一応、これが私の最初に思い描いた最終回です。
ここまで付き合ってくれて、本当にありがとうございます。
またお暇な時にでもお付き合いください。
この素晴らしい世界に祝福を
夢は覚めるもの。それはどんなに幸福な夢も、また悪夢も同じ。魔王の支配がカズマ様の手で終わったように、例え永遠に近い命を持つ私達でさえも、幸福な時間は永遠ではない。
「遂に、この時が来たんですね……」
「そうだな。ずっと先送りにしてきたことが、今やっとだ…本当に苦労かけたよな…天界規定違反、散々しちゃってさ…」
彼が世界を救って70年。遂に英雄の伝説が終わりました。破れたページを、何度も蘇生で張り合わせた人生に、遂に老衰という結末が訪れたのです。
「でも、またここに来たら若い体なんだな……俺がきっと、1番楽しかった頃のままの……」
「そうですね。それが魂の形なんです。それであの…私、カズマさんに言わなきゃいけないことが!」
「もう分かってるよエリス。俺は天使にはなれないんだろう?こんな擦り減った魂じゃ、そんな大役務まらないよな…指先なんて、透けてきてるしさ…」
「はい……だから、ここで私達はお別れなんです…天国に行っても形も保てないほどに擦り減った魂は、もう新しい命として転生する他に無いんです……」
本来ならば、天界規定により魂が消耗することなどない。でも、カズマ様は規定を無視して何度も蘇生を繰り返した。だから、彼の人生は……“サトウカズマ“はここで終わる。アンデッドにもなれず、天国にも行けず、新たに別人になるか、このまま消えるしか道はない。
「そうか……でも、ソレも仕方ないさ。俺の人生は幸福過ぎたんだ。これ以上は望み過ぎだ」
「どうして!どうして怒ってくれないんですか?!私が手放したく無かったからなのに!身勝手な理由で何度も蘇生して!ただ人間のカズマさんと一緒に居たいなんて身勝手な理由で、私は貴方の死後を奪ってしまったのに……」
感情のままに吐き出した言葉は、段々と力を失っていく。確かにそれは事実かもしれない。でも、それはエリス様だけの願いではない。だって、2人の想いは決して一方通行ではなかったのだから……
「決まってるだろ。俺だって手放したくなかったんだよ。2度目の人生でエリスに出会って、あいつらに会って…まだまだ見届けたい。一緒に居たいって思ったのは俺も同じだ。だから、コレはエリスだけのせいじゃない……」
ぎゅっ
「うぅ…カズマさん…カズマさぁん!」
きっと以前までのエリス様ならば、こんな風に涙は流さなかっただろう。愛する人の胸で泣くことを、エリス様に教えたのもまたカズマ様だ。
「エリス…一緒に居てくれた人生は最高に幸せだったよ。エリスが居ない時間を何万年も生きるより、この数十年はずっと幸福だったって確信してる…」
「嫌です!私はまだカズマさんと離れたくない!貴方が消えるなら、私もこれで終わりたい!カズマさんが居ない時間なんて、私は耐えられないです!」
「馬鹿言うなよ。エリスまで居なくなったら、残された子供達はどうする?世界も、エリス教会も、お前が居ないと困るんじゃないのか?」
「でも、もう私にはカズマさんが居ないなんて考えられないんです……退屈な毎日があんなに輝いて、いつも私を笑顔にしてくれて…それを失ったら…もう私は、何を糧に生きていけば良いのか分からなくて…」
これはきっと逃れられない呪い。愛することの素晴らしさを知ってしまっただけ、それを失ったときの悲しみは大きい。そして、その幸福を知らないで生き続けた彼女にとっては、この消失は余りにも大きい。その根幹さえも、揺るがす程に……
「分かったよ。なら、俺は転生してもきっとまたエリスを見つける。何万年かかってもきっと…記憶が無くなっても、姿が変わっても、それでもいつか必ず見つける。だから、変わらずその姿で待っててくれ…生きる理由は、それじゃ駄目か?」
「ズルい…そんなの、私が断れないって分かってて…勝手すぎますよ…」
「ごめんな…愛した女には生きてて欲しいんだよ…俺の、最後の自分勝手を聞いてくれ…」
「約束ですよ?何万年も、何億年も待ちますからね?世界が何回滅んでも、何度も作り直して貴方を待ちますからね!浮気なんてしてたら許しませんからね!」
