイカサマを繰り返していた。しかし、それでは母さんには勝てない。じゃあ、そもそも判定する人間にイカサマをすれば良いのだ!
「アクア、これはエリス様による幸運補正ではないか?」
「あ、なるほど。それなら…審判さん!ブレイクスペルしても良いですか?イカサマの懸念があります!」
「まぁ、それで気が済むなら構いませんが…」
「『セイクリッド・ブレイクスペル』!よし!これでイカサマなんて無理よね!」ペカー
うん、そうだといいね?
「では、もう一度!」ズパァン!
ダァン!
「………なんでよぉ?!より完璧なコースに入ってるんですけど?!これ絶対におかしいから!絶対にイカサマよ!」
「ピピーッ!失点!」
「……あっ」
馬鹿なやつめ!ブレイクスペルじゃ傀儡化は解けないんだよ!それに、ダクネスはセレナのフォローだけでなく、サーブ前にボールを渡す時にもお礼を言ってるんだ!万が一解けても直ぐに再発動するぞ!
「落ち着いて!彼女は手首だけで狙いをつけてるわ!打点的にもクロス側にしか打てないはずだから、冷静に拾って!」
「ちっ!母さんめ余計なことを…」
「あぁ…実母にまでそんな感じなんだ……」
「息子と母親なんてそんなもんだぞ?」
さてレジーナ。サーブタイプ2に移行してくれ。
[えぇ、コースを変更ですね?]
さぁ、殺人サーブと行こうか!
「はっ!」パチン!
「おっと!ここでサーブの威力が落ちました!やはり偶発的なものだったのでしょうか?それともまだ不安定なのでしょうか!」
「「『沈黙』」」
「これなら拾え……」
「ここは僕が……」
ピトッ
俺が狙わせたコースは、シエロとミツルギのちょうど真ん中。そして、ウィズと俺が二人にかけたのは『沈黙』の魔法。声をかけなきゃ、接触するのも仕方ない。そして、殺人とは物理的に殺すだけではない。謀殺も事故に見せかけた暗殺も、結果として人が死ねば殺人サーブである。
「い、いやぁーーー!!」ズドン!
「ぐはぁ!!」バサッ!
「た、タッチネット!!いやもうこれは、キャッチネットです!チームピュアホワイトに得点!」
ぶっ飛ばされたミツルギは、そのままネットに引っかかる。残念だが、この場では回復魔法も使用は禁止。それをやると、スポーツの基礎となる体力が誤魔化せてしまうからだ。悪いが、本気で潰させてもらう!
「だ、大丈夫ですか?!」
「な、何とか…僕の声掛けが小さかったかな…」
「その、私も小さくてごめんなさい…」
大丈夫、声が大きくても結果は同じだから…
「あの2人、仲悪いの?」
「違いますよサトウさん、シエロは男が怖いんです」
「私には大の男を宙に浮かせるあの娘が怖いけど?!」
そうだな。仲間だと心強いけどな!
「本気で勝つと決めたカズマは、本当に魔王まで倒してるもんね…そりゃ、これくらいなら普通にするよね…」
「魔王様がこんな方法で殺されていたら、流石に私も同情しますよ…」
何を言ってるのかな二人は?これまだ序の口だよ?
…………
「えいっ!」パアン!
「ふっ!」バチン!
「シエロさんのスパイクに完璧なブロックが決まりました!2セット目からカズマさんが本気モードです!」
手のテーピングに物理ダメージ無効の魔法陣書いたら、シエロの球でも余裕でブロックできる。マジでめぐみん達はズルい。しかし、今の俺はもっとズルい!
「危ない!シエロの足元にボールが!」
「あっ!」グラッ
「くっ!間に合え!」ポスッ
バレーでブロックされれば、足元にボールが行くのは当然だ。しかし、そんなこと言われてしまえば、勝手に手を差し伸べたくなるのがこのミツルギと言う男である。
「あっ…し、シエロ…これは…」
「い……いやぁぁ!!!」
ズドン!!
「ぐふぅ!!」
これで7発ほど食らっただろうか?もうミツルギは最盛期のパワーは出せず、シエロもミツルギ側に落ちたボールには手を伸ばせて居ない。主力二人を切り崩せば、後はもう余裕だろう。後は…
「カズマ、こっちも準備オッケーだよ?」
「おぉ、いい感じだな…」
「はぁはぁ……こ、これが目的ですか…さっきから打たないのにクリスさんが走り回るのは……ゲホッ」
「お姉ちゃん!負けちゃだめですよ!」
「でも、めぐみんさんが…見てるから…うぅ」
セシリーは追跡モードになるとマジでしつこいが、別に体力があるわけではない。そして、可愛いめぐみんの応援を受けたら、手を抜くなんて出来るはずがない。勿論めぐみんは仕込みだ。
「よしダクネス!アクアの顔面を狙え!」
「さ、させませ……くぅ!」ガクッ!
よし、セシリーの脚は死んだ。
「すまんアクア逃げろ!コート外なら当たらないから!」
「な、何言ってるのダクネス?!狙えるはずないわ!!ダクネスがそんな上手いはずが…ぎゃふん!」バチーン!
「あぁ、すまんアクア!」
うん、右手に傀儡化かかってるから、信じられないくらい高精度だぞ?