「おう…浮気してたら、エリスがとっ捕まえに来てくれよ…そしたら、きっとまた思い出すからさ…」
きゅっ
もう半透明になった彼の指が、泣きじゃくる彼女の指を絡め取る。叶うはずがない約束を、生きてて欲しいからと交わす。残酷で優しい。まさに彼らしい別れ方……
「じゃあ、エリス……またな」
「はい、カズマさん……また…んっ」
あれほど愛し合った2人の最後のキスは、ほんのりと触れるだけの優しいもの。でも、もっとも深く繋がったキスはきっとこれなのだろう。お互いの気持ちと、魂が深く繋がったキスは……
「ご案内しますサトウカズマ様。そして、天界より貴方には、最大級の感謝を送らせてください……」
「俺も、お前には沢山助けられたよ。最後までありがとな…」
……………………
転生の間に繋がる廊下を、彼を連れて歩く。最後くらい私も天使としての仕事をしましょう。今の彼には、きっとそれが必要ですから…
「もう泣いてもいいですよ。ここならエリス様には聞こえません。これが貴方の人生の最後です。無理しなくても、まだ少しくらいなら時間がありますから…」
「そっか…じゃあ泣かせてくれ…消える直前に、こんなみっともなくてゴメンな…」
私の胸におでこをつけ、大粒の涙が床に落ちる。これだけ愛されてなおこの仕打ち、人間の時間とは残酷です。
「カズマ様の涙は私が覚えておきます。エリス様がまた笑えるようになったら、カズマ様のことを話せるようになったら、この事をきっとお伝えします。あなたの愛した人は、最後まであなたを想っていたと……きっと…」
「あぁ…エリスを…頼む…」
ぽたぽた
もうどちらのものか分からない、大量の大粒の涙が床に落ちる。私もまた彼に変えられてしまった。彼が居ない人生が想像できないのは私も同じ。でも、私にはまだ仕事がある。彼が心から愛した人を、私は支えなければならない。これが、私の愛した人の望みだから……
……………
「ありがとう天使。でもお前の名前、結局最後まで教えて貰えなかったな…」
「私の名前ですか……転生後に見つけてくれたら教えます…だから必ず…」
「……分かった…じゃあ、またな…」
「はい。いってらっしゃい」
泣き腫らした目で必死の笑顔を作り、私は彼の最後を見送った。転生の間から出るときには、彼はもう彼ではない。そんないつも見てきた事実が、今はこんなにも心を締め付ける。
「私も、あなたを愛していましたよ。カズマ様…」
…………………………
私が彼を導いて戻ると、そこには彼女の先輩女神が訪ねてきていました。死に目に別れは済ませたからと、下手くそな作り笑いで最後の別れを譲った彼女が……
「エリス、あんた酷い顔よ…大丈夫なの?」
「先輩こそ…目が酷く腫れてますよ。ヒール、いります?」
「ううん…いまかけても無駄にしちゃうわ…だって、まだ泣き足りないもん……」
「そうですよね…私もです…」
ぎゅっ
「ごめんなさい!先輩に譲ってもらったのに!私最後に笑えなくて!泣いてカズマさんを困らせて!」
「馬鹿!泣くななんていってないわよ!私だって絶対に泣いてたもん!」
二人の女神は、強く抱き合いながら感情のままに声をあげる。この二人が心からこうして通じ会えたのも、彼が二人を変えたから。本当に、偉大な英雄様です。
「どうして私は女神なんですか!共に眠りたかったのに!一緒に終わりたかったのに!」
「そんなの私もよ!でも、私達が女神じゃ無かったら、カズマさんは魔王を倒す前に死んじゃってるのよ…」
「うぅ…でも、でもぉ…」
「それならば、転生したらきっと会いに行きましょう!永遠であるからこそ出来ることをしましょう。終れないのなら、また何度でも始めればいいんです!」
「天使…あなた…」
「そうですよね…待つと誓ったんですから…私は待ちます。たとえ永遠にだって…」
「大丈夫ですよ。彼はきっと…いつか…戻って……うぅ」
安心してくださいカズマ様。この二人がまた、心から笑えるようになるまで、あなたの代わりに私が支えます。でも、今だけは涙を許してください。明日にはきっと、また淡々とこなしてみせますから……
___________________
「かの英雄の冥福を…そして、彼の残した平和を、永遠のものとするように…」
彼が天に昇った翌日。エリス様は現世でもまた彼を送り出さねばなりません。その役目を果たした肉体が腐る前に、多くの信者と妻の前で、聖なる火に焚べなければならないのです。それは物を言わぬ彼との2度目の別れ。またキズを抉るような儀式……
「エリス様。もし辛いなら私が代わります。貴方は愛する人を失ったばかりで…」
「ううん、やりたいの。私が愛した人だから、最期の思い出も私の手で……」
泣きそうな顔の彼女を見たからか、それとも彼が本当に愛されていたからか、この葬儀で無駄口を叩くものは誰一人としていなかった。多くの妻や子供達が泣き。それに呼応して友や憧れた者たちが泣く。あぁ、この光景を見せてあげたかった。愛されないと愚痴ばかりだった彼に、貴方はちゃんと愛されているのだと……
………
「それで、カズマは天国で何をしているのですか?」
「そうですね…天国でもチヤホヤされて調子に乗っていますよ。なるべくゆっくり来いとの事です」
「そうか…変わらないな…」
葬儀を終えると、彼女の元へ多くの人が詰め寄る。愛する人を失ったのは誰もが同じ。でも、死んだらまた会えると言う希望があれば、家族は少しだけ生きる希望を持つことが出来る。残酷な嘘と言うことも出来れば、彼の優しい願いを叶えたとも言える行いは、無理に笑う彼女の精神を少しずつすり減らしていく。
「ご、ごめんなさい!また天界で仕事があって…ずっと下界に居たから…」
「あぁ、エリスも無理はするなよ?」
「えぇ、カズマによろしく伝えてください」
「……はい」
あぁ、また泣きそうな顔をして……本当に健気で、そして不器用な人ですね……
…………………
「いい加減に寝なさい!エリス、貴女この3日一睡もして無いじゃない!」
「でも、私が頑張らなきゃ…カズマさんが信じてくれたから…私が…」
「それで身体を壊して、カズマが喜ぶと思うわけ?!世界の管理書類なんて、私でもレジーナでも出来るんだから、アンタは少しくらい休んでよ!お願いだから……カズマが…心配するじゃない…」ギリッ
天界の業務は、実のところ誰にでもこなせるようなモノが多い。だから、カズマ様の死期が近いと悟ったとき、こっちの仕事は全部ウォルバク様とレジーナ様がこなしていました。そして、死んだカズマ様の魂に、ウォルバク様はただありがとうとだけ伝え、エリス様に全てを譲りました。
「ごめんなさい……カズマ様の代わりは私じゃ駄目みたいです……私はもう、エリス様の強さを信じて祈るしか出来ません…」
手を合わせて祈るのは、もう何年ぶりか分かりません。それでも、私にはそれしか出来ないのです。私の憧れた存在が目の前で壊れていくこの惨状を止めるには、もう奇跡にすがるしか無いのだから……
「人の祈りが神に届くのなら…神の願いも、誰でも良いから聞いてください…誰でも良いから…エリス様を救ってください…」
でも、もしも叶うなら…それは彼であって欲しい…
_______________
死に際に思い返した記憶には、悲しいものなんて1つも無かった。愛する人が隣りにいて、周りには家族が集まって、恵まれ過ぎた人生だったし、考えうる最高の最期だった。それでも、予想以上のサプライズが、最後の最後に待っていた。
「まさか、最後に貴方に会えるなんて、思ってもみなかったです」
「義理の息子の最期にくらい。仕事の折り合いつけてくるさ」
転生の間と呼ばれる殺風景な白い部屋には、何故か座布団とちゃぶ台が用意されていた。そして、そこで待っていたのは武神様だった。
「まぁ、まずは礼を言わせてくれ。魔王討伐、医療制度の確立、教育システムの樹立、雇用制度の整備、悪魔や魔物との共存区域の制定……カズマのおかげで、この世界を拒む魂は殆ど無い。まだこの先が見たいからと、この世界に生まれ変わる奴らが殆どだ。本当に、良くやってくれたな…」
「それ、ほとんどあいつらの功績ですよ。俺は、信じてただそこに居ただけです」
「そうか。以前のお前なら、それを理由に無茶な蘇生でも望みそうなもんだったが、成長したんだな……」
「これでも、老衰するまで生きましたから…」