「くっ!結局カズマの掌の上か!エーリカ、私達だけでも……え?どうしたエーリカ?なんか上の空で…泣いてる?!」
「うぅ、観客席に孤児院の子達がいるの!プロデューサーが連れてきてくれて、私のこと大好きって横断幕まであるの…」
「な、なら尚更頑張んなきゃだろ?!ほら、応援に応えよう?」
「分かってるけど……プロデューサーの優しさに涙が止まらなくて……」ホロリ
「多分カズマの狙いはそっちだぞ?!」
はい正解。ハーフタイム中にテレポートで連れて来たぞ。
「あぁ、そうだリア」
「な、なんだカズマ!私にはそんな揺さぶりは…」
「全国展開する伝染病の予防接種のポスター。王様からアクセルハーツの起用を約束してもらったから」
「今言うな!それ国の公共事業じゃないか!嘘だったら張り倒すからな!」ニヤニヤニヤニヤ
文句言う割には、表情筋ヤベーことになってるけどな。
「あぁ、でもここでゴリゴリの体育会系ってバレたら考え直すかな?予防接種とか不要そうだとか思われるかな?お城から見てるかも知れないもんな…」
「だから、なんで今言うんだよぉ!」プルプル
分かってるくせに(笑)
「ピー!選手交代です!ミツルギに代わり、サトウコーチが入ります!」
あぁ、遂に来たか…
「さっきの言葉は訂正するわ和真。命懸けで小細工してただけのことはあるわね……」
「なんのことかな?俺達はクリーンな試合をしてると思うぜ?それに、審判が黙ってるならルールの範疇ってことだしな!」
「くっ!そんな子に育てた覚えは無いと言いたいけど、それで世界救った事が天秤にかけられると何も言えないわね!」
そうだな。真っ直ぐ育ってたら多分無理だったもんな。
「だけど!バレーの世界で小細工に屈する訳にはいかないのよ!バレー部代表としてね!」
「顧問がイケメンだったから入部した上に、ママさんバレーは練習よりお茶会のほうが多いだろ!なに代表とか言ってんだ!」
「うるさい!他に関係者居ないから良いでしょ!初の異世界観光!いいとこ無しで帰れないんだから!」
パァン!
「こ、これはジャンプフローターサーブ!無回転のサーブをジャンプサーブで打つことにより、変化量が増す高等技術!」
「へぇ、そうなの凄いね『ウィンドブレス』」
ひらっ…
「アウト!お母様のサーブは急激な変化でアウトです!しかし、変化方向によっては実に強力なサーブですね!」
「いや、どんな変化をしてもおかしくないと言う点と、確率論で外れると言う点を合わせて考えたら、あやつにそれが通じる筈がない。残念だが、これは相手が悪すぎる」
「おかしい!今の伸び方は絶対におかしいもん!あれイカサマよ!ねぇ審判!」
「あの……そもそもサーブ権はまだカズマ様のチームなので、お母様の抗議はそもそも的外れと言いますか……」
「あっ……」
おっと、これはきつい!
「交代して、そのままついついカッコつけちゃったんですね…」
「まぁ、カズマのお母さんだもんね…」
「それでアウトだなんて…2重で的外れを……」
あらやだ恥ずかしい!あれ俺の母なんですけど?!
「も、もう日本に帰るぅー!」
「あ、まだもう1セットあるから、帰るならそれ終わってからな?」
「あんたそれでも人の子か?!」
「あんたの子だよ」
こうして、うちのチームはそのまま見事に勝利を納めた。アクセルハーツを騙したアクアには、顔面スパイクで制裁を加えたし、立てなくなるほど無理したセシリーは当面協会で療養するらしい。アクセルは今日も変わらず平穏無事、俺たちが戦った意味はここにある。そして……
「短い間だったけど、凄く楽しかったわ!じゃあ、元気でね…」
「あぁ、母さんも元気で…」
仲間と嫁と、そして俺のいる世界を見て回った母さんは、誇らしげに帰路に着こうとしている。最初はすごく微妙な気持ちだったが、こうなってしまえば名残惜しいモノだ。
「では、お母様は私が責任を持って送り届けますね」
「おう、頼むよ」
天使が空に円を書くと、そこに光の門が現れる。そして、それがゆっくりと母さんと天使を包むと、二人の姿はそこには無かった。まったく、涙くらい流してもいいのにさ……
「そう言えば、結局天使は一度もミスをしなかったよね?なのになんでスパイクを打たせなかったの?」
「あいつ、昔からバレーやってるらしいんだけどさ…リベロなんだって…」
「え…凄いねカズマ。それを数日にわたって隠し通したんだ…」
まぁ、終わってみれば楽しかったし、今日は笑顔でいい感じに終わろう。それに、なんか家族にはまた会えるような気がするし……
「さぁ、帰って皆で祝勝会でもやるか!」
「うん!」
___翌日___
「あぁ!神の名を冠する会社がこのような体たらく!このようなギリギリの経営では、救世の英雄と世界の主神に申し訳がたちません!………って言う理由で異世界召喚申請したら、なんか通りました」
「俺はこれでもキャリアコンサルタントの資格を有する商社マン。この会社をより良くする為、そして、愛する息子とその妻の為、短い間ですが全力で頑張りたいと思います!」
「いや今度は父さんかよ!流石に次に来るのが早すぎるだろ!まさかまた…」
「えぇ、愛の女神様の承認です『いいよ』だそうです」
「バカにしてんのか?!どうなってんだよ天界規定は!天界のルールがこんなのでいいのかよ!感動を返せこのやろう!!」
この数日後、天使の計らいでミツルギとリアの親も来た。そっちはとても感動的だったらしい。ズルい。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
オチはこんなです。どんどん私の世界の雑さが全面に出てきます。
さて、次回からカルテットしようかなと…