流石にこれだけ歳を取れば、嫌でも色々と見えてくる。いま思えば、若い頃には随分と恥ずかしい事をやらかしたものだ。それも、今では良い思い出だが…
「さて、あんまり時間もねぇから手短にいかせてもらうぞ。これからお前の魂は焼かれる。その炎で罪と記憶が洗い流され、新しい命としてまた1から人生を始めるわけだが、その時に1つだけ些細な願いを持ち込める。まぁ、人間一人の願いなんざ程度が知れてるが、祈りで起こる最後の奇跡だ。悔いがないようにしろ」
それは何度も聞いた転生先の話。しかし、ここでどれだけ最高の環境を願っても、産まれてくる俺は全てを覚えていない。それは結局、俺であって俺ではない。それで何を祈れば良いというのか…
「…俺として、エリスの側にずっと居たいです」
「…………なにを祈るかはお前の勝手だ。でも、そんなもん天界の神々が全力をかけても絶対に無理な願いだ。それでも、お前が望むのはその願いで良いのか?転生を拒むと捉えられたら、マジで消えちまうかも知れねぇんだぞ?」
「そうですね……でも、新しい誰かを望む気にはなれないんです。サトウカズマは、最後の最期までその気持ちを忘れずに消えたいです…」
「……分かったよ。それじゃあ、これでお別れだ。運良く次に目を開けたとしても、お前はもう佐藤和真じゃない。でも、お前という人間が居たことを、俺が永遠に忘れない」
「はい。さようなら…お義父さん」
「あぁ、じゃあな。バカ息子……」
武神の手が床に触れると、殺風景な白い部屋いっぱいに巨大な魔法陣が現れる。そして、そこから放たれた眩い光に、俺の意識は溶けていった。ゴメンなエリス…最後まで自分勝手で……
__________
カズマ様が転生して1週間、エリス様はやっと笑うようになりました。いえ…それでは正しくありません。笑うことしか、出来なくなったのです。
「笑顔で居ないと、カズマさんが心配するので…」
そう言って笑うエリス様の表情は、まさしく完璧な笑顔でした。それには誰一人気付かず、その博愛に満ちた顔に手を合わせます。ただ、私とアクア様を除いて…
「そんな無理したら心が壊れるわよ!カズマさんはそんなこと望んでないって分かるでしょ?!」
「アクア先輩だって、ずっと泣き顔のままじゃないですか……カズマさんは、それだって望んでない筈ですよ…」
この二人は、カズマさんがこの世界に存在しないことを知っていて………そして、死後に会えるという嘘を家族につき続けた為に、完全に心が折れてしまいました。アクア様は忘れようと躍起になり、エリス様は思い出の中へ閉じ籠もってしまいました。
「やはり、私の祈りなど届くはずが無いんですね……私が目指したモノは……神とは一体何だったんでしょう…」
この1週間、私はあらゆる世界の全ての転生者を調べ上げた。願わくば、転生したカズマ様にほんの少しでも記憶があればと願い、それが叶わずとも赤ん坊のカズマ様が、エリス様を見て微笑んでくれればと思ったから。しかし、その中にカズマ様は居なかった。私の希望は、最悪の形で裏切られてしまった。
「間に合わなかったのでしょうか……それとも、忘れるくらいなら消えることを選んだのでしょうか……」
その答えは本人にしか分からない。でも、これだけは決して悟られる訳にはいかない。二人をギリギリ繋ぎ止めているのは、カズマさんが会いに来ると言う天文学的な奇跡と、記憶がなくとも幸福に過ごしているという淡い願いだけなのだから……
「そういえば、あの筋肉ダルマは何してるんですか!娘がこんな時に、この1週間音沙汰もないのはどういうことなのですか!」
神々が人間に肩入れするのは本来ならばおかしい。でも、だとしてもあの人は親代わりにバージンロードを歩いた人だ。それなら、少しくらい気遣って声をかけても良いはずで……
「筋肉ダルマで悪かったな。俺だって色々とあるんだよ」
「ひっ?!なんでこのタイミングでここに居るんですか?!」
「なんでって…そりゃ手紙を預かってるからな?」
「え?これを、私にですか?」
そう言って武神様がエリス様に手渡したのは、結婚式の招待状。こんな状況で、この人は信じられないものを持ってくる。こんな時に他人の結婚式の招待状なんて傷をえぐるようなものを普通渡しますか?!
「武神様は脳みそまで筋肉なんですか?!なんでこのタイミングで結婚式の招待状なんですか!エリス様が行くわけ…」
「……行かなきゃ!天使ごめんなさい!誰かここの代理を手配して!アクア先輩!ウォルバクさん!直ぐに降臨の準備を!」
「ちょっと?!何なのよいきなり!」
「と言うか、エリスなんか元気になってない?」
その手紙に差出人は無く、式場はアクセルの街。そして、何故か私とアクア様、ウォルバク様への招待までも一緒に書かれている。となれば、これを用意したのは天界の関係者と言うことになる。
「武神様、説明を!」
「必要ねぇよ。行きゃわかる」
……………………
「ねぇ、ここ廃墟なんですけど…さっきの、質の悪い悪戯じゃないの?」
「随分と立派だったみたいだけど、天井も優れて酷い状態だわ。本当にここなの?ってエリス?!」
「ここです!間違いなくここだった筈です!」
エリス様が向かった先は、もはやただの廃墟となった建物。到底結婚式など出来るはずもないその場所を、エリス様はひたすらに進んでいく。まるで、この廃墟の構造を熟知しているかの様に……
「ねぇちょっと待ってよ!そもそもあんな番地ないんですけど?エリスは何を元にここにきたの?」
「あれは区画整理前の番地なんです。でも、私はこの番地を忘れたことはありません!あと、覚えているとしたらもう一人……」
どんどん進んでいくエリス様が、大きな扉の前で立ち止まります。そして、先程まで黙っていた武神様が、ここでエリス様の隣に立ちました。
「じゃあ、この扉は一緒に開けさせてもらうぞ?前のようにな?」
「はい!」
そう言って、エリス様は武神様の腕に手を回します。そうだ。私はこの扉を、そして光景を見たことがある。この心からの、作り物じゃない笑顔を見たことがある!そして、この笑顔を引き出せるのは……
ガチャッ
「よう!ちゃんと見つけたぞ?しかもたった1週間でな!」
「はい……カズマさん!」
「えっ!えぇ?!」
「どういうことなの?!なんで若い頃のカズマがここに?!」
眼の前に居るのは、間違いなくカズマ様。あの人が本物である事は、仕草や表情で理解できるでしょう。ただ、私は天使だからこそ、あれが人でないと言う所まで理解してしまうのです。
「………司るものは、なんなのですか?」
「正義と叡智と繁栄を司り、この世界の統治副担当。着任初日から主担当と社内恋愛しちゃってるけど、これからもよろしく!」
「し、神格化?!カズマさん神格化しちゃったの?!神様になっちゃったの?!」
「しかも司るものが私より全然いい!頂戴!叡智は私に頂戴よ!怠惰あげるから!」
「ははは!絶対にやらんしそれは要らん!そんなことより、戸籍変わったから再婚しようと思って呼んだんだけどさ。書類はこれどこに申請すればいい?」
「えっと、一応人の佐藤和真さんと神になったカズマさんは別人と扱われるので、多分1週間で再婚は無理だった気が……」
「そうなの?!」
あぁ、この人はやはり私達の予想を超えてくる。天文学的なんてレベルじゃない。これは個人で起こすのは不可能な奇跡。人が神様になるなんて、何千万という人が祈らないと叶わぬ奇跡を、彼は一体どうやって……
「武神様…コレは一体…」
「今のこの世界には、自分じゃなくて女神のために祈る熱心なのが沢山居る。自分の転生先を選ぶより、世界を救ってくれた二人を幸福にして欲しいなんて願うほどに熱心な奴らが、この70年途切れたことがない。それで、あいつに集まったのはなんと一億超の願いだ。それだけの願いが集まりゃ、これくらいの奇跡は余裕で起こせるだろ?」
「…い、一億って…願いの譲渡って申請書必要ですよね?!70年かかっても無理ですよ!それどうしたんですか?!」
「一人じゃねぇよ。あいつらに惚れ込んだ色んな世界の神々も手を貸してくれたんだ。世界があいつらの幸せを願ってくれたのに、神として見過ごす訳にはいかねぇってな。まぁ、これでカズマが転生を望んだら、俺達の毎日4時間のサービス残業が無駄になっちまった訳だけど……」
それは夜間勤務として時給1200円✕4時間✕365日✕70年をタダ働き?!駄目だ!金額を考えたら私はショック死する自信がある!
「絶対に無駄になんてなりませんよ。カズマ様がエリス様を置いていく筈がないですから。見てくださいよあの四人を、あれは心から幸福を噛み締めている顔ですよ?」
「うぇぇーん!なんで教えてくれないのよぉー!」
「いや、目覚めたの今朝だし…」
「暴虐とセットでも良いから叡智は頂戴!心配させた罰として頂戴!これだって涙封じの魔法陣で耐えてるんだからね!」
「それは悪かったけど……こんな良い二つ名絶対に譲りません!」
「あの、カズマさんは一応病み上がりで…あれ?老衰って病み上がりなんですか?」
「いや、どうだろう?絶好調なのは間違いないぞ?」
本当に、子供みたいにはしゃいじゃって…3人とも今にも死にそうだったのに……ふふっ
「そうだな。でも、そりゃお前もだぞ?なんだよ。本気で笑えば、ちゃんと可愛いじゃねぇか…」
「な?!セクハラですよ!なんですか!結婚して養ってくれるんですか?!」
「えぇ、お前がその反応すんのかよ…人手不足だし寿退社なんてマジ勘弁だぞ?」
だって、可愛いって褒められるのには慣れてないですし…あれ?でも今の答えだと……
「えっと…つまり、それ結婚だけなら…」
「武神様!書類は駄目らしいんで、取り敢えず婚姻の祝福だけ貰えませんか!アクアの奴、泣きすぎてもう声が出ません!」
被ったぁ!ちくしょー!
「ったくしょうがねぇな!俺のは雑だし短いぞ!おい天使、お前は後で賛美歌な!」
「分かりましたよ。天界のウーピー・ゴールドバーグと言われた賛美歌を披露します!」
「それなんか違うぞ?!まぁ良いか…そっちのほうがお前ららしい!」
さて、これで佐藤和真の幸福な夢は終わりを迎えました。ここから始まるのは神としての新しい日々、彼らの未来がどんな結末を迎えるのか……その結末を神のみぞ知るなら、それは間違いなく幸福な未来でしょう。だって、この結末を願ったのは、間違いなく神々なのですから……この感動の再会のライブ配信に、もうスパチャが二千万こえましたし、これは間違いなく神々の望みですよね?
「ほら天使!携帯見てないでこっち来い!それじゃあ、大切な娘と、手のかかる義息子と、天界から見てるお人好しの神々……そして、女神さえ救っちまった、この素晴らしい世界に」
「「「「祝福を!」」」」
最後の最後までお付き合い頂きありがとうございます。
あともう少しだけ本編が続きます。ヒロインが増えた分が加味されてないので細々直してから投稿します。
あ、エリス派でキレイに終わりたい人は、次の話は見ないほうが良いです。
では、またお暇な時にでもお付き合いください。